Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

ARDSに対するPEEPとリクルートメントについてのネットワークメタ解析

2022年06月29日 | 呼吸
Dianti J, Tisminetzky M, Ferreyro BL, et al.
Association of Positive End-Expiratory Pressure and Lung Recruitment Selection Strategies with Mortality in Acute Respiratory Distress Syndrome: A Systematic Review and Network Meta-analysis.
Am J Respir Crit Care Med. 2022 Jun 1;205(11):1300-1310. PMID: 35180042.


なんか最近、"network meta-analysis"という言葉を見ると、条件反射的にムズムズするようになった。
どんな統計手法も良いところと悪いところがあって、そこを理解して使ったり読んだりする必要があることに変わりはないのだけど、ネットワークメタ解析は最近の流行で、かつイイ感じの図や結果が出てくるので、天邪鬼としてはどうしても違和感を持ってしまう。
別にこの文献に対して文句があるわけではありません。ただちょっと言いたくなっただけ。

ちなみに、アブストラクトの最初に、
"Rationale: The most beneficial positive end-expiratory pressure (PEEP) selection strategy in patients with acute respiratory distress syndrome (ARDS) is unknown, and current practice is variable."
と書いてあって、それって四半世紀前にも同じような文章を読んだな、と思い、ちょっと笑ってしまった。

果たして、best PEEPは次の四半世紀で定まるのだろうか?
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敗血症患者にβDグルカンに基づいて真菌治療したら。

2022年06月28日 | 感染
Bloos F, Held J, Kluge S, et al.; SepNet Study Group.
(1 → 3)-β-D-Glucan-guided antifungal therapy in adults with sepsis: the CandiSep randomized clinical trial.
Intensive Care Med. 2022 Jun 16. Epub ahead of print. PMID: 35708758.


βDグルカンは、僕が研修医のころから測定が始まり、日本発信で海外に出た検査(だったと記憶している)。
21世紀初頭から海外でも注目され、日本発信の医療の御多分に洩れず、日本ではちゃんと評価されずに流行し、海外に出てから評価を受けた。だいたい感度特異度共に80%、陽性でも陰性でも5回に1回は間違える、ぐらいの精度。なのでβDグルカンの値に基づいて医療をするとどうなるかは微妙なところ、というのが現状(と理解している)。

そんな中、行われた多施設RCT。そこそこのサンプルサイズで、一定の疾患群で、一定の閾値に基づいて真菌治療を行なっても予後は改善しないことを示した。

この結果からすぐβDグルカンは無意味だという結論には至らないけど、
少なくともβDグルカンに基づいて診療している人(多くの日本のICUはそうではないか?)は、この文献をしっかり吟味する必要があるのでは。
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COVIDにニコチンパッチ?

2022年06月24日 | COVID-19
Labro G, Tubach F, Belin L, et al.; NICOVID-REA Trial Group.
Nicotine patches in patients on mechanical ventilation for severe COVID-19: a randomized, double-blind, placebo-controlled, multicentre trial.
Intensive Care Med. 2022 Jun 9:1–12. Epub ahead of print. PMID: 35676335.


うーむ。
説明があるかと思ってざっと探したけど、なかった。では本気だったのか?
何がって?
死亡率がprimary outcomeなのにNが220だというところだよ。

ビビって統計を確認すると、
"The expected 28-day mortality rate was 35% for the placebo group [27, 28]; to demonstrate a decrease to 20% for those receiving nicotine, for 80% power and one-sided α=0.05, 110 participants per group had to be included."
ニコチンパッチで死亡率が半分近くになる?
そんなことはあり得ないけど、どうしようもない理由があった、という記載がどこかにないかと探したけど、見つけられなかった。

こういう研究は、もうやっちゃいけない。
リーズナブルな予測死亡率を用いるか、adaptiveを採用するか、どちらかにしましょう。
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敗血症性ショック患者における補液制限

2022年06月18日 | 循環
Meyhoff TS, Hjortrup PB, Wetterslev J, et al.; CLASSIC Trial Group.
Restriction of Intravenous Fluid in ICU Patients with Septic Shock.
N Engl J Med. 2022 Jun Epub ahead of print. PMID: 35709019.


この研究の本番トライアル。

さーて。
結果をどう解釈するか。もしくは研究をどう評価するか。難しい。

だいたいのコメントはeditorialにしっかり書いてあるので、そちらを。
それ以外だと、サブ解析で呼吸不全は制限した方が、ICU入室前の補液が少ないと制限しない方が、有意差はないけど死亡率は低い傾向にあることくらいかな。もう一つ追加すれば、 AKIは関係ないこと。AKIは補液が有益な面と有害な面の両方があるので、この結果は納得。

やっぱり、補液の研究は難しい、というのが一番の感想でしょうか。
臨床的には、極端なことはしない(制限しすぎない、補液しすぎない)ことが大事、かな。
当たり前と思うかもしれないけど、結構、極端なことは行われていると思います。
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オンラインでJIPADの話をしました。

2022年06月17日 | JIPAD
先日紹介したセミナー、昨日やりました。
動画がアップされたので、よろしければご覧ください。
3分過ぎからスタート、56分過ぎまで。倍速で見たら27分で終わるけど、ちょっと早口なので倍速だと辛いかも。

いやー、ひっさしぶりにこんなに長く人前でしゃべったわ。
自分的には伝えたいことを伝えきった感はあるのだけど、見て聞いて面白いかは分からない。
あまり質問がなかったので、つまんなかったのかな。

P.S.
何ヵ所か間違ったことを言っています。
・2012年に学会のワーキングループから機能評価委員会の管轄に移行しました。
・SRUはStandardized Resource Useの略です。
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術中の麻酔科医の申し送りは患者予後を悪化させない。

2022年06月12日 | ICU・システム
Meersch M, Weiss R, Küllmar M, et al.
Effect of Intraoperative Handovers of Anesthesia Care on Mortality, Readmission, or Postoperative Complications Among Adults: The HandiCAP Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2022 Jun 4. Epub ahead of print. PMID: 35665794.


申し送りって、以前からずっと興味がある。ICUでは申し送りが行われまくるから。
探してみたら、過去ログもこんなにあった。
集中治療専門医の申し送りの質
胸部外科術後のOP室からICUへの申し送り
慈恵ICU勉強会 190305
術中の麻酔科医の交代と患者予後
1950年代からの脱却
申し送りの未来

この研究では、特に申し送りにルールは作らず、施設にもプロトコルとかはなかったのだけど、予後に影響を与えなかった。
ICUの申し送りはどうだろう?
以前の慈恵にも今の自治にも申し送りにプロトコルはない。それで情報の欠損が起こるかどうかというと、たまに起こる。それが患者予後に影響するかというと、したんじゃないかな?と思うことはある。
これが、ICUと手術室の違いなのか、申し送りの質の施設間差なのか、測定可能なほどの差はないのか、気のせいなのか、は分からない。
どんな申し送りがいいのかずっと考えているけど、今のところ名案もない。

うーん、まとめられなかった。ごめんなさい。
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SAH患者の予後を改善する予防薬についてのネットワークメタ解析

2022年06月11日 | 神経
Dayyani M, Sadeghirad B, Grotta JC, et al.
Prophylactic Therapies for Morbidity and Mortality After Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage: A Systematic Review and Network Meta-Analysis of Randomized Trials.
Stroke. 2022 Jun;53(6):1993-2005. PMID: 35354302.


うーむ。
メタ解析は胡散臭い。もうちょっとちゃんと言えば、結果の解釈には注意が必要。
ネットワークメタ解析はいよいよ胡散臭い。やったことないけど、データを入れれば結果が出るし、なんかかっこいい感じになる。だからいよいよ注意が必要。
その典型例のような文献。
無効だって結論出てませんでしたっけ?と思うような薬も書いてある。
Strokeに載っちゃうんだなー、と少し驚いた。

こんな研究が過去に行われていたんだな、的な情報源として利用しましょう。
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高いICPっていくつ?誰が決めたの?

2022年06月10日 | 神経
Wijdicks EFM.
10 or 15 or 20 or 40 mmHg? What is Increased Intracranial Pressure and Who Said So?
Neurocrit Care. 2022 Jun;36(3):1022-1026. Epub 2022 Feb 9. PMID: 35141861.


50年以上前からの歴史を振り返ったレビュー。
へー、と思いたい方はどうぞ。
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中等症〜重症頭部外傷の管理のレビュー

2022年06月05日 | 神経
Meyfroidt G, Bouzat P, Casaer MP, et al.
Management of moderate to severe traumatic brain injury: an update for the intensivist.
Intensive Care Med. 2022 May 20. Epub ahead of print. PMID: 35595999.


普通のレビュー。何でちょっと読もうかと思ったかというと、血圧管理について確認したかったから。
頭部外傷患者の収縮期血圧の上限が脳外科医により設定され、高率にニカルジピンの持続投与が行われる。昨日と同様、自治でも慈恵でもやっているので、もしかしたら日本中でやっているかもしれない。

これ、読んだことがない。
どうしてするのか聞いたことが何度かあるが、ICUの医者に聞くと「脳外科医がそうしろと言ったから」としか答えないし、脳外科医に聞くと「なんでそんなことを聞くんだ?」と言われてしまう。

なので、こういうレビューとかを見るたびに確認するのだけど、今回もやっぱり高血圧については記載がない。
唯一、
"On the other hand, preventing excessive rises in CPP is important as well, as they could lead to increased perilesional edema. In TBI patients with intact cerebrovascular autoregulation, increases and decreases in CPP can drive autoregulatory vasoconstriction and vasodilatation, respectively."
(一方、CPPの過度の上昇を防ぐことも重要であり、それは周辺浮腫の増大を招く可能性があるからである。脳血管の自動調節機能が損なわれていないTBI患者では、CPPの増加および減少がそれぞれ自動調節による血管収縮および血管拡張を促進する可能性がある。)
という記載だけ。

でも、これがニカルジピンを使用する理由なら、ターゲットはMAPでないといけない。「この患者さんはICP測定していないけどXmmHgくらいだろうと想定されるので、CPPをY~Zに保つためにMAPはこの範囲」と言う脳外科医がいたら会ってみたい。でも、みんなターゲットは収縮期血圧。

不思議だ。
それに盲目的に従えるICUの医者はもっと不思議だ。
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COVID患者のCMV再活性化

2022年06月04日 | COVID-19
Gatto I, Biagioni E, Coloretti I, et al.; Modena COVID-19 Working Group.
Cytomegalovirus blood reactivation in COVID-19 critically ill patients: risk factors and impact on mortality.
Intensive Care Med. 2022 May 18:1–8. Epub ahead of print. PMID: 35583676.


イタリアの3つのICUでCOVIDによるARDSになった431例。入室時と週1~2回、CMV-DNA血症の有無を検査。その結果、20%の症例でCMVの再活性化が起こっていて、重症度が高い症例で多かった。死亡率は明らかにCMV再活性化群で高かったが(67% vs. 24%)、多変量解析では有意差はなかった(p=0.5)。

COVIDに限らず、なんか患者さんの治りが悪かったり炎症反応が上がったりすると誰かがCMV抗原とかを測り、だいたい陽性で、感染症科がコンサルトされ、まず間違いなくガンシクロビルが開始され、それで状況がスパッと良くなることはまずなく、腎障害が起こったり白血球や血小板が低下してきたりして、薬をどうしよう、なんていう話をする。
慈恵でもよくやっていたし自治でもよくやっているので、日本中でやっているのではないかと想像する。

でもこれ、相当根拠が乏しい。
ICU患者の免疫不全によるCMV再活性化が治療対象なのか、誰も知らない。
根拠が乏しくて副作用が強くてコストも高いことを、みんながやっている状況、そろそろ何とかならないだろうか。

それとも、僕が知らないだけで、もう有効性が示されているのか?
僕が知っているのは、これこれだけなのだけど。
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