Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

セプシスに補液は必要か

2012年01月30日 | 循環
アフリカの乳児のセプシスに補液をすると死亡率が上がった、
という研究は皆さんご存知の通り。

Maitland K, Kiguli S, Opoka RO, et al.; FEAST Trial Group.
Mortality after fluid bolus in African children with severe infection.
N Engl J Med. 2011 Jun30;364(26):2483-95. PubMed PMID: 21615299.

JSEPTICのジャーナルクラブにもあります。
http://www.jseptic.com/journal/sepsis.html
更新日: 2011/08/08
小児感染症と補液

じゃあ、先進国の大人には補液は有害/有益、どっち?
という疑問は、この文献を読んで誰もが思ったこと。
でも、あまり議論されることなく、変わらずにやってきている気がする。

で、今日紹介の文献は、この点についての批判をまとめたviewpoint。

Hilton AK, Bellomo R.
A critique of fluid bolus resuscitation in severe sepsis.
Crit Care. 2012 Jan 25;16(1):302. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 22277834.

血圧が低く、尿量が少なく、乳酸値が高いセプシス患者をみると、臨床医はこう考える:
・重要臓器への血流が落ちているに違いない
・脱水と血管拡張により前負荷が低下して心拍出量が低いに違いない
・だから補液をする必要があるのは当然だ

これって、本当か?
セプシスに対して補液をするかしないかで予後に違いがあるかを検討したRCTは、上記の乳児の研究以外、存在しない。
敗血症患者の心拍出量が低いことを示した多施設ケースシリーズすら存在しない。
なのに、
・サイトカインとかの”毒”がたくさん含まれている血液をどんどん臓器に送っていいのか?
・低血圧は生体の自然の防御機構ではないのか?
という疑問に対する答え無しに、補液が本当に有益なのか?

さらには、
・補液は本当に心拍出量を増やすのか?
・もし増やすなら、どれくらいの量が必要か?
・もし増やすなら、その効果はどれくらい持続するのか?
・肺水腫などの有害作用とのバランスは?
これらの疑問に対する答えとなるようなヒトを対象とした研究は存在しない。
ところで、アフリカの子供には補液は有害ですけど?

という感じで、3ページ半にわたって議論が展開される、そんなviewpoint。
でも、だから補液はやめなさい、で終わるのではなく、
Early goal directed therapyの有効性を検討している研究の結果が発表されるまでは、極端なことはしないでおきましょう、と。
アメリカのPROCESS、オーストラリア/ニュージーランドのARISE、イギリスのPROMISEと、3つあるんだって。

最近、Narrative based medicineという言葉が出てきて、EBMとの対義語のように使われるのを目にしますが、
そうじゃないよ、と分かりやすく教えてくれるページを紹介して、今日はおしまい。

http://ds-pharma.jp/medical/gakujutsu/nbm/kiso/vol05.html
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パンパカパーン!

2012年01月29日 | ひとりごと
読んでくれる人が少ない、と愚痴ったこともありましたが、
今週、ついに、訪問者が毎日100人以上という快挙を達成しました!
でも、一番多い訪問者はgooglebot。それって、人じゃないってこと???

ところで、昨日、
「第6回臨床力アップのための腎臓内科セミナー(NEIL)」
に参加してきました。
若い腎臓内科医の勉強/交流の場、という感じの集まりなのですが、
"Non-renal indicationなんてやりませんけど、何か?”
的な雰囲気で満たされている印象を受けました。

似たような経験を先月もしていて、
JSEPTICの急性膵炎についてのセミナーで、
タンパク分解酵素阻害剤も動注療法もやらないという人が多数を占めて、
講義する側が驚いてました。

うーむ、これはつまり、、、

にっぽんの未来はうぉううぉううぉううぉう
世界がうらやむいぇいいぇいいぇいいぇい

だな。
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CV挿入時の針の向き

2012年01月23日 | その他
今月の簡単アンケートは終末期医療がテーマ。
(知らない方は、下記のURLにアクセスを)
http://www.jseptic.com/rinsho/questionnaire.html

結果発表は25日ですが、ちょっとだけお話しすると、なんと参加者が313名で、簡単アンケート史上最高の参加者数。
これまでいつも100-150名くらいで、前回の”ICUとは“で一気に300名越えで、やっぱりみんなの関心事だし、数を増やすためにちょっと努力したりしたからだなと思っていた。
今回のアンケートが始まる前に、作成者の藤谷先生に、”目標は200ですね“と言ったのだけど、ふたを開けたら最高数。
よく考えたら、そりゃそうだ。
”ICUとは“も関心事だけど、多くの人にとっては終末期医療の方がよっぽど関心事。
いつも日本のICUを良くするにはどうするかと考えていたので、票を読み違えた。
なんか、ちょっと反省。重要なことの視点がずれているか。

さて、雑談はこれくらいにして、本題に。
最近はいろいろ重い話題が多いので、今回はお気楽にCV挿入について。今月のCritial Care Medicineから。

Lim T, Ryu HG, Jung CW, et al.
Effect of the bevel direction of puncture needle on success rate and complications during internal jugular vein catheterization.
Crit Care Med. 2012 Feb;40(2):491-4. PubMed PMID: 21983370.

ソウル大学のICU。内頸静脈にCVを挿入するときに、針の先端の斜めの部分(日本語でなんて言うんだ?切っ先は先端だし。ここではベベルで)を上にするか下にするかで、血管損傷の発生頻度を比較。
予定の胸部外科患者338名をランダマイズ。施行前にエコーで皮膚に目印を付け、挿入時にはエコーは使わない(static echo guideというやつ)。ベベルが上向き(普通のやり方)では30度で刺入、下向きでは皮膚刺入時のみ40度にして、その後で30度にする(ビミョー)。終了後にエコーで再評価。
その結果、
・刺入回数に差無し(中央値は両群共に1回)
・針を進めているときに血管に当たった頻度は両群とも80%程度(残りは針を引いてきたときに当たった)
・術後のエコーで内頸静脈の後壁に血腫が認められたのは3.6% vs. 10.1%で有意に下向きが少なかった。
・下向き群で血腫が形成されていたのは針を引いてきたときに血管に当たったときだけ。上向きでは、針を進めて血管に当たったときでも4.2%に血腫が形成された。
・動脈穿刺は上向きの1例のみ。
だった、と。

さて。
これまで、若者がベベルを上に向けてないと”針の向きが違うよ”と言ってきたのだけど、へー、そっか、と思った。
確かに、下向きの方が血管損傷しにくそうだし、血小板の少ない患者さんとかには良さそう。
エコーガイドでやっても静脈を貫くことはあるし、動脈穿刺もまったくなくなるわけじゃないし。
面白い。やるな、ソウル。
You are my SEOUL! SEOUL! いつもすぐそばにある~

CV挿入時の小ネタは他にもいろいろあって、例えば、

Tripathi M, Pandey M.
Anchoring of the internal jugular vein with a pilot needle to facilitate its puncture with a wide bore needle: a randomised,
prospective, clinical study.
Anaesthesia. 2006 Jan;61(1):15-9. PubMed PMID: 16409336.

本穿刺をする前に、試験穿刺針(つまりエコーは使っていない)を皮膚に残すか、抜くかで比較。針を残した方が、本穿刺の成功率が高い。エコーで見ると、針を残している方が、本穿刺針によって静脈がつぶれない。つまり、試験穿刺針は目印になるだけでなく、静脈をつぶれなくすることにより、成功率を高める。

手もとに文献がないのでこれ以上は詳細に書けないけど、
・CV挿入に手間取ると皮膚の毛穴から細菌が出てくるので、ガイドワイヤーが入った後で滅菌手袋を培地につけると菌が生える、とか、
・鎖骨下に入れるとき、ガイドワイヤーの向きでカテが下に行くか首に行くかの確率が全然違うことを示したRCTがある、とか、
・皺のあるところで鼠径のCVを刺すと動脈に当たる確率が高いので、もっと上から刺せ、とか。

気楽な内容も、たまにはいいわ。
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酸素投与の有害性

2012年01月16日 | 呼吸
Archives of Internal Medicineのonline publicationで、こんなのが出ていたのでご紹介。

Cornet AD, Kooter AJ, Peters MJ, et al.
Supplemental Oxygen Therapy in Medical Emergencies: More Harm Than Benefit?
Arch Intern Med. 2012 Jan 9. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 22231614.

たった2ページのリサーチレター、というか、内容はレビュー。
不必要な酸素投与はこんなに有害、という話。
ざっと内容をサマライズすると、
まず、酸素には血管収縮作用があって、それによっていろいろ有害な作用を及ぼすことを示した研究の表が載っている。
例えば、心筋梗塞や心不全の血管抵抗を上げたり、血圧を上げたり、心拍出量を下げたり、冠血流を減らしたり。

で、次に、急性冠動脈症候群、心肺蘇生、脳卒中、COPDに対する酸素投与の影響についての文献レビュー。一部を紹介すると、

Cabello JB, Burls A, Emparanza JI, et al.
Oxygen therapy for acute myocardial infarction.
Cochrane Database Syst Rev. 2010 Jun 16;(6):CD007160. Review. PubMed PMID: 20556775.

AMIに対する酸素投与についてのコクランレビュー。酸素投与はAMIの死亡率を3.03倍にした。ただし、3つのRCTで387例、そのうち死亡がたったの14例と、信憑性は低い。

Kilgannon JH, Jones AE, Parrillo JE, et al.; Emergency Medicine Shock Research Network (EMShockNet) Investigators.
Relationship between supranormal oxygen tension and outcome after resuscitation from cardiac arrest.
Circulation. 2011 Jun 14;123(23):2717-22. PubMed PMID: 21606393.

観察研究。心停止蘇生後の血ガスでPaO2が高いとその後の死亡率が高い。

Ronning OM, Guldvog B.
Should stroke victims routinely receive supplemental oxygen? A quasi-randomized controlled trial.
Stroke. 1999 Oct;30(10):2033-7. PubMed PMID: 10512903.

低酸素のない脳卒中の患者に3L/minの酸素を投与するかどうかの検討。死亡率は酸素投与群の方が高い。

Austin MA, Wills KE, Blizzard L, et al.
Effect of high flow oxygen on mortality in chronic obstructive pulmonary disease patients in prehospital setting: randomised controlled trial.
BMJ. 2010 Oct 18;341:c5462. doi: 10.1136/bmj.c5462. PubMed PMID: 20959284;

COPDの急性増悪患者を病院に搬送するまでの間、8-10L/minの酸素を投与するのと、SpO2を90%程度に維持するように酸素投与するのとを比較。酸素をたくさん投与した群で死亡率が2倍。

で、結論。
ルーチーンで酸素を投与すると有害かも。
ただし、どの研究も小さく、本当に有害かは不明。

さて。
この話は別に新しいものではなく、

O'Driscoll BR, Howard LS, Davison AG; British Thoracic Society.
BTS guideline for emergency oxygen use in adult patients.
Thorax. 2008 Oct;63 Suppl 6:vi1-68. PubMed PMID: 18838559.

イギリス胸部医学会(?)が2008年に出した、酸素投与についてのガイドラインにも、同じことが書いてある。
他にも、PaO2よりもSaO2を見なさいとか、COPDの患者さんに酸素投与すると何故PCO2が増えるか(呼吸抑制以外の理由が大きい)とか、いろいろお勉強になる内容がたくさん。

酸素って、なんとなくお気楽に使っているけど、すごい強力な薬物。
いいこともすれば、副作用も当然あるはず。
本当にここまで有害かは分からないけど、可能性は十分にある。

なんとなく酸素を投与していた皆さん、
酸素が有害なんて思ってなかった皆さん、
おすすめはBTSのガイドラインですが、時間のない方は今日紹介した2ページのレビューでもいいので、読んでみては。
コメント (2)
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On-pumpとoff-pump CABGのAKIの発生頻度

2012年01月09日 | 腎臓
今日はですねー、
タイトルはどう見ても循環器なのに、腎臓に分類しておきながら、
実は、研究とは、的な話にしようと思うのさ。
Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgeryより。

Elmistekawy E, Chan V, Bourke ME, et al.
Off-pump coronary artery bypass grafting does not preserve renal function better than on-pump coronary artery bypass grafting: Results of a case-matched study.
J Thorac Cardiovasc Surg. 2012 Jan;143(1):85-92. Epub 2011 Oct 27. PubMed PMID: 22036259.

カナダの病院、8年間にCABGが10人の外科医により5589例行われ、そのうち、2人の外科医によりoff-pump CABG (OPCAB)が550例行われた。
そこで、術前/術中のいろいろなデータを考慮しつつ、on-pumpとOPCABで術後のAKIの発生頻度が違うか、多変量解析およびnearest neighborhood matchingなる方法で評価した。
その結果、
・多変量解析では、クレアチニンの変化がOPCABの方が0.05mg/dl高く、CCRが2.6ml/min減少した(透析の必要度は同じ)。
・Neighborhood matchingでも同様の結果。
だった、と。

さて。
20世紀の終わり頃から、on-pumpとOPCABの比較はたくさん行われてきた。
生命予後とか入院日数とか輸血率とかグラフトの開存率とかAKIとか、いろいろ。
結局、当初期待されていたほどにはOPCABは有益ではなく、多くのアウトカムでon-pumpと同程度かな、というのが現状。
AKIについては、

Seabra VF, Alobaidi S, Balk EM, et al.
Off-pump coronary artery bypass surgery and acute kidney injury: a meta-analysis of randomized controlled trials.
Clin J Am Soc Nephrol. 2010 Oct;5(10):1734-44. Epub 2010 Jul 29. PubMed PMID: 20671222

22のRCTのメタアナリシス、OPCABはAKIを40%へらす。ただし、質の悪い研究を除くと有意差はなくなる。
もちろん観察研究もたくさんあって、OPCABの方が少ないか、同じか、のどちらか。
だけど、今回の研究はOPCABの方がちょっとAKIが多い、と。

そんなことないだろ、と直感的に思う。
せいぜい、心臓をひっくり返すときに血圧が下がるぐらいで、それ以外にOPCABがon-pumpよりもAKIが起こる説明がつかない。
一施設の研究で、いろいろ統計的に数字をいじったけど、医者が選ぶという(今回の場合は具合の悪い人はOPCAB)、データでは表せない要素が強く、それが他の因子でカバーできず、結果的にOPCABのAKIの結果が多い、ということになったのは明白。

何故、こんな研究が心臓外科系ではメジャーな雑誌に載ったのか。
いろいろな説明/推測は可能だけど、一言で言えば、運が良かったのでしょう。
一つ一つの文献の評価は数人のpeer reviewerが行うので、運の要素は大きい。

もう一つの疑問は、
何故、こんな研究をやろうと思ったのか。
一施設、後ろ向き、OPCABは500例というCABGの研究としては多くはない症例数。
こういう研究は無意味、という意味ではない。
臨床研究は多施設RCTがすべて、ではなく、
根拠の強さのレベルの違いというか、貢献度の大きさの違いということ。
でも、複数の観察研究が行われ、OPCABの方がAKIが少ないかも、という仮説が立てられ、RCTによって検証されている話題について、こういう研究デザインは今更であって、知識の集積に関与しない。
これまでとちょっと違う結果になったら、発表する価値があるか?
そんなわけない。

後ろ向き研究で仮説が立てられ、
前向き研究で仮説が検証されつつ、必要な症例数などが検討され、
RCTで評価される。
場合によっては、その後に大きな観察研究で副作用などを評価する。
この順番からはずれた研究は、やっても仕方がない。

症例数があるから自分のところでもできるな、という理由で研究をやるのは、学会発表までにしましょう。
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ICUにおける不適切な治療

2012年01月03日 | ICU・システム
皆様、
明けましておめでとうございます。

さて、2日遅くなりましたが、習慣は習慣、ということで。
とは言え、文献をいろいろ吟味している時間もなく、今回はさらっとJAMAで。

Piers RD, Azoulay E, Ricou B, et al.
APPROPRICUS Study Group of the Ethics Section of the ESICM.
Perceptions of appropriateness of care among European and Israeli intensive care unit nurses and physicians.
JAMA. 2011 Dec 28;306(24):2694-703. PubMed PMID: 22203538.

ヨーロッパ9カ国とイスラエルにある、82の成人ICUに働く医療従事者(医師/看護師)を対象とした調査。具体的には、
・ICUの労働環境(ICUのタイプ、ベッド数、心理コンサルタントの存在、終末期医療の方法など)
・医療従事者に対するアンケート(年齢、経験年数、退職を考えているか、調査当日のICUに不適切な治療を受けている患者はいるか、など)
・不適切な治療を受けている患者がいると答えた場合、何故そう思うか

なお、ここで言う不適切な治療とは、例えばARDSに対してシベレスタットを使っているみたいな、医学的に正しくない治療のことではなく、
・行っている治療の密度と予測される予後との乖離
・他にICUでの治療を受けるべき患者がいる
・患者家族に不適切な情報が提供されている
・患者の治療に対する希望が尊重されていない
などのこと。

これらの情報を統計的に処理し、どんなときに不適切な治療と考えるか、について検討。

その結果、
・Closed ICUが74%(さすがヨーロッパ)
・患者/看護比の中央値は2:1(ということは、それ以上のところも結構あるということ、ちょっと驚き)
・医師と看護師による終末期医療についてのミーティングをいつも行っているのが60%
・60%の施設で、ナースが苦痛の除去などの症状コントロールの決定に関与
・”terminal sedation"をするのが79%、"terminal extubation"は46%
・1691名より回答あり、年齢の中央値は34歳、ナースが75%
・27%が、調査当日のICUに不適切治療を受けている患者が一人はいると回答(ナース25%、医師32%)
・一番多い理由は”治療と予後の乖離”、次いで”他の患者がICUに来るべき”
・不適切な治療が行われていると感じるかどうかに関連した因子(OR)は、
 *医師のみが症状コントロールを決定:1.73
 *終末期医療の決定にナースが関与:0.76
 *医師とナースの関係が良い:0.72
 *仕事内容の決定権がある:0.72
 *仕事が忙しい:ナース1.49、医師0.81
・不適切な治療が行われていると感じている人は、退職を考える頻度が1.65倍

結論は、不適切な治療が行われていると感じる頻度は高く、職場のコミュニケーションや決定権と関連している。また、それが退職の意思に影響している、と。

さて。
これまでに分かっていることがいくつかあって、
・不適切な治療が行われているとストレスを感じ、”バーンアウト”しやすくなる。
・バーンアウトすると、治療の質が低下し、退職する率が高くなり、それによって新人が増えるのでさらに治療の質が低下する。

そうそう、ICUにおけるバーンアウトについての研究って、結構ある。さらっと検索しても、

1: Merlani P, Verdon M, Businger A, et al.; STRESI+ Group.
Burnout in ICU caregivers: a multicenter study of factors associated to centers.
Am J Respir Crit Care Med. 2011 Nov 15;184(10):1140-6. PubMed PMID: 21852543.

2: Reader TW, Cuthbertson BH, Decruyenaere J.
Burnout in the ICU: potential consequences for staff and patient well-being.
Intensive Care Med. 2008 Jan;34(1):4-6. Epub 2007 Oct 18. PubMed PMID: 17943270.

3: Embriaco N, Azoulay E, Barrau K, et al.
High level of burnout in intensivists: prevalence and associated factors.
Am J Respir Crit Care Med. 2007 Apr 1;175(7):686-92. PubMed PMID: 17234905.

4: Poncet MC, Toullic P, Papazian L, et al.
Burnout syndrome in critical care nursing staff.
Am J Respir Crit Care Med. 2007 Apr 1;175(7):698-704. Epub 2006 Nov 16. PubMed PMID: 17110646.

最近の研究だけでも、これくらいすぐに見つかる。
つまり、それだけストレスが多い仕事(患者の重症度が高い、他業種とのコミュニケーションが多い、など)と認識されている、ということですな。
個人的にも、”ああ、もうやだ”、と思うことは珍しくない。
でもそれで手を抜いたら患者さんに害があるので、自分に鞭を打つ。痛い痛い。
(ちなみに、AJRCCMが多いのは面白い。日本はアメリカと違うぞ、なんて研究したら載せてくれるかも?)

バーンアウトしてどんどん辞められたら困るので、こんな研究が行われる。
それにしても、職場の雰囲気や習慣がいかに大事か。不満に繋がり、バーンアウトに繋がり、さらには患者予後にも影響する。
あ、つい最近、こんなレビューもあった。

Guidet B, Gonzalez-Roma V.
Climate and cultural aspects in intensive care units.
Crit Care. 2011 Nov 16;15(6):312. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 22188718.
ズバリ、ICUの雰囲気と習慣がパフォーマンスにどんな影響を与えるかについて。

いつも思うけど、
特殊な治療も大事だけど、
ちゃんとやるべきことをちゃんとやることの重要性って、きっと高いんだよねー。
でも、ちゃんとやるのは大変だから、みんな、新しい薬とかの方に興味がいっちゃうんだなー。

小さなことからコツコツと。(西川きよし)

おっと、忘れるところだった。
今月のINTENSIVISTは、"End-of-life"。
”こんな雑誌、読んだことない”感満載です。乞うご期待!
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