酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

納涼アイテムはダーティー・プロジェクターズ

2012-07-24 23:00:42 | 音楽
 反原発関連では、様々な集会や講演会の模様が動画サイトにアップされている。視聴による参加は邪道と承知しつつ、グータラなロートルはつい楽な方を選んでしまう。29日の大掛かりな国会包囲行動はパスし、その前日、中野で開催される集会とデモに足を運ぶことにした。初回のアクションで、まだ手作り感覚に溢れていることに期待している。

 政治以上に映像公開が著しいのがロック界だ。ボナルー・フェス(米テネシー州)では、レッド・ホット・チリ・ペッパーズとレディオヘッドのライブを主催者がフルタイムで配信した。フジとサマソニも、オフィシャル映像を流すらしい。

 〝Youtube時代の申し子〟ミューズは1年前、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの結成20周年イベントに招かれた。前作「レジスタンス」の冒頭曲「アップライジング」(叛乱)はタイトル通りロンドン蜂起の空気と近く、ラディカルまっしぐらかと思っていたが、新曲“Survival”がロンドン五輪の公式テーマに選ばれた。ライブ映えしそうな曲だが、競争相手に勝った理由がわからない。

 ミューズだけでなく、成功したバンドに多いパターンは、失くした芯をオーバープロデュースでカバーしていること。俺は10歳の頃、ビートルズの「シー・ラブズ・ユー」の魔法の旋律でポップの世界に迷い込んだ。ストーンズの「サティスファクション」、フーの「マイ・ジェネレーション」、ドアーズの「ハートに火をつけて」etc……。当時の曲は骨量と筋肉を誇り、トランジスタラジオから流れていても胸に響いた。

 ロックは試行錯誤を繰り返しつつ進化したと思うが、声では明らかに後退した。かのピンク・フロイドだって、「エコーズ」で見事なハーモニーを聴かせていたのだから……。ここ数年で発見したバンドで、ローカル・ネイティヴスとともに声を復権させたのがダーティー・プロジェクターズ(DP)だ。担当楽器を取っ換え引っ換えし、曲ごとのコンセプトを明確にしながら、全員で歌うというスタイルを取る。新作「スイング・ロー・マゼラン」を読書のBGMとして、納涼アイテムとして繰り返し聴いている。

 前作「ビッテ・オルカ」で世界にその存在を知らしめ、ビョークを迎えたコラボ「マウント・ウィッテンベルク・オルカ」で評価は一層高まった。新作でも殊更キャッチーさを追求することなく、手作り感覚とアマチュア精神を前面に、自然体でプリミティヴ、ノスタルジック、祝祭的なアンサンブルを奏でている。表情は豊かだが贅肉のない12曲42分だ。

 変化に富みアルバムで一番ロックしている♯1“Offspring Are Blank”、柔らかな女性ボーカルが牧歌的ムードを醸し出す♯10“The Socialites”、歌心に溢れた♯11“Unto Caesar”も耳に残ったが、俺の一押しは変調を取り入れたダウナーな♯3“Gun Has No Trigger”だ。彼らと再会出来るのは10月だ。爽快な至極のライブが待ち遠しい。女性たちもみんな可愛いし……。

 別稿(11年6月30日)で、俺はロックを<原発的>と<エコ的>に分類した。DPなど<エコ的>の典型で、改革者の驕りと無縁で、量的な成功にも執着しない……というか売れない。前作「ビッテ・オルカ」でも本国アメリカで9万枚弱。でも、彼らは気にもしていない。スクエアな目線で矜持を保つのがNY派たるゆえんなのだ。

 そういや、もう一つの贔屓バンド、ローカル・ネイティヴスはメンバー脱退以来、とんとニュースを聞かない。俺という疫病神に憑りつかれて消えたバンドは数知れず。心配になってきた。


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