Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

ESICM2022

2022年10月28日 | EBM関連
花の都で行われた今年のESICM
JAMAとNEJMから送られてきたon-line pubのリストをまとめておきます。

Bernard SA, Bray JE, Smith K, et al.; EXACT Investigators.
Effect of Lower vs Higher Oxygen Saturation Targets on Survival to Hospital Discharge Among Patients Resuscitated After Out-of-Hospital Cardiac Arrest: The EXACT Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2022 Oct 26. Epub ahead of print. PMID: 36286192.


Fernando SM, Scott M, Talarico R, et al.
Association of Extracorporeal Membrane Oxygenation With New Mental Health Diagnoses in Adult Survivors of Critical Illness.
JAMA. 2022 Oct 26. Epub ahead of print. PMID: 36286084.


SuDDICU Investigators for the Australian and New Zealand Intensive Care Society Clinical Trials Group, Myburgh JA, Seppelt IM, Goodman F, et al.
Effect of Selective Decontamination of the Digestive Tract on Hospital Mortality in Critically Ill Patients Receiving Mechanical Ventilation: A Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2022 Oct 26. Epub ahead of print. PMID: 36286097.


Semler MW, Casey JD, Lloyd BD, et al.; Pragmatic Critical Care Research Group.
Oxygen-Saturation Targets for Critically Ill Adults Receiving Mechanical Ventilation.
N Engl J Med. 2022 Oct 24. Epub ahead of print. PMID: 36278971.


Thille AW, Gacouin A, Coudroy R, et al.; REVA Research Network.
Spontaneous-Breathing Trials with Pressure-Support Ventilation or a T-Piece.
N Engl J Med. 2022 Oct 26 Epub ahead of print. PMID: 36286317.


TEAM Study Investigators and the ANZICS Clinical Trials Group, Hodgson CL, Bailey M, Bellomo R, et al.
Early Active Mobilization during Mechanical Ventilation in the ICU.
N Engl J Med. 2022 Oct 26. Epub ahead of print. PMID: 36286256.


Andersen-Ranberg NC, Poulsen LM, Perner A, et al.; AID-ICU Trial Group.
Haloperidol for the Treatment of Delirium in ICU Patients.
N Engl J Med. 2022 Oct 26. Epub ahead of print. PMID: 36286254.


ふー。
コピペするだけで疲れたよ。

沢山あって読めないので、とりあえずconclusionだけ見たら、ECMOの観察研究以外全部に"did not"って書いてあった。でも、「だからICUでRCTやっても無駄なんだよ」なんて思っちゃダメですよ。
・対象を変えたら有効が示されるかもしれない
・Nを増やしたら有効性が示されるかもしれない
・一つ一つ調べていくことが医療の進歩につながる
・無駄な医療を提供する必要がなくなって、患者さんも医療者もメリットがある
と考えましょう。

さて、週末にでもじっくり読みましょうかね。
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医師届出票の「従事する診療科名等」の欄に「集中治療科」がついに追加されました。

2022年10月26日 | ICU・システム
学会からメールが来て知りました。
『 新型コロナウイルス感染症拡大下において、集中治療に従事する医師の重要性が認識される中、地域における集中治療提供体制を適切に把握するため、「従事する診療科名等」の欄について、「集中治療科」を追加する。』

ついに、です。
毎回こんなことしてましたが、ついに不要になりました。

今年は、
JIPADがICU加算の一部に記載されたし、(P)ICUを舞台としたドラマも始まったし、
集中治療という専門分野にとっては良い年ですね。
きっかけはコロナだけど、みんなの頑張りが報われたということでしょう。

でも、やっと認知されてきたというだけで、実際の普及はまだまだ。
若者よ、よろしく頼む。
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心停止蘇生後の血圧と酸素化のターゲット

2022年10月22日 | 循環
Kjaergaard J, Møller JE, Schmidt H, et al.
Blood-Pressure Targets in Comatose Survivors of Cardiac Arrest.
N Engl J Med. 2022 Oct 20;387(16):1456-1466. PMID: 36027564.


Schmidt H, Kjaergaard J, Hassager C, et al.
Oxygen Targets in Comatose Survivors of Cardiac Arrest.
N Engl J Med. 2022 Oct 20;387(16):1467-1476. PMID: 36027567.


On-line publicationは2ヶ月近く前だし、結果は見れば分かるので。

読んでの一番の感想は、Nが小さいこと(789例)。以前の研究で死亡率が33%だったので、介入によって38%が28%になると仮定してNを算出したのだそうだけど、それってちょっと無理があるのでは。
血圧は低い方がいい、酸素は少ない方がいい、という仮説で、結果はどちらも34% vs. 32%と、方向性としては予定通りだけど有意差なしという結果。それってNが大きかったらどうなったの?と素朴に思う。

Editorialの最後に、
"For oxygen, we may be closer to an answer, since a trial testing restrictive versus liberal oxygen therapy in 40,000 participants in ICUs is well under way. This megatrial has a dedicated subpopulation of approximately 6000 to 7000 participants with hypoxic–ischemic brain injury after cardiac arrest and is likely to provide results that will define future practice."
と書いてある。
今後は、Nを固定しないか、Nがめっちゃ大きいか、どちらかのスタイルに移行していくんでしょう。

時代の移り変わりを意識させる、そういう研究。
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ICUにおける機械学習予測モデルの臨床的有用性

2022年10月21日 | AI・機械学習
今、僕がもっとも興味のあることにドンピシャリの文献で、熟読してしまった。
読んでいて、色々考えた。

Eini-Porat B, Amir O, Eytan D, Shalit U.
Tell me something interesting: Clinical utility of machine learning prediction models in the ICU.
J Biomed Inform. 2022 Aug;132:104107. Epub 2022 Jun 7. PMID: 35688332.


3つの病院のICU/PICUで働く医療従事者(医者9名、看護師4名、経験年数は1から44年)に、4つの仮の症例とバイタルサインの推移を見せながら、40分から100分(!)かけてインタビューした。

僕なりにまとめると、医療者がAIによる予測に求めていることは以下:
・値そのものよりもトレンドが知りたい
・良くなる確率よりも悪化する可能性の方が重要
・予測のタイムスケール:1-3日後の状況(治療方針に関連)と1時間以内の急変
・個人の患者の予測だけでなく、ICU全体の優先順位が知りたい
・機械が増えると画面が増えてアラームが増えるから、その分、価値のある情報、つまり自分が知らないことを教えて欲しい
・基準に基づいてアラートを出すよりも、持続的な予測を表示した方がいいかもしれない

こうやって書くと当たり前のことみたいに見えるが、世間でいっぱい行われている予測モデルについての研究がこういう情報、つまりICUの医療従事者が求めている情報にマッチしているかというと、全然そんなことはない。

AIに限らず、ユーザーが求めていることの調査って重要だ。
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2型糖尿病患者の血糖コントロール

2022年10月20日 | その他
Poole AP, Finnis ME, Anstey J, et al.; LUCID Study Investigators and the Australian and New Zealand Intensive Care Society Clinical Trials Group (ANZICS CTG).
The Effect of a Liberal Approach to Glucose Control in Critically Ill Patients with Type 2 Diabetes: A Multicenter, Parallel-Group, Open-Label Randomized Clinical Trial.
Am J Respir Crit Care Med. 2022 Oct 1;206(7):874-882. PMID: 35608484.


ANZICS-CTGのPhase IIb。DM患者では血糖のターゲットが高い方がいいという観察研究がいくつかあり、それを検証するためのphase III RCTの前段階として、低血糖の発生をprimary outcomeとしたRCTをやった。血糖ターゲット:180-252 vs. 108-180 mg/dl、N=419。その結果、低血糖は高いターゲットの方が少なかったが、死亡率が高くなった(29.5% vs. 24.9%, p=0.29)。

興味深い点が複数。
1:ここでも観察研究に基づく仮説が裏切られた。低血糖は悪い、DMでは高血糖でも良い、その両方。残念。
2:ANZICSともなると呼吸とは何の関係もない血糖でAJRCCMに乗りますか。さすがです。
3:Primary outcomeは予定通り、でも死亡率が高くなった、でも有意差はない。さて、ANZICSは次をどうするんだろう。文献内にはphase IIIについての記載は無いように思う。他にも研究はたくさんあって暇では無いから、少なくとも優先はされないんだろうな、きっと。

ベルギーの1施設RCTから始まった血糖論争。21年の時を経て、そろそろ終結かな?
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機械による補助は早期に導入するべきか?

2022年10月19日 | EBM関連
Tran A, Fernando SM, Rochwerg B, et al.
Prognostic factors associated with mortality among patients receiving venovenous extracorporeal membrane oxygenation for COVID-19: a systematic review and meta-analysis.
Lancet Respir Med. 2022 Oct 10 Epub ahead of print. PMID: 36228638.

COVIDに対するECMOについてのメタ解析。42の観察研究(N=17449)。予後と関連のある因子は、高齢、男性、長いMV期間、高いPCO2、高いdriving pressure、そしてECMO症例が少ない施設。結論の一つは、"The prognostic factors identified highlight ... the effect of injurious lung ventilation"。

Castro I, Relvas M, Gameiro J, et al.
The impact of early versus late initiation of renal replacement therapy in critically ill patients with acute kidney injury on mortality and clinical outcomes: a meta-analysis.
Clin Kidney J. 2022 May 12;15(10):1932-1945. PMID: 36158157.

AKIに対するRRTの開始タイミングについての13のRCTのメタ解析。早期のRRT導入は28日死亡率には効果がなく(RR=1.00)、低血圧と感染が増えた。

メッセージは伝わっただろうか。
どちらもメタ解析だけど、片方は観察研究、もう片方はRCTのメタ解析。当然、RCTがたくさん行われる前には観察研究がたくさん行われ(僕もこんな研究してた)、早期のRRT導入は有効である可能性が示唆され、RCTが複数行われて、否定されている。
つまりは言いたいことはいつも同じで、こういうこととかこういうことです。
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ICUにおけるフレイルは、測定し、解釈し、考慮しなければならない!

2022年10月18日 | 神経
Jung C, Guidet B, Flaatten H; VIP study group.
Frailty in intensive care medicine must be measured, interpreted and taken into account!
Intensive Care Med. 2022 Oct 7:1–4. Epub ahead of print. PMID: 36205730.


2ページちょっとのレビュー。Frailtyの測定についての研究がたくさん紹介されている。

これまでも、
ICU患者のfrailtyのスクリーニング
Frailtyと予後の関連
Frailtyと予後についてのメタ解析
と紹介してきたけど、ついにビックリマークが付くくらいの状況になってきた。

ただ、患者さんは入室時に会話可能でないことが多いから家族に聞かないといけないけど、まだ面会がね。。。
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ICU患者家族にはどんどん面会に来てもらった方がいい。

2022年10月12日 | ICU・システム
Wu Y, Wang G, Zhang Z, et al.
Efficacy and safety of unrestricted visiting policy for critically ill patients: a meta-analysis.
Crit Care. 2022 Sep 5;26(1):267. PMID: 36064613.

面会ポリシーに制限のある群とない群を比較したRCTもしくはpseudo-RCT 11研究、N=3741のメタ解析。面会の制限をなくすと譫妄が減って、ICU在室日数が短くなって、感染症は増えなかった。

Moss SJ, Rosgen BK, Lucini F, et al.
Psychiatric Outcomes in ICU Patients With Family Visitation: A Population-Based Retrospective Cohort Study.
Chest. 2022 Sep;162(3):578-587. PMID: 35271840.

カナダの14の病院のICUに入院した14344例についての後向き研究。ICU在室中に家族の面会があった患者さんは、退院後1年間の精神疾患の発生頻度が21%減った。

メタ解析と観察研究なので根拠の強さはそれほどでもないが、少なくとも面会が有害ということはなさそうだ。
日本の多くの病院ではまだ面会禁止が続いていそう。外国ではどうなんだろうか。

さすがにそろそろ、解禁しませんか?
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肺内を泳ぐマイクロロボットが肺炎を治療

2022年10月11日 | 勝手に紹介
肺内を泳ぐマイクロロボットが肺炎を治療

元文献はこちら。
Zhang F, Zhuang J, Li Z, et al.
Nanoparticle-modified microrobots for in vivo antibiotic delivery to treat acute bacterial pneumonia.
Nat Mater. 2022 Sep 22. Epub ahead of print. PMID: 36138145.


おお。。。
挿管チューブから人工の藻を撒く時代が来るかも??
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Update on Tigris Clinical Trial

2022年10月05日 | 感染
Spectral Medical Provides Update on Tigris Clinical Trial

ちなみに前回はこちら

(DeepLによる和訳そのまま)
Tigris試験の主な最新情報
・Tigris試験の登録患者数150名のうち、現在までに44名が登録。
・10月中に新たに3つの臨床試験施設が加わり、合計17施設となる見込み。
・2023年第1四半期までに、合計20の臨床試験施設を見込んでいる。
・現在までの死亡率速報値は、引き続き予想を上回っている。

つまり2ヶ月半で4例ということか。
そもそも150例で有効性が証明されるとはとても思えないのに、このスピードはなかなかですな。
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