水銀党本部執務室

冬月のブログです。水銀党本部の活動や、政治社会問題、日常の中で感じた事など様々なテーマで不定期に更新されております。

麻生太郎政権、民主党、そして有権者に求めること

2008-09-25 12:43:02 | Weblog
麻生太郎氏が日本国内閣総理大臣に就任し、麻生内閣が発足してから一夜明けました。
巷ではその政策・人柄に定評があったにも関わらず、永田町では長く少数派の苦しい立場にあり、四回の総裁選を経てようやく念願の麻生政権が誕生しただけに、特に総裁選を今回だけに限定せず、昨年9月の「麻生・与謝野クーデタ疑惑」、大派閥による麻生包囲網によって福田政権が擁立されたあの総裁選から続く「麻生の戦い」という文脈で捉える見識をもった国民にとっては、逆境を乗り越えた新政権への喜びと期待は大きいものと思います。
国民は長年、こうした何度挫けても這い上がってくる、力強い指導者を求めてきた。

ですが、いかに麻生太郎氏が国民に人気がありまた政策面でこれから活躍しようとも、来るべき衆議院選挙は大変厳しいものになる事を、与党は覚悟しなければならないでしょう。
昨年申し上げたように、今回の衆院選は与党にとって「非対称戦争」になります。
自民党は現在公明党と合わせて、衆議院に三分の二もの議席をもっている。これは2005年の衆院選の結果なわけですが、2005年の衆院選は「小泉劇場」と呼ばれる奇跡が起きたいわゆる郵政選挙で、自民党では「小泉チルドレン」と呼ばれる新人議員が大量に当選しました。特別な追い風が吹いての当選であって、通常の選挙ではあのような状況は当然期待できません。
そして、今回の衆院選では例え自民党が安定過半数をとったとしても、それは「勝利」とはみなされない。
過半数をとっても自民党の議席は確実に前回より減る事になります、特に前回当選で実績のないチルドレンが大勢落選するでしょう。マスコミは当然そこをクローズアップして「自民党の敗北」という見方で報道する。
一方の民主党は、前回の議席が少なすぎるわけですから、過半数を取らなくても今回は確実に議席が前より増えるわけです。
過半数をとれなくても、議席の躍進した民主党は勢いづきますから、今回の選挙はどう転んでも民主党の「勝利」となる。
戦術的にも、自民党側は現職で戦うしか選択肢が無いが、新たに立候補させる民主党側は、勝てる候補を選ぶ事ができる。新鮮味という点だけでも自民党側は不利になります。

また参議院では野党全体で過半数をもっていて衆参のねじれがあり、重要法案が進まず国政が麻痺しているわけですが、この閉塞した状態を自民党は衆院選に勝って「直近の民意を武器に」する事で打破できると楽観的に考えている人が多い。
今回の衆院選で民主党の小沢代表が目標に掲げる単独過半数をとれなければ民主党は参議院でこれまでのような対決姿勢を改めて妥協してくれるだろうという根拠のない話です。
ところが民主党側は、民主党が過半数こそ取れずとも議席数が躍進した事を「直近の民意」として武器にします。勝った、つまり衆議院で議席を増やしたのに参議院で妥協する理由はありません。
他の民主主義国で二大政党の勢力が拮抗している国々では、ライバルではあるものの、国家にとって真に重要な政策課題では党派の違いを超えて、互いに国政に責任をもって協力できるところは協力しています。日本でも民主党にそのような成熟した態度を望む声は少なくありません。
しかし、民主党は小沢一郎氏が代表になってからというもの、民主党の従来の政策を翻してまで与党のやる事には何でも反対し、それで国政が滞ったら与党の責任にするという、国をおもう成熟した民主主義とはかけ離れた「政争」に終始してきました。テロ対策特別法案、日銀総裁人事など、党派対立を超えて国益のために取り組まなければならない重要な案件さえ、民主党のサボタージュで滞り日本の対外的な地位は大きなダメージを被っています。
こうした政策無き政局重視の党運営には民主党内からも批判の声がありますが、小沢氏はそうした党内の批判も封じ込めてきました。衆院選の後も、この姿勢が変化するとは思えません。
そして、与党が衆議院三分の二を失えば、国政麻痺を打開するための最後の手段である再議決も不可能になり、本当のねじれ国会になって、完全な麻痺状態に陥る。
つまり、自民党は過半数をとるだけでは勝利とはいえず、現在の議席を維持しなければ、政権政党として勝ったとはいえない。
いかに麻生氏が高い支持を得ていても、これは非常に困難な事です。

では民主党は、議席が増えるのは野党としての勝利かもしれないが、ねじれ国会を打開しこれ以上国益を損なわないためにも、中途半端な勝利よりは、小沢氏が現時点での勝利目標として掲げるようにむしろ単独過半数をとる事でこれまで国に迷惑をかけた責任をとってみせてもらいたい。
最悪のケースは、自民党が公明党の議席と合わせなければ過半数がとれないところまで追いやられた場合、逆に民主党が共産党と連立すれば過半数がとれるような状態になった場合です。
景気対策に全く効果が無く、創価学会の主力構成員である低所得者層にのみ美味しい定額減税が公明党の圧力で通ってしまった。かつての地域振興券の過ちを繰り返すわけです。対外的にも、公明党の圧力でテロ対策特別法案の延長が困難になりつつある。現状でこれだけ自民党が公明党の圧力を受けています、キャスティングボードを握らせてしまえば日本の内政・外交政策は本当に滅茶苦茶にされてしまう。
民主党も、現在参議院で単独で過半数をとれていない。共産党との協力があって初めて過半数がとれている状態です。マスコミは何故かこの問題を取り上げようとしないが、民主党の政局運営は現在、共産党に大きく依存している。

そして、どちらの党も、政権を目指すなら日本という国家が抱える問題をどうやって解決していくか、ビジョンを示して頂きたい。
内政面でやらなければならない事は、短期で言えば世界的な経済不振の影響を受けた不景気の克服ですが、中長期的には財政健全化、国力の源である人口が減少している事への対策、そして疲弊した地方の改革が欠かせません。
そのためには、例え国民から反発がでても、小泉・安倍路線の構造改革を続けるしかない。
1200兆円にも累積した赤字国債を増やさない、いずれは減らすためには、無駄の多い行政の仕事を徹底的に民間に移して合理化するしかありません。
地方の疲弊は深刻です。私は田舎に行く機会が多いのですが、首都圏から一歩出れば、人がまるで歩いていない、地場産業も活力を失って久しい、行政がつくった無駄な建物が墓標のようにたっているだけというような「限界集落」予備軍だらけなのが現状です。
食糧自給率の問題も深刻です。何より農村にはもうお年寄りしかいません。これを救うには、西ヨーロッパがしているように農業のための外国人労働者を大量に受け入れる、あるいはアメリカのように農業を企業に開放する農業自由化をやる、そういう大胆な改革しかない。
民主党はそういった問題に対してばらまき型のマニフェストを出していますが、政権をとったら反故にされそうな選挙対策の公約ばかりだ。財源を示してほしい。
麻生政権も、三年間景気対策の積極財政をやると宣言していますが、具体的にどれだけの額の財政出動で、どのようなプロセスで景気を回復させるのか、また三年間の景気対策の後はまた改革路線に戻してくれるのかどうか、説明してほしいと思います。

対外的には、アジアからのアメリカの後退と中国の台頭という情勢の中での安全保障戦略の抜本的な見直しが必要です。
日本を取り巻く国際政治の環境は、冷戦時と違ってめまぐるしく変化しています。国内のイデオロギー論争に足を引っ張られて現実的な議論ができない状況は終わりにしないといけません。そのためにも、共産党・社民党のような勢力にキャスティングボードを握らせてはなりません。民主党の中にさえ、残念ながら国益について冷静な議論ができない勢力がいる。政権を目指すなら、なりふり構わぬのではなく、保守としてのプライドを守ってほしい。

最後に、選挙に一票を投じる全ての方にお願いしたい。
この選挙は自民党と民主党との戦いではなく、有権者である国民と国民との戦いです。

戦前は、政党政治が立ち行かなくなれば元老の助言を受けた陛下の大命降下か軍部の介入で問題が解決される仕組みでした。今日でも、タイの政治が正にそれです。
ですが戦後日本には、元老もいなければ軍部もない。主権者は天皇ではなく国民になりました。
それなのに、有権者、権利をもつという事は、当然国家に対して義務も負っているという事を、我々は忘れてしまっているのではないでしょうか。
責任があるという意識はあるのでしょうか。

投票するという事は、その結果に対して責任をもつという事です。
かつて昭和天皇がお一人で背負われた国家に対する責任を、今は国民一人一人が背負っている。

参議院でのねじれで国政が麻痺し、日本が国内外で危機的状況にある現実は、明らかに国民が作ったものです。
他人事ではない。全て国民の責任です。

すなわち、これから始まる選挙とは、真に国家の将来を考え、大局的な視点で投票行動ができる国民と、そうでない国民との戦いであると断言できます。
あなたはどちらの側の国民ですか?