アフリカの乳児のセプシスに補液をすると死亡率が上がった、
という研究は皆さんご存知の通り。
Maitland K, Kiguli S, Opoka RO, et al.; FEAST Trial Group.
Mortality after fluid bolus in African children with severe infection.
N Engl J Med. 2011 Jun30;364(26):2483-95. PubMed PMID: 21615299.
JSEPTICのジャーナルクラブにもあります。
http://www.jseptic.com/journal/sepsis.html
更新日: 2011/08/08
小児感染症と補液
じゃあ、先進国の大人には補液は有害/有益、どっち?
という疑問は、この文献を読んで誰もが思ったこと。
でも、あまり議論されることなく、変わらずにやってきている気がする。
で、今日紹介の文献は、この点についての批判をまとめたviewpoint。
Hilton AK, Bellomo R.
A critique of fluid bolus resuscitation in severe sepsis.
Crit Care. 2012 Jan 25;16(1):302. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 22277834.
血圧が低く、尿量が少なく、乳酸値が高いセプシス患者をみると、臨床医はこう考える:
・重要臓器への血流が落ちているに違いない
・脱水と血管拡張により前負荷が低下して心拍出量が低いに違いない
・だから補液をする必要があるのは当然だ
これって、本当か?
セプシスに対して補液をするかしないかで予後に違いがあるかを検討したRCTは、上記の乳児の研究以外、存在しない。
敗血症患者の心拍出量が低いことを示した多施設ケースシリーズすら存在しない。
なのに、
・サイトカインとかの”毒”がたくさん含まれている血液をどんどん臓器に送っていいのか?
・低血圧は生体の自然の防御機構ではないのか?
という疑問に対する答え無しに、補液が本当に有益なのか?
さらには、
・補液は本当に心拍出量を増やすのか?
・もし増やすなら、どれくらいの量が必要か?
・もし増やすなら、その効果はどれくらい持続するのか?
・肺水腫などの有害作用とのバランスは?
これらの疑問に対する答えとなるようなヒトを対象とした研究は存在しない。
ところで、アフリカの子供には補液は有害ですけど?
という感じで、3ページ半にわたって議論が展開される、そんなviewpoint。
でも、だから補液はやめなさい、で終わるのではなく、
Early goal directed therapyの有効性を検討している研究の結果が発表されるまでは、極端なことはしないでおきましょう、と。
アメリカのPROCESS、オーストラリア/ニュージーランドのARISE、イギリスのPROMISEと、3つあるんだって。
最近、Narrative based medicineという言葉が出てきて、EBMとの対義語のように使われるのを目にしますが、
そうじゃないよ、と分かりやすく教えてくれるページを紹介して、今日はおしまい。
http://ds-pharma.jp/medical/gakujutsu/nbm/kiso/vol05.html
という研究は皆さんご存知の通り。
Maitland K, Kiguli S, Opoka RO, et al.; FEAST Trial Group.
Mortality after fluid bolus in African children with severe infection.
N Engl J Med. 2011 Jun30;364(26):2483-95. PubMed PMID: 21615299.
JSEPTICのジャーナルクラブにもあります。
http://www.jseptic.com/journal/sepsis.html
更新日: 2011/08/08
小児感染症と補液
じゃあ、先進国の大人には補液は有害/有益、どっち?
という疑問は、この文献を読んで誰もが思ったこと。
でも、あまり議論されることなく、変わらずにやってきている気がする。
で、今日紹介の文献は、この点についての批判をまとめたviewpoint。
Hilton AK, Bellomo R.
A critique of fluid bolus resuscitation in severe sepsis.
Crit Care. 2012 Jan 25;16(1):302. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 22277834.
血圧が低く、尿量が少なく、乳酸値が高いセプシス患者をみると、臨床医はこう考える:
・重要臓器への血流が落ちているに違いない
・脱水と血管拡張により前負荷が低下して心拍出量が低いに違いない
・だから補液をする必要があるのは当然だ
これって、本当か?
セプシスに対して補液をするかしないかで予後に違いがあるかを検討したRCTは、上記の乳児の研究以外、存在しない。
敗血症患者の心拍出量が低いことを示した多施設ケースシリーズすら存在しない。
なのに、
・サイトカインとかの”毒”がたくさん含まれている血液をどんどん臓器に送っていいのか?
・低血圧は生体の自然の防御機構ではないのか?
という疑問に対する答え無しに、補液が本当に有益なのか?
さらには、
・補液は本当に心拍出量を増やすのか?
・もし増やすなら、どれくらいの量が必要か?
・もし増やすなら、その効果はどれくらい持続するのか?
・肺水腫などの有害作用とのバランスは?
これらの疑問に対する答えとなるようなヒトを対象とした研究は存在しない。
ところで、アフリカの子供には補液は有害ですけど?
という感じで、3ページ半にわたって議論が展開される、そんなviewpoint。
でも、だから補液はやめなさい、で終わるのではなく、
Early goal directed therapyの有効性を検討している研究の結果が発表されるまでは、極端なことはしないでおきましょう、と。
アメリカのPROCESS、オーストラリア/ニュージーランドのARISE、イギリスのPROMISEと、3つあるんだって。
最近、Narrative based medicineという言葉が出てきて、EBMとの対義語のように使われるのを目にしますが、
そうじゃないよ、と分かりやすく教えてくれるページを紹介して、今日はおしまい。
http://ds-pharma.jp/medical/gakujutsu/nbm/kiso/vol05.html