Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

”Nが足りない問題”には陥らないようにしよう。

2022年11月27日 | EBM関連
Rein L, Calero K, Shah R, et al.
Randomized Phase 3 Trial of Ruxolitinib for COVID-19-Associated Acute Respiratory Distress Syndrome.
Crit Care Med. 2022 Dec 1;50(12):1701-1713. PMID: 36226977.


Ruxolitinib(JAK阻害剤)をステロイドと併用(90%)すると、28日死亡率は、コントロール 70%に対し、Ruxolitinib 15mg投与群で51%(片側p=0.029)、Ruxolitinib 5mg投与群で53%(片側p=0.028)と有意差なし。
コントロール群の死亡率が高すぎるのでは?という疑問はあるものの。
オッズ比は0.46と0.42ですよ。あれまー。

全ての問題は、Nが211しかないこと。
Editorialにも、"Underpowered clinical trials leave us with a sour taste."と書いてある。ほんと、サワー。

若いICU医の皆様へ、隠居した年寄りからお願いです。
多施設RCT、やってください。
ただし、”Nが足りない問題”には陥らないようにしてください。
そのためには、仲間が必要です。
「こんな研究やろうと思うんだけど、一緒にやらない?」だと、あまり数は集まりません。
そうではなくて、まず、多施設RCTをやりたい人たちで集まってください。
すでに日本でもCTGという名前のついた活動が行われているし、国際的なCTGに参加するのもいいでしょう。ただ、継続的に1つのグループが研究を行なっていくという活動ではなかったり、「これをやれ」と言われるだけだったりしてしまうかもしれない。
それよりも、仲間で集まって、「何やる?」って話をする方が楽しいかもよ。

昔やった、足掻き。
僕にはエネルギーが足りなかった。
多施設ランダム化比較試験の施行のための臨床研究グループ設立への提言. 日集中医誌.2005;12:156~158.
JSEPTIC-CTG の進むべき道
CRRT多施設後ろ向き観察研究の総括 (の一歩手前)

エネルギーがあって性格の良い人、いない?
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女性医師の方がCVも上手い。

2022年11月26日 | その他
Adrian M, Borgquist O, Kröger T, et al.
Mechanical complications after central venous catheterisation in the ultrasound-guided era: a prospective multicentre cohort study.
Br J Anaesth. 2022 Dec;129(6):843-850. PMID: 36280461.


Major mechanical complicationの発生頻度は、Male operator genderのオッズ比が3.33 (p=0.003)。
Limited operator experienceと同じくらい(OR 3.11)。
男どもよ、もっと丁寧にやろうぜ。

医者の男女比較についての過去ログ。
日本における男性外科医と女性外科医の手術経験格差
集中治療医学会の理事会における性別の分布
COVIDが女性による論文投稿に与えた影響
ケースレポートの採用率の性差
集中治療医の性差
女性医師がCPRのリーダーをすると、
集中治療女子
外科医の性別と予後
蘇生チームの性差
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βラクタムのTDMは有効か?無効か?

2022年11月25日 | 感染
Pai Mangalore R, Ashok A, Lee SJ, et al.
Beta-Lactam Antibiotic Therapeutic Drug Monitoring in Critically Ill Patients: A Systematic Review and Meta-Analysis.
Clin Infect Dis. 2022 Nov 14;75(10):1848-1860. PMID: 35731853.


11 RCTs、N=1463のメタ解析。
"No associations with mortality and length of stay were found."
と書いてはあるが、RRは0.85 (0.69-1.04)で惜しい。
それぞれの研究のNは大きくても200程度。”Larger, prospective, randomized trials are required"です。

こんなのも出てた。

Ewoldt TMJ, Abdulla A, Rietdijk WJR, et al.
Model-informed precision dosing of beta-lactam antibiotics and ciprofloxacin in critically ill patients: a multicentre randomised clinical trial. Intensive Care Med. 2022 Nov 9:1–12. Epub ahead of print. PMID: 36350354.


難しいことはせず、測って低かったら増やす、くらいでいいのかも。
それ以前に、簡単に測れないとどうしようもないのだけど。
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不死鳥か亡霊か

2022年11月24日 | COVID-19
不死鳥か亡霊か~科学と感情のはざまで
志馬 伸朗
日集中医誌 2022;29:606-7.


「昭和の終わりに潰えていたはず、、、この治療法が最後の手段として令和の現在もよみがえる。不死鳥か,あるいは亡霊のように。」
志馬先生、かっこよすぎ。

パルスとか投与期間の延長とかやっちゃってた方々。
この文章、10回読みましょう。
だれでも失敗や間違いはする。それを未来につなげられるかどうかが大事。
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COVID関連ARDSの呼吸メカニクスについてのシステマティックレビュー

2022年11月17日 | COVID-19
Reddy MP, Subramaniam A, Chua C, et al.
Respiratory system mechanics, gas exchange, and outcomes in mechanically ventilated patients with COVID-19-related acute respiratory distress syndrome: a systematic review and meta-analysis.
Lancet Respir Med. 2022 Nov 3. Epub ahead of print. PMID: 36335956.


37研究、N=11356。
「COVIDによるARDSには二つのphenotypeが存在し、時期によって管理方法を変える」という話があったが、別に二峰性じゃありませんけど?という結果。

この文献のeditorialより抜粋(DeepLによる和訳)。
"We believe that the ventilatory management of COVID-19-related ARDS should not be approached any differently from that of ARDS related to other causes."
「COVID-19関連ARDSの人工呼吸管理は、他の原因によるARDSと何ら変わるところはないと考える。」

"We should always take a cautious approach when interpreting small case series, and we should change practice only on the basis of firm evidence."
「小規模なケースシリーズを解釈する際には常に慎重なアプローチを取るべきであり、確固たる証拠に基づいてのみ診療を変えるべきである。」

普通の話なのだけど、目の前に患者さんがいると普通のことができなくなる、不思議。
善意による判断なのだけど、ね。
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気管切開のタイミングに関するシステマティックレビューのベイズ解析

2022年11月16日 | 呼吸
Quinn L, Veenith T, Bion J, et al.
Bayesian analysis of a systematic review of early versus late tracheostomy in ICU patients.
Br J Anaesth. 2022 Nov;129(5):693-702. PMID: 36163077.


おや?
ベイズがどうこうの前に、普通に有意に早期の方が良くなっている。
なんか、思っていたのと違う。多分、僕の頭の中ではこの研究でケリがついていたのかな。実際、このsystematic reviewでも、Nが一番大きい研究なのだけど。

コロナのせいかもしれないが、どうもここ1〜2年くらい、早期気切がいいよという文献をよく見かけるようになった気がする。
振り子現象がここにも。

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看護師を定着させるためにICUの医療従事者が意識すべき10のポイント

2022年11月15日 | ICU・システム
Vincent JL, Boulanger C, van Mol MMC, et al.
Ten areas for ICU clinicians to be aware of to help retain nurses in the ICU.
Crit Care. 2022 Oct 13;26(1):310. PMID: 36229859.


すごいタイトル。
しかも著者はあのVincent先生。

どこの国も、同じ問題を抱えているらしい。
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急性期虚血性脳卒中に対する血管内血栓除去術後の血圧管理

2022年11月14日 | 神経
Yang P, Song L, Zhang Y, et al.; ENCHANTED2/MT Investigators.
Intensive blood pressure control after endovascular thrombectomy for acute ischaemic stroke (ENCHANTED2/MT): a multicentre, open-label, blinded-endpoint, randomised controlled trial.
Lancet. 2022 Nov 5;400(10363):1585-1596. PMID: 36341753.


脳梗塞に対する血栓除去後から72時間、収縮期血圧のターゲットを120mmHg以下にするか、140-180にするかでRCT、中国の44施設、N=821。血圧を下げた群の方が神経予後が悪かった。

・ICUにおける降圧は、高血圧緊急症などごく一部の病態を除き、治療ではなく予防として行われる。
・ニカルジピンは日本で発明され、血管炎くらいしかほぼ副作用がない。
この二つの事実の結果として、日本のICUでは予防目的でニカルジピンが多用されている。

ニカルジピンがなかったら、と想像してもらえばわかると思うが、普通、降圧って結構面倒。しかも予防目的の降圧の根拠はほぼないので、日本の外(アジアの外?)に行ったら、こんなにICUで降圧は行われていないはず。少なくとも文献の数は、降圧は昇圧の1000分の1くらいじゃないだろうか。

「外科医が〇〇以下でと言った」だけの理由で行われる降圧。すごくカッコ悪い。
なんとかならんかね、ホント。
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ICU重症度スコア

2022年11月13日 | ICU・システム
Quintairos A, Pilcher D, Salluh JIF.
ICU scoring systems.
Intensive Care Med. 2022 Oct 31:1–3. Epub ahead of print. PMID: 36315260.


重症度スコアの歴史や意義を簡単にまとめて、将来について考えている短めの文章。

APACHE IIが1985年、
APACHE IIIが1991年、
APACHE IVが2005年。
SAPSもMPMも、もう15年以上新しくなっていない。

でも日本は大丈夫。
だって、JRODがあるから!
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重症患者における持続的経腸栄養と間欠的経腸栄養の比較

2022年11月12日 | 消化器・血液
Heffernan AJ, Talekar C, Henain M, et al.
Comparison of continuous versus intermittent enteral feeding in critically ill patients: a systematic review and meta-analysis.
Crit Care. 2022 Oct 25;26(1):325. PMID: 36284334.


14研究のメタ解析。持続投与で便秘が増える以外は二群に差はなし。

しばらーく前に自分で調べた時、ほぼ情報が得られなくて諦めた話題。思いのほか研究が行われていてビックリ。ただ、どの研究もNが小さい。100を超えているのはこれだけ

研究ネタとしては、まだまだアリじゃないだろうか。簡単にできそうだし、死亡とかじゃなくて、もっとマイルドなアウトカムを設定しても、臨床的には関心を持たれそう。
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