発掘5


父親の水筒が出てきた。
僕がもらって棚にしまっておいたのだ。

多分復員兵が食うに困って売り払ったものを、どこかの闇市ででも購入したのだろう・・と勝手に想像している。
母親に聞いたら、釣に出かける時はいつも持って行ったという。

父親からもらった時に、水筒の表面に最初のオーナーの名前がうっすらと書いてあるのに気付いた。
そのことを父親に話したら、当人は気付いていなかったらしく、驚いていたのを覚えている。

母親によると、当時はどこの家庭にもこの水筒がごろごろしていたという。
出掛ける時は、体に斜めにぶら下げて持ち歩いた。

水道が完備されていなかったから、飲み水の確保は重要だったのだ。
自動販売機でいつでもペットボトルが買える今の日本では、そういうことに無頓着になってしまった。
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