三浦友理枝 ピアノ・リサイタル
2012年3月28日(水)19:00~ 東京文化会館・大ホール 指定 1階 G列 17番 4,000円
ピアノ: 三浦友理枝
【曲目】
ドビュッシー: 前奏曲 第1巻より「音と香りは夕暮れの大気にただよう」
ドビュッシー: ベルガマスク組曲より「月の光」
フォーレ: ノクターン第13番 ロ短調 作品119
プーランク: ナザレの夜会
前奏曲/分別の極み/手の上の心臓/磊落と慎重と/思案の続き/口車の魅力/自己満足/不幸の味/老いの警報/カデンツァ/フィナーレ
メシアン:「鳥のカタログより」より 第6番「モリヒバリ」
ラヴェル: 夜のガスパール
1.オンティーヌ(水の精) 2.絞首台 3.スカルボ
ラヴェル:「鏡より」「道化師の朝の歌」
《アンコール》
ドビュッシー: レントより遅く
プーランク: プレスト
ドビュッシー:「夢」
三浦友理枝さんの単独リサイタルは東京では1年半ぶりだそうだ。ご本人のトークによると、一足年はショパン・イヤーだったのでショパンばかり演奏し、昨年は現代曲を多く演奏したという。東京でのリサイタルは久しぶりになるので、どういうわけかフランス音楽を弾きたくなった…。というわけで、今日のリサイタルはアンコールに至るまで徹底してフランスもの。テーマは「夜」とのことで、夕暮れ時から翌朝までに至る「夜」にちなんだ曲を集めてみたという。
登場する作曲家は、年代順に、フォーレ(1845~1924)、ドビュッシー(1862~1918)、ラヴェル(1875~1937)、プーランク(1899~1963)、メシアン(1908~1992)である。「夜」のイメージといわれればそのようにも聞こえるが、フランスの「夜」は暗闇の中までが光彩に煌めいているようだ。これだけまとめて聴いて、あらためて感じさせられるのは、フランス人の感性がこれほどまでに絵画的な色彩に溢れているのかということ。目をつぶって聴いていると、何やら決して眩しくはないが、乱反射する光が煌めくような抽象的な映像が瞼の奥に浮かんでくる。しかもそれぞれの作曲家によって作風の個性も全く違うのにもかかわず、だから余計に不思議である。
ドビュッシーの「音と香りは夕暮れの大気にただよう」はまさに空気感=雰囲気といった曲で、明確に旋律もなく「雰囲気」的な曲想が素敵だ。三浦さんならではのキレイな音質で、不協和音も美しい。
続く「月の光」は、今日の曲目では明確に旋律に彩られている方で、まあ、こん曲は誰でも知っているから分かりやすい。
フォーレの「ノクターン第13番」は晩年期の作品であり、写実的というよりは心理的とでもいうべきか、曲想も現代風に近づく。複雑な和音が、三浦さんのピアノの流れるような華麗なタッチで組み立てられていく。
プーランクの「ナザレの夜会」は、バロック風の古典的な曲想から現代風のものまでが気まぐれに、諧謔的に、ときには悩ましく登場する組曲。それぞれの曲想の違いがまさに絵画的である。目まぐるしく変化する曲想に対して、三浦さんのピアノは抜群の色彩感で、繊細な部分から激情的な表現まで、あるいは諧謔的であったり、抒情的であったりと、表現力の幅も広い。
メシアンの「モリヒバリ」は、低音部の不協和音と高音部の鳥のさえずりのようなフレーズが印象的な曲。極端に抽象化された完全な現代音楽だが、それでも漠然とした情景が目に浮かぶから不思議だ。三浦さんの演奏は、高音部の軽いタッチが絶妙の雰囲気を作っていた。思わず微笑んでしまう、不思議な曲と演奏であった。
ラヴェルの「夜のガスパール」では、美しい高音部のトレモロが「見えない光の粒が飛び交う夜の静寂…」というような詩的に表現が似合うような、繊細な感性に満ちた、写実的な雰囲気の中に豊かな抒情性を秘めている、といった印象の素敵な演奏であった。
最後の曲、ラヴェルの「道化師の朝の歌」は、軽快にリズム感と諧謔性、ゴージャスなグリッサンド、キラキラと煌めくような音色など、まさに多彩でカラフルなのが特徴的。三浦さんの演奏は、息つく暇もなく、複雑で難解、多様な曲想を見事に表現していた。やはりラヴェルの不協和音は美しく弾かないと音楽が土俗的になってしまうが、三浦さんのピアノの色彩感は、このような曲にもよく似合っていたと思う。
アンコールは3曲も。ドビュッシーの「レントより遅く」は抒情的にゆったりと、プーランクの「プレスト」は逆に快速でハギレ良く、ドビュッシーの「夢」はエレガントかつロマンティックだった。
三浦さんのピアノは何度聴いても音がキレイ。透明感のある澄んだ音色が魅力だが、今日はフランス音楽ということもあって、透明な中にも色々な色彩の光が混ざっているような音色である。複雑な構成の不協和音をとても美しく響かせていた。ちなみに今日は協賛がヤマハで楽器はヤマハのCFX。「三浦友理枝+フランス音楽+ヤマハCFX」の組み合わせは、かなり良いかもしれない。今までコンサートで聴いたヤマハのピアノの中では、最もクセのない自然な響きで、とても美しい音色だったと思う。
終演後は恒例のサイン会。やはり人気者の三浦さんのことだけあって、けっこう長い列が出来ていた。今日はフランスものばかりを聴いたので、やはりフランスものを集めた彼女のデビュー・アルバム「印象」(ただし今日の演奏曲は1曲も収録されていない)にサインをいただいた。三浦さんは、ヴァイオリンの川久保賜紀とチェロの遠藤真理さんとのトリオのコンサートでは、いつもサイン会に参加していたが、単独のリサイタルでは初めてだった。演奏している姿も眩しく感じられるが、間近で見る三浦さんは、また一段とお美しく…。サインしてもらうだけでドキドキものでした。
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2012年3月28日(水)19:00~ 東京文化会館・大ホール 指定 1階 G列 17番 4,000円
ピアノ: 三浦友理枝
【曲目】
ドビュッシー: 前奏曲 第1巻より「音と香りは夕暮れの大気にただよう」
ドビュッシー: ベルガマスク組曲より「月の光」
フォーレ: ノクターン第13番 ロ短調 作品119
プーランク: ナザレの夜会
前奏曲/分別の極み/手の上の心臓/磊落と慎重と/思案の続き/口車の魅力/自己満足/不幸の味/老いの警報/カデンツァ/フィナーレ
メシアン:「鳥のカタログより」より 第6番「モリヒバリ」
ラヴェル: 夜のガスパール
1.オンティーヌ(水の精) 2.絞首台 3.スカルボ
ラヴェル:「鏡より」「道化師の朝の歌」
《アンコール》
ドビュッシー: レントより遅く
プーランク: プレスト
ドビュッシー:「夢」
三浦友理枝さんの単独リサイタルは東京では1年半ぶりだそうだ。ご本人のトークによると、一足年はショパン・イヤーだったのでショパンばかり演奏し、昨年は現代曲を多く演奏したという。東京でのリサイタルは久しぶりになるので、どういうわけかフランス音楽を弾きたくなった…。というわけで、今日のリサイタルはアンコールに至るまで徹底してフランスもの。テーマは「夜」とのことで、夕暮れ時から翌朝までに至る「夜」にちなんだ曲を集めてみたという。
登場する作曲家は、年代順に、フォーレ(1845~1924)、ドビュッシー(1862~1918)、ラヴェル(1875~1937)、プーランク(1899~1963)、メシアン(1908~1992)である。「夜」のイメージといわれればそのようにも聞こえるが、フランスの「夜」は暗闇の中までが光彩に煌めいているようだ。これだけまとめて聴いて、あらためて感じさせられるのは、フランス人の感性がこれほどまでに絵画的な色彩に溢れているのかということ。目をつぶって聴いていると、何やら決して眩しくはないが、乱反射する光が煌めくような抽象的な映像が瞼の奥に浮かんでくる。しかもそれぞれの作曲家によって作風の個性も全く違うのにもかかわず、だから余計に不思議である。
ドビュッシーの「音と香りは夕暮れの大気にただよう」はまさに空気感=雰囲気といった曲で、明確に旋律もなく「雰囲気」的な曲想が素敵だ。三浦さんならではのキレイな音質で、不協和音も美しい。
続く「月の光」は、今日の曲目では明確に旋律に彩られている方で、まあ、こん曲は誰でも知っているから分かりやすい。
フォーレの「ノクターン第13番」は晩年期の作品であり、写実的というよりは心理的とでもいうべきか、曲想も現代風に近づく。複雑な和音が、三浦さんのピアノの流れるような華麗なタッチで組み立てられていく。
プーランクの「ナザレの夜会」は、バロック風の古典的な曲想から現代風のものまでが気まぐれに、諧謔的に、ときには悩ましく登場する組曲。それぞれの曲想の違いがまさに絵画的である。目まぐるしく変化する曲想に対して、三浦さんのピアノは抜群の色彩感で、繊細な部分から激情的な表現まで、あるいは諧謔的であったり、抒情的であったりと、表現力の幅も広い。
メシアンの「モリヒバリ」は、低音部の不協和音と高音部の鳥のさえずりのようなフレーズが印象的な曲。極端に抽象化された完全な現代音楽だが、それでも漠然とした情景が目に浮かぶから不思議だ。三浦さんの演奏は、高音部の軽いタッチが絶妙の雰囲気を作っていた。思わず微笑んでしまう、不思議な曲と演奏であった。
ラヴェルの「夜のガスパール」では、美しい高音部のトレモロが「見えない光の粒が飛び交う夜の静寂…」というような詩的に表現が似合うような、繊細な感性に満ちた、写実的な雰囲気の中に豊かな抒情性を秘めている、といった印象の素敵な演奏であった。
最後の曲、ラヴェルの「道化師の朝の歌」は、軽快にリズム感と諧謔性、ゴージャスなグリッサンド、キラキラと煌めくような音色など、まさに多彩でカラフルなのが特徴的。三浦さんの演奏は、息つく暇もなく、複雑で難解、多様な曲想を見事に表現していた。やはりラヴェルの不協和音は美しく弾かないと音楽が土俗的になってしまうが、三浦さんのピアノの色彩感は、このような曲にもよく似合っていたと思う。
アンコールは3曲も。ドビュッシーの「レントより遅く」は抒情的にゆったりと、プーランクの「プレスト」は逆に快速でハギレ良く、ドビュッシーの「夢」はエレガントかつロマンティックだった。
三浦さんのピアノは何度聴いても音がキレイ。透明感のある澄んだ音色が魅力だが、今日はフランス音楽ということもあって、透明な中にも色々な色彩の光が混ざっているような音色である。複雑な構成の不協和音をとても美しく響かせていた。ちなみに今日は協賛がヤマハで楽器はヤマハのCFX。「三浦友理枝+フランス音楽+ヤマハCFX」の組み合わせは、かなり良いかもしれない。今までコンサートで聴いたヤマハのピアノの中では、最もクセのない自然な響きで、とても美しい音色だったと思う。
終演後は恒例のサイン会。やはり人気者の三浦さんのことだけあって、けっこう長い列が出来ていた。今日はフランスものばかりを聴いたので、やはりフランスものを集めた彼女のデビュー・アルバム「印象」(ただし今日の演奏曲は1曲も収録されていない)にサインをいただいた。三浦さんは、ヴァイオリンの川久保賜紀とチェロの遠藤真理さんとのトリオのコンサートでは、いつもサイン会に参加していたが、単独のリサイタルでは初めてだった。演奏している姿も眩しく感じられるが、間近で見る三浦さんは、また一段とお美しく…。サインしてもらうだけでドキドキものでした。
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