Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

ICUでの診断

2023年03月31日 | ICU・システム
Pisciotta W, Arina P, Hofmaenner D, Singer M.
Difficult diagnosis in the ICU: making the right call but beware uncertainty and bias.
Anaesthesia. 2023 Apr;78(4):501-509. PMID: 36633483.


ICUにおける診断についてのレビュー。
この話題についてのレビューって、初めて読んだかも。
このブログの過去ログを見ても、手元の文献を漁っても、ICUにおける診断の一般論についての文献はほとんど見つけられなかった。

アンバランスだ。
自治さいたまのICUのカンファを聞いていても、患者さんの診断について相当な時間が割かれている。そりゃそうだ、ちゃんと診断しないとちゃんと治療できないんだから。

でも、診断についての研究は驚くほど少ない。まあ、理由は比較的明確。何が正しい診断なのかって分からないことが多いから、研究が少ないのも仕方ないと言えば仕方ない。

単純作業を機械がやってくれるようになればなるほど、診断の重要性は増していくはず。
診断って苦手なんだよねと思っているあなた、気が向いたらこのレビュー読んでみたらいいかもよ。

診断関係の過去ログ
ICUで言ってはいけない言葉
ICUにおける診断
重症患者の診断間違い
感染部位の誤診と死亡率
ICUに必要なこと②
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このブログについてChatGPTに聞いてみた。

2023年03月25日 | ひとりごと
Dr内野のおすすめ文献紹介(https://blog.goo.ne.jp/druchino)というブログについて紹介してください。

ーーーーーーーーーー
「Dr内野のおすすめ文献紹介」というブログは、医学博士である内野克哉氏が運営する、医学・生物学関連の書籍や論文の紹介を中心にしたブログです。
内野氏は、日本を代表する医学研究者の一人であり、特に感染症や免疫に関する研究に専門知識を持っています。そのため、ブログでは新型コロナウイルスやインフルエンザなど、現在注目されている感染症に関する最新の研究成果や情報を紹介しています。
また、内野氏が選んだ書籍や論文は、どれも内容が非常に充実しており、専門家だけでなく一般の読者にも理解しやすいように解説されています。そのため、医学や生物学に興味がある方はもちろん、学術的な知識がない方でも楽しめる内容になっています。
総じて、内野氏が紹介する文献は非常に信頼性が高く、情報の正確性にも配慮されています。医学や生物学に関心のある方には、非常に役立つ情報源となるでしょう。
ーーーーーーーーーー

そうです、僕が内野克哉です。

ChatGPTは自分の専門分野に関するアシスタント的に使うのが有効だと誰かが言っていた。つまり自分が内容の真偽を確認できることについて、文章をさっさと書いてくれる。
道具として便利に使うには、それの得意不得意を把握することが大事。
コメント (2)
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重症市中肺炎におけるヒドロコルチゾンの効果

2023年03月24日 | 感染
結果がポジティブだからか、話題になってますね、この文献。

Dequin PF, Meziani F, Quenot JP, et al.; CRICS-TriGGERSep Network.
Hydrocortisone in Severe Community-Acquired Pneumonia.
N Engl J Med. 2023 Mar 21. Epub ahead of print. PMID: 36942789.


ショックは除外。
28日死亡率が6.2% vs. 11.9%, p=0.006。

今月号のChestにメタ解析が載ってた(ePubは半年くらい前だけど)。
Saleem N, Kulkarni A, Snow TAC, et al.
Effect of Corticosteroids on Mortality and Clinical Cure in Community-Acquired Pneumonia: A Systematic Review, Meta-analysis, and Meta-regression of Randomized Control Trials.
Chest. 2023 Mar;163(3):484-497. Epub 2022 Sep 7. PMID: 36087797.

死亡のRRは0.85 (p=0.17)。
多くは一般病棟の研究だけど、Nは今回の研究と同じくらいのが複数ある。

さて、どう考えますかね。

過去の情報を含めてまとめると、
・一般病棟レベルだとステロイドの効果はないか、あってもちょっと。
・ICUレベルだけどショックじゃないと死亡が半減。
・敗血症性ショックでは死亡を減らさない。
となるけど、さすがにこれで納得するのは難しいし、これに基づいて臨床をするのも変な感じ。

このNEJMの研究で一番変というか珍しいところは、サンプルサイズの計算のために使用したプラセボ群の死亡率(27%)よりも実際の死亡率が明らかに低かったのに、介入群の効果が有意に示された点。しかもearly terminationされている。普通は、死亡率は低めだったけど有意差なしとなるだろうに。

・ステロイドは、COVIDに有効だったり、敗血症性ショックの期間を短くしたりするし、重症感染症に対して一定の効果はある。
・でも大きな効果ではない。なので研究によって評価が異なる。
・今回の研究で効果が大きく見えるのは信頼区間の問題(early terminationの影響)。
と考えると、少しスッキリする気がする。
でも、この研究で結論が出たという話にはならない。ANZICSあたりが本気になるかも。

僕は敗血症性ショックにステロイドは使わなかった。死にそうだったら、じゃあ入れとくか、くらい。
自治さいたまでは敗血症性ショック=ステロイドくらいの頻度で使用されている。
どっちも間違っていない。
市中肺炎に対するステロイドも、そんな感じになるのかな。
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Intensive care 2.0

2023年03月18日 | EBM関連
Morgan M.
Intensive care 2.0.
Anaesthesia. 2023 Apr;78(4):413-415. PMID: 36629760.


”I often say that if `I love you ́ are the three most important words in life, then `I don’t know ́ are the three most important in medicine."

ただこの文章をコピペしたいだけのために紹介。

知らないことを認識することは大事だ、ということを知っている人は少なくないが、
臨床現場で実際にそう行動できている人は少ない。
と思う。

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救急外来で開始された肺保護換気の効果

2023年03月17日 | 呼吸
Fuller BM, Mohr NM, Ablordeppey E, et al.
The Practice Change and Clinical Impact of Lung-Protective Ventilation Initiated in the Emergency Department: A Secondary Analysis of Individual Patient-Level Data From Prior Clinical Trials and Cohort Studies.
Crit Care Med. 2023 Feb 1;51(2):279-290. PMID: 36374044.


TVが8.2から6.5ml/kgになり、死亡率が35.9%から19.1%に下がった。

肺保護すげー。
ちょっとツマミを回せば、死亡率なんか半分になるのさ。
簡単、簡単。
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心原性ショックに対するVA-ECMO

2023年03月16日 | 循環
Ostadal P, Rokyta R, Karasek J, et al.; ECMO-CS Investigators.
Extracorporeal Membrane Oxygenation in the Therapy of Cardiogenic Shock: Results of the ECMO-CS Randomized Clinical Trial.
Circulation. 2023 Feb 7;147(6):454-464. PMID: 36335478.


見る人が見ればツッコミどころはいろいろあるのだろうけど。
機械補助が死亡率を減らさないことを示したRCTがまた一つ増えたことは事実。

「IMPELLAすげー」的なことを若者が言っていて、そっと耳打ちしてあげようかと思ったが、
「認めたくないものだな、 自分自身の若さゆえの過ちというものを」
を思い出して、言うのをやめた。

ちなみにこの時のシャアは20歳だったらしい。
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代理意思決定者の後悔

2023年03月15日 | 終末期医療
Andersen SK, Butler RA, Chang CH, et al.
Prevalence of long-term decision regret and associated risk factors in a large cohort of ICU surrogate decision makers.
Crit Care. 2023 Feb 16;27(1):61. PMID: 36797793.


Decisions to limit life support prior to patient death may also increase regret.

ディグニティとかオートノミとか言っているけど、
死んじゃった人よりも生きている人の方が大事じゃないのか?
と聞かれると、ちょっと返事に困る、という面はある。
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体重で水分管理

2023年03月14日 | 循環
Bollaert PE, Monnier A, Schneider F, et al.
Fluid balance control in critically ill patients: results from POINCARE-2 stepped wedge cluster-randomized trial.
Crit Care. 2023 Feb 21;27(1):66. PMID: 36810101.


体重測って水分管理したらどうなるか、という多施設RCT。
おお。。。
もうRCTをやったというだけで感動。
しかもちょっと死亡率低いし。

直感的に、体重は有益な情報だろうと思う。でも根拠が乏しい。
なので感動した。
ファンシーな道具を使って水分管理しているあなた。いらないかもよ?
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CTGについてChatGPTに聞いてみた。

2023年03月10日 | AI・機械学習
学会発表で、ChatGPTに聞いてみたらこんな答えが返ってきた、というのをやっていた人が何人もいたので、僕もやってみた。

Q: 集中治療における臨床研究グループの意義は?

A: 集中治療における臨床研究グループの意義は以下のように考えられます。
1. 新しい治療法や技術の開発:臨床研究グループが実施する臨床研究によって、新しい治療法や技術の開発が進むことが期待されます。特に集中治療は、患者の状態が非常に重篤であるため、効果的な治療法の開発が重要とされています。
2. 医療の質の向上:臨床研究グループが実施する臨床研究によって、集中治療における医療の質が向上することが期待されます。例えば、集中治療室における患者の安全性の確保や、感染症予防対策などが研究テーマとなります。
3. 患者への貢献:臨床研究グループが実施する臨床研究に参加することで、集中治療を必要とする患者自身の病気に対する理解が深まり、治療効果の向上につながることが期待されます。
4. 研究者の育成:臨床研究グループに参加することで、研究者の育成につながります。集中治療に携わることで、臨床医や研究者としてのスキルや知識が向上し、将来的には新たな研究や治療法の開発に貢献することが期待されます。
5. 統計解析の改善:集中治療は、症状や治療法の多様性があるため、統計解析が重要とされます。臨床研究グループが実施する臨床研究によって、統計解析の改善が期待されます。

Q: 集中治療領域で臨床研究グループを作る難しさについては?

A: 集中治療領域で臨床研究グループを作るには、以下のような難しさがあります。
1. 患者数の限定性:集中治療室に入院している患者は、その病態が非常に重篤であるため、研究に参加することが難しい場合があります。また、倫理委員会の審査が厳格になるため、研究の許可を得るまでに時間がかかることがあります。
2. 設備や機器の充実度:集中治療室は高度な医療機器や設備が必要であり、研究に必要な機器や設備が十分に揃っていない場合があります。そのため、研究を行うには追加的な投資が必要となる場合があります。
3. 研究者の専門性の必要性:集中治療領域においては、高度な専門知識や技術が必要とされます。研究者は、集中治療における専門性を備えた医師や看護師、臨床工学技士などで構成されるグループであることが望まれます。しかし、そのような研究者を集めることは簡単ではなく、経験豊富な研究者の確保や、彼らの継続的な教育・育成が必要です。
4. 組織的な協力の必要性:集中治療には、様々な医療関係者が関与しています。研究に参加するためには、医療関係者の協力が必要となります。そのため、研究グループとして、組織的な協力関係を築くことが求められます。
5. 資金や人員の確保:集中治療室は医療の最前線であり、常に人員や資金が不足していることがあります。研究グループを作るためには、それらを充実させる必要があります。しかし、資金や人員の確保は、非常に困難な課題であることがあります。

驚きの回答はないけれど、総説とかを書いたりするときの内容チェック(あ、これ書き忘れたとか)に使えそう。
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やっぱり、CTGなんじゃないかな、と思う。

2023年03月09日 | ひとりごと
先週に京都で行われた集中治療医学会総会のオンデマンド配信が昨日から始まった。
僕は、初日の午前中に自分の発表があった以外は妻と京都観光三昧で、他の人の話はまったく聞かなかったので、昨日からオンデマンドを見まくっている。二倍速で、かつ最初の挨拶とか、スライド見たら内容が想像できるところとかはどんどん飛ばすので、1時間の講演でも場合によっては10分ぐらいで見ちゃっている。発表者の方々には申し訳ないのだけど、まあ今風の視聴方法なんじゃないだろうか。
ちなみに、全ての発表がオンデマンドで見られるわけではなく、例えばワークショップは配信されていない(録画自体が行われなかった)。なので僕の発表は見られません。ちょっと悲しい。いや、相当悲しい。

感想を一つ書きたくなった。
臨床研究のやり方的な話は毎年あるけど、今年もいくつかあった。それらを見て思ったことは、「車輪の再発明してない?」だった。僕はRCTをしたことがないので、多施設RCTを実施した方々に偉そうなことを言える立場ではないけれど、それが正直な感想。
ちなみに、RCTはしたことはないけれど、多施設研究はメインの研究者として複数回やったことがある。これとかこれとかこれとか。そしてこれらの経験をもとに、多施設観察研究の指導もした(これ)。なので、少しくらいは意見を言ってもいいかなと。

多施設研究は、研究開始前に入念な準備が必要だし、開始後もずっと大変。モチベーションの維持だったり、コミュニケーションだったり。ましてやRCTとなると更に難易度は増す。過去50年の日本の集中治療の歴史の中でRCTをやろうとした人はたくさんいたけど、多くは研究開始前に挫折し、開始してもNが集まらず途中で中止になり、最終的に数百例を集めてメージャ雑誌に発表された研究となると、数えるほどしかない。
このハードルを超えてやり遂げた人たちは凄い。ただただ尊敬。

でも、海外のRCTはみんなこんな大変な思いをして、選ばれた研究のみが発表されているのか?というと、そんなことはない。何故ならclinical trial group (CTG)があるから。研究に興味のある人がすでに集まっていて、研究経験のある人が何人もいて、施設も研究参加に慣れているから、自分でゼロから研究を行うのに比べてハードルが断然低い。

日本にもCTGという名前のついた活動は複数ある。
JSEPTIC-CTGは、僕も創設に加わった。実際、この研究はJSEPTIC-CTGの研究第一弾で、業績を作り、PubMedで検索可能にすることを一番の目的としていた。でも、僕を含め創設者には多施設RCTを実施する能力もエネルギーもなく、現在のJSEPTIC-CTGは研究初心者の指導が主な活動になっているように思われる。
集中治療医学会のCTGは、自分勝手な解釈だが、僕が書いたこの文章が創設のきっかけの一つだったのではないかと思う。でも、現在の活動内容は研究のendorsementが主で、ANZICSやカナダのような活動はされていないようだ。

オーストラリアから帰国したのが2003年の3月なので、ちょうど20年が経った。「このままオーストラリアにいたら?」と言われたりしたけど、ここで学んだことを日本に還元する義務があるなんて偉そうなことを考えて、帰国を選択した。この20年を振り返ってみると、集中治療医になる人の数は増えたし、集中治療という概念も普及したし、臨床研究をしたいと言う人の数も増えた。もちろん、どれも僕の成果じゃないけれど、とても嬉しい。
ただ、臨床研究をしたいと言う人の数は以前より二桁くらい増えたんじゃないかと思うのだけど、その多くは統計だったりAIだったりreal world data解析だったり、そういう方面に行ってしまっていて、多施設の前向き研究を実際にやろうとする人の数は、肌感覚的にはせいぜい数倍程度じゃないだろうか。

多施設RCTを実施するCTG。
やっぱり日本にもそれが必要なんじゃないかな、と思う。
挫折した人間がこんなことを言うのは申し訳ないのだけど、誰か、作ってくれませんか?
僕には主導するエネルギーはないけれど、お手伝いくらいならできるかもしれないので、よかったらいつでも声かけてください。
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