Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

6/30(土)華麗なるコンチェルト/上村文乃、弓 新、上原彩子がチャイコフスキーの3大協奏曲を披露

2018年06月30日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
華麗なるコンチェルト・シリーズ 第6回
《熱狂のチャイコフスキー 3大協奏曲!》


2018年6月30日(土)14:00〜 横浜みなとみらいホール S席 1階 C1列 9番 4,875円(セット割引)
チェロ:上村文乃*
ヴァイオリン:弓 新**
ピアノ:上原彩子***
指 揮:永峰大輔
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
【曲目】
チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲 イ長調 作品33(フィッツェンハーゲン版)*
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35 **
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23 ***

 神奈川芸術協会が主催する「華麗なるコンチェルト・シリーズ」の第6回開催を聴く。今回はチャイコフスキーの「三大コンチェルト」ということで、上村文乃さんの独奏チェロによる「ロココ風の主題による変奏曲」、弓 新さんの独奏ヴァイオリンによる「ヴァイオリン協奏曲」、そして上原彩子さんの独奏ピアノによる「ビアノ協奏曲 第1番」というプログラム構成である。指揮は永峰大輔さん、管弦楽は神奈川フィルハーモニー管弦楽団である。

 今回の開催は、第5回の石田泰尚さん、そして第7回の清水和音さんと第8回の長谷川陽子さんの4回分がセットで発売されたのだが、神奈川芸術協会の会員に優先的に先行発売されたため、会員でない私は発売日にセット購入したにもかからわず希望するような席が取れなかった。単券ではなおのこと前の方は取れない。だから珍しく、最前列・左ブロックの中程、ソリストを横から見るような位置になってしまった。人気アーティストが揃って登場し、協奏曲の名曲の数々がプログラムされるということで大変売れ行きが良かったようである。

 今回だけは3名のソリストの共演というカタチになっていて、もちろん3名とも何度も聴いている人たちではあるが、直接的な知り合いは上村さんだけだった。彼女の「ロココ〜」はまだ聴いていなかったと思うので、楽しみにしていたものである。

 1曲目は「ロココ風の主題による変奏曲」。この3曲の中では室内楽的なコンパクトさを持った曲。弦楽と木管を中心にしたオーケストラは、小編成というわけではないが、淡々としていて抑え気味になる。元々そういう曲なのだ。一方で、チェロ問い楽器はけっこう指向性が強いので、できればセンターで、ソリストの正面方向で聴きたかった。
 それでも、上村さんのチェロは音量がとても豊かで、音色も艶やかで濃厚である。音程も極めて正確、リズム感も良く、カンタービレがよく効いた、よく歌う演奏に終始した。全体的にはテンポはやや速めで、キレが良く、若さと瑞々しさに溢れた演奏だった。装飾的な速いパッセージも的確かつサラリとこなし、むしろ旋律を大らかに歌わせている。その押し出し方も程良い程度で、オーケストラとのバランスも申し分ない。かといってアンサンブルをまとめようとしている様子でもなく、あくまでソリストとしての主張は十分に発揮できていたと思う。懸念を払拭するように、チェロの音はまったく問題な聞こえていた。
 最終変奏とコーダ以外は粛々とした静かな曲にも関わらず、大きな咳をする人がかなり多く、聴いていてもかなり耳障りに感じた。価格の安いコンサートだからというわけでもなかろうが、聴衆マナーにも苦言を呈したい。出てしまう咳は仕方がないとしても、少しは遠慮するという誠意を持てないようなら、クラシックのコンサートには来て欲しくない。

 2曲目は「ヴァイオリン協奏曲」。弓さんは安定的で高度な技巧を持ったヴァイオリニストで、全体を通して速めのテンポを取り、比較的インテンポで、軽快にスイスイと曲が流れていく感じだ。テクニックは正確で、速いパッセージでも、重音奏法やフラジォレットなどもストレスを感じさせない上手さがある。音色にも豊かさがあり、若々しくて男性的な、爽やかな演奏だと思う。そういった演奏のキャラクタであるから、逆の言い方をするなら、少々アッサリしていて、あまりコクがないといか・・・・。しかし、あれもこれも求めるのは酷であろう。彼の持ち味は、他の人にはなかなか出せない清々しい個性が感じられる。一服の清涼剤のような、爽やかな「ヴァイオリン協奏曲」であった。

 休憩を挟んで後半は「ピアノ協奏曲 第1番」である。上原さんの協奏曲を聴くのは久し振りのような気がしたが、改めてこの名曲を聴くと、やはり上原さんは上手い! 冒頭の和音で3拍子を刻むところから、音楽がしなやかに歌っている。序奏における華麗な技巧も素晴らしいし、ソナタ形式の主部に入ってからの縦横無尽に跳ね回るピアノを聴いていると、ひとつひとつの音符や、小さなフレーズも細やかなニュアンスで丁寧に描かれている。そして全体の流れも極めて良い。例えばオーケストラ側が一定のテンポで主旋律を演奏している間に、彼女のピアノは自由にテンポを変化させ、つかず離れずの絶妙のタイミングで、装飾的なフレーズを歌わせるのである。そういうところで演奏に濃厚な色彩感を作りだしているともいえるが、意識しないで聴いていると、心地よく音楽が流れていくだけ。そういった自然さも上手さのひとつなのだろう。
 この曲の壮大でドラマティックなオーケストレーションに対して、上原さんのピアノはパワーでも負けない。時には腰を浮かせて前掲で立ち上がるように鍵盤に体重を乗せて、重低音を轟かせるのも、彼女のお馴染みの光景だ。女性的な繊細さで消え入るようなピアニッシモから(しかし鮮やかに聞こえる)、地響きのような轟音まで、実に幅広いダイナミックレンジを持ち、音はあくまで澄みきっていて、しかもロマンティックな情感たっぷりに音楽を作っていく。ディテールまでしっかりと作られたこういう素晴らしい演奏を聴くと、国内の音楽コンクールで優勝するクラスの音大生や音高生の演奏が(その時は良く思えても)急にもの足りなく感じてしまう。上原さんはやはり格が違いすぎる。

 ついでだから、神奈川フィルについても一言。まあ、こうした企画コンサートで、しかも主役はあくまでソリストなのだから、あまりやる気も出ないというのも分からないでもないが、いささか緊張感に乏しく、縦の線が乱れることもしばしば、ソリストにも合わせていけないというのは如何なものか。指揮者にも問題があるのかもしれないが、こういう演奏を聴かされるととてもじゃないが、定期会員になりたいという気にはなれない・・・・。もう少し頑張って欲しい。

 終演後は楽屋に訪問して上村さんにだけはご挨拶をした。彼女は現在もスイスのバーゼル音楽院に留学中なので、演奏会がある度に帰ってくるというような状況だ。そうした訳だから、年に数回、聴く機会を持てる程度になってしまう。できるなら、もっと聴ける機会を増やしていただけると嬉しいのだが、まだまだ勉強中というのでは仕方のないことなのだろう。




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6/29(金)トランス=シベリア芸術祭/ワディム・レーピン主宰/ザハール・ブロン、服部百音、パロマ・ソー、樫本大進らが夢の饗宴

2018年06月29日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
トランス=シベリア芸術祭 in Japan 2018
スーパー☆ヴァイオリニスト 夢の饗宴
「継承」−ザハール・ブロン教授70歳記念に捧ぐ−


2018年6月29日(金)19:00〜 BUNKAMURAオーチャードホール S席 1階 6列(最前列)19番 8,500円
指揮・ヴァイオリン:ザハール・ブロン
ヴァイオリン:ワディム・レーピン
ヴァイオリン:樫本大進
ヴァイオリン:服部百音
ヴァイオリン:パロマ・ソー
管弦楽:フェスティバル・アンサンブル
    第1ヴァイオリン:小林壱成、福田俊一郎、小川恭子、大関万結
    第2ヴァイオリン:鍵冨弦太郎、奧野玄宣、小形 響、本田有輝
    ヴィオラ:生野正樹、有吉 翼、原田友一
    チェロ:伊藤文嗣、蟹江慶行
    コントラバス:菅沼希望
    ハープ:原 日向子
    チェンバロ:園田隆一郎
【曲目】
J.S.バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043(ブロン、レーピン)
ワックスマン:カルメン幻想曲(ソー)
ヴィエニャフスキ:グノーの『ファウスト』による華麗なる幻想曲(服部)
サラサーテ:ナヴァラ(服部、ソー)
ショスタコーヴィチ:2つのヴァイオリンのための5つの小品
          第1曲:プレリュード(樫本、ソー)
          第2曲:ガヴォット(服部、ソー)
          第3曲:エレジー(服部、ソー)
          第4曲:ワルツ(ブロン、服部)
          第5曲:ポルカ(レーピン、ソー)
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ(レーピン)
マスネ:タイスの瞑想曲(ブロン)
ラヴェル:ツィガーヌ(ブロン)
ヴィヴァルディ:3つのヴァイオリンのための協奏曲 ヘ長調(レーピン、樫本、ブロン)

 世界的なヴァイオリニスト、ワディム・レーピンさんが主宰する「トランス=シベリア芸術祭」の日本開催が今日から始まった。本日の公演はガラ・コンサートに相当するもので、「スーパー☆ヴァイオリニスト 夢の饗宴」と題して、レーピンさんを中心にして、お師匠さんに当たるザハール・ブロン先生をメイン・ゲストに、そのお弟子さんに当たる樫本大進さん、服部百音さん、パロマ・ソーさんらが集結した。演奏はすべての曲がコンチェルト形式で行われ、指揮はブロン先生、管弦楽は本日のための特別編成による「フェスティバル・アンサンブル」が受け持った。趣旨としては、ブロン先生の70歳を記念してのコンサートという位置づけで、師匠から弟子へと「継承(Connecting Generations)」がステージで展開されることになりそうだ。

 会場はNKAMURAオーチャードホール。例によって客席は1列〜5列が撤去されステージが拡張されているため、私の取った6列は最前列である。本日はすべての曲がコンチェルト形式なので、中央でブロン先生が指揮をして、管弦楽の「フェスティバル・アンサンブル」は着席しての演奏、ソリストは指揮者の手前側のステージ中央に立って演奏した。「フェスティバル・アンサンブル」については事前に発表されていなかったが、会場でプログラムを見てビックリ。若手を集めての臨時編成だが、日本音楽コンクールの優勝者も含むけっこうスゴイメンバーが揃っている。レーピンさん主宰の芸術祭で、いったいどういうルートでこれだけのメンバーを集めたのだろう。

 1曲目は、J.S.バッハの「2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043」。ブロン先生の弾き振りとレーピンさんのソロである。この曲は、2ヶ月前の2018年4月15日、日本フィルハーモニー交響楽団の「サンデーコンサート」にゲスト出演したブロン先生と百音さんの演奏でも聴いている。第2ソロ・ヴァイオリンのレーピンさん合図で曲が始まる。フェスティバル・アンサンブルの弦楽合奏から浮かび上がって来るブロン先生とレーピンさんのヴァイオリンは、何と鮮やかな響きを持っていることか。色彩的で豊潤、厚く深みのある音色、情感の込められてロマン的な歌わせ方であると同時に、気品がある。バロック音楽とは思えない程の濃厚な音楽表現は、曲の持つイメージを一新してしまう。バロック音楽は単調に感じることが多く苦手意識が強かったのだが、今日のようなロマン性の強い演奏を聴くと、考えを改めなければならない。やはり演奏家の良し悪しということなのだろう。

 2曲目はワックスマンの「カルメン幻想曲」。ヴァイオリン・ソロはパロマ・ソーさん。彼女はまだ13歳くらいで日本なら中学生。この年齢にして既に国際的に演奏キャリアをスタートさせている。もちろんブロン先生の愛弟子の1人だ。ブロン先生の70歳を記念する本日のコンサートに抜擢されたということは、それだけの実力があり評価されているこいうことに他ならない。
 演奏が始まると、ナルホドと思わせる。私は最前列で聴いているので、ソーさんのヴァイオリンから発せられるリアルなナマ音を聴いているし、細やかなニュアンスの表現や高速パッセージの超絶技巧も目の当たりにした。総合的に見ればかなり上手い。とにかく指が良く回るし音程も正確無比、速いパッセージでも均質な音が出ている。技巧的には相当レベルが高く、この年齢にして、もう行き着くところまで行ってしまっている感じ。後は表現力や解釈の方が課題になってくると思われる。といっても表現力が足りないと言っているのではない。目を閉じて聴いてみれば、その辺の音大生たちよりも上。技巧のレベルの高さに対して表現力がまだ追いついていないという意味だ。具体的に言うと、「カルメン幻想曲」のような曲に対して、テンポ感がやや一本調子に感じられ、またダイナミックレンジもあまり広くない。音量も大きい方ではない。つまり比較的小さめの枠組みの中にギッチリ完璧に詰め込んでいるようなイメージで、厳しい言い方をすればメリハリに乏しいということだ。カルメンならではの自由奔放さが感じられないのである。しかし、逆に言えば技巧性が強く押し出されている訳で、この曲を器楽的に解釈するならば、かなり完成度の高い演奏だと言うこともできる。いずれにしても13歳の少女にあれもこれも求めるのは酷な話。現時点でのソーさんは、十分過ぎるくらいにBrava!!だといえる。

 3曲目はヴィエニャフスキの「グノーの『ファウスト』による華麗なる幻想曲」。ソリストは百音さんである。こちらも相当な超絶技巧の曲であり、オーケストラ伴奏によるコンチェルト形式の小品にしては20分ほどの大作である。
 『ファウスト』から採られた主題はこれぞロマン派と呼べるような美しいもの。それをソロ・ヴァイオリンが大きく歌わせる中に超絶技巧の装飾的なフレーズが溶け込んでいる。前の「カルメン幻想曲」もそうだが、この曲も題材がオペラから採られているため、それぞれの主題が極めて歌謡的で息の長いフレージングと呼吸するような息遣いを持っているのが特徴だ。だから、ソロ・ヴァイオリンに頻出する超絶技巧的なパッセージに気を取られてしまうと、本質を見誤ることになる。それらはあくまで装飾であって、本質は「歌」なのだ。オペラの歌には歌詞があるしドラマでもあるので情感を表現しやすいが、その旋律がヴァイオリンに置き換えられると、様々な演奏技術を伴う器楽曲になる訳だが、そこでヴァイオリンの機能性を重視して技巧的な表現にするのか、あるいは本質である「歌」を重視して旋律楽器であるヴァイオリンを如何に歌わせるか、それが解釈ということだろうと思う。
 百音さんの演奏は、もちろん後者の方だと思う。深い溜息のようなG線の低音からすすり泣くようなE線のフラジォレットまで、ヴァイオリンで表現できる旋律の歌わせる技巧を駆使して、息づくようなニュアンスや、感情をオモテに出すような表現をしている。物理的に言えば、ダイナミックレンジはかなり広く取っているし、音には艶やかで潤いがあり、音色は多彩に変化し、鮮やかに輝いたり深い陰影を描いたりする。テンポを自在に変化させて旋律を大きく歌わせるのは、オペラのアリアのようだ。超絶技巧を持ちながら、それに頼らずに旋律を歌わせることに力点を置くのは、ブロン先生一流の教え方によるものなのだろう。
 またそのような自由度の高い百音さんの演奏に対して、指揮をするブロン先生がフェスティバル・アンサンブルをうまくコントロールして、寄り添わせていた。弦楽合奏ではオーケストラのような華やかさはないが、音量的にも適切で、ソロ・ヴァイオリンがキレイに浮き上がっていた。今日の百音さんによる「ファウスト・ファンタジー」は、そうした「歌う」ヴァイオリンの魅力がいっぱい詰まった演奏であった。もちろん、Brava!!

 3曲目は、サラサーテの「ナヴァラ」。ソリストは百音さんとソーさん。2つのヴァイオリンと管弦楽のための傑作といえる小品だ。とはいうもののオーケストラ伴奏で聴ける機会は滅多になく、しかも今日は弦楽合奏の伴奏・・・・もちろん初めて聴くスタイルである。明るく陽気に、歌うような美しい旋律がいっぱいの曲ではあるが、そこはサラサーテ、2つのヴァイオリンは超絶技巧満載である。テンポもやや速めの設定であろうか。百音さんとソーさんが澄んだ音色で主題を歌わせるかと思えば超絶的な速いパッセージが飛び交う。聴いていて美しくもあり、サーカスのアクロバットのようであったりもする。その辺りが何とも華やかで楽しい。
 ソーさんをリードしていく百音さんの姿がお姉さんっぽくて微笑ましい(いつもはステージの上では最年少だから)。この超絶技巧の曲を平気で弾いてしまうお二人だが、やはりこの年代で5歳の年の差は大きいようで、同じ音型を二人揃って弾く場面などで顕著になるが、音色の色彩的な豊かさに違いが感じられた。しかし、この曲は今日のように若い演奏家が弾くと、一段と華やかになる。ブロン先生とレーピンさんがソロを弾いたら・・・・まあ、別の意味で素晴らしい演奏になるだろうとは思うけど。

 休憩を挟んで後半は、まずショスタコーヴィチの「2つのヴァイオリンのための5つの小品」からである。楽曲としては、ショスタコーヴィチが作曲した映画音楽等を題材に、友人のレフ・アトミヤンが2つのヴァイオリンとピアノのための小品集として編曲したもの。今回はそれをマルコ・クリスポという人が弦楽合奏伴奏用に編曲したものが演奏された。これも実際には演奏機会は少なく、この版での演奏は聴いたことがない。さらに本日は、各曲ごとに2人のソリストが交替して、ブロン先生を含めて5人のヴァイオリニストが組み合わせを変えて演奏したのである。

 第1曲の「プレリュード」は、樫本さんとソーさん。ここで初めて樫本さんが登場したが、何となく元気がない感じ。お疲れの様子(?)であった。甘美でロマンティックな曲を、2人が甘〜い音色で演奏していたのが印象に残る。第2曲の「ガヴォット」と第3曲の「エレジー」は百音さんとソーさん。曲想はかなり違う2曲だが、ソリスト2人の演奏が若々しくフレッシュなイメージで、しかも少女っぽいロマンティシズムいっぱいに描かれていたような気がする。ここでも百音さんがお姉さんぶりを発揮して、妹分をリードしていく様子を見せた。第4曲の「ワルツ」はブロン先生と百音さん。優雅だが憂いも深いワルツの旋律が抒情的に演奏された。第5曲の「ポルカ」はレーピンさんとソーさんである。陽気で軽快なポルカがとても楽しげに演奏された。

 続いては、お馴染みサン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」をレーピンさんの独奏で。最近けっこう聴く機会の多くなった曲ではあるが、弦楽合奏の伴奏版では場では初めて聴くことになった。ここで初めてレーピンさんのヴァイオリン独奏を聴くことができた。音量が大きく、楽器を十分に鳴らせている。そして何よりも旋律を大らかに歌わせ、押し出しが強い。男性的な骨太な力感があり、音色も艶やかでさすが質感は素晴らしい。まさに世界のトップクラスのレベルである。

 続いてはブロン先生の弾き振りでマスネの「タイスの瞑想曲」。波間に揺れるようなハープの分散和音に乗せて、ブロン先生のヴァイオリンは立ち上がりがキリッとした演奏で、息の長い歌うような旋律をしっとりとした特徴的なフレージングで聴かせる。やはりブロン先生の歌わせ方は素敵。この感じ、弟子達にも受け継がれている。

 もう1曲、ブロン先生のソロで、ラヴェルの「ツィガーヌ」。それぞれの音のアタマの部分に明瞭なアクセントを入れるフレージングは独特。立ち上がりがクッキリしているのに続く音は歌謡的な滑らかさと息遣いを感じさせる。70歳という年齢をまったく感じさせない、アグレッシブかつ極めて音楽的な豊かさを感じさせる演奏であった。

 最後はヴィヴァルディの「3つのヴァイオリンのための協奏曲 ヘ長調」。この曲もかなり珍しい方に入るだろう。ソリストはレーピンさん、樫本さん、ブロンブロン先生の3名。やはりヴィヴァルディらしい、イタリアっぽい陽気さと生命力を感じさせる曲である。奏ヴァイオリンが3つ本になると、協奏交響曲といった風情になる。3つのヴァイオリンとそこに豊かな音量の3名が加わり、彩りがとても豊かになる。フェスティバル・アンサンブルが明るい音色で瑞々しい演奏をしていて、実に華やいだ様子の、ガラ・コンサートに相応しいフィナーレとなった。

 たっぷり盛りだくさんのプログラムであったため、終演は午後9時半くらいになった。やや長めのコンサートであったが、名曲と珍しい曲の組み合わせによるバラエティに富んだ構成となり、一時も飽きることなく、非常に充実したコンサートとなった。ソーさんの驚嘆すべき超絶技巧、そこに豊かな音楽表現を加えた百音さん、骨太で力強いレーピンさん、独特のフレージングで大きく歌わせるブロン先生。それぞれに個性を発揮してして、ブロン・ファミリーの才能の饗宴といった要素もあった。樫本さんの出番が少なかったのがちょっと残念だった。しかし、考えてみればスゴイ演奏家たちが集まったコンサートだ。このような人たちの演奏を間近で聴くことができたのは、本当に幸せなことだと思う。

 終演後には、楽屋にお邪魔して百音さんらにご挨拶。今年の4月から桐朋学園大学のソリスト・ディプロマコースで学ぶようになった百音さんには、同年代の面会者も多く集まっていて、楽屋は大賑わいであった。そうこうしていて、オーチャードホールを出たのは午後10時くらいになっていた。それでも金曜日の夜の渋谷は人でいっぱいだ。


 
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6/28(木)須関裕子ピアノ・リサイタル/80名のサロンでピアノの機能を最大に発揮させる豊かで絶妙の表現力

2018年06月28日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
OTTAVA Night Vol.8
須関裕子 ピアノ・リサイタル「夢あふれる作曲家の集い」


2018年6月28日(木)19:00〜 紀尾井町サロンホール 自由席 1列正面 3,000円
ピアノ:須関裕子
【曲目】
モーツァルト:ロンド ニ長調 K.485
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 作品27-2「月光」
シューマン:幻想小曲集 作品12より「夕べに」
リスト:愛の夢 第3番
リスト:パガニーニの主題による大練習曲 第3番「ラ・カンパネッラ」
ショパン:舟歌 嬰ヘ長調 作品60
ショパン:ワルツ 第7番 嬰ハ短調 作品64-2
ドビュッシー:ベルガマスク組曲
      「前奏曲」「メヌエット」「月の光」「パスピエ」
ドビュッシー:喜びの島
《アンコール》
 ドビュッシー:前奏曲集 第1巻より「亜麻色の髪の乙女」
 シューマン/リスト編:献呈

《プレコンサート》OTTAVA Verde
チェロ:菅井瑛斗
ピアノ:三浦颯太*
【曲目】
ピアッティ:パチーニの歌劇『ニオベ』の主題によるカプリッチョ 作品22
ポッパー:演奏会用ポロネーズ 作品14*

 およそ2週間前の今月中旬、2018年6月16日のサロン・コンサートに引き続き、須関裕子裕子さんのピアノ・リサイタルを聴く。間隔を空けずに開かれた2回のリサイタルはいずれも小規模なサロン・コンサートであるが、主催者が異なるため、コンサート自体の企画主旨がいささか違っているものの、プログラム内容に大きな違いはない。基本的には今年の2月にリリースされた事実上のデビューCDアルバムを記念して、収録曲を何曲か含む構成になっている。
 今回は「夢あふれる作曲家の集い」のタイトルを設け、プログラム構成の趣旨をより明確に表現している。つまり、モーツァルト、ベートーヴェン、シューマン、リスト、ショパン、そしてドビュッシーなど、ピアノに特別な思いを寄せた作曲家の作品を集めている。誰でも知っているようなピアノの名曲コンサートのようでもあるが、逆に言えば、古今東西の名ピアニストが演奏し、録音を残している曲ばかりなので、聴く側の耳も肥えているし、演奏家としてもプレッシャーのかかる選曲になるかもしれない。

 間をおかない2つのリサイタルだったので、前回の演奏に対して今回も基本的には同様の解釈・演奏スタイルが踏襲されている。同じ感想の繰り返しになるので、取り敢えずは前回演奏された曲のレビューは割愛させていただくとして、今回の演奏曲目について見てみよう。

 モーツァルトとベートーヴェンは同じプログラムだったが、シューマンからは『幻想小曲集 作品12』より「夕べに」が選ばれた。ロマンティックな気分が漂う可愛らしい小品である。須関さんのピアノは音が柔らかく感じられる。穏やかで優しく、日常的な幸福感が聴く者の共感を呼ぶ。そういうタイプの演奏だ。

 リストからは「ラ・カンパネッラ」以外には「愛の夢 第3番」が選ばれた。CD収録曲でもある。淡々と描かれる抒情性に続き、感情が高揚して噴出する。意外に感情の起伏が激しい曲なのだ。須関さんの演奏は、澄んだピアノ音が編み上げる分散和音がとても美しく、角が丸く女性的な優しさに溢れていて、心に染み入るよう。素敵な演奏だ。

ショパンからは「舟歌」に加えて「ワルツ 第7番」が演奏された。こちらもCD収録曲。やや憂いを秘めたような主題が、澄んだ音色で流れるように紡がれていく。左手が刻むワルツのリズムと和声に乗せられる右手の主旋律とのバランスが素敵だ。左手をやや弱めにしていて、舞曲風であることよりも旋律のロマン的な表現を重視している。憂うる心情をエレガントに歌い上げていた。

 以上の3曲以外は、前回のリサイタルで演奏しているので、詳しいレビューはそちらを参照してほしい


 さて気付いたことがひとつ。今回の会場である「紀尾井町サロンホール」は普通のオフィス・ビルの1階にあり、矩形の床面積はおよそ30坪、可動式で最大80席となっている。普通のビルなので天井は高くない。したがって響きはタイトで、あまり残響はない。高さ25cmの小さなステージが設えられているが、床はフラットなので、後方席からはあまり見通しは良くなさそうである。ピアノはスタインウェイのフルコンサート、D-274(1989年ハンブルグ製)。音はとても素晴らしいが、このホールには少々パワーがありすぎるような気がする。
 須関さんの演奏は、このピアノがこのホールで鳴らせる限界を超えないように、うまくコントロールしていたようだ。最大音量を出すと恐らく音の行き場がなくなって聴く者には音圧が過度になりウルサく感じるはず。「月光ソナタ」の第3楽章や「ラ・カンパネッラ」のクライマックス部分などはパワー全開で弾くことになるが、須関さんはギリギリのところまでで抑えていたのだと思う。今日は1列目のピアノの真正面で聴いていたのに、音としての不快感は全くなかった。しかしチカラが抜けている訳ではないので、音には輝きがあった。低音部分では、弦の振動までがリアルに伝わって来るのに、金属的な音が澄んでいるのである。やはり上手い人が弾くと、キレイな音が出るものだと、改めて感じた次第である。

 さて、本公演には主催者が企画したプレコンサート「OTTAVA Verde」が催された。チェロの菅井瑛斗さん(桐朋学園大学音楽学部1年に在学中)が、まずはソロで、アッティの「パチーニの歌劇『ニオベ』の主題によるカプリッチョ 作品22」という珍しい曲を披露した。続いてピアノ伴奏に三浦颯太さん(桐朋女子高等学校音楽科/男女共学の3年に在学中)を加えて、ポッパーの「演奏会用ポロネーズ 作品14」が演奏された。若い音楽家の成長を手助けするという趣旨のものである。

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【お勧めCDのご紹介】
 須関裕子さんのデビューCDアルバム「LA CAMPANELLA」をご紹介します。本日演奏された曲目としては、タイトルにもなっているリストの「ラ・カンパネッラ」とシューマン/リスト編の「献呈」、そしてショパンの「舟歌」が収録されています。他には、シューマンの「アラベスク」や、ショパンの「英雄ポロネーズ」、「ワルツ第7番」、「バラード第3番」、「スケルツォ第2番」、そしてリストの「愛の夢第3番」と、名曲づくしのとても聴きやすいアルバムになっています。

ラ・カンパネッラ
須関裕子,リスト,シューマン,ショパン
マイスター・ミュージック



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6/26(火)清水華澄リサイタル/人気のメゾ・ソプラノが意欲的なプログラムで新境地を開拓(?)/温かみのある声質と豊かな声量

2018年06月26日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
清水華澄リサイタル
〜未来の自分へ〜


2018年6月26日(火)19:00〜 紀尾井ホール S席 1階 1列 10番 4,500円
メゾ・ソプラノ:清水華澄
ピアノ:越知晴子
サックス:鈴木広志*
【曲目】
アルマ・マーラー:5つの歌曲
         静かに町/父の庭/なま暖かい夏の夜/
         おまえのもとでは打ち解けられる/ぼくは花のもとをさまよう
グスタフ・マーラー :さすらう若人の歌
         いとしい人がお嫁に行く日は/今朝ぼくは野原を歩んだ/
         ぼくは燃える剣をもっている/いとしいあの子のつぶらな瞳が
ストラヴィンスキー:歌劇『エディプス王』よりヨカスタのアリア「恥と思わぬか、王子たち」
ベルリオーズ:歌劇『ファウストの劫罰』よりマルグリートのアリア「激しい愛の炎が」
谷川俊太郎 詩/根本卓也 作曲:『臨死船』RINSHISEN*
《アンコール》
 武満徹:うたうだけ
 マスカーニ:歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』より「ママも知るとおり」

 いつも明るく元気いっぱい、抜群の歌唱力と飾らない人柄で人気の清水華澄さんが、意外にも初のリサイタルを紀尾井ホール開いた。清水さんといえば存在感のあるオペラ歌手というイメージが強く、キャラクタ的には脇役のメゾ・ソプラノが多い。東京二期会でのオペラ公演を中心に、新国立劇場や日生劇場のオペラにも出演している。昨年2017年11月の日生オペラ『ルサルカ』でのイェジババ役は存在感を発揮していた。また、その公演に先立って開催された音楽レクチャー講座でも清水さんの面白いトークと歌唱を聴いている。チェコ語には苦労させられると言っておられたが、彼女は2011年の新国立劇場での『ルサルカ』にも第3の森の精の役で出演していた
 また、オペラだけでなく毎年年末の「第九」では複数のオーケストラから引っ張りだこで共演しているので、何度も聴いている。そのような訳なので、リサイタルの開催を知った時には迷わずチケットを取った。てっきりオペラ・アリア中心のプログラムだろうと思ってしまったのだが、中身を見てちょっとビックリした次第である。

 プログラムの構成は、第1部がドイツ歌曲で、グスタフ・マーラーの「さすらう若人の歌」は有名だからともかく、アルマ・マーラーの歌曲はかなり珍しい曲の部類に入るのではないだろうか。実はナマの歌唱を一度だけ聴いたことがある。2011年の「ラ・フォル・ジュルネ音楽祭」で清水さんの国立音楽大学の後輩にあたるソプラノの方が歌っていた
 清水さんのリートを聴くのは・・・・ひょっとして初めて? あまり声を張らないで歌う清水さんの声は、クセがなく、メゾ・ソプラノ特有の人肌の温かさがある。しっとりと、情感を込めて歌うのは、聴いていても心地よい響きを持っている。技巧的にも表現力も自然な感じで、喜びや悲しみの情感が描かれている。アルマの歌曲は女性的な優しさと包容力があり、マーラーの歌曲には深い陰影が刻まれる。

 第2部はオペラ・アリアだが、ストラヴィンスキーの『エディプス王』もベルリオーズの『ファウストの劫罰』もオペラ自体がなかなか聴く機会のない作品だ。両曲とも清水さんが映像などで聴いて深く感銘を受けたものだという。
 『エディプス王』は何とラテン語の台本。確かになかなか上演できそうもない。ストラヴィンスキーの新古典主義時代の後の作品らしいが(1927年初演)、音楽的には古典的な、あるいは古楽的な雰囲気を強く打ち出している。オペラのアリアになると、清水さんの得意分野ということになるのだろう。声の張り、立ち上がりの瞬発力や豊かな声量も、強烈な戦力となる。ご自身が言っておられるように身体が楽器としての機能を発揮するようだ。優れた楽器は、弱音から強音までストレスなく良く鳴る。
 『ファウストの劫罰』はもちろんフランス語歌唱。フランス語のオペラは本当に難しそうだ。最もポピュラーな『カルメン』でさえ、発音とオペラ風の歌唱法の兼ね合いが難しく、意外にうまく歌えている人は少ないように思う。清水さんのマルグリートのアリア「激しい愛の炎が」は、愛の苦しみを情感たっぷりに、はじめは切々と、次第に力感が込められていく。豊かな声量に頼るだけでなく、弱音の繊細な歌唱にも細やかなニュアンスが描き出されていた。

 ここで付け加えておきたいのだが、越知晴子さんピアノが実に素晴らしい。歌唱にピタリと寄り添い、歌唱を後押しするような、抜群のリズム感。ビアノ自体も極めて歌謡的に旋律を歌わせる。まるで息遣いがあるようなフレージングで、歌唱の伴奏ピアノとしての高い技術と豊かな感性が感じられた。

 そして第3部は谷川俊太郎さんの詩に根本卓也さんが曲を付けた『臨死船』というカンタータ。完全な新作ではないのだけれど、まあほとんどの人が初めて聴くことになっただろう。この詩はかなり長いもので、「臨死船」というのは三途の川を渡る船を指し、どうやら死んで「臨死船」に乗ってしまった自分の体験談のようなものが語られていく。
 越知さんのピアノに鈴木広志さんのサックスを加えた音楽を背景に、清水さんのパートは、詩の朗読を中心に部分的に歌唱へと変わる。音楽の形式としても実験的な要素が強い。朗読部分が多いので、物語の進行というか、描かれている世界観についてはよく分かる。不思議な世界観ではあるが、それが描かれているのは「詩」であって、背景で雰囲気を作り上げる音楽の方は現代的とはいえ旋律も和声も聴きやすく分かりやすいものだ。試みとしても面白いし、こうしたユニークな作品に触れられることも嬉しい。

 こうしたプログラムの構成を見ても、清水さんがこのリサイタルで新しいことへの挑戦を試みていることがわかる。そういえばリサイタルの副題に「未来の自分へ」とある。そのまま捉えれば、現在を起点に未来への展望として、歌曲のレバートリーを増やす、珍しいオペラ・アリアにもスポットを当てる、新作(現代作品)にも挑戦、ということだろうか。

 アンコールは2曲。武満徹の「うたうだけ」はお馴染みの曲だが、こういう聴き慣れた曲だと、清水さんの表現力の幅広さがよりよく分かる。つまりとても上手い。
 最後はマスカーニの『カヴァレリア・ルスティカーナ』より「ママも知るとおり」。ヴェリズモの歌唱では強烈なリアリティを感じた。やはりオペラ歌手としての清水さんは一級品だと思う。Brava!!

 終演後にはとくにイベントはなかったが、清水さんがロビーに出て来られると大勢のファンや関係者に囲まれていた。できればご挨拶だけでもさせていただきたかったが、あまりに大勢の人が取り囲んでいたのであえなく断念。次の機会まで持ち越しとしよう。オペラ出演や第九の時など、許されるなら楽屋にでもお伺いさせていただきたいものだ。
 また、清水さんには、今回をきっかけにして是非ともリサイタルを定期的に開催して欲しいと思う。

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6/24(日)東京フィル/オーチャード定期/萩原麻未の奔放さが冴えるラプソディ/エンジン全開、華々しく「ローマの松」

2018年06月24日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
東京フィルハーモニー交響楽団 第909回 オーチャード定期演奏会

2018年6月24日(日)15:00〜 Bunkamuraオーチャードホール C席 1階 8列 25番 3,465円(会員割引)
指 揮:渡邊一正
ピアノ:萩原麻未*
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:依田真宣
【曲目】
バーンスタイン:ミュージカル『キャンディード』序曲
ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー*
《アンコール》
 シャルル・トルネ/ワイセンベルク編:En Avril à Paris*
レスピーギ:リュートのための古い歌と舞曲 第3集
      「イタリアーナ」「宮廷のアリア」「シチリアーナ」「パッサカリア」
レスピーギ:交響詩「ローマの松」
      「ボルゲーゼ荘の松」「カタコンベ近くの松」「ジャニコロの松」

 東京フィルハーモニー交響楽団の「第909回 オーチャード定期演奏会」を聴く。このシリーズは以前から会員になっているのだが、「サントリーホール定期」と「東京オペラシティ定期」との間でプログラムが重なることがほとんとで、実際のところそれらの方が良い席を持っているため、オーチャードホールに東京フィルを聴きに来ることは滅多になかった。休日午後の渋谷にはあまり行きたいとは思わないし。ところが、今回はレジデント・コンダクターの渡邊一正さんが年に一度だけ登場する公演であり、1回だけのプログラムだったので、聴くことにした。実は今期(2018/2019シーズン・5月スタート)から1階の3列目、右ブロックの通路側という、Cランクとは思えない良席に移動した。オーチャードホールはステージが高いため最前列だと見上げるような感じになってしまうが、3列目まで下がると、けっこう見通しが良くなる。オーケストラ自体もステージ端からけっこう奥のほうにセットアップされるので、3列目はかなり良い感じで音が回ってくるのだ。今回はそのことも確認できた。

 1曲目は、バーンスタインの「ミュージカル『キャンディード』序曲」。今年はバーンスタインの生誕100周年に当たるため、彼の作品があちこちで頻繁に演奏されている。『キャンディード』はカテゴリとしてはブロードウェイ・ミュージカル。曲相も、いかにも、といった感じ。東京フィルは、この手の曲の演奏は抜群に上手い。華やかなサウンドで推進力があり、踊り出すようなリズム感も魅力だ。

 2曲目は、萩原麻未さんをソリストに招いてのガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」。音楽的にはジャズの風合いが満載の曲で、新しい主題が次々と出てくるメドレー風の構成だ。萩原さんのピアノはいつもはフランス風のキラキラした色彩感が豊かだが、今日は、ちょっと湿り気のあるねっとりとした音色で、憂鬱な気分を吹き飛ばそうと無理をしているような、そんなイメージをうまく表現している。3列目に下がっても塗装していないピアノの底が見えるような位置関係だが、それでも音は雑味が減ってかなり良くなる。管楽器が優遇されているオーケストレーションもジャズ風を意識したものだろうが、ここでも東京フィルの濃厚で質感の高い音色と演奏の上手さが光っていた。

 萩原さんのソロ・アンコールは、シャルル・トルネ/ワイセンベルク編の「En Avril à Paris」という曲。ジャズの即興演奏のムード音楽のような曲で、ホテルのラウンジなどで演奏するとロマンティックな大人の夜を演出する。萩原さんの自由奔放な演奏スタイルと煌びやかなサウンドがピッタリであった。

 後半は、まずレスピーギの「リュートのための古い歌と舞曲 第3集」という珍しいプログラム。16〜17世紀の古いイタリアのリュートの曲を題材に、弦楽5部合奏に編曲された曲だ。4つの楽章からなり、それぞれ「イタリアーナ」「宮廷のアリア」「シチリアーナ」「パッサカリア」となっている。古楽であってもイタリアの音楽はあくまで歌謡的で、息の長い旋律が大らかに歌う。渡邊さんの指揮もその辺は十分に心得ていて、旋律をしなやかに歌わせる。東京フィルの弦楽アンサンブルも、老舗オーケストラの伝統を引き継いでいて、美しく厚く響かせる。珍しい曲を見事に演奏で堪能させてくれた。

 最後は、レスピーギの「交響詩『ローマの松』」。この曲に付いてはあまり説明は要らないだろう。オペラ以外のイタリア音楽で、管弦楽曲の最高傑作といって良いだろう。東京フィルならバッティストーニさんが振るべき曲とも思えるが、今日の渡邊さんの指揮も素晴らしかった。
 「ボルゲーゼ荘の松」では何とも鮮やかな、色彩感いっぱいのサウンドがホールを満たし、急に地中海の陽光きらめく青空が広がっていく。日差しの温度や爽やかな風を感じるような演奏。これこそは音で描く風景。まさに交響詩だ。
 「カタコンベ近くの松」では血塗られた歴史の重みがズッシリと感じられる重厚な演奏。
 「ジャニコロの松」は緩徐楽章。夜のローマを丘の上から見下ろす風景が描かれる。そよそよと風が頬をなで、月の光が松の揺れる枝振りを映像のように描き出す。木管群もとても質感が高く、極めて美しい演奏。夜鳴き鶯のさえずりが録音で流される。
 「アッピア街道の松」はもう圧巻。古代ローマ軍の大勢の行軍が徐々に近づいて来る、その緊迫感と地響きの迫力。行軍が近づいて来て、音楽がクレッシェンドされていくと、ステージの両サイドにバンダのトランペットとトロンボーンが登場し、高らかにファンファーレを吹き鳴らす。その濁りのない華々しいサウンドも見事。全合奏に至るとその圧倒的な迫力は筆舌に尽くしがたい。大音量の音の奔流が、ステージから風圧を伴って押し寄せてくるようだ。それでもうるさく感じられないのは、ひとつひとつの音の質感が高く、オーケストラ全体のバランスも見事に保たれていて、音楽的な完成度が高いからだ。

 東京フィルの演奏には、どこか聴く者の心を揺さぶるチカラがあると思う。素晴らしい「オーチャード定」期であった。この分だと、今期はオーチャードホールに通う機会が増えそうだ。

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