Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

第二波の高齢重症患者の死亡率は高い。

2021年09月28日 | COVID-19
”読むべき文献”フォルダにPDFがたまっちゃって、2ヶ月前のを追いかけていたら、見つけちゃいました。
こちらよりも先に発表されておりました。

Jung C, Fjølner J, Bruno RR, et al.; COVIP Study Group.
Differences in mortality in critically ill elderly patients during the second COVID-19 surge in Europe.
Crit Care. 2021 Sep 23;25(1):344. PMID: 34556171.


確かに、"unexpected, but significant"な生存率の低下。
しかも、これといった明確な考察ができていない。
NPPV / HFNCの使いすぎは良くないんじゃないかとか、医療者が第1波で疲れちゃったんじゃないかとか、ステロイドが有害なんじゃないかとか。
どれも、可能性は否定できないものの、説得力はない。

一つ知らなかったのは、RECOVERYのサブ解析で、70歳以上はステロイドの有効性が示されていないこと。たしかにSupplementに載っていた。70歳未満のRRは0.64だけど、70-80は1.03、80以上は0.89と、ともに有意差なし。酸素不要患者では使用例の方が死亡率が高いし、これは何を意味しているのか。
有効性は確かだけど対象患者の選択が難しいのか、そもそも有効性自体が怪しいのか(さすがに今更か)。

RECOVERYでの使用量を超える、ステロイドの大量使用を見聞きするけど、少なくとも70歳以上にはやめといた方がいいのではないかな。
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第二波のECMO患者の死亡率は高い。

2021年09月23日 | COVID-19
Riera J, Roncon-Albuquerque R Jr, Fuset MP, et al.; ECMOVIBER Study Group.
Increased mortality in patients with COVID-19 receiving extracorporeal respiratory support during the second wave of the pandemic.
Intensive Care Med. 2021 Sep 9:1–4. Epub ahead of print. PMID: 34499190.


スペインとポルトガルから。去年の6月30日でECMO患者を第一波と二波に分けると、第二波の方が死亡率が高かった。

初めの混乱が終わり、管理に慣れてきて、治療法も出てきて、COVIDの死亡率は時間とともに低下傾向にあるという報告が多い中、その逆の結果。一番の理由は、余裕が出てきたのでECMOの適応が緩くなって、例えば平均年齢が上がったから。

疫学データの解釈は注意が必要という典型例で、面白い。
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やっぱりレムデシビルは死亡を減らさない。

2021年09月17日 | COVID-19
出たばかりのせいか、PubMedからコピペできない。

Remdesivir plus standard of care versus standard of care alone for the treatment of patients admitted to hospital with COVID-19 (DisCoVeRy): a phase 3, randomised, controlled, open-label trial
Published:September 14, 2021DOI:https://doi.org/10.1016/S1473-3099(21)00485-0


ヨーロッパ48施設、N=857。
結果:
・15日後のWHOスケールによる呼吸状態に差はなし
・死亡率にも差はなし
・ウイルス量にも影響しない
・人工呼吸が不要だった人が必要になる頻度は減らす

死亡率に影響がないこと、ウイルス量を減らさないこと、MVの必要性は減らすこと、これら3つは既存研究でも示されているので、ほぼ固まってきたのかしら。
なんでMVは減らして死亡率は減らさないのか、解釈が難しいけれど。

これとは別に、面白いところ。
・レムデシビルに起因すると研究者が判断した死亡例が3例、でもスポンサーはそのうち1例のみが起因すると判断。
・アブストラクトのconclusionに、"symptomatic for more than 7 days"と書いてあるが、アブストラクトの結果にもディスカッションにも全く触れられていない。

この2つめ、確かにTable 1を見ると、発症から研究参加まで9·0 (7·0–12·0)なので、75%の人は7日以上経過している。つまりもっと早期に投与したら有効かもしれない、という可能性を示唆しているのだろうけど、まったくディスカッションされていない。結果にも表以外では書いてないんじゃないかな。

スポンサーとバチバチやってる感じが伝わってきて、面白い。
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テンプレート変更:秋

2021年09月16日 | ひとりごと
涼しくなってきたので。
今年のさんまはどうかな?
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心の整理の仕方

2021年09月08日 | ひとりごと
こんな質問をいただいた。
コメント欄だとほぼ読まれないだろうと思うので、こちらに。
ーーーーーーーーーー
こんな時だからこそ。」を拝読しました。
先生のおっしゃる通り、根拠に基づく治療が大事だと思います。
ただ、その根拠自体も何年かすると有効とされていたものが否定されたりすることをよくみかけます。
病気と治療の真実を知る神様がいるとして、人間があーでもないこーでもないといいながらいろいろな治療を模索していると「残念、その治療は違うんだけどなぁ」と神様に笑われているような気がすることも多々あります。
目の前に助けたい患者さんがいるとして、「根拠がないからやらない」と判断した場合、その方が亡くなったときには「重症だったので亡くなるのは仕方ない」と割り切って考えておられますか。
先生のご指摘されているように「何とかしてあげたい、エビデンスはないけどこの患者さんには効くかもしれない」とどうしても考えてしまいます。
有効かもしれない、という治療を行わず患者さんがなくなったときの心の整理の仕方をご教示頂ければ幸いです。
ーーーーーーーーーー
匿名のコメントには普段は対応しないことにしているのですが、ちゃんとしたご質問だったので、お返事します。

もうリタイアして1年経つので現在形でお答えすることはできないのですが、「有効かもしれない、という治療を行わず患者さんがなくなったときの心の整理」は、少なくとも21世紀になって以降、したことがなかった、する必要がなかったと思います。

僕が文献を読む理由の一つは、自分では何が正しいのか分からないので、できるだけ多くの情報を集めたい、できるだけ多くの人の意見を聞きたいからです。そうやって情報を集めると、それが未来永劫正しいとされ続けるかどうかは別として、現状ではこう考えるのが妥当とされていることが分かります。それは、治療方法の選択などだけでなく、得られる情報をどう利用するかとか、根拠に基づいて判断するとはどういうことかとか、医療に対する姿勢も含まれます。自分に自信がない、こうやれと書いてある、だからそうする。この流れに心の整理は不要です。

昔(と言っても21世紀になってからですが)、Intensive Insulin Therapyというのがありました。インスリンをたくさん使って血糖を正常値に維持すると死亡率が半分になるという研究で、single center studyにも関わらず、世界中に広がりました。しかしその後、多施設RCTが複数行われ、生命予後は改善せず、低血糖が増えることが示され、この治療方法は消えていきました。この流行の間、どれだけの患者さんが低血糖を起こしたのでしょう。きっとその中には後遺症を残した人もいたでしょうし、場合によっては命を失った人もいたかもしれません。同様の例は他にもたくさんあります。「有効かもしれない」で行動してはいけないことを学習するには十分なくらいたくさんあります。

病気について、治療について、情報の取扱い方について、EBMについて、たくさん読んでください。
そうすれば、心の整理をするまでもなく、現状で「普通」とされていることをできるようになると思います。
コメント (3)
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Dr. Bellomoが質問に答えます。

2021年09月07日 | 勝手に紹介
30 minutes talk with...Prof Rinaldo Bellomo
(編集がダメダメで、本編は19分30秒くらいから始まります。)

1ヶ月以上前にESICMが出していたのに最近気がついた。
Rinaldoはとても分かりやすい英語を話すので、リスニングが苦手でも大丈夫(もちろんYouTubeだから字幕も見られるよ)。
いろいろ答えているけど、一番印象的、というか多くの人に聞いてもらいたいフレーズは、
"Intravenous contrast is a very weak nephrotoxin"
かな。
「造影CTしたいけど腎臓が悪いから単純で」
という会話はもうやめましょう。造影するかしないかの判断と腎機能は関係ありません、少なくともICUでは。
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周術期低血圧についての”逆張り”的レビュー

2021年09月06日 | 循環
術中の話で、ICUではないけれど。

Kappen T, Beattie WS.
Perioperative hypotension 2021: a contrarian view.
Br J Anaesth. 2021 Aug;127(2):167-170. PMID: 33902915.


周術期の低血圧は有害だから、AIで予測して防ごう、という研究に対するコメント。
単純に良いことだと思っていたので、ちょっと「へー」。
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ICU日記についての家族と医療従事者の認識

2021年09月05日 | ICU・システム
Brandao Barreto B, Luz M, do Amaral Lopes SAV, et al.
Exploring family members' and health care professionals' perceptions on ICU diaries: a systematic review and qualitative data synthesis.
Intensive Care Med. 2021 Jul;47(7):737-749. PMID: 34117901.


ICU日記の質的研究を集めたsystematic review。
家族にとっては複数の有益な面があるけれど、ICUスタッフにとってはそうとは言い切れない。

メタ解析でもあまり有効性は示されていない。
無理してやることでもなさそうな気はする。すでにやっている施設は、効果について検討してみてもよいのでは。
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SBTやったら抜管前に1時間休憩しよう。

2021年09月04日 | 呼吸
Dadam MM, Gonçalves ARR, Mortari GL, et al.
The Effect of Reconnection to Mechanical Ventilation for 1 Hour After Spontaneous Breathing Trial on Reintubation Among Patients Ventilated for More Than 12 Hours: A Randomized Clinical Trial.
Chest. 2021 Jul;160(1):148-156. PMID: 33676997.


4施設336例で、そんなに大きなRCTではないし、かつ有意差が出たのはサブ解析だけだけど、ちょっと納得するところあり。
やって損はなさそうだし、1時間待つだけだから簡単だし。
お宅の臨床にいかが?
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オランダのCOVIDのDWH

2021年09月03日 | COVID-19
(ちなみにDWHというのはこういうやつ。)

Fleuren LM, Dam TA, Tonutti M, et al.
The Dutch Data Warehouse, a multicenter and full-admission electronic health records database for critically ill COVID-19 patients.
Crit Care. 2021 Aug 23;25(1):304. PMID: 34425864.


オランダにある81のICUのうち66が参加表明し、そのうち35が実際にデータ提供を行なった。
この文献は、COVIDの疫学データを示しているのではなく、そういう大きなDWHをICUという環境でどうやって作るかについて説明している。

単純に、すごい。
何がすごいって、その行動力とスピード。
理屈は簡単で、すでに電子的に各病院に電子的に蓄えられている情報を集めるだけ。
でもそれを実際に行うにはたくさんの壁がある。倫理的な側面はもちろんだけど、一番大変なのは、病院によって使っているソフトウェアが違うし、収集している項目も違うし、項目名も違うこと。それをこれだけの短時間で実際にデータ収集するところまでやってしまうとは。単純にすごい。

この文献を読むと、その大変さが垣間見られる。
例えばFiO2だけでも6項目もあるんだよ。そうやって施設の違いを吸収しているんだ。
なるほど。とても勉強になった。
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