酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

「楽園」、そして「相棒劇場版Ⅳ」~濃密なミステリーに浸る

2017-03-03 14:31:01 | 映画、ドラマ
 昨日は「柳家三三と春風亭一之輔の二人会」(渋谷・さくらホール)に足を運んだ。三三「元犬」→一之輔「お見立て」→一之輔「人形買い」→三三「田能久」の順で会は進行する。「お見立て」以外は初めて聴く演目だったが、その「お見立て」も一之輔らしくアヴァンギャルドでブラックな空気を醸していた。

 三三が「ようやく落語らしいものを」と切り出し「田能久」を演じる。三三は小三治直系という〝殻〟、一之輔は古典という〝型〟を破らんと精進していることが窺えた。旬の話芸を堪能した2時間だったが、楽しみ過ぎた罰なのか、終演後、ホールの階段を踏み外す。何事もなかったかのように見栄を張って立ち上がったが、全身打撲であちこちが痛い。年は取りたくないものだ。

 WOWOWの充実が著しい。キラーコンテンツのひとつがドラマWで、当初の単発から、現在は4~6回シリーズが主流になっている。時間は限られているから決め打ちし、2010年以降、「マークスの山」(10年)、「人間昆虫記」(11年)、「ヒトリスズカ」(12年)、「レディ・ジョーカー」(13年)、「LINK」(同)、「悪貨」(14年)、「きんぴか」(16年)と、1年1作ペースでピックアップした。

 今年放映された「楽園」(全6話、宮部みゆき原作)を録画してまとめて見た。5月にDVD化されるので、興趣を削がぬようアウトラインを記したい。複数の家族が抱える闇が描かれていたが、ラストでタイトル「楽園」の意味が明かされる。

 「模倣犯」の9年後という設定で、痛手を負ったライターの滋子を仲間由紀恵が演じている。火事をきっかけに、<16年前、15歳の長女を殺して自宅の下に埋めた>と土井崎夫妻(小林薫、松田美由紀)が告白する。騒動と軌を一にするように、ある母親(西田尚美)が息子の等が描いた奇妙な絵を持って、滋子の元に訪れる。滋子は土井崎夫妻の件と等の絵の関連に気付いた。

 宮部の小説を読んだのは2000年までで、とりわけ印象に残っているのは「龍は眠る」だ。同作には「ミステリー・ウォーク」(ロバート・マキャモン)の影響が窺えたが、両作の主人公同様、等もエスパーで、ある人物の心象風景を写し取った絵をとば口に、滋子は真実に迫っていく。

 スポンサーや代理店に気兼ねする必要がないから、ドラマWはテーマを深く掘り下げ、批評性が強い。キャスティングも豪華で、本作でも甲本雅裕、黒木瞳、夏帆、石坂浩二、金子ノブアキらが彩りを添えていた。

 先週末、「相棒劇場版Ⅳ」を新宿で見た。「首都クライシス 人質は50万人! 特命係最後の決断」のサブタイトルに偽りはなく、興行成績も上々という。政治がテーマになると、「相棒」は時折、齟齬を来すことが多いが、「Ⅳ」は緊張が途切れぬ濃密な作品に仕上がっていた。脚本を担当した太田愛氏の力量が寄与しているのだろう。


 <日本の棄民の伝統>が起点になり、戦前と戦後を繋げている。安倍政権に警鐘を鳴らしているのは明らかで、自公に一票を投じている人は、作品の底に流れる<反戦の思い>に違和感を覚えるかもしれない。脇を固めるお馴染みの面々に加え、鹿賀丈史、北村一輝がそれぞれ国連犯罪事務局元理事、「バーズ」のメンバーとして存在感を示していた。最近のテレビ版を見ても、冠城役の反町隆史がようやく、杉下警部(水谷豊)と息が合ってきたのを感じる。

 時の流れを感じるのは、監視映像の扱いだ。15年前、歌舞伎町に防犯カメラが設置された時、人権派から大きな非難が沸き起こったが、今では共謀罪に賛成の声が高い。監視社会への忌避感が薄まってきたことに最も貢献したのは、「相棒」などテレビ朝日系の刑事ドラマだと思う。

 <法の正義を、法を超えた正義より上位に置いていることが「相棒」の限界>と指摘してきた。だから、伊坂幸太郎の小説、「その女アレックス」(ルメートル)には敵わなと考えていたが、「シーズン13」最終話で甲斐享(成宮寛貴)がタブーを破った時、その後の展開に期待した。成宮が引退した以上、何も始まらないが……。

 スカパーで再放送されている「シャーロック・ホームズの冒険」(グラナダTV製作)を見て、ホームズが必ずしも<法の正義>にこだわっていないことに気付いた。人間としての正義に貫かれているのなら、犯罪を見逃すケースもある。〝師匠ホームズ〟の振る舞いを公務員の杉下が真似出来ないのは承知の上だが、本作では軸足を〝犯人側〟移しているのを感じた。

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