水銀党本部執務室

冬月のブログです。水銀党本部の活動や、政治社会問題、日常の中で感じた事など様々なテーマで不定期に更新されております。

新ローゼンメイデン第5話感想 からたちのそばで泣いたよ みんなみんな優しかったよ

2013-08-02 04:02:29 | Weblog

新ローゼンメイデン、第5話感想。
結論から言おう。私は称賛を惜しまない。素晴らしい、制作スタッフよくやった。
第1話の汚名を返上した。惜しむらくはこの実力を第1話で見せてくれなかったことだが、もう言うまい。
2,3,4話とここまで無難につないで凌いできたが、今や巻き返しの時だ。
この第5話には、戦局を一変させられる力がある。第1話でこの作品を切り今期は他のアニメに夢中になっている無党派層の目をもう一度引き戻し、そして感嘆とともに口にさせるのだ。8年の昔覇権アニメと呼ばれたその名を。ローゼンメイデンを。

真紅が大ジュンに姉妹のことを何でも訊いて良いと言うから、大ジュンがとりあえず第一ドールについて訊ね(予想できた展開である)、真紅が不機嫌になる。これをフラグに水銀燈が現れる。
ヤングジャンプになってから始まった、真紅と水銀燈のじゃれ合いのような争いには最初、正直物足りなかった。
バーズ版そして旧アニメ版に慣れた人間にとって、水銀燈とは強くて恐ろしい存在で、真紅とは心底憎み合っていて決して慣れ合わない。
デフォルメ化された2人が喧嘩友達として殺気の無いコメディバトルをしているのは、ヤングジャンプへの移籍によってそういった古い常識が、原作ファンが好んで使うところの「黒歴史」にされてしまったのを見せつけられているようで少し寂しい。
唯一、水銀燈の翼が戦闘モードに入って展開していく様子は、今期は気合が入っている。
だが、そんなことを考えている余裕があったのは、水銀燈とめぐとの回想シーンに入るまでだった。
新アニメ版の柿崎めぐに、度肝を抜かれた。
旧アニメ版のめぐと台詞の内容はほとんど変わらないのに、まるで別人である。相変わらず死を望んでマイナスの方向を向いているのに、溢れんばかりの生気。封印されていた「ゲロみたい」も言うし、看護婦と父親に罵声を浴びせ花瓶を投げつける。生気と死。矛盾の表現は主役の特権だ。脇役に過ぎなかった旧アニメ版とは違う。これはドール・ミーツ・ガールなんだ。めぐには、一つの物語の主人公としての役割が与えられている。
そして、このめぐには、この幼い水銀燈でなければいけないのだ。
ワインの相性で用いるところの「マリアージュ」である。(マリアージュの本来の意味は、結婚)
回想シーン、このめぐの物語が素晴らしかった。めぐと水銀燈のほろ苦い物語が、病室のカーテンにさす光の移ろいによって、淡々とダイジェストで表現されていく。
そうだ制作スタッフ、ダイジェストというのはそういう風に使えば効果的なんだ、やればできるんじゃあないか。
最初、病弱そうな少女に水銀燈は怖いことを言って怯えさせようとする。本心でなかったのは、めぐの反応に対する水銀燈の表情の揺らぎでわかる。以降、水銀燈のめぐへの想いは、言葉ではほとんど語られない。めぐの話を聞いている際の水銀燈の表情、そして最後に水銀燈がとる説明の無い行動で物語るわけだが、この難しい部分をいかに視聴者に伝えるかが制作スタッフの腕の見せ所である。それを見事やってのけた。
クライマックスの契約の場面。2人の絆の深さが視聴者の胸に刻まれる。
本当に良かった。
私はこの第5話を観るために、9年間水銀党をやってきたのではないだろうか。もう思い残すことは何も無い、そこまで思わせてくれた。

最後に、タイトルは「からたちの花」、めぐがうたった歌の一節である。
「からたちの花」は大正時代につくられた童謡だ。作詞したのは私の母校の校歌をつくった北原白秋。日本の現行法では著作権は切れている。PEACH-PIT先生は、原作でこの童謡を「死んだ祖母から教わったもの」としてめぐに歌わせている。
だがこの「からたちの花」、本来、素人が歌うのは難しいものだ。
恐らくPEACH-PIT先生は、登場人物の姓と同様、題名が植物だからこの歌を選んだんだろう。童謡で題名が植物というと限られてくる。実際に耳で聴いたか正直怪しい。
私はローゼンの二次創作小説を書くが、登場させる歌は例え文章だけであっても耳で聴いて確かめることにしている。「からたちの花」は著作権が切れているから小説に使えるし、歌詞は美しいが、問題なのは曲。最高で超高温域のハイGまで達し、オペラ歌手並みの歌唱力が要求される。プロですら敬遠する。きちんと歌えたとしても、古めかしくて正直アニメ向きじゃない。松尾監督がトロイメントでオリジナルの歌をつくったのは妥当な判断だった。
しかし、今期はあくまで原作準拠が要求されている。その難しいオーダーに、制作スタッフは今度は見事にこたえてみせた。良い具合にアレンジをきかせた「からたちの花」だった。

ところで私が二次創作で「からたちの花」を使う場合のテクニックというか企業秘密を、ここで一つお教えする。

からたちのそばで泣いたよ みんなみんな優しかったよ

この歌詞が、意味あるものになるよう、効果的に締めにもってくる。そうすれば破壊力抜群だ。
「泣いたよ」「みんな優しかったよ」この二つのフレーズが、その場面を代弁するもので、共感を呼ぶように予めストーリーを積み上げていく必要がある。
今回、史上初の「からたちの花」アニメ登場だった。
結果がどうだったかは是非ご覧頂きたい。

追伸
第1話以降、「神様のいない日曜日」ならぬ「視聴者のいない金曜日」状態で、「ローゼンメイデン」なのに主役のローゼンメイデンが現れない中、戦略核を炸裂させた梅岡先生、敵役不在の中いい感じに視聴者のヘイト値を上げてくれた店長、そしてまかなかった世界のメインヒロイン斉藤さん。ドールズ到着までの間、人間だけでよく話をもたせてくれました。敬礼。


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