Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

1/14(土)東京フィル/響きの森/南紫音・佐藤しのぶ・錦織健ら多彩なゲストと尾高忠明の楽しいニューイヤー

2017年01月14日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
東京フィルハーモニー交響楽団 響きの森クラシック・シリーズ Vol.58
ニューイヤー・コンサート 2017


2017年1月14日(土)15:00〜 文京シビックホール A席 1階 2列 23番 6,900円(セット券割引)
指 揮:尾高忠明
ヴァイオリン:南 紫音*
ソプラノ:佐藤しのぶ**
テノール:錦織 健***
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
【曲目】
モーツァルト:歌劇『フィガロの結婚』序曲
モーツァルト:ロンド ハ長調 K.373*
ベートーヴェン:ロマンス 第2番 ヘ長調 作品50*
J.シュトラウスⅡ:喜歌劇『こうもり』序曲
ドニゼッティ:歌劇『愛の妙薬』より「人知れぬ涙」***
グノー:歌劇『ファウスト』より「宝石の歌」**
ロッシーニ:歌劇『セビリアの理髪師』より「空は微笑み」***
プッチーニ:歌劇『マノン・レスコー』間奏曲
プッチーニ:歌劇『蝶々夫人』より「ある晴れた日に」**
《アンコール》
 ヴェルディ:歌劇『椿姫』より「乾杯の歌」** ***

 公益財団法人文京アカデミーと東京フィルハーモニー交響楽団の提携による共同主催の「響きの森クラシック・シリーズ」。年4回開催のこのシリーズ、1月開催は「ニューイヤー・コンサート」という扱いで、チケット価格は少々高めだったが、多彩なゲストを招いての楽しいコンサートになった。何より、指揮者の尾高忠明さんのお話しが軽妙・洒脱で、新旧各地の面白い体験談や業界ネタなどを面白おかしく語られて、お正月らしい肩の凝らないクラシック・コンサートとなった。
 東京フィルは、この時期、別働隊がニューヨークに行っていてカーネギーホールなどでコンサートを行っているとのこと。さすがは国内で最大規模の人数を擁するオーケストラだけあって、ニューヨークと東京で同時にコンサートを行ったりすることができるのである。

 前半はウィーン古典派の音楽。1曲目はモーツァルトの『フィガロの結婚』序曲。尾高さんは速めのテンポで軽快に飛ばしていくのに対して、日本で最もオペラ演奏になれている東京フィルだけに、我が意を得たりといわんばかりの軽めの音でワクワク感を演出する。実に手慣れた、粋な演奏であった。

 2曲目はモーツァルトの「ロンド ハ長調 K.373」。独奏ヴァイオリンとオーケストラのためのロンドである。ヴァイオリン独奏は、ゲストの南 紫音さん。ブルーのお衣装に身を包み、ウィーン社交界の名花といった風情で、お嬢様というよりはお姫様にような気品の漂う雰囲気である。演奏の方は、見た目の可憐な感じとはちょっと違って、少々エッジが立ったところがあり、キレ味の鋭い立ち上がりと、大らかに旋律を歌わせるしなやかさ、そして豊潤な響きを持っている。キリッとしているのに柔らかく、正確な技巧を駆使しての表現の幅も広く豊かだ。

 3曲目はベートーヴェンの「ロマンス 第2番 ヘ長調 作品50」。これは有名な曲なので誰でも知っているだろう。わざわざソリストを立ててオーケストラのコンサートで演奏することは意外に少なく、今日のような企画コンサートならではの聴き所だ。紫音さんのヴァイオリンで、尾高さんの指揮で、東京フィルの演奏というのは、かなり贅沢な設定である。尾高さんはこの曲をかなり遅めのテンポを採り、この美しく抒情的な名旋律を紫音さんにゆったりと情感いっぱいに歌わせていく。まるで歌曲のように、ヴァイオリンにも息遣いがあるような、歌うようなフレージングと細やかなニュアンスの彩り。紫音さんのクラスのヴァイオリニストをゲストで呼んで、小品2曲(合わせても15分くらい)ではもったいないではないかと思っていたのだが、この演奏を聴いて納得。協奏曲1曲分に相当する多くの要素がぎゅっと詰まった質の高い演奏だった。尾高さんが遅いテンポを採用した理由がよく分かる。このテンポだからこそ、これだけヴァイオリンが歌えるのだ。

 後半は一転してロマン派のオペラの音楽。
 1曲目はJ.シュトラウスⅡの「喜歌劇『こうもり』序曲」。お馴染みのウィンナ・ワルツやポルカが詰まった、楽しいオペレッタへと誘う曲。聴いているだけで期待感が高まり、ワクワクして、早く幕が上がらないかなァ、という気分にさせてくれる。東京フィルはこういった曲の演奏は抜群に上手い。尾高さんの手慣れた指揮に乗せられて、オーケストラ自体が踊り出したくなるような躍動感に満ちている。

 続いては、ドニゼッティの歌劇『愛の妙薬』より「人知れぬ涙」。テノールの名アリアである。歌うのはもちろん、錦織 健さん。いつになっても変わらない美声である。高音域の安定した美しい歌唱は見事なもので、端正ながらもしっとりとした情感を込めて、聴く者を惹き付けるチカラがある。やはり錦織さんはスター歌手だと思う。押し出しは決して強くないのに、抜群の存在感を示している。
 最近はテニスの錦織 圭(にしこりけい)選手が大活躍しているが、名前の似ているお二人とも島根県の出身で、そちらには「錦織」姓が多いのだそうだ。漢字は同じでも呼び名は色々あって、「にしこおり」「にしこり」「にしごおり」「にしきおり」と様々。歌手の錦織さんは本当は「にしこおり」なのだが、東京に出て来てからは「にしきおり」と読まれることが多く、そのまま今では「にしきおりけん」のアーティスト名で通していると以前聞いたことがある。

 次はグノーの歌劇『ファウスト』より「宝石の歌」。こちらはコロラトゥーラ系のソプラノさんの定番アリア。佐藤しのぶさんの登場である。天性の美声と軽やかで無理なく出る高音域がとても美しい。尾高さんのやや遅めのテンポに乗せて、十分な声量でたっぷりとフレーズを歌わせながらの歌唱は貫禄さえ感じさせられる圧倒的な存在感である。佐藤さんもスター歌手のオーラがいっぱいだ。
 そういえば錦織さんも佐藤さんもNHKの紅白歌合戦に出演したことがある。お二人ともオペラ歌手としても世界レベルの一流だが、活動の幅が広いマルチ・タレントでもある。

 続いてはロッシーニの歌劇『セビリアの理髪師』より「空は微笑み」。錦織さんはギターを弾きながらの歌唱であった。オペラ歌手のギター弾き語りというのも珍しいかも。こんなところでも多芸ぶりを発揮する。ギターの演奏そのものは難しいことをしているわけではないが、ギターを弾きながらオペラのアリアを歌うというのは、けっこう難易度が高いのではないだろうか。さらに、コロラトゥーラの装飾がいっぱい付いた技巧的な歌唱もなかなか見事なものだった。

 ここで歌手のお二人にちょっとお休みいただくための管弦楽小品は、プッチーニの歌劇『マノン・レスコー』間奏曲。美しくも哀しいプッチーニ節。尾高さんは、これでもかとばかりに哀しげに旋律を歌わせ、分厚い和声で情感を盛り上げる。やり過ぎなくらいに抒情的な演奏。いかにもオペラ! 的なサービス精神旺盛な世界である。

 プログラムの最後は、プッチーニの歌劇『蝶々夫人』より「ある晴れた日に」。もちろん佐藤さん。コチラも典型的なプッチーニ節の名曲。哀しく切ないのに、憧れを残していて、熱い情感を込めてドラマティック。佐藤さんの歌唱は、豊かな声量と揺るぎない高音域、朗々たる歌唱。見事なものである。

 アンコールはお約束通り、ヴェルディの歌劇『椿姫』より「乾杯の歌」。錦織さんのアルフレード、佐藤さんのヴィオレッタ、尾高さんの指揮、東京フィルの演奏。ニューイヤー・コンサートに相応しい豪華なフィナーレとなった。

 今日の「響きの森」シリーズは、いつもとはちょっと違った雰囲気の「ニューイヤー・コンサート」。曲目がかなり少なく感じられると思うが、これは、1曲ごとの曲間に尾高さんや出演者の方々とのトークがあったからだ。そしてそのトークが面白いこと。さりげなく楽曲の解説をしたり、思い出話に花を咲かせたり。ひとつひとつのお話しにはちゃんとオチが付いていて、笑わせてくれる。まあ、ニューイヤーなのでこういった楽しいコンサートも良いものだ。何だかんだと2時間たっぷり、楽しませていただいた。会場を後にする人たちの笑顔が印象に残るコンサートであった。

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1/9(月・祝)千葉交響楽団/ニューイヤー/山下一史+小林沙羅でウィーンの香りをたっぷりと

2017年01月09日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
千葉交響楽団 特別演奏会 New Year Concert 2017
〜新年を寿ぐ新しい響き・美しい歌声〜


2017年1月9日(月・祝)14:00〜 千葉県文化会館・大ホール A席 1階 2列 25番 3,000円
指揮:山下一史
ソプラノ:小林沙羅*
管弦楽:千葉交響楽団
【曲目】
J.シュトラウスⅡ:喜歌劇『メトゥザレム王子』序曲
J.シュトラウスⅡ:アンネン・ポルカ 作品117
J.シュトラウスⅡ:トリッチ・トラッチ・ポルカ 作品214
レハール:喜歌劇『ジュディッタ』より「私の唇にあなたは熱いキスをする」*
ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ「おしゃべりなかわいい口」作品245
ローサス:波濤を越えて
J.シュトラウスⅡ:祝祭行進曲 作品452
ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ「天体の音楽」作品235
カールマン:喜歌劇『チャールダーシュの女王』より「ハイヤ! 山こそ我が故郷」*
ジーツィンスキー:ウィーン我が夢の街*
《アンコール》
 プッチーニ:歌劇『ジャンニ・スキッキ』より「私のお父さん」*
J.シュトラウス:ポルカ「クラプフェンの森にて」作品336
ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ「休暇旅行で」作品133
J.シュトラウスⅡ:皇帝円舞曲 作品437
《アンコール》
 エドゥアルト・シュトラウス:ポルカ「テープは切られた」
 J.シュトラウスⅡ:ワルツ「美しき青きドナウ」
 J.シュトラウス Ⅰ:ラデツキー行進曲

 今年2017年最初のコンサートは、地元の千葉交響楽団のニューイヤーコンサートを聴くことになった。「千葉交響楽団」の名はあまり馴染みがないと思うが、千葉県唯一のプロ・オーケストラとして30年以上にわたる活動を続けてきた「ニューフィルハーモニーオーケストラ千葉」が、昨年2016年10月に改称、「公益財団法人 千葉交響楽団」となったものである。旧「ニューフィル千葉」時代に何回かは聴いたことがある程度でしかなかったが、昨年、縁あって定期会員になったので、今後は機会を見て聴いていこうと考えている。地元のオーケストラということでもあり、本来ならもっと早くから支援していくべきだったのであろうが、千葉市辺りにいると行ける範囲内の東京近郊にコンサートやオペラなどが山のように開催されているので、ついつい地元を軽視しがちになってしまう。まあ、他にも理由は色々あるのだが・・・・。

 というわけなので、改めて「千葉交響楽団」について紹介しておこうと思う。
 千葉県あるいは千葉市というところは、地元の人間がこういうことを言うのもナンだが、クラシック音楽文化のレベルはかなり低い方だと思う。そもそも、コンサートを行うホール(箱モノ)は全国自治体のご多分にもれず、けっこう多くあるのだが、肝腎の入れる中身(コンサート)の数が少ない。従って聴く側の人間も少ないものと思われる。事実、コンサート会場で知り合った音楽仲間にも、千葉県在住者は少ない。
 こうした環境の中、千葉県で唯一のプロ・オーケストラが千葉交響楽団(「千葉響」と呼びたいところだがこの呼び名もまだまったく定着していない)なのである。常設のプロ・オーケストラといっても、正式な団員は25名しかいないので、2管編成の室内オーケストラ以下の規模でしかない。従ってコンサートの度に応援を呼ぶしかないわけで、本日のニューイヤー・コンサートでは64名の編成になっていた。これはある程度仕方のないことであり、実際に正式団員の数が少ないからといって、演奏の質が低いということではないのがこの世界の面白いところだ。千葉交響楽団の演奏は、意外に(といっては失礼かもしれないが)上手いのである。
 演奏活動の方は、地域に根ざした活動が中心になっていて、県内各地に招聘されてのコンサートや青少年へのアウトリーチなどの活動は多い。ところが、いわゆる有料の定期演奏会は年に2回(5月と10月)しか開かれていない。それに定例のニューイヤー・コンサートを加えた3回のコンサートが主催公演となっているのみである。この3つの主催公演が、「個人定期会員」の対象となっている。この「会員」は回数券方式。会員になった日から1年間が有効期間で、主催公演はS席が4,000円のところ、3枚綴りの回数券が10,000円(会費)となり、会員は優先的に席を指定して予約できるという仕組みだ。私の場合は、好きな前方の席がAランク(3,000円)であるため金銭的なメリットはない(かえって損)が、席選びを優先するので、まあ良しとしよう。
 千葉交響楽団は、昨年2016年4月から、音楽監督に山下一史さんを迎え、新たなスタートを切った。5月と10月の定期演奏会に続いて、本日のニューイヤー・コンサートが3度目の登場となり、これで1シーズンが終わったことになる。山下さんは積極的、情熱的に取り組んで下さっているようなので、今後の主催公演も面白くなっていきそうだ。

 さて、本日の「ニューイヤー・コンサート」は、お馴染みのウィンナ・ワルツ、ポルカなどを集めたもので、気楽に楽しめるもの。この時期、あちこちで開かれている「ニューイヤー・コンサート」は、ウィーン・フィルのそれを模したものと、ドヴォルザークの交響曲「新世界から」をメインに据えたものとに大別される。私は普段はあまりニューイヤーものには行かないが、今回は折角会員になった地元(会場の千葉県文化会館には自転車で行ける)開催であるし、お馴染みの小林沙羅さんも出演するというので、今年の「聴き初め」になったという次第である。

 コンサートはJ.シュトラウスⅡの「喜歌劇『メトゥザレム王子』序曲」という珍しい曲から始まった。このオペレッタ自体は上演される機会はまずないと思われるが、序曲だけは残っているという。様々な主題が次々と現れるのは、オペレッタの中の主要名場面の曲なのだろう。

 続いてもJ.シュトラウスⅡで「アンネン・ポルカ」と「トリッチ・トラッチ・ポルカ」。この辺りは人気の曲だ。軽妙なポルカが弾み、ウィーンの街の庶民的な陽気さが描かれて行く。演奏の方は、初めの3曲はまだエンジンが暖まっていないような感じで、弦楽も濁っていたし、ティンパニのリズムも重い感じがした。

 続いてはレハールの「喜歌劇『ジュディッタ』」より「私の唇にあなたは熱いキスをする」。沙羅さんの登場である。この曲は、昨年末のクリスマス・コンサート in 能楽堂」でも聴いたばかりだったが、やはりオーケストラとの共演でしかも満席の大ホールとなると、沙羅さんのノリも素晴らしくなるし、またオーケストラ側も急に目が覚めたような生き生きとした演奏で鮮やかな音色に変わった。『ジュディッタ』も上演される機会は少ないオペレッタだが、この曲は人気がある。世界のディーヴァ、アンナ・ネトレプコさんもコンサートではよくこの曲を歌い、踊る。昨年の来日コンサートでももちろん歌った。美しく自由奔放でエキセントリックなヒロイン、ジュディッタがナイトクラブで妖艶に歌うアリア。沙羅さんが歌うとちょっと上品になってしまうが、ドイツ語の発音は綺麗だし、細やかなニュアンスを込めた歌唱も美しい。間奏部分ではフラメンコ風の踊りを披露したり、客に向かって花を投げたりと、お馴染みのパフォーマンスで会場を盛り上げた。

 続いてはヨハンの弟、ヨーゼフ・シュトラウスのポルカで「おしゃべりなかわいい口」。山下さんはこのヨーゼフが大好きなのだそうだ。陽気で明るいだけでなく、旋律も楽しさいっぱいの可憐な曲。演奏もだんだんリズム感のノリが良くなってきた。

 前半の最後は、ローサスの「波濤を越えて」。ローサスはメキシコの作曲家だが、どういうわけか有名なこの曲はウィーン風の趣でいっぱい。ワルツのリズムをウィーン風に刻んだら、もっと粋な演奏になったかも・・・・。

 休憩を挟んで後半はJ.シュトラウスⅡの「祝祭行進曲 作品452」から。ブルガリアのフェルディナント皇太子とパルマ公ロベルトI世の長女マリヤ・ルイザ・ブルボン=パルムスカとの結構祝賀曲さして作曲された曲。全編が祝祭的で堂々たる偉容を誇る曲想である。演奏は、比較的ゆったりとしたテンポで、より堂々たるイメージの明るい色彩感であった。

 再びヨーゼフ・シュトラウスのワルツ「天体の音楽」。山下さんが大好きなヨーゼフの曲は、ヨハンとはひと味違った多様性を持っているという。その説明を聞いた上でこ演奏を聴くと、「あ−、ナルホド」と気付かされた。ヨハンよりも繊細で優美。新年の舞踏会向けに作られた曲に相応しく、千葉交響楽団の演奏も上品な香りが漂ってくるような、素敵な演奏になっている。弦楽は透明に澄み渡り、木管は小鳥のさえずりのように軽やかで清々しい。金管は華やかに彩りを添え、打楽器も流れるように拍子を刻む。

 ここで再び沙羅さんが登場し、カールマンの喜歌劇『チャールダーシュの女王』より「ハイヤ! 山こそ我が故郷」を歌う。この曲もとても有名で、昨年、ネトレプコさんもアンコールで歌った。またこのオペレッタは上演される機会がけっこう多いので、私も観たことがある(2014年、東京二期会の公演など)。ハンガリーの民族的な旋律の曲だが、ウィンナ・オペレッタの香りもぷんぷんと漂ってきて、浮かれた雰囲気を醸し出す。沙羅さんは声を張り、元気いっぱいに歌い、またまた間奏部分では今度はハンガリアン・ダンス風の踊りを披露。最後の歌詞は「Bravo!!」であり沙羅さんの高音がホールに突き抜けた。Brava!!

 続いて沙羅さんがもう1曲。お馴染み、ジーツィンスキーの「ウィーン我が夢の街」である。この曲はウィーンに留学したり現地で働いたことのあるソプラノさんは、帰ってくると必ずリサイタルで歌うくらい、皆さんに好かれている曲である。1番の歌詞はウィーン訛りのドイツ語で、2番の歌詞は日本語訳詞で歌われた。途中から沙羅さんは客席に降りてきて、花を配って歩きながら歌い、愛嬌を振りまく。最後の1輪は、ステージに戻って指揮の山下さんに贈られた。まさに夢のような舞台。沙羅さんの明るいキャラクタは、オペラへの豊富な出演による演技力にも支えられて、スター・オペラ歌手としてのオーラへと変わっていた。Brava!!

 トークを挟んで、沙羅さんのアンコールは、プッチーニの歌劇『ジャンニ・スキッキ』より「私のお父さん」。曲自体は有名すぎるくらい有名な曲で、アンコール・ピースとしてもソプラノさんの定番でもある。沙羅さんは2012年にブルガリアのソフィア国立歌劇場に客演し、『ジャンニ・スキッキ』のラウレッタ役でヨーロッパにオペラ・デビューを果たした。そして同歌劇場の日本への引っ越し公演ツアーでも同役を演じ、全国を回ったのである。私は今日と同じ、ここ千葉県文化会館(席もほとんど同じ2列目のセンター)で、オペラに出演した沙羅さんを初めて観たので、その時の「私のお父さん」は今でも鮮明に覚えている。今日は久し振りにオーケストラ伴奏で歌うのを聴き、感慨も新たである。沙羅さんの素晴らしいところは、瞬間的に曲の世界観を創り上げてしまうところ。役柄になりきった情感が込められていて、あの日のオペラの本舞台の映像が、フラッシュバックのようによみがえってくる。

 さて、コンサートの方も終盤にさしかかる。J.シュトラウスのポルカ「クラプフェンの森にて」は森の中でカッコウを初めとする色々な小鳥の鳴き声が聞こえてくる楽しい曲。お正月らしいのんびりした雰囲気も手伝ってか、千葉交響楽団の演奏もすっかり肩の力が抜けた感じになり、音楽から楽しさが伝わってくる。

 ヨーゼフ・シュトラウスのポルカ「休暇旅行で」は陽気で軽快なテンポの曲。この休暇旅行は馬車であろうか。車窓を流れる明るい日差しに満たされた田園風景が見えてくるような、素敵な演奏だ。トランペットの軽快な演奏が素晴らしい。

 プログラムの最後は、J.シュトラウスⅡの「皇帝円舞曲」。いわゆる三大ワルツのひとつで名曲中の名曲である。堂々たる偉容を誇るかのような演奏は、晴れやかでゴージャスなサウンドで、コンサートのフィナーレを飾るに相応しい。しなやかに歌う弦楽は優雅に響き、木管は十分に色彩的で、流れるようなワルツ(円舞曲)のリズムが素晴らしい。
 千葉交響楽団の演奏は、質感が高く、在京のプロ・オーケストラと比べても遜色はないと思う。木管群とホルンがかなり良い味を出しているので、基本的なところは問題はないと思う。

 アンコールは3曲も。まずは、エドゥアルト・シュトラウスのポルカ「テープは切られた」。運動会で徒競走をしているような楽しげな曲(ウィーンの人は運動会はしないかな?)。
 続いては予定調和のごとく、ワルツ「美しき青きドナウ」。考えてみれば、この曲をナマ演奏で聴くのは久し振りだ。毎年ウィーン・フィルの「ニュー・イヤー・コンサート」をテレビで元日の夜に観るので、毎年聴いてはいるが、やはりウィーン・フィルでなくてもナマの演奏の方がよほど良い。全体的なやや速めのテンポで、エネルギーに満ちたワルツであった。
 最後の最後は、お約束通り、J.シュトラウスI世の「ラデツキー行進曲」。会場全体で手拍子を楽しみながらのフィナーレであった。これだけ盛り上がって楽しめるのなら、わざわざウィーンまで行かなくても良さそうだ。今日はウィーンの香りをたっぷりと楽しむことができたのだから。

 千葉交響楽団は、日本オーケストラ連盟の準会員。正会員になるためには、年に5回以上の定期公演を行うなどの条件がある。友人達とも話していたのだが、最低でも年に6回くらいの定期演奏会を持たないと、聴き手側が育ってこない。年に3回では聴く楽しみが日常化しないと思うのだ。私たちのように東京まで聴きに行く者はともかくとして、地元の聴き手を育てるためにも、もっともっとコンサートを!!
 終演後、ロビーをウロウロしていたら山下さんや楽団の人たちが出て来られたので、ファンとの交流の場となった。私は山下さんとは面識がなかったが、この機会にと思って挨拶を交わし、会員になったので次回公演も楽しみにしていると伝えた。
 次回主催公演は「第101回 定期演奏会」で、「北の情景そして熱い心」をテーマに、2017年5月20日(土)、会場は習志野文化ホール。指揮はもちろん山下一史さん。ゲスト・ソリストはヴァイオリンの青木尚佳さんで、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を演奏する。メイン曲はシベリウスの交響曲第2番。私は会員なので、既に座席は確保済みである。今日の演奏を聴いて、千葉交響楽団がぐっと身近になったような気がする。尚佳さんのチャイコフスキーももちろん楽しみだが、どんなシベリウスょ聴かせてくれるのか、これは楽しみだ。

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12/30(金)川﨑室内管弦楽団「結成演奏会」は毛利文香と田原綾子のモーツァルトのコンチェルタンテが秀逸

2016年12月30日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
川﨑室内管弦楽団 結成演奏会【昼公演】

2016年12月30日(金)14:00〜 藤原洋記念ホール 指定席一般 1階 2列 10番 5,000円
指 揮:坂入健司郎
ソプラノ:中山美紀*
ヴァイオリン:毛利文香**
ヴィオラ:田原綾子**
管弦楽:川﨑室内管弦楽団
【曲目】
モーツァルト:モテット『踊れ、喜べ、幸いなる魂よ』K.165(158a)*
モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K.364**
《アンコール》
 モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 第1番 K.423より 第2楽章**
モーツァルト:交響曲 第41番 ハ長調 K.551『ジュピター』

 今年最後のコンサートは、年末もかなり押し詰まった12月30日、川﨑室内管弦楽団の「結成演奏会」というもの。このオーケストラは、音楽監督の坂入健司郎さんが中心となって新たに結成されたもので、国内外のプロの器楽奏者が集まって、と紹介されているが、実際はプロ奏者ならびにすでに演奏活動を行っている音楽大学生・大学院生などで構成されているようだ。メンバーは、第1ヴァイオリン6、第2ヴァイオリン6、ヴィオラ5、チェロ4、コントラバス3、フルート1、オーボエ2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ1、オルガン1となっている。本日の「結成演奏会」はオール・モーツァルト・プログラムなので、それに合わせたメンバー構成といったところだろう。第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンを両翼に対向配置し、第1の奥にチェロ、第2の奥にヴィオラという配置だ。すなわち、高音域と低音域の主声部が左側、内声部が右側と言う風に分かれる。これだと内声部がはっきり聞こえてくるというメリットがある。ただし、コントラバスは管楽器の後方、最後列に配置されていた。
 本日の「結成演奏会」は昼・夜の2回公演(プログラムは同じ)となっていて、さすがに12月30日では一般の聴き手側にはスケジュール的にツライものがある。しかも5,000円というチケット価格は、事情は分かるが聴き手側にしてみればいささか高い。私はできれば昼・夜両公演を聴きたかったが、さすがに諸事情あってムリ!! だから昼公演のみを聴かせていただくことにして、これを今年最後のコンサートとすることにした。

 坂入さんは1988年、地元川崎市の生まれで、慶應義塾大学経済学部を卒業し、指揮法は井上道義氏、小林研一郎氏、三河正典氏、山本七雄氏らに学んだという。現在は東京ユヴェントス・フィルハーモニー(慶應義塾大学のオーケストラ)の音楽監督を務める傍ら、2015年「かわさき産業親善大使」に就任、「“音楽のまち”川﨑から世界に発信すること」を目指して、川﨑室内管弦楽団を結成するに至ったとのことである。

 曲目は上記の通りオール・モーツァルトで、人気のある名曲を集めていて「結成演奏会」に相応しいゴージャスな内容になっていると同時に、素晴らしいソリスト達を招いている。
 「モテット『踊れ、喜べ、幸いなる魂よ』K.165(158a)」のソリストは、ソプラノの中山美紀さん。現在、東京芸術大学大学院音楽研究科修士課程声楽(独唱)先行3年次に在籍している。主に宗教曲の分野で活動しているとのことで、私としては関心の薄い分野ということもあってか存じ上げなかった。

 「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K.364」は、モーツァルトの中では最近最もお気に入りの曲なので、聴けるだけでも嬉しい。ソリストはヴァイオリンが毛利文香さん、ヴィオラが田原綾子さんである。
 毛利さんは桐朋学園大学の音楽学部ソリストディプロマコースを修了しているが、現在は慶應義塾大学の文学部に在籍していて、東京ユヴェントス・フィルのコンサートミストレスも務めている。2015年9月より、ドイツ・クロンベルクアカデミーに留学中でもある。川﨑室内管弦楽団のコンサートマスターにも名を連ねていて、本日の「結成演奏会」ではソリストを務めると同時に、後半の「ジュピター」ではコンサートマスターを務めた。
 田原さんは桐朋学園大学音楽学部4年に在学中だが、今年2016年の10月からはバリ・エコールノルマル音楽院に留学が始まり、日本とフランスを行ったり来たりして、しかも室内楽を中心にかなりの演奏会に出演し、大変ハードなスケジュールをこなしている、ある意味で売れっ子のヴィオリストである。毛利さんとは「エール弦楽四重奏団」や「ラ・ルーチェ弦楽八重奏団」を始めとする様々なシーンで共演している。本日の「結成演奏会」ではソリストを務めると同時に、後半の「ジュピター」ではオーケストラの一員として、ヴィオラのトップサイドで演奏した。

 会場は「藤原洋記念ホール」。慶應義塾大学日吉キャンパス(横浜市港北区)内、協生館の中にある2階構造/510席の多目的ホールだが、音楽ホールとしても設計されていて残響時間は満席時1.6秒前後。実際に聴いてみると、残響は長くはないが、スッキリした自然な響きで、なかなか良い音響である。2008年にできた新しいホールであり、まだ新築の匂いが残っている感じだ。東急東横線・目黒線の日吉駅を降りてすぐのところにあるので、アクセスは非常に便利である。座席は2列目だったが、予想していた通り1列目は使用していなかったので事実上は最前列で聴くことになった。

 さて肝腎の演奏についてレビューしていこう。
 1曲目は「モテット『踊れ、喜べ、幸いなる魂よ』」。初めて聴く川﨑室内管弦楽団の演奏は、引き締まった弦楽のアンサンブルとオーボエやホルンの質感が高く、確かにプロ・レベルのものだ。坂入さんの音楽作りは結構ダイナミックなもので、かなりメリハリを効かせ、音量も出ていて、かなり躍動的なモーツァルトを創り出していく。テンポは中庸からやや遅めだろうか、そのためにアンサンブルがしっかりと構築されているが、音楽の流れはスムーズだ。
 中山さんの歌唱は、清純なイメージのクセのない声質。尖ったところがなく、まろやかで優しい感じがする。高音域も素直に出ていて、「ハレルヤ」のコロラトゥーラの技巧的な装飾も安定的にこなしていた。声量も十分で、ホールの大きさと室内オーケストラの音量を考えれば、優れたバランス感覚を持っていると思う。素敵な歌唱であった。

 2曲目は「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲」。今年、この曲を聴くのは3度目になる。ほぼ1年前にあたる今年2016年1月に、ひとつは「S&R財団 15周年記念 ワシントン賞受賞者コンサート」で川久保賜紀さんのヴァイオリン、オリ・カムさんのヴィオラ、ナビル・シェハタさんの指揮する紀尾井シンフォニエッタによる演奏。もうひとつは「フレッシュ名曲コンサート/ニューイヤー・スペシャル・コンサート」で藤原浜雄さんのヴァイオリン、そしてお弟子さんに当たる田原綾子さんのヴィオラ、小林研一郎さんの指揮する読売日本交響楽団の演奏であった。つまり、田原さんにとって今年は、このモーツァルトのコンチェルタンテで1年が始まり、1年の最後を締めるのもコンチェルタンテなのであった。そして実は、田原さんは11月にもCHANEL Pigmalion Daysの土岐祐奈さんのリサイタルにゲスト出演して、このコンチェルタンテをピアノ伴奏で全曲演奏している(残念なことに私は聴けなかった)。ヴィオリストにとっては数少ない協奏曲の名曲を1年に3回も演奏する機会に恵まれるということは、音楽界において常に多くの演奏家から求められる存在になっていることの証しでもあろう。
 演奏の方は、何と素晴らしいものであったか。
 毛利さんも田原さんも、先日の「江副記念財団 リクルートスカラシップコンサート」でも一緒だったが、この年代の演奏家たちの中でまさにトップ・クラスであることは間違いなく、学生の身分でもあり勉強中であることも確かだが、演奏家としてもプロ・レベルであることもまた確かなのである。今日の演奏では、二人の息がピッタリと合っているというだけでなく、描こうとする音楽が一致していて見事なくらいな一体感のあるデュオを形成していた。旋律の歌い方もリズムの流れもピタリと合っていて、その中でヴァイオリンとヴィオラの音色の違いと1オクターヴの音程の差が鮮やかなコントラストを生み出している。この曲は、ヴァイオリンとヴィオラが完全に同等に扱われているために、奏者間に技量の差があったり、解釈や表現に隔たりがあったりすると、かなり目立ってしまう。ヴァイオリンとヴィオラが乖離してしまうのだ。
 今日の演奏は、二人のソリストが後半にはオーケストラの奏者に加わったことなどもあり、ヴァイオリンとヴィオラとオーケストラが緊密なアンサンブルを生みだし、その中での役割分担を明瞭にしていて、同じ方向性の音楽を創り出すことに成功していた。ガチンコでぶつかる協奏曲も面白いが、少なくともこの曲は協奏交響曲(シンフォニア・コンチェルタンテ)なのであるから、ひとつの方向性でシンフォニックな音楽を創ることが望ましいと思う。その意味でも、素晴らしい演奏であった。
 第1楽章は協奏風ソナタ形式のAllegro楽章。主題の提示部はまずオーケストラだけで始まるが、やや遅めのテンポでしっかりとした造形を打ち出している。最初から毛利さんは第1ヴァイオリンのパートを、田原さんはヴィオラのパートを一緒に弾いているが、二人の演奏はオーケストラに見事に溶け込んでいる。やがてソロのヴァイオリンとアヴィオラがオーケストラから離れて協奏曲として展開していくようになると、鮮やかに浮き上がってくる。毛利さんのヴァイオリンはやや線を細めにして艶やかでしなやかなのに対して、田原さんのヴィオラは大らかで伸びやかなイメージ。だが基本的にはオーケストラの弦楽と同質の色彩感を保ちつつ、ソリストとしての張りの強さ、押し出しの強さで浮き上がられているのだ。ソロのヴァイオリンとヴィオラは同じ音型のフレーズを追いかけるように交互に弾いていくので、音色と1オクターヴの音程の違いが美しい対比を描き出している。この曲でも時としてヴィオラは性格上控え目にになりがちだが、田原さんが明瞭に押し出すので、ヴァイオリンとの対等を保っている。カデンツァも息がピッタリ。見事なものである。
 第2楽章はハ短調の緩徐楽章。オーケストラの序奏に続いて、ヴァイオリンとヴィオラが、憂いを秘めた抒情的な主題を交互に歌わせて行く。絡みつくように旋律を描き出すヴァイオリンとヴィオラが、とても悩ましげな情感をそそる。オーケストラ側もけっこうメリハリを効かせていて、あたかもロマン派のような情感たっぷりの演奏であった。この楽章もソナタ形式で、カデンツァがある。
 第3楽章はロンド。Prestoで軽快、陽気で迷いのない音楽である。ホルンが活躍する。A-B-A’-B’-A’のAの部分はオーケストラが中心。Bの部分ではヴァイオリンとヴィオラが弾むような主題とそれに続く下降系の3連符の連続する部分で生き生きとして流れるような推進力を描き出しているところが実に素敵だ。A’以降はヴァイオリンとヴィオラが主導してオーケストラと協奏していく。ソロを弾く二人は、実にノリが良く、楽しそう。音楽が好きで、この曲が大好きで、演奏する喜びのエネルギーが、聞こえてくる音楽にいっぱい詰まっているように感じた。この楽章はとくに、指揮者も若く、オーケストラもできたばかりで若い奏者中心、ソリストふたりも若く、はち切れんばかりの生命力に溢れ、聴く側にもそのエネルギーが伝わり共振していく。素晴らしい演奏だった。Bravo!!間違いなし。

 毛利さんと田原さんのソリスト・アンコールは、モーツァルトの「ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 第1番 K.423」より第2楽章。普通はヴァイオリンの主旋律に対してヴィオラが伴奏するイメージになるものだが、ここでも繊細優美な毛利さんのヴァイオリンに対して田原さんのヴィオラが豊かに押し出し、両者を対等のバランスにする。田原さんの主張するヴィオラがなかなか良い。

 プログラムの後半は「交響曲 第41番 ハ長調 K.551『ジュピター』」。若い頃から慣れ親しんできた名曲中の名曲だが、どういうわけかコンサートでの演奏を聴く機会が少ない。今年2016年4月に読売日本交響楽団の名曲シリーズで聴いているのだが、その前は5年前に遡ってしまう。これだけオーケストラのコンサートを聴いていても、5年間もこの名曲に当たらないのは、オーケストラにとっては扱い方の難しい曲だからなのかもしれない。今日のように、オール・モーツァルト・プログラムであれば、オーケストラのコンサートのメイン・プログラムに相応しい大曲なのだが・・・・。毛利さんがコンサートマスターに、田原さんがヴィオラのトップ・サイドに加わったため、第1ヴァイオリンが7名、ヴィオラが6名に増えている。
 坂入さんの解釈は、下手な小細工はせずに、ストレートでスタンダードなものだ。室内オーケストラという少数精鋭による緻密なアンサンブルと、瞬発力、キレの良いリズム感などを活かし、ダイナミックでメリハリの効いた演奏はしているが、やや遅めのテンポで重厚に響かせる。無機的なインテンポにはせずに、旋律を豊かに歌わせ、人間味の情感に溢れた音楽を創り出していた。
 第1楽章は明快なハ長調による堂々たるソナタ形式。豪華絢爛で神々しいばかりの響きを持つ楽章で、まさに「ジュピター」の名に相応しい(木星ではなくてローマ神話の主神の方)。若い指揮者で、小編成の室内オーケストラでモーツァルトの交響曲を演奏するのであれば、速めのテンポで切れ味鋭く、シャープな演奏をするのかと思いきや、坂入さんは遅めのテンポでドラマティックな描き方を打ち出す。あたかも20世紀の巨匠たちの音楽のように。弦楽が思いの外力強く少人数であっても管楽器やティンパニとの音量バランスも良い。ホールの音響も適度で、音がクリアに響き、清涼感のある演奏になっていた。
 第2楽章は緩徐楽章。ここでもやや遅めのテンポを採り、主題をゆったりと歌わせて行く。その響きは濃厚。音の響きだけで言えばロマン派の香りさえ漂って来る感じだ。美しくレガートがかかり、縦の線をあえて明瞭にせずに旋律を歌わせて行く。
 第3楽章はメヌエット。しかし曲想は古風な舞曲風ではなく、あくまでシンフォニックなものだ。テンポは中庸からやや速めだろうか。ハッキリとしたリズム感を主張せずに、柔らかなレガートに覆われた極上の響きである。
 第4楽章。C-D-F-Eのいわゆる「ジュピター音型」を中心にいくつかの主題がフガートを形成しながら対位法的に絡み合うという複雑怪奇な構造を持つ。天才モーツァルトの天才を集大成したような極め付けの楽章である。演奏は、個々の主題の絡み合っているのを解きほぐすような丁寧さがあり、それぞれの主題がけっこう明瞭に聞こえてくる。リズムを刻むホルンとトランペットも出しゃばらず、ティンパニも決して軽くならないように、それでいて推進力を打ち出すようで素晴らしい。だが何と言っても第1ヴァイオリンを中心に弦楽が複雑な構成を緻密なアンサンブルとキレの良い演奏で見事にまとめ上げていた。コンサートマスターの毛利さんのチカラによるところが大きかったと思われる。
 今日の「ジュピター」は、想像していた室内オーケストラの響きを遥かに凌駕していた重厚さに驚かされた。川﨑室内管弦楽団の「結成演奏会」としては大成功だったと思う。初顔合わせでこれだけのアンサンブルを創り出せるのであるなら、メンバーが変動していかなければ今後の活動次第では素晴らしいオーケストラに発展して行くに違いない。

 終演後は、それぞれの出演者たちを囲む姿が見られた。年末の押し詰まった12月30日で、日吉のホールでのコンサートでは、なかなか一般の音楽ファンを動員するのは難しい面もあったと思う。従って関係者の来場が多かったようなのだが・・・・。昼公演はこれで終了となったが、本日もう1回、夜公演がある。昼公演を聴いた上で、できれば夜公演も聴きたくなった。2度目はもっと素晴らしい演奏になると思われるからである。しかし所用があるために断念した(画像は終演後に撮影したもののため、オーケストラ用の黒の衣装)。


 これにて、2016年のコンサートはすべて聴き終えた。今年最後といったところで、1週間もすれば次のコンサートが待っているわけだが、一応は区切りとしたい。12月の後半はいつもよりはコンサートが多く、ハードなスケジュールとなってしまい、聴いているだけとはいってもヨレヨレになってしまった。しかし連日であっても、大好きなアーティストの演奏会ばかりが続いたので、ひとつひとつのコンサートがとても楽しかった。仕事やプライベートで疲れた身体を引きずってコンサートを巡っているのだが、それが可能となっている環境にいられることに感謝したい。いつまで続けられるかは分からないが、取り敢えずは新しい年もまた、多くのコンサートが待っている。素晴らしい演奏に出会えることを願って止まない。

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12/29(木)東響「第九と四季」/青木尚佳の「四季」は一段と音の伸びが良く「第九」にも熱が込められる

2016年12月29日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
東京交響楽団 特別演奏会「第九と四季」(第2日)

2016年12月29日(水)14:00〜 サントリーホール A席 1階 1列 20番 7,200円(会員割引)
指揮&チェンバロ*:秋山和慶
ヴァイオリン:青木尚佳*
ソプラノ:大村博美**
メゾ・ソプラノ:清水華澄**
テノール:ロバート・ディーン・スミス**
バス:妻屋秀和**
合唱:東響コーラス**
合唱指揮:小林昭裕
コンサートマスター:グレブ・ニキティン
【曲目】
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集「四季」より「春」ホ長調 作品8-1/「冬」ヘ短調 作品8-4*
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱付」**
《アンコール》
 蛍の光**

 昨夜の「第九と四季」とまったく同じプログラム。今年は「四季」のソリストが青木尚佳さんなので、両日聴くことにしていた。しかも最前列ソリスト正面の同じ席である。とくにイチオシの演奏家が出演する場合を除けば、同じプログラムのコンサートを2日続けて聴くという機会はほとんどない。さすがに同じものを2度きくのは・・・・と思うのは誰しも同じであろう。
 ところが、音楽は一期一会。音楽には「一回性」があり、同じ演奏家、音時会場、同じ曲目であっても、演奏する度に変わるものだ。つまり同じ演奏は二度と再現することができないのである。私が昔からレコードやCDにはそれほど固執せず、コンサートでのナマ演奏を好むのは、その日その時の一期一会を楽しみたいからに他ならない。繰り返しまったく同じ演奏を聴くことができる録音という方法には「再現性」という素晴らしい価値がある。もちろんその価値は100%認めるものではあるが、一方でナマ演奏の魅力は演奏家と聴き手が時間と空間を共有して生まれる一度しかない貴重な体験なのである。

 今回、「第九と四季」を2日続けて聴き、改めて音楽の「一回性」を強く意識させられた。ごく大雑把な言い方をしてしまえば、「第九」も「四季」も1日目よりは2日目の方が「良い演奏」だった。ある意味では当然のことで、経験値が増すことによって、ミスが減り、より理想的な表現に近づけることができるはず。実際に「四季」では尚佳さんのヴァイオリンが伸びやかに鳴り音もよく出るようになっていたし、「第九」でも秋山先生の指揮の間合いが大きくなっていてオーケストラ側もしなやかに対応するようになっていた。その違いをハッキリと感じ取ることができたのである。
 それでは1日目を聴いた人は損をしてしまうのかというと、決してそうではない。1日目の演奏にはまた違った緊張感があり、演奏している皆さんの集中力が高い。これを「良し悪し」で捉えるのではなく、1日目は「緊張感の高い集中した演奏」であり2日目は「伸びやかで情感豊かな演奏」だと思えば、評価は好みの問題に変わるのである。実際にアンコールの「蛍の光」は、1日目の方が聴衆の乗りが良かったと思うし、私自身も2日目の方が感動のテンションが下がってしまう感じがした。やはり音楽は一期一会なのである。

 プログラム前半は「四季」。もちろん基本的な解釈と演奏へのアプローチは変わっていないが、演奏自体の安定度が昨日とは違っていた。
 「春」の第1楽章、冒頭からオーケストラ(弦楽合奏)の音色がぐっと鮮やかになっている。尚佳さんのソロ・ヴァイオリンが弦楽合奏から離れてソロを弾き始めると、音の均一度が増し、フレージングがムラなく、歌うようになっていて、それだけで華やいだ「春」らしい彩りが見えてくるようだ。第2楽章はソロ・ヴァイオリンのすすり泣くような繊細な歌わせ方が情感をそそる。ヴィオラ首席の青木篤子さんの強めの2連の音との対比が見事。第3楽章は再び目が覚めるような、陽光が降り注ぐような、眩しげな色彩感が溢れてくる。尚佳さんのヴァイオリンは豊かに旋律を歌わせつつもひとつひとつの音が明瞭でクッキリした鮮やかな造形を持つ。端正だが非常に音楽的な豊かさが感じられる。それに触発されたように、東響の演奏もいつもより濃厚な色彩感を感じさせていた。
 「冬」の第1楽章は厳しい冬の嵐が近づいて来るようなクレシェンドに込められたエネルギーの奔流が真に迫ってくる感じ。立ち上がりの鋭いソロ・ヴァイオリンが力強く刻み、オーケストラを牽引していく。第2楽章は、オーケストラ側のピツィカートによる分散和音が昨日よりも控え目になって、ソロ・ヴァイオリンの主題が引き立てられている。温かい部屋の温もりのイメージが、ヴァイオリンの音色に乗っていた。第3楽章はソロ・ヴァイオリンによる冒頭部分の安定度が増し、豊かに音楽が歌われている。尚佳さんのヴァイオリンの音色は一段と艶やかに潤いを帯び、あるいはカデンツァ風の部分では激しい情感を鋭いタッチで描き出したりする。音色の色彩的な変化も多彩であるし、純音楽的な技巧的な部分も合奏協奏曲としての仕上がりが一段と良くなっていたと思う。
 2日目の「四季」は、ソロ・ヴァイオリンと弦楽合奏のアンサンブルの親和性が一段と優れ、バランスも良くなっている。一方で、ソロ・ヴァイオリンが弦楽合奏から離れると異なる色彩感で鮮やかに浮き上がらせ、協奏曲としての魅力も十分に描き出されていた。そして何よりも双方が音楽的に豊かな表現をするようになっていた。今日の演奏には「緊張感」はなく、「豊かさ」があったと思う。Bravo!!な演奏であった。

 後半の「第九」も、昨日と基本的な解釈とアプローチは変わっていないはずだが、どことなく今日の方がノリが良く感じられた。「第九」にノリの良さというのも変な表現だが、本番の演奏における、ほとんど気分的なことなのかもしれない。全体の流れは昨日と同じようなので、繰り返すことは避けるが、では何が違っていたのかというと、一番感じたのは、秋山先生の間合いの取り方である。
 第1楽章ではとくに、休符の後の間の取り方、いわゆるタメの入れ方が昨日よりも微妙に長かったような気がする。そのために縦の線のキレ味に加えて横の線のしなやかさが増し、音楽全体が生き生きとして躍動感が増してくる。そしてダイナミックさが増して、ドラマティックな仕上がりになってくる。
 第2楽章のスケルツォも、テンポを微妙に揺らして主題のフレージングを歌うようにしたり、遅めのテンポでも生き生きとした演奏を生み出している。
 第3楽章も遅めのテンポを保ちつつ、各パートが十分に旋律を歌わせることによって、全体の質感が高くなっている。弦楽が澄んでいて木管が上手い東響ならではの美しい表現がそこにはある。
 第4楽章の冒頭は重厚そのもの。低弦のレチタティーヴォを徹底的に歌わせ、「歓喜の主題」は低弦の弱音から全合奏の強奏までのダイナミックレンジが広く、ドラマティックである。4名の独唱は皆上手く、バランスの良いメンバーが揃った。妻屋秀和さんのバスは相変わらず素晴らしかったが、今日はとくにロバート・ディーン・スミスのソロが伸びやかで良かった。東響コーラスの合唱は、人数が多い分だけ立ち上がりの鈍さを感じるが、反面、地から沸き上がってくるようなエネルギーがあって、これはこれで良いと思う。日本的な「第九」の合唱であって独特の雰囲気を持っている。大勢が気持ちを一つにまとめようとして努力した結果だから、聴く者の共感を呼ぶのだろう。

 そしてアンコールの「蛍の光」。あの感動をもう一度。聴衆も皆で歌えば、2200人の大合唱となる。子供の頃の卒業式を思い出して・・・またちょっと涙ぐむ。前半で「四季」の演奏を終えた尚佳さんも、後半は客席で「第九」を聴き、「蛍の光」では泣きそうになったとか。そこにいる人たちが皆、幸せを感じ、感動して涙ぐむ。「第九と四季」はそんな素敵なコンサートなのである。

 終演後には。尚佳さんの楽屋にお邪魔した。私もサントリーホールの楽屋の中にまで入れてもらうのは初めて(バックステージは何回かあるが)。家族、親戚、友人、ファンから音楽事務所の社長まで、大勢の人が集まって賑やかであった。素晴らしい演奏を聴いた直後なので、皆さんテンションが高かったようである。
 6室しかない個室の「楽屋F」だったのは、秋山先生と4名の歌手に次いで6番目にあたるから。通常のコンサートならソリストは「楽屋B」になるはずだ。今回は尚佳さんのサントリーホール・デビューでもあったわけだが、次にこのホールに出演するときは「楽屋B」に入ることを切に願っている。楽屋にはテレビモニターがあって、ステージ付近の様子を正面から映し出している。・・・・そうか、客席の様子は演奏家側からも見えているのか。これは行儀良くしていないといけないなァ、いつも最前列で聴いている身としては。



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12/28(水)東響「第九と四季」/青木尚佳の瑞々しい「四季」と秋山和慶の威風堂々たる「第九」

2016年12月28日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
東京交響楽団 特別演奏会「第九と四季」(第1日)

2016年12月28日(水)18:30〜 サントリーホール A席 1階 1列 20番 7,200円(会員割引)
指揮&チェンバロ*:秋山和慶
ヴァイオリン:青木尚佳*
ソプラノ:大村博美**
メゾ・ソプラノ:清水華澄**
テノール:ロバート・ディーン・スミス**
バス:妻屋秀和**
合唱:東響コーラス**
合唱指揮:小林昭裕
コンサートマスター:グレブ・ニキティン
【曲目】
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集「四季」より「春」ホ長調 作品8-1/「冬」ヘ短調 作品8-4*
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱付」**
《アンコール》
 蛍の光**

 年末恒例となっている各オーケストラと合唱団によるベートーヴェンの「第九」演奏会。プロ・アマを問わず、全国でいったい毎年何回くらいの「第九演奏会」が開かれるのだろう。在京のプロ・オーケストラの中で、「第九」の演奏を締めるのは、概ね御用納めの日のソワレと年末休暇初日にあたる翌日のマチネーの2日続けて東京交響楽団の恒例行事となっている「第九と四季」である。今年も12月28日の18:30〜と、翌29日の14:00〜、サントリーホールで開催される。両公演とも、もちろん完売。年末を飾る人気のコンサートなのである。

 その人気の理由は、「第九」だけの演奏会ではなくて、やはり一般的なレベルでもよく知られているヴィヴァルディの「四季」が前半に演奏されることによる。「四季」と呼ばれて人気が高いが、実際にはヴィヴァルディが作曲したヴァイオリン協奏曲集「和声と創意への試み」の全12曲のヴァイオリン協奏曲のうち、1番から4番に、春夏秋冬を詠んだソネットが添えられていることから「四季」と呼ばれるようになったものだ。
 「第九と四季」では、時間の都合上、毎回第1番「春」と第4番「冬」の2曲が演奏される。ソリストは毎年、若手の期待の新人か、若手の中でも既に実績を積んだクラスのヴァイオリニストから選ばれる。今年は前者の方で青木尚佳さんが抜擢された。ご承知の通り、尚佳さんは2009年の「第78回日本音楽コンクール」で第1位を獲得した後ロンドンに留学、王立音楽大学を首席で卒業して現在は王立音楽院の大学院で研鑽中である。大学在学中の2014年「ロン=ティボー=クレスパン国際音楽コンクール」と「中国国際ヴァイオリン・コンクール」でともに第2位を獲得、一躍国際的にも注目を集める存在となった。「第九と四季」へのブッキングとしては良いタイミングになったと思う。今回の東響との共演をきっかけに、今後は在京のオーケストラからもオファーが続くことになるだろう。

 前半はヴィヴァルディの「四季」から「春」と「冬」。ヴァイオリン協奏曲といっても、弦楽合奏と通奏低音のチェンバロと独奏ヴァイオリンの協奏になる。例年通り、秋山和慶先生によるチェンバロの弾き振り。秋山先生が客席に背を向ける位置に蓋を外したチェンバロ置く。実は毎回気になっているのだが、最前列などで聴く限り、チェンバロの音はほとんど聞こえない・・・・。通奏低音としてどれだけ機能しているのか、客席側からは分からないのではないだろうか。
 尚佳さんが登場する際の、カッカッと歩く速さが快調なテンポ感を表していて、期待感を高める。その決然とした歩き方は、まさに本番の「演奏モード」へのスイッチが入ったという感じなのだ。ステージ上の「自分の世界」を創り出すためのスイッチでもある。
 「春」が始まる。テンポは中庸からやや遅めといったところか。ソリストの尚佳さんは冒頭は第1ヴァイオリンのパートを一緒に弾いている。東響の弦楽アンサンブルは精緻で音にも濁りがなくとても美しく聴かせるが、ややパンチが足りないという印象なのは、いつもの通りだ。途中からソロ・ヴァイオリンが離れて、キリッと音を立ててくる。ちょっと緊張しているのか、音が硬く、楽器の鳴り方にもやや揺らぎがあったかも。それでも全体的には緊張感の高い演奏で、艶やかで情感に溢れている。第1楽章は明るく華やか。第2楽章は憂いに満ちたロマンティシズム。第3楽章はやや硬質な音色でオーケストラ側とは対立的な演奏に感じた。
 「冬」の第1楽章は硬質な音色が冬の極寒の空気感と厳しい嵐を描き出していく。演奏の方は緊張が抜けてきて、速いパッセージもしなやかに回るようになり、艶が増して来たような感じ。第2楽章は暖炉で温められた部屋でのくつろぎのような音楽だが、オーケストラ側はヴァイオリンのピツィカートがけっこう大きく分散和音を刻み、ソロ・ヴァイオリンはまだ緊張感が高く、心までは温まっていないといったイメージ。第3楽章はやはりオーケストラとソロ・ヴァイオリンが対立的な響きを続け、終盤に向けて緊張感を高めていき、強いイメージのクライマックスを創り出した。
 秋山先生のテンポ感は全体的にやや遅めで、しっかりとした造形を描き出す。それに対して若いソリストはもっと速い技巧的な演奏を好むような傾向が感じられ、その辺りが独特の緊張感を創り出しているのだろう。いずれにしても1年ぶりに聴く尚佳さんの協奏曲には、瑞々しい感性と躍動的なエネルギーがいっぱいで、それが極めて音楽的な表現・・・歌うようなフレージング・・・で、聴き手に対して多くのことを押し出して来るのである。それが彼女の最大の魅力だと思う。
 今回がサントリーホールへのデビューということだが、「四季」を演奏するにはこのホールは大きすぎで、弦楽合奏もチェンバロもソロ・ヴァイオリンも音が拡散してしまいエネルギーが薄れてしまう。後方席ではどのように聞こえているのか、ちょっと心配。後半の「第九」との音楽的な規模の違いが、ある種の難しさを生み出しているのかもしれない。

 後半は「第九」。秋山先生の「第九」は何度も聴いているので、演奏自体にはだいたい想像ができる。ごくスタンダードな解釈で、堂々とした揺るぎない信念。他のオーケストラは毎年「第九」の指揮者が変わり、毎回演奏のタイプも変わるが、東響のメインとなる「第九」は秋山先生がずーっと以前から受け持っているので、毎年変わらない(多少は解釈を変えたりしているとは思うが)。この揺るぎない安定感が抜群の魅力になっている。一度でも聴いたことがある人で、この「第九」が気に入ったら、毎年聴くことをお勧めする。とくに東響の「第九と四季」は大体12月28日・29日辺りになるので、これを聴いて1年間のいろいろな出来事を振り返り、すべてを「歓喜」へと昇華させて1年を終えるのに、これほど適したコンサートはないと思う。
 第1楽章。ゆったりとしたテンポで始まる。第1主題の動機が第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリンから右サイドのヴィオラに移るステレオ効果が最前列できいていると鮮やかな構造感を生み出す。ゆったりとしたテンポであってもダイナミックレンジは広く、演奏のキレ味もある程度保たれているので決してダレることはなく、常に堂々とした造形の音楽になっている。今日はコンサートマスターのグレブ・ニキティンさんがやけに張り切っていて、彼の音がかなり強く聞こえていた。秋山先生の良いところは、ダイナミックに造形をしていっても決してティンパニを大きく鳴らさないところで、打楽器のエネルギーに頼らない。全楽器のエネルギーの総和を増やしてffを創り出す。そのためのゆったりとしたテンポなのだと思う。またそれが終楽章の合唱が加わった時に生きてくるのだ。この辺は20世紀的というか、巨匠の音楽である。
 第2楽章はスケルツォ。ここもテンポは中庸からやや遅めといった感じ。疾走感はないが、その代わりに各パートや内声部の音までがくっきりと描き出されてくる。ここでもティンパニは、ソロの部分以外には控え目にさせていて、オーケスラの尾とのバランスが実に良い。最前列(つまり指揮者のすぐ後ろ)で聴いていても、そのバランスの良さがよく分かるのである。サントリーホールでの「第九」を知り尽くした秋山先生ならではの造形だと思う。
 第3楽章は緩徐楽章。最近の「第九」の傾向からすれば、この楽章はかなり遅めのテンポである。この楽章を遅く演奏すると「第九」が長くなってしまうが、秋山先生のこのテンポの採り方は、実際に聴いてみると実にしっくり来るものがある。この美しい旋律が次々と繰り返されるのに対して、ヴァイオリンもチェロも、フルートもオーボエもクラリネットも、ホルンも、ゆったりと実に良く旋律を歌わせることできる。そして全体的には、聴く者を安らかな気持ちにさせてくれる天国的な響きを生み出している。1年間の疲れを癒してくれるような穏やかな音楽なのである。
 そして第4楽章。冒頭ではティンパニを強く叩き出させ、低弦のレチタティーヴォはゆっくりとしたテンポでじっくりと力強く、訴えかけるように歌わせる。第1〜第3楽章の主題が回帰して、「歓喜の主題」がチェロとコントラバスからゆっくりと始まる。ヴィオラに移り、第2ヴァイオリン、第1ヴァイオリンと移ろいで心にたっぷりと染み入られてから、全合奏は晴れやかに歌わせる。
 再び怒濤のような冒頭の主題が轟き、バスのレチタティーヴォは妻屋秀和さんの声が朗々と響き渡る。テンポが遅い分だけ、歌唱も長く伸ばしていく。「歓喜の主題」に入ると合唱が加わる。東響コーラスはアマチュアの団体で、プロ合唱団のような巧さはないが、人数を多くしていて(200名くらいだろうか)とても大きなエネルギーを持っている。合唱の場合は人数が多くなると縦の線が揃わなくなってくる。立ち上がりがボヤケてくるのである。これだけの人数では速いテンポには付いて来られなくなるかも。ところが秋山先生の「第九」はゆったりとしたテンポで堂々と音楽が進む。だから、この合唱団に適した演奏になっているのだ。東響コーラスの合唱は、確かに立ち上がりは鈍いが、人数が持つ音圧がスゴイ。これがサントリーホールの大きな音響空間に響き渡るのである。まさに隙間なく隅々まで音が満たされる感じ。だから完売で満席の「第九」コンサートは、どの席で聴いても感動が伝わるのだと思う。
 テノールの独唱はロバート・ディーン・スミスさん。世界の一級品の歌唱を聴かせてくれた。メゾ・ソプラノは清水華澄さん。彼女の歌唱はあまり目立たない「第九」のソロの中でもかなり存在感を主張する。太めの声が声量豊かでよく通る。ソプラノは大村博美さん。こちらも第一人者だけに、柔らかな声質でもよく通る。
 楽章の後半は、合唱が中心となり、清冽で力感の溢れる合唱が感動的であった。遅めのテンポを貫き、実に堂々たる風格を感じる。合唱とオーケストラのバランスも見事に取れている。最後は一層テンポを落とし、荘厳なイメージを築き上げた後、アッチェレランドが効いて、怒濤のような熱狂に包まれて曲が終わった。Bravo!! これぞ日本の「第九」という感じ。日本人の感性にはよく合っていると思うのである。

 日本中の、あるいは世界中の「第九」演奏会の中で、唯一アンコールがあるのが「第九と四季」。聴衆の皆さんもよく知っているので「第九」がおわっても席を立つ人はいない。このアンコールを初めて聴く人は間違いなく感激して「終わり良ければすべて良し」とばかりに素晴らしい1年を終えることができるのだ。そして1度聴くとクセになるのである。
 4名のソリストが元に位置に戻り、秋山先生が指揮台に立つ。オーケストラから流れる前奏を聴いても何の曲かは分からないはず・・・・ソリストと合唱団が歌い出すのは「蛍の光」である。合唱団の一部の人たちがステージ両端から客席に降りてきて歌う。1番は合唱団が、2番は客席の聴衆が唱和して盛り上がるのである。3番は合唱団によるハミング。会場の照明が徐々に暗くなってくると合唱団の皆さんは手元に小さなライトを点す。最後は全部の照明が落ち、劇的な編曲で、感動的なフィナーレとなる。会場が大きな拍手に包まれた。
 このアンコールの「蛍の光」は毎年同じで、私などは何度も聴いているのでよく知っているのだが、それでも毎回感動して、嬉しくて、ちょっと涙ぐんでしまう。毎年同じことが繰り返せるということは、実はとても幸せなことなのかもしれない。今年はプライベートでもいろいろな出来事があって、決して「良い年」だったとはいえないのだが、それでも音楽のチカラは偉大で、「第九と四季」を聴けば素晴らしい年の終わりを迎えることができたように感じる。来年に向けての希望も生まれてくるのである。さらに今年はスゴイことに、明日も同じ席で「第九と四季」を聴く予定になっているのである。

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12/24(土)リクルートスカラシップ/若手のトップクラスのアーティストたち/瑞々しい感性の室内楽

2016年12月24日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
第22回 江副記念財団 リクルートスカラシップコンサート

2016年12月24日(土)13:00〜 紀尾井ホール A席 2階 BR1列 7番 2,000円
【出演者】〜江副記念財団 器楽奨学生(年次順)
ピアノ:高木竜馬(35回生/1992年生まれ)
ピアノ:北村朋幹(36回生/1991年生まれ)
ヴァイオリン:黒川 侑(37回生/1990年生まれ)
ヴァイオリン:弓 新(41回生/1992年生まれ)
チェロ:岡本侑也(42回生/1994年生まれ)
ピアノ:阪田知樹(43回生/1993年生まれ)
ヴァイオリン:城戸かれん(43回生/1994年生まれ)
ヴァイオリン:山根一仁(43回生/1995年生まれ)
ヴァイオリン:坪井夏美(44回生/1993年生まれ)
ピアノ:桑原志織(44回生/1995年生まれ)
チェロ:上野通明(44回生/1995年生まれ)
ピアノ:小林海都(45回生/1995年生まれ)
チェロ:水野優也(45回生/1998年生まれ)
ヴァイオリン:毛利文香(45回生/1994年生まれ)
《特別出演》
ピアノ:田村 響(34・40回生/1994年生まれ)
ヴィオラ:田原綾子(1994年生まれ)
【曲目】
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト長調 作品78「雨の歌」(毛利/桑原)
フォーレ:ピアノ五重奏曲 第2番 ハ短調 作品115(城戸/弓/田原/水野/北村)
ラフマニノフ:2台ピアノのための組曲 第2番 作品17(田村/高木)
ラヴェル:ピアノ・トリオ イ短調(黒川/上野/阪田)
ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲 イ長調 作品81(山根/坪井/田原/岡本/小林)
《アンコール》
 J.S.バッハ/北村朋幹編・指揮:ブランデンブルグ協奏曲 第5番より第1楽章(全員)

 「公益財団法人 江副記念財団」は、わが国の社会ならびに芸術文化の振興・発展を目的として、学術、芸術(音楽・クリエイティブ)およびスポーツ分野を中心に、世界で活躍することを目指す若者への奨学金の支給や助成を行っている。本日のコンサートは、音楽の器楽部門の奨学生たちによる定例のもので今回で22回目の開催となる。これまでは奨学生達によるソロ演奏が中心であったが、今回は奨学生達が集まっての室内楽のプログラムが組まれた。

 出演は奨学生のうち35回生から45回生までの15名に特別出演者を加えての16名。いずれも1990年代生まれで18歳〜26歳。身分は現役の音大生・大学院生・海外留学生などだが、演奏家としての活動はプロのソリストないしはプロレベルの皆さんで、この年代の演奏家としてはまさに日本でトップクラスの錚々たる面々で、国内外の有力な音楽コンクールで優勝や上位入賞歴を持っている。私も聴いたことがある人ばかりだ。なお、当所かに出演する予定だった石田啓明さん(45回生/1994年生まれ)は体調不良により出演できなくなり、代わりに田村 響さんが出演した。また器楽奨学生はピアノ、ヴァイオリン、チェロだけだったため、奨学生ではないがヴィオラの田原綾子さんが特別出演として参加している。

 曲目を見れば分かるように、どの曲も3〜4楽章構成の本格的な大作ばかり。通常、この手の顔見せコンサートでは1楽章ずつなどに絞り込んで演奏するものだが、本日のコンサートは一切の手抜きなしで、全曲とも全楽章が演奏された。午後1時開演だったのは演奏時間が長くかかるからで、15分の休憩を2度挟んで、終演は何と5時15分。ワーグナーの楽劇並みの長丁場であった。しかし演奏する皆さんはそれぞれの1曲に集中しているので極めて緊張感が高く、素晴らしい演奏を聴かせてくれた。だから聴く方としてもいささか疲れるくらいの重厚長大のコンサートだったのである。

 ところで今日の席は、私としては珍しい2階のバルコニー。このコンサートに関しては情報を得ていなかったのでかなり出遅れてしまい、ほとんど完売間近だったところをギリギリチケットを入手できたのであった。それで2階になってしまったのだが、それでもステージ寄りの右側バルコニーの1列目、つまりステージを真横から見下ろす位置を確保することができた。ここなら演奏者たちからは近いし、表情も読み取ることができる。ただしステージ上の広い空間に拡散した音を残響音と一緒に聴くことになるので、弦楽器の細やかなニュアンスなどは聴き取りにくい。室内楽を聴くのにはギリギリセーフといったところだろう。
 以下、演奏順に見ていくつもりだが、何しろ出演者が多いので、皆さんの経歴などの紹介は割愛させていただく。曲数も多いので楽曲の説明もなし、またいつものように楽章毎のレビューはせずに、全体の印象を述べるに留めたい。

 第1部。1曲目はブラームスの「ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト長調 作品78『雨の歌』」。ヴァイオリンは毛利文香さん、ピアノは桑原詩織さんという豪華でフレッシュな組み合わせだ。大学が違うとデュオでの演奏は機会が少ないだろう。2階からの距離感で聴いていると、毛利さんのヴァイオリンはとても大らかで豊かに旋律を描き出しているのがわかる。音質はまろやかで、柔らかく非常に艶やか。紀尾井ホールでのソナタということで、音量も大きめに出しているようだ。スケール感があって豊潤な演奏である。一方の桑原さんのピアノは、ヴァイオリンと適度なバランスを保つためにか、かなり繊細なタッチで微妙なニュアンスの表現が上手い。その中でもダイナミックレンジをできる限り広めに採っていて、ドラマティックな表現になっていた。高音域のキラキラした煌めきが美しい。二人の創り出すデュオのイメージは、女性的な柔らかさとロマンティックな憧れのようなイメージが満ちていて、とても素敵な演奏だったと思う。

 2曲目はフォーレの「ピアノ五重奏曲 第2番 ハ短調 作品115」。第1ヴァイオリンが城戸かれんさん、第2ヴァイオリンは弓 新さん、ヴィオラが田原綾子さん、チェロが水野優也さん、ピアノが北村朋幹さんである。ピアノ五重奏曲はあまり聴く機会がないので、いささかコメントしづらいものがあるが・・・・。曲自体が色彩感豊かに煌めくようなピアノと分厚いアンサンブルを聴かせる弦楽四重奏により濃厚な色彩感に彩られている。室内楽もここまで進化してくるとピアノ協奏曲に近いイメージとなる。弦楽四重奏のアンサンブルは分厚く、たった4名とは思えないくらいの濃厚なサウンドで、音量も豊かであった。その中で、分厚い和声を描くアンサンブルの中から、時折ヴァイオリンやヴィオラの旋律がすーっと浮き上がって来たりして、アクセントを付けている。ピアノは終始煌びやかな色彩感を放っていたが、明瞭なタッチで輪郭のハッキリした音が創られていて、時折見せる男性的な力感も伝わってくる。4つの楽章を通じて感じたのは、アンサンブルの見事さで、目に会えない何かに向かって全員の気持ちが集中しているように感じた。縦の線よりも横の線が豊かに感じられる、流れの見事な演奏であった。

 1回目の休憩を挟んで、第2部はラフマニノフの「2台ピアノのための組曲 第2番 作品17」から。第1ピアノが田村 響さん、第2ピアノは高木竜馬さんである。普通のコンサートではあまり聴く機会のない曲だと思うが、ピアノ協奏曲第2番と同じ時期に創られた曲であり、抒情的で感傷的な旋律も散りばめられている。組曲といっても「序奏」「ワルツ」「ロマンス」「タランテッラ」の4曲の組み合わせは、急-舞-緩-急の4楽章構成のソナタであるとも捉えることができる。演奏の方は、かなり迫力のあるものになった。さすがに男性2名がガンガン弾くのを2階で聴くと、その音圧に圧倒される。この位置では、第1ピアノと第2ピアノが明瞭に区別できず、音が混ざってしまうので、余計にそう思えるのかもしれない。ただし、音の奔流の中からラフマニノフならではの抒情的な主題が現れると、2台のピアノの役割がハッキリ分かれるのが感じ取れる。2人演奏は十分にロマンティックで、爆発的にドラマティックで、素晴らしいとは思ったのだが、ちょっと音量が大きすぎるような気がした。2台ピアノの場合は向かい合って置く。奏者は離れていても楽器の中心部は近いので両者の音が混ざってしまうのは仕方ないが、響きが良く、残響の長い紀尾井ホールでは、いささかツライものがあるかもしれない。

 続いて、ラヴェルの「ピアノ・トリオ イ短調」。ヴァイオリンは黒川 侑さん、チェロは上野通明さん、ピアノは阪田知樹さんである。かなり繊細な印象で始まったと思ったが、すぐに力感が増し、男性3名によるトリオらしさが出てくる。ピアノ・トリオの場合は3人とも楽器が違うので、それぞれの特徴がクッキリ鮮やかに現れる。黒川さんのヴァイオリンは繊細な印象で絹のような光沢のある音色。上野さんのチェロは強く押し出して来るが音色は明るくて濃厚。阪田さんのピアノは印象派風の透明感を見事に表現していた。3名で創り出すラヴェルの世界は、男性的な力感と、躍動感・推進力もあって、この曲の印象を変えてしまうような新鮮さが感じられた。できれば、1階のステージ近くで聴きたかったと思った。

 ここでもう一度休憩が入り、第3部はドヴォルザークの「ピアノ五重奏曲 イ長調 作品81」という大曲。第1ヴァイオリンは山根一仁さん、第2ヴァイオリンは坪井夏美さん、ヴィオラは田原綾子さん、チェロは岡本侑也さん、ピアノは小林海都さんである。先ほどのフォーレと違って、この曲は、弦楽が細かく役割分担されているため、主題がヴァイオリンやチェロ、そしてヴィオラにも回ってくるので、それぞれの楽器の特徴的な音色を楽しむことができる。山根さんのヴァイオリンはやや硬質で緊張感が高いイメージ、坪井さんは柔らかく繊細な音色が美しい。田原さんのヴィオラは豊かな音量で大らかに広がるイメージ、岡本さんのチェロは端正で深い音色。小林さんのピアノは透明なクリスタルのような音色だろうか。この曲はドヴォルザーク特有の土の香が感じられるがとても抒情的で美しい旋律に彩られている。各楽章を通じて、主題が弦楽四重奏を中心に描き出されていてピアノは背景を彩るように絡みつく。だからこの曲は2階で聴いていても5名の存在がはっきりと認識できた。5名の力量が均等で、アンサンブル能力も高く、非常によくまとまっていた。それでいて各奏者の特徴(=個性)が聴き取れるくらいに明瞭であり、全員でひとつの方向性を目指していることもよく伝わって来るし、その中での個性を主張し合う姿勢も忘れていない。だから聴いていると、演奏者たちが楽しんでいる様子も分かるし、真剣に取り組んでいることも伝わって来る。素晴らしい演奏だったと思う。

 これだけのボリュームのコンサートだったので、しかも出演者も多いので、まさかアンコールが用意されているなどとは夢にも思わなかったが・・・・。カーテンコールの中、北村さんがトークを始め、ホール・スタッフがステージのセッティングを変えていく。アンコール曲はJ.S.バッハの「ブランデンブルグ協奏曲 第5番」より第1楽章。これを本日の出演者全員で演奏できるように、北村さんが編曲したのだという。すなわち、2台ピアノは連弾×2で8手。第1ヴァイオリン3、第2ヴァイオリン3、ヴィオラ1、チェロ3という編成である。ピアニストが一人余るがこれは北村さんご自身が指揮をする。久し振りに聴いた「ブランデンブルグ協奏曲」であったが、やたらと声部が多い、濃密な編曲、濃厚な演奏。速めのテンポで、とてもゴージャスな響きがホールを満たしていた。弦楽が分厚くなるため、ピアノが8手もいるのに通奏低音のような位置付けではもったいないと思っていたら、終盤にはちゃんと8手によるカデンツァが用意されていた(これだけでも相当スゴイ)。素晴らしい才能の皆さんに、Bravissimo!!

 終演後のホワイエは、出演者の皆さんにそれぞれの関係者とファンの皆さんでごった返していた。出演者全員で、ホールの階段のところで記念写真を撮影していたが、確かにここにいる演奏家の皆さんは、この年代のトップクラスの人たちであることは間違いない。数年の後、ここにいる皆さんは世界を舞台に活躍していることになるだろう。その日が来るのを待ち遠しく思うのは私だけではないはずである。とにかくものすごいコンサートであった。


 なお、今日のコンサートの模様がテレビで放送されることになっている。
 来年2017年1月9日(月)午前8時〜8時53分 BSジャパン(BS 7ch)
 たった1時間弱の番組ではかなりの部分がカットされてしまうが、コンサートの雰囲気は伝わるだろう。聴きに来られなかった方々、ぜひ録画してご覧ください!!


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12/22(木)小林沙羅・水口聡・大塚めぐみ・善竹富太郎が織り成す能楽堂でのクリスマス・コンサート

2016年12月22日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
クリスマス・コンサート in 能楽堂
セルリアンタワー能楽堂 企画公演


2016年12月22日(木)15:00~ セルリアンタワー能楽堂 S席 1階 正1列 6番 6,000円
テノール:水口 聡
ソプラノ:小林沙羅
ヴァイオリン:川田知子
ピアノ:大塚めぐみ
ナビゲーター:善竹富太郎(大倉流狂言師)
【曲目】
ショパン:ノクターン 第3番 ロ長調 作品9-3(大塚)
ショパン:ワルツ 第7番 嬰ハ短調 作品64-2(大塚)
成田為三:浜辺の歌(川田)
マスネ:タイスの瞑想曲(川田/大塚)
池辺晋一郎:風の子守歌(小林/大塚)
カルディッロ:カタリ・カタリ(つれない心)(水口/川田/大塚)
狂言小舞:「猿聟(さるむこ)」(善竹)
オペラ風狂言:「梟(ふくろう)」(水口/小林/善竹/川田)
狂言レクチャー(善竹)
大塚めぐみ編:クリスマス・メドレー(大塚)
プッチーニ:歌劇『トゥーランドット』より「誰も寝てはならぬ」(水口/大塚)
レハール:喜歌劇『ジュディッタ』より「私の唇は熱いキスをする」(小林/川田/大塚)
レハール:喜歌劇『微笑みの国』より「私の胸に刻みつけたのは?」(水口/小林/大塚)
クラシック小舞:ツィゴイネルワイゼン(川田/大塚/善竹)
アダン:オー・ホーリーナイト(水口/善竹/大塚)
プッチーニ:歌劇『ラ・ボエーム』より「麗しの乙女よ」(水口/小林/大塚)
マロッテ:主の祈り(水口/大塚)
《アンコール》
 きよしこの夜(水口/小林/川田/大塚/善竹)

 昨年に引き続き、東京・渋谷のセルリアンタワー能楽堂で開催される「クリスマス・コンサート」を聴く。大倉流狂言師である善竹富太郎さんのナビゲーションにより、狂言とクラシック音楽とのコラボレーションによるコンサートで、今年で5年目になる。本日と明日(天皇誕生日)の2日公演。いつものコンサートとはかなり雰囲気が違ってはいるが、日本の古典芸能の狂言と能楽堂という会場でありながら、クリスマスらしい肩の凝らない楽しい企画になっている。
 テノール歌手の水口聡さんと善竹さんによる企画で、昨年からはソプラノ歌手の小林沙羅さんが加わって、一層華やかな舞台となった。能舞台には足袋でしか上がれないということで、水口さんも沙羅さんも、ヴァイオリンの川田知子さんも舞台に上がるときは、和装でも洋装でも足元は足袋、というのが面白い。

 能舞台は、ほぼ正方形の「本舞台」の4隅に柱があり屋根が乗っている。下手奥に「橋懸かり」と呼ばれる渡り廊下がつながっていて演者の出入りなどに使われる。その先には「揚幕」があってその中は「鏡の間」。要するに楽屋である。本舞台から橋懸かりを取り巻いて平土間には「白州」が敷かれていて、その外側に「見所(客席)」が設けられる。見所は本舞台の正面側が「正面」、下手側が「脇正面、両者に挟まれ舞台の角の向かって斜めに設けられる見所を「中正面」という。上手側には見所はない。もともと能楽堂は屋外に設置されるものであるから屋根が付いているのである。
 「セルリアンタワー能楽堂」は、セルリアンタワー・東急ホテルの地下2階にあるのだが、地下にあっても構造は変わらず、ちゃんと屋根が乗っている。本日のコンサートでも、本舞台の上にものを置くということは基本的にありえないので、伴奏用のピアノは中正面の前の平土間に置かれていた。私の席は正面の1列目のセンターであったので、舞台上の歌唱や謡は前方から、ピアノやヴァイオリンの伴奏は左横の方から聞こえてくるという、普通のクラシック音楽のコンサートではなかなか経験できないシチュエーションであった。

 5年目を迎える「クリスマス・コンサート in 能楽堂」は、かなり人気のイベントになっているらしく、正面席を取ることができた私なしはかなりラッキーであり、完売のために来られなかった人が多かったようだ。私はと言えばご承知の通り、沙羅さんの追っかけのような立場で聴きに行ったわけだが、出演者のそれぞれの皆さんに固定のファンが集まるので、クラシック音楽ファンや狂言好きの方々を合わせれば、2日公演あるとはいえ、わずか100席余りの能楽堂ではあっという間に売り切れてしまうのであろう。

 富太郎さんの軽妙なナビゲーションがとても面白く、能楽堂という慣れない空間に舞い込んだ私たちの緊張をほぐしてくれる。一方で狂言好きで来られていた方たちはクラシック音楽の決まり事に慣れていない一面もあったりしたが、これはこらポレーション企画としてはお互い様ということであろう。演奏の方は一級品であることは間違いない。水口さんの爆発的な歌唱は圧倒的な存在感。沙羅さんの清冽な歌唱は都会の喧噪を忘れる一服の清涼剤のよう。大塚めぐみさんのピアノはゴージャスで煌びやか。川田さんのヴァイオリンは華麗な技巧と優しい音色で歌う。

 コンサートが始まると、富太郎さんが登場し、狂言の口調でナビゲーションを始める。「これは、この辺りに住まいいたす太郎冠者でござる。・・・」といった感じ。この調子の台詞に「クリスマスコンサート」とか「セルリアンタワー」などの外来語が混ざると異様に可笑しい。

 まず最初はは大塚さんのピアノ・ソロでショパンの「ノクターン 第3番 ロ長調 作品9-3」。続けて「ワルツ 第7番 嬰ハ短調 作品64-2」。能楽堂で照明を落として聴くショパンというのも何ともロマンティック(?)なもので。大塚さんのピアノはとくにサロン音楽風でむしろエロティックなイメージだ。平土間に置かれたピアノと地下の能楽堂というかなり特異な環境のせいか、一風変わったピアノの響きで、調律が甘いような感じに聞こえた。音の反射のせいだろうとは思うのだが・・・・。

 続いて、成田為三の「浜辺の歌」を川田さんのヴァイオリン・ソロで。川田さんは本舞台に上がり、中正面に向かって演奏した。編曲はどなたか不明だが、内容は「“浜辺の歌”の主題による変奏曲」というべきもので、最初の変奏から後は超絶技巧のパガニーニー風(?)で、川田さんの演奏も見事に技巧的であった。

 続くマスネの「タイスの瞑想曲」は、本舞台上の川田さんのヴァイオリンと平土間のピアノ伴奏を大塚さんが弾くという変則的なスタイルでの演奏となった。大塚さんのピアノが分散和音(本来はハープ)をねっとり濃厚に響かせ、その上に川田さんのしっとりとカンタービレを効かせたヴァイオリンが乗る。濃厚なロマンティシズムが漂う演奏であった。

 続いて、池辺晋一郎氏の作曲による「風の子守歌」を沙羅さんの歌唱と大塚さんのピアノで。この曲は、沙羅さんの最新CDアルバム「この世でいちばん優しい歌」の中に最後の曲としてと収録されている。子供のために歌う子守歌ではなく、亡き子を思う母親の心情を優しく切なげに歌った曲。しっとりとした歌唱と透明感のある声質で、会場に優しい空気感が生まれる。

 前半の最後はカルディッロの「カタリ・カタリ(つれない心)」。歌うのはもちろん水口さんである。川田さんのヴァイオリンと大塚のピアノが情感を盛り上げる。水口さんの歌唱は、息の長い朗々たる歌唱と豊かな声量で、圧倒的な存在感を見せる。さすがにヨーロッパを舞台に活躍している人。一瞬で場の雰囲気をガラリと変えてしまうチカラを持っている。

 休憩を挟んで、後半はまず富太郎さんによる狂言小舞「猿聟(さるむこ)」から。これは謡いながら舞うというもので、ソチラの方の分野に関してはまったく知識がないので、何ともコメントのしようがない(ご了承ください)。

 続いては、この「クリスマス・コンサート in 能楽堂」の中でもっとも面白い演目。すなわちオペラ風狂言「梟(ふくろう)」というもの。梟の霊に取り憑かれた弟を助けるために、兄は弟を連れて山伏に除霊してもらいにやって来る。山伏が祈ると、梟の霊は今度は兄にも取り憑き、しまいには山伏にまで取り憑いてしまうというお話し。これをオペラ風狂言として演ずると・・・・。全員が出演しての傑作な出し物であった。
 何かの悪霊に取り憑かれた父(水口さん)を連れて、息子(富太郎さん)が山伏の沙羅さまを訪ねる。歌によって除霊するというのだ。沙羅さまは和装の袴姿で、これが非常によく似合っていて可愛らしい。沙羅さまが「アヴェ・マリア」を歌って除霊しようとすると父に取り憑いている悪霊は大声で「誰も寝てはならぬ」の最後の部分(?)を歌い出し、息子にまで乗り移ってしまう。それはオペラ歌手の悪霊だった。激しい攻防の末、最後は沙羅さまにも乗り移ってしまうのであった。言葉で説明しても分かりにくいと思うが、狂言風の台詞回しとオペラ風の歌唱がミス・マッチでとても面白い。

 続いては富太郎さんによる狂言レクチャー。昨年と同じで、狂言風「笑い方」を教えていただき、会場の皆で笑ってみる。「はぁーっ、はっ、はっ、はっ、はっ」・・・・けっこう難しい。

 次は大塚さん自身の編曲によるピアノ・ソロの「クリスマス・メドレー」。ホテルのラウンジで即興で演奏するようなイメージの煌びやかでロマンティックな演奏。ベースとなっているのプッチーニの歌劇『ラ・ボエーム』の中の名アリアの数々。そういえば『ラ・ボエーム』も第1幕・第2幕はクリスマス・イブの夜のお話しであった。

 ここからはオペラのガラ・コンサート風になる。
 まずはプッチーニの歌劇『トゥーランドット』より「誰も寝てはならぬ」。歌うのはもちろん水口さん。イタリア・オペラのテノール曲の定番中の定番だが、単なる技巧だけではなく、貫禄のような存在感が必要となるこの曲。水口さんのクラスが歌うと説得力抜群。圧倒的な声量の歌唱で、会場をビリビリと震わせた。ホントにいつも思うのだが、この曲を思いっきり歌われたら誰も寝てなんかいられない・・・・。

 続いてレハールの喜歌劇『ジュディッタ』より「私の唇は熱いキスをする」。沙羅さんの歌唱と大塚さんのピアノに川田さんのヴァイオリンがバックアップする。ウィーン暮らしが長かった沙羅さんは、ウィンナ・オペレッタがよく身についている。ジプシー音楽風の間奏では踊りも披露。しかし何とも洒落ていてロマンティックなオペレッタ特有の世界。沙羅さんはこれまでに『こうもり』や『メリー・ウィドウ』などに出演しているし、オペレッタの世界観を歌うのは上手い。

 次は、同じレハールの喜歌劇で『微笑みの国』より「私の胸に刻みつけたのは?」を水口さんと沙羅さんのデュオで。東洋が舞台のエキゾチックな物語(?)のオペレッタ作品で、中国の外交官スー・チョンと伯爵令嬢リーザの満たされない恋模様が歌われる。レハールの常套手段、甘く切なく美しい旋律がこれでもかとばかりに出て来て、うっとりとさせられるシーンである。水口さんは情感たっぷりにフレーズを伸ばして歌い、沙羅さんは清純なイメージを振りまくような歌唱。肩の凝らないオペレッタはもっともっと上演されても良いと思うのだが、『ジュディッタ』も『微笑みの国』も本編が上演されることがほとんどなく、とても残念である。是非とも、沙羅さんのような明るくコミカルなキャラクタでオペレッタの上演を増やしていただきたいものである。

 ここで趣向を変えて「クラシック小舞」なるものを。川田さんのヴァイオリンでクラシック音楽の世界ではお馴染みの「ツィゴイネルワイゼン」が平土間で演奏される。こちらはかなり本格的な技巧と表現で、演奏会レベルの素晴らしい演奏であった。途中から本舞台に富太郎さんがするするっと現れ、舞い始める。後半のテンポの速い部分に合わせて舞台を所狭しと舞いまわる。後で富太郎さんが語ったところによると、舞は完全に即興であったそうな。

 続いては恒例(?)の水口さんと善竹さんのデュオでアダンの「オー・ホーリーナイト」。クリスマスソングとしても定番の曲で、賛美歌でもある。伸びのある声量たっぷりの水口さんのテノールに対して、富太郎さんの声域はバス。西洋の歌唱法とはまったく違うとはいえ、狂言の発声法での歌唱もなかなかのものである。

 そしてプッチーニの歌劇『ラ・ボエーム』より「麗しの乙女よ」を水口さんと沙羅さんのデュオで。第1幕のフィナーレの部分で、クリスマス・イブのカルティエ・ラタンの街にミミがロドルフォに連れて行ってと誘うシーン。水口さんの熱唱と沙羅さんのしっとりした情感が絡み合い、大塚さんのピアノがキラキラと煌めいてロマンティックに盛り上げる。曲の終わりと共に二人はステージから去って行く(屋根裏部屋から出かけていく)わけだが、今日はそれを能舞台の橋懸かりを使って手に手を取って去って行く。洋装の二人が橋懸かりの道行き、音楽はプッチーニ・・・・。何とも不思議なコラボレーションの世界であった。

 プログラムの最後は、毎年恒例、マロッテの「主の祈り」。20世紀のアメリカを代表する教会音楽である。もちろん水口さんの歌唱である。オペラ歌手が歌うと、その爆発的な歌唱力で、非常にドラマティック。Bravo!!

 アンコールは「きよしこの夜」。出演者全員で1番を歌い、次いで会場の聴衆も一緒に1番をもう一度歌った。
 最後の最後に、先ほどのレクチャーの通り、会場全員で「笑い」で締めた。「はぁーっ、はっ、はっ、はっ、はっ」。

 終演後は、ロビースペース(能楽堂の場合は何て呼ぶのだろう?)で恒例のサイン会。水口さん、沙羅さん、川田さん、大塚さんはそれぞれCDを出しているので、個別のサイン会の様相となった。普段はあまり接点のない4名だと思われ、それぞれをファンが囲んでの交流の一時である。またまた沙羅さんの写真を撮らせていただいたが、昨年とほぼ同じシチュエーション。クリスマス・コンサートには深紅のドレスがよく似合っている。



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12/20(火)青木尚佳&伊藤悠貴/アフタヌーン/技巧と表現の豊かさ/質感の高いクリスマス・コンサート

2016年12月20日 23時30分00秒 | クラシックコンサート
Apricot Weekday Concert 【アフタヌーン】
ヴァイオリンとチェロで贈るストリングス・クリスマス


2016年12月20日(火)11:00〜 大田区民ホール・アプリコ 小ホール 自由席 1列 中央 1,500円
ヴァイオリン:青木尚佳*
チェロ:伊藤悠貴**
【曲目】
シュルホフ:ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲より 第1楽章
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 作品27-3「バラード」*
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007 より「プレリュード」**
カサド:無伴奏チェロ組曲 より 第3楽章**
コダーイ:ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲 作品7 より 第1楽章・第3楽章
山中惇史:スペシャル・クリスマスメドレー
《アンコール》
 ジョプリン:エンターテイナー

 「モーニング(11:00〜12:00)」の部に引き続き、「アフタヌーン(14:00〜15:00)」の部を聴く。ソロの曲が変わって、より一般的なものになった。最後の「スペシャル・クリスマスメドレー」はとても楽しい編曲で、ノリの良い生き生きとした演奏だった。

 詳細なレビューは、後日、改めて書き直しますので、しばらくお待ちください。




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12/20(火)青木尚佳&伊藤悠貴/モーニング/難解・超絶技巧・童謡・娯楽/多様性のクリスマス

2016年12月20日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
Apricot Weekday Concert 【モーニング】
ヴァイオリンとチェロで贈るストリングス・クリスマス


2016年12月20日(火)11:00〜 大田区民ホール・アプリコ 小ホール 自由席 1列 中央 1,500円
ヴァイオリン:青木尚佳*
チェロ:伊藤悠貴**
【曲目】
シュルホフ:ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲より 第1楽章
イザイ:無伴奏チェロソナタ 作品28**
エルンスト:シューベルトの『魔王』による大奇想曲 作品26*
山田耕筰/今井正編:この道*
コダーイ:ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲 作品7 より 第1楽章・第3楽章
『ザ・ルーツ・オブ・ジャズ』より「エンターテイナー」「聖者が街にやってくる」
《アンコール》
 ラヴェル:ヴァイオリンとチェロのためのソナタより 第2楽章

 東京都大田区(公益財団法人大田区文化振興協会)が主催し、JR蒲田駅前にある大田区民ホール・アプリコ小ホールで開催されている「アプリコ・ウィークデー・コンサート」シリーズのVol.11は、ヴァイオリンの青木尚佳さんとチェロの伊藤悠貴さんによるデュオ・リサイタル。お二人とも現在はロンドン在住のため、一時帰国しての出演である。本公演は、「モーニング(11:00〜12:00)」と「アフタヌーン(14:00〜15:00)」の2回公演になっているが、内容は同じではないので、両方聴くことにした。季節柄、内容はクリスマス・コンサート(?)という位置付けでもあった。

 お二人は小さな頃からの幼なじみということだが、初めて共演したのは今年2016年4月の「東京・春・音楽祭」でのことで、今回はそれに続いての2回目ということになる。ソロあり、デュオありのリサイタルだが、ヴァイオリンとチェロのデュオというのは、コンサートのカテゴリとしては珍しい方に入る。意外と聴いたことがないという人も多い。同時にそうたくさん曲があるわけではないし、また有名な曲も少ないので、どうしても選曲がマニアックになってしまう。今回もデュオの曲は・・・・けっこう難解な曲ばかりになってしまった(と思う)。

 演奏の方は、相変わらず素晴らしい。尚佳さんのヴァイオリンは、音色の豊かさに一層磨きがかかってきたというか、実に艶やかで豊潤な音。もともと技巧的には抜群のものをもっているが、最近では表現力の幅の広さや、旋律をしなやかに歌わせるのが、実に音楽的であって、聴いていて心地よい。
 伊藤さんのチェロは、躍動的でダイナミック。基本的には陽性の音色で、非常にリズム感が良く、キレ味もシャープである。それでいてダイナミックレンジが広く、表現の幅も広い。

 とりあえず、ここまで。さすがに師走は忙しく(師ではないので走り回っているわけではないが)詳細なレビューを書く時間が取れない。後日、改めて書き直す予定ですので、しばらくお待ちください。



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12/17(土)東京フィル/第九/アヌ・タリのキレ味/充実の歌手陣/プロの技巧を感じさせる合唱の素晴らしさ

2016年12月17日 23時30分00秒 | クラシックコンサート
東京フィルハーモニー交響楽団 第九特別演奏会

2016年12月17日(土)19:00〜 サントリーホール B席 2階 LA2列 20番 5,400円
指 揮:アヌ・タリ
ソプラノ:小川里美
アルト:向野由美子
テノール:宮里直樹
バリトン:上江隼人
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ
【曲目】
エッレル:夜明け
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125合唱付き

 今年の「第九」第2弾は、東京フィルハーモニー交響楽団。マチネーで読売日本交響楽団の「第九」を聴き、ダブルヘッダーでソワレは東京フィルということになった。さすがに私も1日に「第九」を2回聴くというのは初めての体験である。
 読響のページでも書いたが、「第九」の演奏会は値段が少々高くなるのが玉にキズ。東京フィルは定期シリーズでは「第九」を演奏してくれないので、例年、聴いたり聴かなかったりだが、今年は指揮者のアヌ・タリさんが良いよと友人のKさんに勧められたものの、いつもの会員席である最前列の指揮者の真後ろの席だとS席で10,000円、会員割り引きでも9,000円はちとツライ。そこで2階のLAブロック最前列のLB寄りの2席を会員先行発売日に取り、Kさんと一緒に聴くことにした。ここだとB席になるので会員割り引きだと5,400円になる。ここはステージの右側真横に位置し、ステージが目の前で、手前側(ステージ左側)が一部見切れるものの、木管・金管楽器の各パートがすべて見下ろせるので管楽器の音が極めてよく聞こえる。コストパフォーマンス抜群の席なのである。しかも本日は「第九」。合唱団とその前に立つ4名のソリストも完全に見通せる。だから、左右のステレオ効果は全くないが、音そのものはほとんどすべて間近の直接音を聴くことができるのである。

 さてKさんに勧められたアヌ・タリさんだが、私はこの指揮者はこれまでに聴いたことがなかった。エストニア出身で現在売り出し中の美人指揮者だが、ウワサによると女王様キャラでオーケストラをビシビシシゴくとか・・・・。その真偽はともかくとして、東京フィルの今年の「第九」は、サントリーホールで2回(12/17、12/18)、東京オペラシティコンサートホール(12/22)とオーチャードホール(12/25)が各1回の計4回予定されているが、初日である本日から、キッチリと仕上げてきた。だから東京フィルもけっこうシゴかれたのかな、などとつまらぬことを考えてしまった。

 「第九」に先立って、まず、エッレルの「夜明け」という曲が演奏された。ヘイノ・エッレル(1887〜1970)は日本ではほとんど知られていないと思うが、エストニアでは有名な作曲家らしい。「夜明け」は1918年に作曲された交響詩で、後期ロマン派的な濃厚な色彩感と表現手法で、憧憬描写に優れている、7分くらいの曲。シベリウスのエストニア版といった感じである。演奏の方も、透明感のある弦楽の響きの中にオーボエの濃厚なサウンドが冷たい空気感を描き、ホルンが輝くような夜明けの陽の光を描き出す。アヌ・タリさんのお国ものだけあって、この曲の持つ世界観が見事に描かれていた。

 休憩を挟んで「第九」の演奏となる。コチラの方も結論を先に言ってしまえば、かなり素晴らしい演奏だったと思う。今ドキ風の演奏、といってしまえばそれまでだが、スッキリとして無駄がなく、過度な思い入れが感じられない。全体にやや速めのテンポを通し、リズム感のキレ味が鋭く、推進力がある。メリハリが効いていてエネルギーは強く感じるのだが、クリアなサウンドの音楽作りが功を奏して、重々しくなることなく、かといって軽くもならない。透明感のあるエネルギーに満ちた演奏だったといえる。

 第1楽章はかなり速めのテンポでグイグイと押していく。ティンパニが強めにリズムを叩き出すが、そのテンポ感がリズミカルで、強烈なインパクトを生み出すが決して重厚にはならない。その前のめりのリズム感・テンポ感が強い推進力を生みだし、演奏に生命力を与え、エネルギッシュな印象を強めているのである。2階のLAブロックで聴いていたため、木管も金管も音がダイレクトに飛んで来るため、普段はあまり聞こえてこない内声部やリズムを刻む金管などがクリアに聞こえて、その意味でもスッキリと新鮮な響きであった。

 第2楽章もかなり速めのスケルツォ。始めの方ではちょっとテンポに付いていけずに弦と管がバラついた感もあったがすぐに持ち直し、どちらかというと明るい印象の演奏となった。中間部のホルンのソロなども速いテンポに見事に乗せた演奏で、緊張感を高めていく。速度を緩めることのないスケルツォは良い意味で緊張の連続で、引き締まっていて強い推進力を生み出していた。

 第3楽章の前にソリストが入場。立ち位置はオーケストラの後方、合唱団の前である。
 第3楽章は緩徐楽章。最近の傾向としてはこの楽章も速めのテンポでスイスイと行くのが流行っているようだが、アヌ・タリさんも予想通りの速めのインテンポであった。従って天国的な穏やかな雰囲気とは違っているが、むしろ寒い国の透明な空気感が張り詰めているようで、クリアなサウンドと緊張感の高い演奏で、眠気を誘うようなところが全くなかった。個人的にはこの楽章が速いのはあまり好きではないが、今日のアヌ・タリさんの指揮には、どこか納得させられるだけの意志が込められているように感じられた。

 第4楽章も速めのテンポで始まる。序奏の怒濤のような強烈な押し出しとティンパニのリズム感がエネルギッシュ。低弦によるレチタティーヴォは速めながらしなやかに歌わせている。第1〜第3楽章の主題が回帰して、「歓喜の主題」が低弦から始まると、ここでも速めテンポとクリアなサウンドで非常にピュアな印象を創り上げて行く。ドイツ風の哲学的な印象ではなく、北国の美しい自然が生み出した風景描写のようなイメージというか。
 バリトンの独唱から始まり、合唱と4名のソリストが歌い出す。ここでも速めで快調に流れるようなテンポ感。バリトンの上江隼人さんは安定した張りのある歌唱。テノールの宮里直樹は若手だが立派な体格から生み出す歌唱は艶やか。
アルトの向野由美子さんも安定した歌唱をきかせていた。ソプラノの小川里美さんは突き抜けるようによく通る声質で、強い存在感を主張していた。
 合唱がまた素晴らしかった。東京オペラシンガーズはプロの歌手集団であって、時として素晴らしい合唱を聴かせてくれることがあるが、今日はその素晴らしい日。人数は少ないが、圧倒的・爆発的な声量と、立ち上がりの鋭さ、旋律の歌わせ方のしなやかさ、それらがピタリと合っていて、速いテンポの演奏の中でもまったく揺るがない合唱としての「技巧」を見せつけるカタチになった。長年、毎年「第九」を聴いてきたが、今日の東京オペラシンガーズの合唱は、久し振りに鳥肌が立つような、痺れるような感動をもたらしてくれた。

 結局、ほとんと速いテンポのまま最後まで疾走するイメージの「第九」になったが、それでも非常に充実した印象を残したのは、東京フィルの的確な演奏と、濃厚だがクリアなサウンド、4名のソリストの平均値の高さ、そして「超」が付くくらいの一級品の合唱、つまり演奏自体の質がものすごく高かったからに他ならない。アヌ・タリさんのイメージする「第九」を演奏者が見事に体現することができたということだろう。演奏が終わった瞬間に会場が沸騰しBravo!が飛び交ったのも、会場にいた大勢の人たちが同じように感じたからに違いない。素晴らしい演奏であった。

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