Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

Immortal Time Biasによる書き直し

2021年01月30日 | EBM関連
1月19日にJAMA Internal Medicineにonline publicationされた一連の記事。

Notice of Retraction and Replacement. Stefan et al. Association of antibiotic treatment with outcomes in patients hospitalized for an asthma exacerbation treated with systemic corticosteroids. JAMA Intern Med. 2019;179(3):333-340
(これだけフリーで読める)

Antibiotic Treatment for Inpatient Asthma Exacerbations
What Have We Learned?


Possible Immortal Time Bias in Study of Antibiotic Treatment and Outcomes in Patients Hospitalized for Asthma

Impact factorが18点越えの超メジャー内科雑誌でも2年前に間違えた。
みなさん、研究するとき、文献読むときは気をつけましょう。

僕は、自信ないです。
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アメリカのAKIの発生率の推移

2021年01月29日 | 腎臓
昨日の文献とちょっと似ている話。

Sohaney R, Yin H, Shahinian V, et al.
Trends in the Incidence of Acute Kidney Injury in a National Cohort of US Veterans.
Am J Kidney Dis. 2021 Feb;77(2):300-302. PMID: 32768633.


アメリカのVeterans Health Administrationのデータベースを使用し、2008年から2017年の入院患者(合計で400万人以上)のAKIのコーディング、クレアチニンから算出したAKIの発生頻度などを調査した。その結果、AKIとコーディングされた人は約2.5倍になっているが、AKIの発生頻度は変わらなかった。

KDIGOのAKIガイドラインが発表されたのが2012年、RIFLEの診断基準は2004年。その影響もあり、AKIはとても有名になった。なので診断コードでも選ばれるようになった。でも入院患者のクレアチニンは下がらない。

診断基準が有名になっても、みんながAKIという言葉を日常診療で使うようになっても、予後は改善しない。
驚きもあるし、当たり前だとも思う。

AKIを他の病気や病態に置き換えたら、どうなるんだろう。
すぐに思いついたのはこれ。知らない方が予後が良かったり、しないだろうか?

あとは診断基準で有名どころと言えば敗血症とARDS。
予後って改善しているんだっけ?
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電子カルテでAKIアラートを出すと予後は改善するか?

2021年01月28日 | 腎臓
最近読んだ文献の中ではダントツ1番で面白かったかも。

Wilson FP, Martin M, Yamamoto Y, et al.
Electronic health record alerts for acute kidney injury: multicenter, randomized clinical trial.
BMJ. 2021 Jan 18;372:m4786. PMID: 33461986.


アメリカの6つの病院で行われた多施設RCT。入院患者さんがAKIになったら、電子カルテでその患者さんにログインした時に、ポップアップで「AKIですよ、こんな対応しませんか?」という表示を出すか出さないかで比較、N=6030。補液をしたり、クレアチニンの再検や検尿をしたり、NSAIDを中止したりと、ポップアップ群の方が介入は多く行われたが、アウトカム(14日以内のAKIの進行・透析導入・死亡)の発生頻度は同程度(コントロール群で20.9%、ポップアップ群で21.3%)。2つの病院ではポップアップ群の死亡率が有意に高かった。

これまでbefore-after研究は行われていて、AKIの予後が改善したという結果で、それを踏まえてか、アメリカやイギリスでは多くの病院でAKIアラートが組み込まれているらしい。でもRCTをしてみたらこんな結果で、さてどうする?という話。

どうして効果がなかったのか、一部の施設で死亡率が上昇したのか、いくつか考察はされているけど、まあ本当の理由は分からないよね。単にAKIの予後は改善できないということなのか、アラートの出し方に問題があるのか、アラートが出なくてもAKIと気がつくようになったのか?

電子カルテのアラート機能って、すでにいろいろある。
今後はビッグデータを用いた予測アラートなんてのも始まるかもしれない。
でも、死亡率を高くするかもなんて言われると、相当難しい話になる。
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COVIDに対する早期抗凝固の予後への影響

2021年01月26日 | COVID-19
今日のアナルズ。

Al-Samkari H, Gupta S, Leaf RK, et al.
Thrombosis, Bleeding, and the Observational Effect of Early Therapeutic Anticoagulation on Survival in Critically Ill Patients With COVID-19.
Ann Intern Med. 2021 Jan 26. Epub ahead of print. PMID: 33493012.


多施設観察研究、3239例。11.9%がICU入室2日以内に治療量の抗凝固を受け、その28日死亡のhazard riskは1.12だった。

テレビでもヘパリンという単語は耳にするが、まだ観察研究のレベル。
PubMedで"COVID, heparin"と入力してRCTでフィルターをかけると4つしか検索されず、そのうちの3つはtrial designで、残りの1つはN=29のphase II。

先走らないようにしましょう。
あ、あくまで個人の意見ですが。
いや、スタンダードな意見かな。
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COVIDのVAP

2021年01月25日 | COVID-19
Maes M, Higginson E, Pereira-Dias J, et al.
Ventilator-associated pneumonia in critically ill patients with COVID-19.
Crit Care. 2021 Jan 11;25(1):25. PMID: 33430915.


1施設の後ろ向きだし、全て言われていることだけど、他の肺炎と比較しているし、確認になったと思う。

MVを要するCOVIDでは、
・VAPの頻度が高い
・起因菌は普通
・アスペルがたまにいる
・ヘルペス族ウイルスも珍しくない

だね。
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COVIDマメ情報:骨髄移植と縦隔気腫

2021年01月24日 | COVID-19
Roedl K, Heidenreich S, Pfefferle S, et al.
Viral Dynamics of SARS-CoV-2 in Critically Ill Allogeneic Hematopoietic Stem Cell Transplant Recipients and Immunocompetent Patients with COVID-19.
Am J Respir Crit Care Med. 2021 Jan 15;203(2):242-245. PMID: 33253054.


Mart MF, Norfolk SG, Flemmons LN, et al.
Pneumomediastinum in Acute Respiratory Distress Syndrome from COVID-19.
Am J Respir Crit Care Med. 2021 Jan 15;203(2):237-238. PMID: 33448891.


・骨髄移植患者ではウイルスの排出が長期間続く。
・気胸を伴わない縦隔気腫の頻度は低くない。
・どちらの病態も死亡率はとても高い。

どちらの報告も症例数は少ないけど、自分の経験と一致するし、真実味は高そう。
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Basic strategy

2021年01月23日 | ひとりごと
Black jackというトランプゲーム、というかカジノゲームがある。
親の手札と自分の手札を見比べて、カードをもう1枚もらうかどうか自分で決めるのだけど、その判断方法はもう確立されていて、それがベーシックストラテジー(詳細は例えばこちら)。
もしCOVIDが落ち着いて、海外旅行ができるようになって、カジノに行って、ブラックジャックをしようと思うなら、この表は丸暗記した方がいい。
理由は、この表と違うことをしたら必ず負ける確率が高くなるから。

これを知らない人はもちろん違うことをするし、
知っていても、なんとなく違うことをしたくなるのも分かる。さっきはこれで負けたから今度はこうしようとか。
でもダメ。
実際はカジノのゲームは全て負けるようにできていて、ベーシックストラテジーを使ってもわずかに負けるのだけど、少しでも負けを減らして長く遊びたい、もしくは偶然勝つ確率を上げたいのなら、このスタンダードを貫かないといけない。

スタンダードから外れるというのは、そういうことだと思う。
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重症COVIDとトシリズマブ:新しいRCT

2021年01月22日 | COVID-19
Veiga VC, Prats JAGG, et al. ; Coalition covid-19 Brazil VI Investigators.
Effect of tocilizumab on clinical outcomes at 15 days in patients with severe or critical coronavirus disease 2019: randomised controlled trial.
BMJ. 2021 Jan 20;372:n84. doi: 10.1136/bmj.n84. PMID: 33472855.


死亡率増加で途中で中止。

ブラジルだし、open labelだし、early terminationでNが少ないし、死亡率はprimary outcomeじゃないし。
とは言え、結果は結果。

現状で利用可能なエビデンスに基づいた薬剤選択は、
・デキサメサゾンは使う。
・研究とは大きく異なる量や期間での投与はしない。
・レムデシビルは使わない。
・トシリズマブも使わない。
が、スタンダードな判断だと思う。

全ての患者さんにこうするべき、これ以外は間違い、とは言わない。
同じ根拠を見ても人それぞれ判断は違うんだから。
でも、これ以外の判断をしたら、それはスタンダードな考え方からは外れるということだ、という認識は必要だと思う。
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ポータブルMRI

2021年01月21日 | 神経
Sheth KN, Mazurek MH, Yuen MM, et al.
Assessment of Brain Injury Using Portable, Low-Field Magnetic Resonance Imaging at the Bedside of Critically Ill Patients.
JAMA Neurol. 2020 Sep 8 Epub ahead of print. PMID: 32897296.


おお。
画質は20年くらい前のMRIって感じだけど。
ICU患者が起きない、頭に何か怒っているのか?を知りたい時には使えそうなレベル。

商品のサイトはこちら
FDAは通過済み。レンタル料は約60万円/月。
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くも膜下出血の超急性期にトラネキサム酸

2021年01月20日 | 神経
一昨日に続きまたトラネキサム酸。

Post R, Germans MR, Tjerkstra MA, et al.; ULTRA Investigators.
Ultra-early tranexamic acid after subarachnoid haemorrhage (ULTRA): a randomised controlled trial.
Lancet. 2021 Jan 9;397(10269):112-118. PMID: 33357465.


多施設オープンラベルRCT、オランダの24病院、955例。CTで診断したら速攻でトラネキサム酸投与(中央値で1.5時間)したら、再出血は少し減った(10% vs. 14%、有意差なし)が、6ヶ月後のmRSは改善せず(どちらかというと悪化)。

たしかこの文献を読んでからだったと思うのだけど、救命センターにいた時はよくIVしていた。勤務場所がICUになってからも、救急外来からOP前にICUに来ると、何度かそっとIVした記憶がある。
ふっ、若かったな、あの頃は。

トラネキサム酸の有効性が示唆されていて、ICU的に関係があって、かつ大きめのRCTがある病態:
・くも膜下出血
・頭部外傷
・外傷一般
・脳出血
・心臓外科
・産科出血
・消化管出血
(他にもあるかも?)

これら全てについて、有効性の有無と程度とその根拠のレベルが即答できる人って、いたらスゴイ。
悪化する可能性がある病態が含まれてしまうと、「安いし悪いことはしないなら使っとけばいいんじゃねーの?」とは言いにくい。
誰かまとめてくれたらいいのに。
緑雑誌とか、JICとか、INTENSIVISTとか。
どんどん大きなRCTが発表されるから、流行が少し鎮静化してからの方がいいかもしれないけど。
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