Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

脳出血の文献2つ

2019年08月31日 | 神経
JAMA Neurologyに脳出血関連の文献が二つ出ていたので、まとめて紹介。

Leasure AC, Qureshi AI, Murthy SB, e tal.
Association of Intensive Blood Pressure Reduction With Risk of Hematoma Expansion in Patients With Deep Intracerebral Hemorrhage.
JAMA Neurol. 2019 May 13. [Epub ahead of print] PMID: 31081862.


先日も紹介したATACH IIのpost-hoc解析。降圧による血腫拡大予防効果は部位によって異なり、基底核だとオッズ比で0.44だけど視床は0.91。へー。

Huang WY, Saver JL, Wu YL, et al.
Frequency of Intracranial Hemorrhage With Low-Dose Aspirin in Individuals Without Symptomatic Cardiovascular Disease: A Systematic Review and Meta-analysis.
JAMA Neurol. 2019 May 13. [Epub ahead of print] PMID: 31081871.


低容量アスピリンを飲んでいると、頭蓋内出血が1000人あたり2人増える。特に多いのが硬膜下と硬膜外出血で、脳出血とSAHは有意差が出るほどは増えない。アジア人と痩せている人でアスピリンの頭蓋内出血のリスクが高い。こっちも、へー。
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ランセットに新しいAKIバイオマーカーの研究が載っている。

2019年08月30日 | 腎臓
Schunk SJ, Zarbock A, Meersch M, et al.
Association between urinary dickkopf-3, acute kidney injury, and subsequent loss of kidney function in patients undergoing cardiac surgery: an observational
cohort study.
Lancet. 2019 Aug 10;394(10197):488-496. PMID: 31202596.


確かにNは大きい。でも、新しいAKIバイオマーカーの研究って他にもたくさんあるのに、どうしてこれはLancetなんだろう?

Lancetと言えば、この文献がAKIバイオマーカーのブームを作るきっかけになったと記憶している。バイオマーカーすげー、とみんなが思い(僕も思った)、研究がたくさん行われ、いろいろなバイオマーカーが評価され、あれ?それほどでもないかもっていう雰囲気になって、現在は下火になっている。

そのLancetが、またAKIバイオマーカーの研究を載せているので、ふーんと思って、紹介してみた。
何か意図があるのか、僕が理解できない凄さがこの研究にあるのか、はて。
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”除水できない”ってなんだ?

2019年08月29日 | ひとりごと
昨日の続き。

「血圧が不安定なので除水ができなかった」と当直医から申し送られることが少なくない。
CRRTをしている患者さんの血圧が下がったので除水量の設定をゼロにした、という意味。

いつも思うが、不思議な言葉だ。

もちろん、超急性期で補液が必要で、CRRTを導入したけど除水の設定をゼロにしておくことはある。
そうじゃなくて、ある程度の日数が経って、でも経過がイマイチで、ノルアドがちょろっと流れていて、AKIも改善せずCRRT依存で、体がムクムク、という患者さんの場合。
そういう時にこれを言われると、なんだかなー、と思う。

例えば。
経静脈栄養などなど合計で持続点滴が100ml/hrで流れている患者さんと、何らかの理由で栄養が投与されておらずインが少ない患者さんとでは、CRRTで除水100ml/hrしているのを血圧が不安定なのを理由にゼロにした場合、意味が違うじゃんか、当然。
後者は何らかの理由でマイナスバランスにできない、つまり「血圧が不安定なので除水ができなかった」と言っていいが、前者は「除水ができない」どころか補液が必要なほど循環が不安定という状況であって、重症度が明らかに高い(もしくは、ちょっと一過性に血圧が下がっただけなのについ除水を止めてしまったかのどちらか)。

「除水ができない」という言葉が適当に使われていることがわかる、もっと良い例がある。
クエン酸CRRT。
慈恵では、手作りのカルシウムフリーの透析液を使ってクエン酸CRRTをしている。クエン酸が脱血側から100ml/hrで投与されるので、除水量の設定は100を引く、つまり150で設定したら実際は50ml/hrの除水をしていることになる。面白いことに、クエン酸CRRTをしている患者さんの血圧が不安定になっても、だれも除水量をゼロにしない。
でもこれ、おかしい。100ml/hrの液体を透析回路から投与しようが、透析カテからせいぜい数十cmしか離れていない静脈から投与しようが、補液していることには変わりがなく、もし補液が必要なほど循環が不安定な状況だと思うなら除水の設定をゼロにすればいい。でも誰もしない。それどころか間違えてゼロにしちゃってインシデントレポートを書く人までいる。

血圧がフラフラする患者さんはいる。除水設定をゼロにしたい気持ちもわかる。
でも、すぐに除水を止めるくせに、なかなか除水を再開しない。その結果、いよいよムクムクになる。
すぐに止めるなら、血圧が安定したらすぐに再開してくれ。

簡単な解決方法は、急性期を除いて、CRRTの除水量の設定は持続点滴の合計と同じ値よりも下げないというルールにしてしまえばいい。どうしても補液が必要な病態になったと思いたいなら、補液すればいい。
インバランスが有害であるということは、少なくとも生理学的にも観察研究的にも示されていること。
頼むから、ムクムクの患者さんの除水をゼロにすることにもっと罪悪感を持ってくれ。

昨日よりも長くなった。
ふー。
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循環が(不)安定ってなんだ?

2019年08月28日 | 循環
Vincent JL, Cecconi M, Saugel B.
Is this patient really "(un)stable"? How to describe cardiovascular dynamics in critically ill patients.
Crit Care. 2019 Aug 6;23(1):272. PMID: 31387616.


”今週の頭”にICU回診で研修医が、
“Mr S. became hemodynamically unstable so we had to give norepinephrine.”
別の患者さんについて別の研修医が、
“hemodynamically stable under 1 μg/kg/min of norepinephrine.”
と言ったのをビンセント先生が聞いたそうな。
なんじゃそりゃ、ということでこの文章を書く気になった、ということらしい(想像)。
で、結論が、
The word “stable” should not be used to describe a condition that remains critical, and “hemodynamic instability” should be described using objective criteria such as blood pressure, cardiac output, or vasopressor dose.

僕も、まったく同じことを麻酔科のICUローテーターに何度も言ったことがある。
「循環ですが、ノルアド0.2γいっていて問題ありません」
が典型。ノルアドが必要な時点で問題あるでしょ!

歳をとると、こういうことが気になるのかも。
ビンセント先生は日本だったら定年していらっしゃるお歳だろうし。僕もほぼ窓際族だし。

でも、大事だと思うのですよ。
安定しているとか、問題ないとか、場合によっては本当にそう思っているかもしれないじゃんか。
なぜ今もノルアドが必要なのか、現在の診断とそれに基づく治療は正しいのか、それをちゃんと考えているのかどうか、こういうプレゼンをされると分からないからさ。

言葉があるから人間は思考できる。だから言葉は正しく使った方がいい。
まあ、状況や程度によるけれども。
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慈恵ICU勉強会 190820

2019年08月27日 | 感染
8月20日 SBTの方法(JC-JAMA)

JAMAに出る集中治療系の文献は、結果よりも研究デザインに注目がいくことが多い。この文献もそう。1000例を超えるRCTだけど、いろいろ不思議なところがある。

RCTって、難しいですね。
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INTERACT2とATACH-IIを合わせると、

2019年08月24日 | 神経
Moullaali TJ, Wang X, Martin RH, et al.
Blood pressure control and clinical outcomes in acute intracerebral haemorrhage: a preplanned pooled analysis of individual participant data.
Lancet Neurol. 2019 Sep;18(9):857-864. PMID: 31397290.


片っぽは二次アウトカムが有効、もう片っぽは無効で途中で中止。足すとどうなるか。
結論は、降圧は安全で、10mmHg下げるごとに機能予後が10%改善する、と。

これまでこの二つについては何度か書いてきたので、過去ログまとめ。

脳出血急性期の血圧コントロールについての意見
で、結局、脳出血急性期の血圧管理はどうすればいいの?
脳出血の急性期の血圧ターゲットは140なのか180なのか

下げて悪いことはない、もしかしたら少し良いかも、でも下げすぎちゃダメ、くらいに思っておくことにする。
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慈恵ICU勉強会 190813

2019年08月20日 | ICU勉強会
8月13日 IVCを見て補液を判断していいのか?

ちょっと論理的飛躍があるように思えるところもあるけれど。
少なくとも、
・エコーでIVCを観察した結果は、いくつもある指標の一つに過ぎない。
・患者さんの状況によって感度特異度が変化し、低い時は低い。
ということは分かってもらえるのではないかと思う。

「IVCが〇〇だから□□だ」という会話は、まるで感度特異度が100%みたいに聞こえるので、イマイチです。
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ボロクソに言われるqSOFA

2019年08月17日 | 感染
この文献のeditorial。

Kalil AC, Machado FR.
Quick Sequential Organ Failure Assessment Is Not Good for Ruling Sepsis In or Out.
Chest. 2019 Aug;156(2):197-199. PMID: 31395253.


いろいろ書いてあるけれど。まとめると、
"qSOFA is a mediocre prognostic tool, and an ineffective and potentially harmful screening tool."
だそうです。

ちなみに、僕もあまり好きじゃありません。
あ、だから紹介したくなったんだな、これを。
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慈恵ICU勉強会 190806

2019年08月16日 | ICU勉強会
8月6日 ICU患者の呼吸苦

この文献がきっかけ。
呼吸苦のメカニズムから、対応方法まで。
扇風機は知らんかった。
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集中治療医の性差

2019年08月15日 | ICU・システム
Estenssoro E, Loudet CI, Reina R, et al.
Gender disparity in ICU staffing in Argentina.
J Crit Care. 2019 Oct;53:8-10. PMID: 31174174.


アルゼンチンの集中治療医学会での調査。研修医から部長まで、合計2186名のうち44%が女性。研修医は男女比がほぼ1:1だけど、部長が女性なのは23%のみ。女性は私立病院よりも公立病院で働く頻度が高く、間接的に収入差を示している、と。

日本の数字を見たことはないけど、これまで僕が訪問した日本のICUの部長のうち女性の占める割合って、5%くらいじゃないかな。さすが、男女平等ランキングで149カ国中110位の国です。
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