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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

4/5(土)東京・春・音楽祭『ラインの黄金』/ヤノフスキ+N響+歌手陣による一級品の演奏会形式

2014年04月06日 02時04分28秒 | 劇場でオペラ鑑賞
東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2014
東京春祭ワーグナー・シリーズVol.5
『ニーベルングの指輪』序夜『ラインの黄金』(演奏会形式・字幕映像付)


2014年4月5日(土)15:00~ 東京文化会館・大ホール A席 1階 4列 31番 16,000円
指 揮: マレク・ヤノフスキ
管弦楽: NHK交響楽団
コンサートマスター: ライナー・キュッヒル
音楽コーチ: トーマス・ラウスマン
映像: 田尾下 哲
【出演】
ヴォータン: エギルス・シリンス(バス・バリトン)
ドンナー: ボアズ・ダニエル(バリトン)
フロー: マリウス・ヴラド(テノール)
ローゲ: アーノルド・ベズイエン(テノール)
アルベリヒ: トマス・コニエチュニー(バス・バリトン)
ミーメ: ヴォルフガング・アブリンガー=シュペルハッケ(キャラクター・テノール)
ファーゾルト: フランク・ヴァン・ホーヴ(バス)
ファーフナー: シム・インスン(バス)
フリッカ: クラウディア・マーンケ(メゾ・ソプラノ)
フライア: 藤谷佳奈枝(ソプラノ)
エルダ: エリーザベト・クールマン(メゾ・ソプラノ)
ヴォークリンデ: 小川里美(ソプラノ)
ヴェルグンデ: 秋本悠希(メゾ・ソプラノ)
フロースヒルデ: 金子美香(メゾ・ソプラノ)

 「東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2014」の目玉となる唯一のオペラ公演が、「東京春祭ワーグナー・シリーズ」のVol.5にあたる響の公演、楽劇『ニーベルングの指輪』の序夜『ラインの黄金』である。唯一のオペラ公演が演奏会形式だというのもちょっとガッカリものではあるが、演奏自体は素晴らしくクオリティの高いものだったから良しとしよう。
 今年は音楽祭の10周年にあたり、今回の序夜『ラインの黄金』に続いて、来年2015年は第一日『ワルキューレ』、2016年に第二日『ジークフリート』、2017年に第三日『神々の黄昏』と、4年がかりで新たな『ニーベルングの指輪』の上演を演奏会形式で行うことになっている。演奏会形式であれば、常に話題と物議を醸し出す「演出」がないので、純粋に音楽として聴くことができる。まあ、それほど高尚な理由があったわけではないのだが、ほとんど関心がなかった本公演、たまたま友人がチケットを持っていたので譲っていただき、聴きに行くことに決めたのが3日ほど前のことだった。もともと昔からワーグナーは苦手なので、どうして急に思い立ったのかは、自分でもはっきりしないのである。
 昨年はワーグナー・イヤー(生誕200年)であったために、さすがの私もワーグナーを聴く機会が多かった。『ニーベルングの指輪』第一日『ワルキューレ』は、びわ湖ホール・神奈川県民ホール共催の全幕オペラ公演を観たし、演奏会形式による『ワルキューレ』第1幕は、霧島音楽祭2013東京公演と、日本フィルハーモニー交響楽団の東京定期演奏会で聴いている。だからといって、急にワーグナーが好きになったわけでもないし、理解が深まったわけでもない。だから今日、突然『ラインの黄金』に参戦したのは、単なる好奇心程度の意味でしかなかったのである。

 譲っていただいたチケットはA席で1階の4列目、右側のブロックだったのだが、会場に入ってビックリ。何と1~3列を黒い布をかけて使用していない、つまり4列は最前列であった。とくにステージ拡張などをしているわけでもないし、演出的な何かがあったわけでもない。ステージに近過ぎると、ステージ奥に設えたスクリーンの映像が見にくいから・・・・であろうか。ちょっと理由が分からなかったが、最前列なのは嬉しい。前に人がいないので見やすいし聴きやすい。ちなみに、その奥のスクリーンに映し出された映像だが、ライン川の中だとか、城だとか、地底だとか、物語のシチュエーションを表したような抽象的な映像(というよりはほとんど固定なので、画像というべきか)で、これは演出効果も乏しく、中途半端すぎて必要が感じられなかった。

 演奏は素晴らしかったと思う。指揮のマレク・ヤノフスキさんは、2002年以来ベルリン放送交響楽団の芸術監督を務めている。2011年の来日公演では3回も聴きに行ってしまった(横浜みなとみらいホールNHKホール東京オペラシティコンサートホール)。いずれも音楽都市ベルリンでしのぎを削っている最前線の指揮者の芸術家魂を見せつけるような、素晴らしい演奏であったと記憶している。
 今日の演奏を聴いていても、ヤノフスキさんの創り出す音楽は素晴らしい。とにかく、曖昧さを許さず、シャープでキレ味の鋭い音楽を展開する。やや早めのテンポを採り、拍の前の方にアクセントがあるようなイメージでリズム感もシャープ、そして推進力がある。また、NHK交響楽団の演奏がヤノフスキさんに引っ張られて、正確なアンサンブルとメリハリの効いたダイナミックなもので、非常に素晴らしかった。いつものN響よりも、ずっと良いような感じがした。N響のイメージが湧いてこない東京文化会館で、またまたN響のイメージが湧いてこないオペラ公演で、そんな印象が強かったのは、ヤノフスキさんの持ち味が十分に発揮されたということなのだろう。
 なお、ゲスト・コンサートマスターはウィーン・フィルのライナー・キュッヒルさん。ヤノフスキさんとアイコンタクトするときの視線も鋭く、弓を持つ右肩から右腕の動きに凄味があった。世界一のコンサートマスターのオーラを撒き散らしているような迫力が感じられた。

 歌手陣は、平均的に素晴らしい歌唱を聴かせていたと思う。この辺りは・・・・海外組の歌手たちはほとんど知らない人ばかり。しかもワーグナーを得意としている歌手たちならば、普段ほとんど縁がない(?)ので・・・・歌唱自体は、皆素晴らしい。如何せん、登場人物が多いので、正装で登場する歌手たちが、誰が誰なのかがよく分からないのである。この辺りが素人の素人たる所以で、字幕を追っても無駄であった。やはりストーリーやライトモチーフなど、ちゃんと勉強してこないとワーグナーは難しいようだ。エルダ役のエリーザベト・クールマンさんは、バンダで登場。2階R側バルコニーの客席に現れ、スポットライトを浴びての歌唱が印象に残る。私の席からだと真後ろにあたり、3D音響効果とライティングが唯一の演出であった。
 日本人の出演者の中では、フライア役の藤谷佳奈枝さんが安定した歌唱を聴かせていた。ヴォークリンデ役の小川里美さんは華やかな歌唱で印象を残した。彼女は最近大活躍で、昨年2013年11月の日生オペラ『フィデリオ』のレオノーレ役や、今年2月の東京芸術劇場シアターオペラ『こうもり』のロザリンデ役など、主役を見事にこなしている。

 『ラインの黄金』は全1幕(4場)であるため、全曲2時間30分間がノン・ストップで演奏され、途中に休憩もない。ワーグナーだから、文字通りノン・ストップ。音楽に切れ目すらない。指揮者は言うに及ばず、演奏するオーケストラも歌手たちも、長時間にわたり強度の緊張を強いられ、大変だと思う。聴く側にも素人を寄せ付けない厳しさを見せる。2時間30分間、ただじっと座って聴いているだけなのだ。ワーグナーを好きな人にとっては堪らない喜びの時間なのだろうが、私のように苦手な人には「苦行」でしかない。今回は好奇心で聴きに行ってしまったのだが、私にはまだ「早かった」ようだ。

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