Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

ソフトウェアによる血糖コントロール

2017年08月31日 | その他
Mesotten D, Dubois J, Van Herpe T, et al.
Software-guided versus nurse-directed blood glucose control in critically ill patients: the LOGIC-2 multicenter randomized controlled clinical trial.
Crit Care. 2017 Aug 14;21(1):212. PMID: 28806982.


インスリンの投与量をナースが決めるよりコンピュータプログラムに従った方が血糖コントロールが良い(低血糖にならずにターゲットを維持する)、ということを示した3施設RCT。

血糖のターゲットは3施設中2施設で80-110mg/dl。おっと思うが、やはりLeuven。よく見たら著者の最後にGreet Van den Bergheと書いてあるし。
2014年に行われているので、想像通りまだLeuvenではIITをやっていた。
研究の結果よりもそっちの方が面白い。
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慈恵ICU勉強会 170822

2017年08月30日 | ICU勉強会
8月22日 「スパズム期?」の診断と管理

このスライドを見た人は、もしかしたら少し矛盾を感じるかもしれないので、補足を。

慈恵のICU勉強会は基本的に僕が企画している。具体的には、まとめ講義のタイトルを提示したり、ジャーナルクラブの文献を決めたりしている。でも、まとめ講義の場合はタイトルとある程度の参考文献を提示するだけで、指導とかはしないので、内容は担当者(たち)次第。

今回は珍しくこれとかも提示したし、タイトルに「?」も付けたけど、あまり賛同は得られなかったようで、「スパズム期」という言葉にある程度の疑問を呈しつつも、そのままスライド内で使用している。

全然オッケーっす。
逆に、そうじゃないとつまらないっす。

でも、「SAHの急性期」の方がやっぱり良いと思う。
言葉の表面だけを解釈する人は絶対いるから。
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周術期のアミノ酸投与

2017年08月29日 | 消化器・血液
Aoki Y, Aoshima Y, Atsumi K, et al.
Perioperative Amino Acid Infusion for Preventing Hypothermia and Improving Clinical Outcomes During Surgery Under General Anesthesia: A Systematic Review and Meta-analysis.
Anesth Analg. 2017 Sep;125(3):793-802. PMID: 28742771.


これは何の根拠もなしに勝手に思っていることなのだけど、
ICUに集中治療医がいるかいないかで、静注のアミノ酸製剤の使用頻度は極端に違う気がする(ただし最近はタンパクの投与量がどうこうという話があるからちょっと変化してきているのかもしれないけど)。

静注のアミノ酸製剤ってもう何年も見てないから存在自体を忘れていた。このメタ解析を見てRCTがそれなりに行われていることを知った。
周術期に使うと体温が0.5度上がってシバリングが減って、それ以外にも良いことが起こるんですって。ほお。
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蘇生後の偽SAHサイン

2017年08月28日 | 神経
Lee BK, Kim YJ, Ryoo SM, et al.
"Pseudo-subarachnoid hemorrhage sign" on early brain computed tomography in out-of-hospital cardiac arrest survivors receiving targeted temperature management.
J Crit Care. 2017 Aug;40:36-40. PMID: 28314170.


蘇生後に頭のCTを撮るとSAHみたいに見えることがあるよ、という話。

以前うちのICUにいた才女がこれを知らなくて、へーこの子でも知らないことがあるのねと思ったのを思い出した。
他にも知らない人がいるかもしれないから、紹介しておこっと。
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スクラルファートとH2Bの比較

2017年08月27日 | 消化器・血液
Alquraini M, Alshamsi F, Møller MH, et al.
Sucralfate versus histamine 2 receptor antagonists for stress ulcer prophylaxis in adult critically ill patients: A meta-analysis and trial sequential analysis of randomized trials.
J Crit Care. 2017 Aug;40:21-30 PMID: 28315586.


21もRCTがあるのは知らなかったのでちょっと驚いた。
メタ解析なので結果にあまり興味はないのだけど、ストレス潰瘍の予防が必要かどうかという議論を横に置いておくと、少なくともスクラルファートはストレス潰瘍予防の選択肢の一つであることは言える。

先日、なんかの理由でPPIもH2Bも使えなくなった患者さんに対して、若者が「ストレス潰瘍予防できないね」という話をしていて、おいおいと思ったので、もしかしたらそんな人が他にもいるかもしれないから紹介しておこっと。
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Global Sepsis AllianceによるSepsis 3に対する文句

2017年08月26日 | 感染
まあ文句とは書いてないけれども、advantagesとdisadvantagesとで書いてある量が5倍くらい違うからさ。

Machado FR, Nsutebu E, AbDulaziz S, et al.
Sepsis 3 from the perspective of clinicians and quality improvement initiatives.
J Crit Care. 2017 Aug;40:315-317. PMID: 28478045.


乳酸を敗血症性ショックの定義にANDで入れちゃ困るでしょ、とか。

GSAは2010年にできた団体で、世界敗血症デーとかやっているから、当然Sepsis 3にも関与しているのかと思ったら、どうも全然していないのかな?
GSAのホームページを見ても、確かにSCCMもACCMもESICMもメンバーリストに入っていない。
ありゃ、政治的なやつ?
この辺の内情はご存知の方がたくさんいらっしゃるだろうから、何も知らない人間の推測は控えめにしときます。
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慈恵ICU勉強会 170808

2017年08月24日 | ICU勉強会
8日 重症頭部外傷ガイドライン

言わずと知れた、Brain Trauma Foundationのガイドライン。
10年ぶりの改定。

今後は定期的な改定ではなく、新しい情報が出たら適宜ホームページ上で改定していくという方式になるらしい。
今風だけれども、そうすると使用者が定期的にチェックしないといけなくなるので、使用者にとって、最終的には患者さんにとって本当にベターなやり方なのか少し疑問。

まあ、メジャー雑誌に大きな研究が掲載されたら改定されるのだろうから、定期的にチェックしなくても分かるといえば分かるけど、臨床研究の情報をいつもちゃんとアップデートしている人はガイドラインの有用性がそもそも高くないわけで、そうすると臨床研究をアップデートしない人がガイドラインをアップデートしないといけないわけで、ありゃ、矛盾するんじゃないか?

うーん。新しい知識の普及って、難しいわね。
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SAH後のDCIの発生時期

2017年08月23日 | 神経
昨日、ICU勉強会でDCIについてまとめてもらった。
その時に、「14日とよく言われるけど、その根拠は?」という質問が出て、はっと気がついた。

知らない。読んだことない。わお。

そこで、手元にあるSAHの文献、そこからの孫引き、そしてPubMedを使って、この点について数十の文献をざっと眺めた(疲れた)。そしていくつかのことに気がついた。

まず、DCI関連の文献では、Introductionで「DCIはSAHの30%に発生し、14日以内に起こる」という表現が決まり文句のように使われている(ただし、一部には4〜10日という表現もある)。そして、その参照文献は二つの文献が多く使用されていて、一つは30%という数字のみで時期についての記載はなく、もう一つは古すぎて読めなかった。文献の中には参照文献を提示せずにこの決まり文句だけ書いてあるものものあった。

DCIの発生時期を図にしてあるものを探したが、ほぼ見つけられなかった。かろうじてそれに類するものが二つあったが、一つは14日で観察期間が終わっており、もうひとつは血管攣縮の発生時期についてのKaplan-Mierで、だいたい14〜21日以内に100%に達していた。DCIや血管攣縮についての研究では観察期間が14日以内というものが多かった。

多分言えることは、14日というのは大きな観察研究結果に基づいての数字ではなさそうだ。経験的/感覚的なものかな。1週間は7日だし。

そもそも、DCIをちゃんと定義しないと発生頻度も時期もちゃんとした数字は出ないはずで、定義はないのかと思ったら、あった。

Vergouwen MD, Vermeulen M, van Gijn J, et al.
Definition of delayed cerebral ischemia after aneurysmal subarachnoid hemorrhage as an outcome event in clinical trials and observational studies: proposal of a multidisciplinary research group.
Stroke. 2010 Oct;41(10):2391-5. PMID: 20798370.


SAHの研究をやる人はmust readだし、内容的に素晴らしいので、SAHを診療する人も読んだ方がいいと思う。
これを読むと、SAHに意識が悪くなった人を見て「スパズムじゃないか?」とか言わなくなるから、きっと。

ついでに、過去ログまとめときます。
くも膜下出血のスパズム期?
”スパズム期”の話の続き
”スパズム期”の話の続きの続き
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補液の投与方法と反応性の関係

2017年08月21日 | 循環
Toscani L, Aya HD, Antonakaki D, et al.
What is the impact of the fluid challenge technique on diagnosis of fluid responsiveness? A systematic review and meta-analysis.
Crit Care. 2017 Aug 4;21(1):207. PMID: 28774325.


補液の反応性について検討した85研究(3601症例)のシステマティックレビュー。補液を投与する時間が短いほどレスポンダー(補液後に心拍出量が増加)の割合が高くなる。有意ではないが補液の投与量でもその傾向あり。

当たり前だと言えば当たり前だけれども。
アウトカムが変われば介入の精度も変わるはずで、補液の反応性の予測をするのに、この方法だと感度特異度がいくつ、こっちだといくつ、という比較はあまり意味がない。

研究の追試をしたり似たようなデザインで研究を行ったりするときは、過去の研究の方法を真似した方が比較しやすくなるのに、この補液の反応性の研究ではいろいろな方法が選択されている。きっとみんなやりやすい方法でやっているのだろうけど、そうすると後で困るね。
これは自分で研究するときにも言えること。
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ICUで言ってはいけない言葉

2017年08月20日 | ひとりごと
日頃、気になっていること。
シリーズ化しちゃおうかとも思ったけど、ネタが続かなさそうなので止めた。

「家族と相談しDNRの方針となった」
アウトが二つ。一つは、家族と相談するんじゃなくて、本人の意思を尊重・推測するんですよ。まあそれを「家族と相談」と表現しているのかもしれないが。
もう一つは、「DNRの方針」という言葉を重要な治療制限の設定という意味で使っていること。例えば検査入院だけど、自分はDNRを希望します、と言っても全然おかしくない。単に心停止時の蘇生を望まないという意味なのだから。
こちらにも記載と紹介文献あり。

「予後は厳しい」
家族への説明時にも、カンファレンス時にも多用される表現。99.999999%だって厳しいし、五分五分だって厳しいと言えてしまう。
家族への説明時に使うと、奇跡が起こらない限り生存することはないだろうと医療者は判断していても、家族は希望があると思ってしまうかもしれない。
カンファレンスで使うと、例えば80%(何か他にできることはないか)と思っているか99.9999%と思っているか(治療制限を設定する必要がある)で議論するポイントが全然変わるかもしれないのに、どっちをしたいと思っているのか他の医療者に伝わらない。
正確な数字なんて多くの場合は分からないけど、できる限り数字もしくはそれに近い表現を使った方がいいと思う。

「診断不明」「原因不明」
原因が同定されないショックとか呼吸不全とか意識障害とか、当然あります。でもそういう時は、必ず鑑別がいくつか上がって、それに順番と可能性が付く。なのに単に原因不明とか言ってしまうと、方針がぼやけるし、説明にも困るし、申し送り時に情報が欠損する。
〇〇疑いでこの治療をしているけど、△△の可能性もあるのでそちらも対応しているとか。ちょっと長いか?
でも「原因不明」よりも「〇〇疑い」と言った方がましです。
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