Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

6/11(土)サロン楽の極み/川田知子・会田莉凡・安達真理らによる室内楽のチャリティは演奏も一流

2016年06月11日 23時30分00秒 | クラシックコンサート
音楽交流NPOクウォーター・グッド・オフィス 第28回チャリティーコンサート
心を潤すサロン楽の極み 〜Part 2〜


2016年6月11日(土)18:30〜 紀尾井ホール S席 1階 1列 12番 6,000円
ヴァイオリン:川田知子
ヴァイオリン:会田莉凡
ヴィオラ:鈴木康浩
ヴィオラ:安達真理
チェロ:上村 昇
チェロ:富岡廉太郎
クラリネット:吉田 誠
司会:奥田佳道
主催:特定非営利活動法人クウォーター・グッド・オフィス
【曲目】
モーツァルト:弦楽四重奏曲 第17番 変ロ長調 K.458「狩」(川田/会田/鈴木/富岡)
モーツァルト:クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581(吉田/川田/会田/鈴木/富岡)
ブラームス:弦楽五重奏曲 第2番 ト長調 作品111(川田/会田/鈴木/安達/上村)
《アンコール》
 ブラームス:16のワルツ 作品39より 第15番(七重奏版)

 音楽交流NPOクウォーター・グッド・オフィスが主催する「第28回チャリティーコンサート 心を潤すサロン楽の極み 〜Part 2〜」を聴く。このNPOは、未来ある若手・新人音楽家や優れた音楽家に対する活動支援・飛躍支援と、チャリティコンサートを毎年開催し、その収益金で、離島や被災地に向けて出前コンサートを実施することなどを主体とした団体。名称の由来は、創立者で現理事長が四分一勝(しぶいちまさる)さんであるところから来ているらしい。現行のNPOに組織化されたのは2011年のことで、正会員メンバーには名のある音楽家の皆さんがたくさん名を連ねている。活動の開始は古く、毎年開催されているチャリティコンサートが今年で28回を数える。今回のコンサートの収益金は、東日本大震災の被災地への復興支援出前コンサートの資金に充てられるとのことだ。

 日頃室内楽にはあまり縁のない私だが、演奏家の方と知り合いになると聴きたくなるので出演情報をチェックしたりするようになる。今回はヴィオラの安達真理さんとのつながりでこのコンサートのことを知り、友人を誘って聴きに行くことにした。上記のメンバーを見れば、聴き応え十分であることは容易に想像できるからである。
 チャリティコンサートなどではありがちなことだが、通常のコンサートとは運営の方法が違っていたりして、コンサートそのものやチケット発売の情報が私たち音楽ファンの間に流れてこない。チケットの取り扱いも主催者とホールのみでプレイガイドでは扱わなかったり、WEBでの申し込みだと席をえらべなかったり・・・。そういう事情だったので、若干のコネを使って希望通りの最前列センターを確保した。室内楽を聴くのなら近い方が良い。

 コンサートは音楽評論家の奥田佳道さんによる司会で進められた。奥田さんもクウォーター・グッド・オフィスの正会員である。
 1曲目は、モーツァルトの「弦楽四重奏曲 第17番 変ロ長調 K.458『狩』」。第1ヴァイオリンが川田知子さん、第2ヴァイオリンが会田莉凡さん、ヴィオラが鈴木康浩さん、チェロが富岡廉太郎さんという豪華メンバーだ。
 演奏が始まってまず感じたのは、とても優しく美しい音色で、四重奏がバランス良く豊かに響いていることだ。もちろん紀尾井ホールの豊かな響きによるところもあるのだろうが、弦楽四重奏などの室内楽をもっと小さなサロンなどで聴くと、もっと生々しく硬質に聞こえる。今日の演奏では、4名がそれぞれ個性を主張し合うような明瞭な分離をしつつも、それぞれの音が見事に溶け合い、1×4=4以上の豊潤な響きとなっていた。もちろんそれは楽曲の解釈や表現においても、4名の意志が統一されている部分と、個性を押し出す部分のバランス感覚が絶妙であるからだろう。川田さんの透明感の音の立ち方、莉凡さんの内声部の支え方、鈴木さんの時折見せる主張、土台を支える富岡さんという、それぞれのスタンスの置き方と、全員が同じ音型を取る時のハーモニーの厚さなど、隙がない。
 第1楽章は快活なAllegroをとても優雅に、第2楽章はメヌエットを活き活きと、第3楽章は豊かな情感に満ちた緩徐楽章、第4楽章は弾むような疾走感。いずれも瑞々しくとても爽やかな印象で、聴いていても心が浮き立つようであった。

 2曲目は、モーツァルトの「クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581」。先のメンバーにクラリネットの吉田 誠さんが上手側に加わる。音域と音色が違うとはいえ、やはり弦楽四重奏は同じ楽器群には違いないので、ひとかたまりの音楽になる。そこにクラリネットが1本加わることによって、まったく違う音楽世界に変わってしまう。吉田さんのクラリネットは、柔らかく優雅に、そして煌びやかに歌う。クラリネットと弦楽四重奏が協奏的な対比を見せれば、鮮やかな輝くような音色で主題が浮き上がるし、またクラリネットとヴァイオリンが対話するように掛け合う部分ではむしろ溶け込むような音色でアンサンブルを楽しむ。そんな、音楽の多様性とそれを楽しむ演奏家の皆さんの心が見えるような素敵な演奏であった。
 第1楽章はAllegro楽章で、とくに協奏的な構成が純音楽的に高品質の音楽。古典的な造型美の中からロマン的な香りが漂ってくる。第2楽章はのどかに、田園のそよ風に身を委ねつつ、抒情的な夢想にふけるような、至福の時が流れているようだ。第3楽章は古典的で優雅なメヌエットで、弦楽四重奏とクラリネットが有機的に絡み合う。第4楽章は変奏曲。ヴァイオリンがクラリネットに動機を手渡すような主題が、快活に優雅に変奏されていく。やや控え目な弦楽がクラリネットと上手く溶け込み合い、あるいはクラリネットを引き立てるような絶妙のバランス感覚で、吉田さんがとくに強く主張することなくとも、自然に浮かび上がって来る。そのクラリネットの息遣い、温もりのあるやさしい音色が素敵だ。

 休憩を挟んでの後半は、ブラームスの「弦楽五重奏曲 第2番 ト長調 作品111」。ヴィオラが二人になるこの曲では、安達さんが加わり、チェロが上村昇さんに交替となった。弦楽五重奏曲での楽器の組み合わせは色々なパターンがあるので確定的なカテゴリとは言えないようだ。晩年のブラームスは第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、第1ヴィオラ、第2ヴィオラ、チェロという組み合わせを採った。とはいってもヴィオラが大活躍するわけでもなく、内声部を充実させることに主眼が置かれているようである。全体の曲想は大きなスケール感に彩られていて、この曲はブラームスの交響曲第5番に編み変えるための習作としての位置づけがあるのではないかという説があるくらい。
 第1楽章は雄大なスケールのソナタ形式で、たった5名で演奏しているとは思えないくらい、分厚くて細やかなアンサンブルだ。ソナタ形式の造形も、例えば展開部などだが、確かにシンフォニックなものであり、弦楽四重奏の延長上にあるとは思えないくらいのものになっている。ヴィオラが1名加わり、ヴィオラ・パートを2声に増すことで、素晴らしく厚みのある音楽になるのだ。加わった安達さんのヴィオラは、丸みのある暖色系の音色でとてもマイルドに響き、陽性で張りのある鈴木さんとは違っていて、アンサンブルに深みのある色彩感を生み出していた。
 第2楽章は暗い色合いの緩徐楽章。晩年の枯淡の境地の音楽・・・・というイメージだとは思うのだが、今日の演奏ではそこに若い人たちの持つエネルギーも若干加わっていて、諦めきれない(?)雰囲気があって良かったと思う。
 第3楽章はブラームスならではの交響曲などにも共通する独特の形式で、メヌエットでもスケルツォでもない、考えようによってはもっともブラームスの個性が表れている楽章でもある。「ため息」のような下降音型の動機が、やるせなさや諦めのイメージを想起させる。アンサンブルが分厚くシンフォニックにさえ感じさせるのは、ヴィオラ2名により内声部を複雑化していることがうまく働いているのだろう。安達さんと鈴木さんのヴィオラが、時折ほほえみを交えながら弾く優しいニュアンスを描き出していて、音楽を暗くしてしまわないところが良い。
 第4楽章はハンガリー舞曲風の曲想だが、基本的には陽性で活き活きとした音楽である。この楽章はヴィオラが比較的活躍し、主題をヴァイオリンと対話的に演奏する部分もある。最後は陽気なロマの音楽風にPrestoの舞曲になって元気いっぱいにフィニッシュ。活き活きとした躍動感があり、推進力・疾走感もあって、聴いていてもウキウキするようなエネルギーを感じた。Bravo!! 素晴らしい演奏だったと思う。

 アンコールは、ブラームスの有名なピアノ曲、「16のワルツ 作品39」より 第15番」を本日の出演者全員で、つまりクラリネット七重奏への編曲版で演奏された。

 今日のチャリティコンサートには視覚障害者の方が5名ほど招待されて盲導犬を伴って一般客席で鑑賞されていた。終演後、演奏家の皆さんが客席に降りていって、かれらと挨拶を交わした。その後、ホールのロビーに出て、演奏家の皆さんご自身で募金箱を持ってチャリティ活動に参加。私や友人のYさんも些少だが寄付を。まあ、コンサート自体がチャリティ活動なので、私たちとしては聴きに行くことでの社会貢献が多少でもできればと思っている。出演者の中で知り合いと言えば、安達さんと莉凡さんくらいなので、その辺りを中心に、今日は楽器の代わりに募金箱を持って、ハイ、チーズ。



写真上が安達真理さん。下が会田莉凡さん(右)と富岡廉太郎さん。


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6/11(土)読響みなとみらい名曲/快速テンポと爆音轟くラフマニノフP協2番と「展覧会の絵」

2016年06月11日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
読売日本交響楽団 第89回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

2016年3月12日(土)14:00~ 横浜みなとみらいホール S席 1階 C2列 15番
指揮:オラリー・エルツ
ピアノ:アンナ・フェドロヴァ*
管弦楽:読売日本交響楽団
コンサートマスター:長原幸太
【曲目】
グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18*
《アンコール》
 スカルラッティ:ソナタ ニ短調 K213*
ムソルグスキー/ラヴェル編:組曲「展覧会の絵」

 読売日本交響楽団の「第89回みなとみらいホリデー名曲シリーズ」を聴く。4月に新シーズンに入って以来、4月・5月とサボってしまったので、今期初のみなとみらい公演となる。指揮のオラリー・エルツさんを聴くのは初めてだと思う。1971年、エストニアの生まれの45歳。なかなか元気の良い音楽を作る人で、爆音を轟かす読響との相性は、けっこう良いかもしれない。

 グリンカの歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲は、蓋を閉めたピアノを置いたままの演奏。これはいただけない。ピアノの出し入れくらい、手を抜かずにやってほしい。演奏の方は、かなり速めのテンポで、快調にすっ飛ばしていく感じ。読響のアンサンブルも早いテンポに対応していて、決して軽くならずに爆音を轟かし、ダイナミックな演奏をするところは、「本気を出せば上手いんだぞー」と言わんばかりの実力を発揮していた。ただし音響がこもりがちなみなとみらいホールなので、遠い席の人には弦楽の高速パッセージなど聴き取れなかったのではないだろうか。

 続いて、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲 第2番」。ソリストのアンナ・フェドロヴァさんは1990年、ウクライナ生まれの26歳。アリス=紗良・オットさんに似た感じの美形で、演奏も若々しく迷いもためらいもない感じ。何十回聴いたか見当も付かないこの名曲に、新鮮なイメージを吹き込むことに成功していた。
 第1楽章は、けっこう速めのイン・テンポで、濃厚なロマンティシズムに彩られたこの曲を、快適なテンポでグングンと飛ばしていく。抒情的な旋律もサラリと流していくので、一見すると一本調子のようにも思えるのだが、どういうわけだか流れの良い音楽の中からロマンティックに香りが浮き出して来るのだ。超絶技巧をものともせず、主題をうまく際立たせるあたりの表現力も素敵だ。
 第2楽章もやや早めのイン・テンポで、ことさら抒情性を強調することもなく、淡々と演奏しているように聞こえるが、むしろそうした演奏スタイルによって楽曲の持つ本質的なロマンティシズムを浮き彫りにすることを目指しているのかも。いずれにしてもかなり速いテンポなのだが、それを不自然に感じさせない魅力があることも確かだ。
 第3楽章も速いテンポはそのまま。余分な抑揚は付けずに、スイスイ飛ばしてガンガン弾く。超絶擬古が冴え渡り、速いテンポの中から、さまざまなロマンティシズムを描き出すという手法は、この楽章も同じだ。このテンポに呼応して、エルツさんの指揮する読響もリズム感良く、突っ走るような推進力と、ダイナミズムでフェドロヴァさんを盛り立てて行く。これがまたけっこうイイ感じなのである。
 結局、ほとんど速いテンポで疾走し続けた演奏で、イメージ的には、これまで聴いた中でも最も速い方に感じられた。そこには荒れ果てた広大な大地を思わせるロシア音楽特有の無骨さと感傷的で憧れをたっぷり含んだロマンティシズム・・・といった普通の意味でのラフマニノフのイメージは、ない。しかし、エネルギーに満ちて疾走していく若さと瑞々しさには妙に納得させられるチカラがあった。こういった解釈と表現もとても新鮮に感じられて、これはこれで素晴らしい名演だったのではないかと思う。少なくとも、アンナ・フェドロヴァさんというピアニストは、要注意人物リストに留めておき、リサイタルも聴いてみたいと思った。
 フェドロヴァさんのソロ・アンコールは、スカルラッティの「ソナタ ニ短調 K213」。また極端に違うイメージの曲をしっとりと控え目に歌わせている。ますますこの人の実像が分からなくなっていく・・・。

 後半は、ムソルグスキー/ラヴェル編の組曲「展覧会の絵」。今日は徹底して名曲コンサートだ。まあ、分かりやすい曲ばかりの演目なら、聴く方もあまり深く考え込まずに済む。
 エルツさんの音楽作りは、ここでも早めのイン・テンポ。冒頭の「プロムナード」も読響の金管群は質感の良い音を出していたが、スタスタと歩いていくような感じで、「絵」の前で立ち止まったりは・・・しない。全体の早めのテンポ感に乗せてしまえば、読響の演奏もノリが良くなり、木管も金管も、弦楽さえもが流れに乗って快適な音楽を展開していく。テンポが安定しているので、アンサンブルもソロ・パートも乱れることなく、しっかりした造形の分かりやすい演奏をしていた。
 音量は、ここぞという時以外は、比較的控え目で、音質のクオリティを高く保っている。そしてクライマックスを迎えると読響ならではの爆音が炸裂する。打楽器が加わる全合奏の強奏時は音のエネルギーが行き場を失ってホールに充満してしまう。つまりウルサイだけなのだが、それもまたオーケストラ音楽の魅力のひとつでもあるので、読響の場合はこれがないとちょっともの足りなく感じてしまうのである。そういう意味では、ダイナミックレンジはかなり広く、メリハリが強く効いていたと評価することができる。
 結局のところ、この「展覧会の絵」も、従来のイメージ・・・・ロシア的な無骨さ・不気味さとフランス的な鮮やかな色彩感が混ざり合って・・・・というのとはちょっと違う仕上がりになっていたようだ。そういったお国柄のようなものは感じられなくても、テンポ感があって、質感の高い管楽器群、力強い弦楽、強烈なインパクトを与える音量の変化など、実に面白い演奏なのであった。だから聴き終えた後でも満足度は意外に高く、3ヶ月ぶりの「みなとみらい名曲シリーズ」であったが、来て良かった、聴いて良かったと思える演奏だったことは確かだ。

 ナマ演奏のコンサートというのは色々なことが起こるもので、自分の持っている従来的な解釈をかなり覆されるような演奏ばかりのコンサートであったが、意外に素直に受け入れることのできる不思議な魅力を持った演奏であった(逆によく知っている曲だからこそかもしれないが)。

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6/10(金)東京フィルオペラシティ定期/岡本侑也の新鮮ドヴォコンと尾高忠明のキレ味鋭いドヴォ8

2016年06月10日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
東京フィルハーモニー交響楽団/第102回東京オペラシティ定期シリーズ

2016年6月10日(金)19:00〜 東京オペラシティコンサートホール A席 1階 3列(1列目)17番 5,355円(会員割引)
指 揮:尾高忠明(桂冠指揮者)
チェロ:岡本侑也*
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:三浦章宏
【曲目】
ドヴォルザーク:序曲『謝肉祭』作品92
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104*
ドヴォルザーク:交響曲 第8番 ト長調 作品88

 東京フィルハーモニー交響楽団の「東京オペラシティ定期」を聴く。このシリーズは長らく会員を続けているが、今期より席替えして最前列の真ん中、指揮者の真後ろの席になった。4月の初回はミハイル・プレトニョフさんの指揮する『ペール・ギュント』全曲演奏だったが、そちらは「サントリー定期」で聴いたため、「東京オペラシティ定期」はパスしていた。そのためこの席で聴くのは今日が初めてである。前期までは1階 4列(2列目)だったのだが、1列前に来ただけで、音のバランスが火なり変わる。視覚的には最前列の方が良いが、音の感じは2列目の方が良いかもしれない。まあ、好みの範囲内ではあるけれども。

 今日は尾高忠明さんによるオール・ドヴォルザーク・プルグラム。上記のように、黄金のプログラムである。序曲『謝肉祭』は賑やかなお祭り騒ぎの様子がコンサート序曲としてもワクワク感を募らせるし、チェロ協奏曲はその分野での古今東西の名曲中の名曲だ。交響曲は第9番「新世界から」の方が一般的には圧倒的に人気があるが、それはアメリカに渡ったドヴォルザークがホームシックにかかった上での郷愁を誘うからであろう。チェコの音楽、ボヘミアの香りが濃厚に感じられるのは、第8番までである。とくに完成度の高いこの曲は、私は「新世界から」よりも好きだ。

 演奏の方は全体的に素晴らしい出来であったと思う。最近の東京フィルは好調を持続しているように思う(値上げしただけのことはある??)。
 序曲『謝肉祭』は。始めからエンジン全開で、華やかでダイナミック。パンチのある金管、濃厚な色彩感を持つ木管群、弦楽のキレ味の良いアンサンブルなど、バランスも良い。冒頭は打楽器系が遅れ気味に感じられたがすぐに修正されて、終盤のクライマックスは推進力が漲り、怒濤の勢いが感じられた。ダイナミックレンジも広く、リズム感も活き活きとしていて、最前列で聴いていると、迫力に圧倒される。最後の方でコンサートマスターの三浦章宏さんのE線が切れた。三浦さんは平気な顔をしてA線のハイポジションで弾いていた。さすがである。素晴らしい出だしで、今日のコンサートが名演の予感がする。

 2曲目は「チェロ協奏曲」。ゲストのソリストは1994年生まれの岡本侑也さん。2011年の第80回日本音楽コンクールのチェロ部門で優勝したときは高校生だった。その後、2014年に紀尾井ホールの「明日への扉」シリーズに登場した時にリサイタルを聴いたことがある
 岡本さんのチェロは、基本的に明るい音色を持ち、旋律を大きく歌わせる。音質はやや細めだが、繊細なニュアンスの表現に優れているようだ。深い陰影を感じさせるタイプではなく、明瞭で陽性のイメージが強い。だから全体的にとても若々しく、フレッシュな印象を与えてくれる。装飾的な速いパッセージも極めて正確な音程で見事だ。早い楽章では、オーケストラとのやりとりも音楽の流れをうまく捉えていて、素晴らしいリズム感を見せ、とても自然な振る舞いを見せる。緩徐楽章では旋律を大らかに、歌心いっぱいに演奏する。この曲は解釈(あるいは表現)によっては、望郷や憂愁が強く描かれることもあるが、岡本さんの演奏は、近い未来に夢を感じて前向きに捉えているイメージ。若手の演奏家ならではの表現で、50歳を過ぎて書かれたこの曲に対して、瑞々しい生命力を吹き込んでいるようであった。

 後半は「交響曲 第8番」。これがまた実に素晴らしい演奏であった。尾高さんの指揮は、この曲の解釈としてはやや大きめのダイナミックレンジを持たせ、リズム感のキレを良くして音楽全体をシャープで曖昧さのないものにしている。
 第1楽章はとくにダイナミックレンジを広く採り、メリハリを効かせている。金管も木管も質感の高い濃厚な音色を聴かせてくれ、そこに鋭角的に弦楽を切れ込ませる。それが曲を活き活きとしたものに変えていくのだ。
 第2楽章は緩徐楽章。弦楽のアンサンブルが実に上手い。縦の線がカリッとしていて、なだらかな旋律を大きく歌わせるのにも、抜群のキレ味を感じさせる。尾高さんのオーケストラ・ドライブも、大らかに歌わせているのに、ダイナミズムを忘れない。
 第3楽章の有名な主題は尾高さんのロマンティシズムが十分に発揮されていた。舞曲風の3拍子だが、ワルツのように回転するような流れを持つリズム感が心地よく、その中で、弦楽、とくに第1ヴァイオリンがキレの良いアンサンブルを聴かせていたのが見事であった。
 トランペットのファンファーレが華やかに鳴り響き第4楽章が始まる。ヴィオラとチェロが厚みのある音色で主題を描く。全合奏になると打楽器が前のめり気味の素晴らしいリズム感で叩き出し、金管が吠える。尾高さんの指揮はノリが良く、躍動感が溢れていて、音楽が前へ前へと進んでいくイメージ。ここが大切なところで、ちょっと温くなると野暮ったい音楽に堕ちてしまうのだが、今日の東京フィルは実に気持ちの良い切れ味を発揮して、最後まで聴いている私たちの気持ちを牽引していくよっであった。素晴らしい演奏だったと思う。会場からも盛大なBravo!!が飛んだ。

 今日の東京フィルの演奏を引き締めていたのは、弦楽、特に第1ヴァイオリンのアンサンブルの立ち上がりの鋭さだったように思う。コンサートマスターの三浦章宏さんがグイグイと引っ張って行くのが、最前列から見ていてよく分かった。それに加えて、特にアナウンスはされていなかったが、第1ヴァイオリンのフォアシュピーラーにゲストとして渡辺美穂さんが加わっていて、このツートップが強いオーラを発して牽引していたのである。渡辺さんは東京フィルの元第2ヴァイオリンのフォアシュピーラーで、その後大阪フィルのコンサートマスターを2年ほど務めた。私の最近のお気に入りであるOrchestra AfiAのコンサートマスターでもある。三浦さんと渡辺さんのツートップは、Orchestra AfiAでも何度も実績があり、信頼関係や音楽性の共有も揺るぎないのであろう。今日の弦楽アンサンブルは文句なしのBravo!!であった。

 実は、今日は午後にリハーサル見学会があった。東京フィルが毎年開催しているもので、賛助会員と定期会員に参加資格がある。今日はなぜだか参加者が多く、200〜300名はいたようで、プロトークの際に尾高さんが「これならコンサートができる」と言ったほど。リハーサルは序曲『謝肉祭』とチェロ協奏曲だけで、およそ1時間ほどだった。今回のオペラシティ定期のプログラムは1回しか公演がないのが惜しいところだが、入念に細部をチェックして曲を創り上げて行く様子が興味深かった。

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6/8(水)CHANEL室内楽/瀧村依里・田原綾子・伊藤悠貴・加藤文枝らによる重量級プログラム

2016年06月08日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
CHANEL PYGMALION DAYS/CHAMBER MUSIC SERIES 2016
シャネル・ピグマリオン・デイズ 室内楽シリーズ


2016年6月8日(水)18:30~ CHANEL NEXUS HALL 自由席 3列 左ブロック 無料招待
アーティスティック・デレクター:大山平一郎
ピアノ:ウェンディ・チェン
ヴァイオリン:瀧村依里
ヴァイオリン:マーティン・ビーヴァー
ヴィオラ:田原綾子
チェロ:伊藤悠貴
チェロ:加藤文枝
【曲目】
シューマン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調 作品44(チェン/瀧村/ビーヴァー/田原/伊藤)
ブラームス:ピアノ四重奏曲 イ長調 作品26(チェン/ビーヴァー/田原/加藤)

 CHANELが提供するピグマリオン・デイズ・アーティストたちによる室内楽シリーズをまた聴く機会に恵まれた。今回のシリーズは6/7、6/8、6/10、6/11の4日間にわたり、過去のピグマリオン・デイズ・アーティストの皆さんや元東京クヮルテットのメンバーであるマーティン・ビーヴァーさんなどを招いて開催される。出演者は開催日や曲目毎に異なるので、短いリハーサルの時間で演奏を仕上げていくだけでも高い能力が要求されるところだろう。
 今回のメンバーのうち、瀧村依里さんは2010年のピグマリオン・デイズ・アーティストで、私は2013年にCHANELでリサイタルを聴かせていただいたことがある。その後読売日本交響楽団に入団して、現在は第2ヴァイオリンの首席奏者を務めているのは皆さんご存じの通りである。チェロの伊藤悠貴さんと加藤文枝さんは、昨年2015年11月のCHANEL室内楽シリーズに登場していたヴィオラの田原綾子さんは、この4月にCHANELで単発のリサイタルを聴かせていただいたばかりだが、本来はピグマリオン・デイズ室内楽アーティストという位置付けである。そのため、今回の室内楽シリーズでは、全日にわたって出演し合わせて5曲の演奏に参加するというハード・スケジュール。しかも今日だけは全曲に加わる。メンバーがすべて異なるのでリハーサルのタイミングなどが大変そうだが、今回は海外の一流アーティストたちも加わっているので、持ち前の積極性で、素晴らしい体験をすることになりそうである。

 プログラムはなかなかの重量級だ。通常、CHANELのコンサートは1時間くらいの規模で行われている。無料招待で行われるものなので、普通の有料のコンサートの半分強というのはちょうど良いサイズだと思う。ところが今日の選曲にはちょっとボリュームがあった。前半のシューマンが30分くらい、後半のブラームスは50分に及ぶ大曲なので、間の5分間程度の休憩を挟むと、およそ90分近くなる。さすがにアンコールはなかったが、正味の演奏時間からみてもちょっとしたフルサイズのコンサート並みのスケール。聴く方にとってはありがたいことだが、演奏する方は大変だ。

 前半は、シューマンの「ピアノ五重奏曲 変ホ長調 作品44」。演奏するのは、ピアノがウェンディ・チェンさん、
第1ヴァイオリンが依里さん、第2ヴァイオリンがビーヴァーさん、ヴィオラが田原さん、チェロが伊藤さんというメンバーである。いつも言っていることだが、室内楽に関してはほとんど知識がないので、単純に聴いた上での感想を述べることにしよう。
 この曲は1842年の作で、シューマンは幸せの最中にあり、作品群も充実している時期でけあって、いかにもロマン派というような、自由な感情表現な彩られていて、抒情的な喜びが溢れているような曲想だ。第1楽章は、活発な喜びの感情が止まらない第1主題、ロマンスがいっぱいの第2主題。時折見せる不安な表情も、幸せの中にいつまで続くのかという憂いが秘められる。第2主題の展開が楽章の中で多くの部分を占めているのも、作曲者の心情の表れであろう。演奏はまさに若い人たちならではの屈託のなさ。明るい音色と弾むようなリズム感に支配されていて、聴いている方も若い人たちのエネルギーをいただくような気分になって、とても嬉しい。明るく煌びやかなピアノと抒情的に歌うチェロが素敵だ。
 第2楽章は変奏曲形式の緩徐楽章。主題はトーンを落とし、憂いの方が前面に出てくる。不安の要素がカタチを変えてヴァリエーションを聴かせる。
 第3楽章はスケルツォ。嬉しい感情を上昇する旋律に乗せている。A-B-A-C-Aの形式で、主部はチェロが、中間部Bはヴァイオリンが、中間部Cはピアノが活躍する。
 第4楽章は、Allegroのフィナーレ楽章。憧れを乗せたような伸びやかな主題がチェロを中心に登場する。第1ヴァイオリンとチェロに重きが置かれていて、ピアノは全体を華麗にバックアップする。第2ヴァイオリンとヴィオラは内声部を受け持つためにあまり目立たない。終結部になると、第1楽章の主題が回帰してきて、各パートに分かれ推進力のあるフーガを構成する。それらがひとつにまとまって曲が華やかに終わる。
 CHANEL NEXUS HALLは音があまり響かないので、音がプツプツと切れてしまうのがいかにも惜しい。もう少し残響音があれば、もっと若々しくフレッシュなイメージが増したであろうことは想像に難くない。演奏の方は端正にまとまっていて、しっかりとした造形を打ち出していたが、ロマンティックで活発な雰囲気は表れていたものの、少々まともすぎたようにも思えなくもない。やはり限られたリハーサルの時間の中で、曲を仕上げる方に求心力が向かったようにも感じられた。

 後半はブラームスの「ピアノ四重奏曲 イ長調 作品26」。演奏は、ピアノがチェンさん、ヴァイオリンがビーヴァーさん、ヴィオラが田原さん、チェロが加藤さんというメンバーである。この曲は1861年の作で、ブラームスがベートーヴェンの正統な後継者たるべく、交響曲作りに悩んでいた時期の作品。1876年に完成する交響曲第1番の作曲に20年間も試行錯誤を繰り返し悩んでいた、その間である。従って作曲の方法論としては交響曲の習作という要素もあり、演奏時間も長く、壮大なスケールを持っている。
 第1楽章が始まると、確かに交響曲のような大きなスケール感がある。ブラームスという人もあまり優れたメロディ・メーカーではなかったので、最初に提示される動機を展開して積み上げるような楽曲を構築している。理論的に積み上げられていく部分と、その間に表れる感傷的で抒情的な主題が鮮やかに対比するのもブラームスらしい。経過句に新しい旋律が次々と出てくるのも自由な表現のロマン派ならではである。その理論的に構築されている部分が、ややもすると同じような音型の繰り返しが続き、冗長に感じる部分もある。このような曲では、演奏していく上で緊張感を如何に保つか、集中を途切らせないことが大切だろう。何しろ交響曲をたった4名で演奏しているようなものなのだから。
 第2楽章は抒情的な緩徐楽章。短い動機を重ね合わせて主題を構築していく展開で、田原さんのヴィオラがようやく聞こえて来た。ブラームスもヴィオラには内声部を厚くする役割を多く与えていて、ヴィオラがひとりで主題を弾くところは少ない。しかし弦楽が厚いアンサンブルを聴かせて抒情的な主題を弾くと、実に奥行きが広がるようで素敵だ。あまり響かないホールだけに、内声部の役割は大きいのではないかと思う。
 第3楽章はスケルツォ。明るく弾むような生命力の溢れる音楽である。チェンさんの華やかなピアノが踊り、弦楽の明るいアンサンブルが眩しく聞こえる。若き日のブラームスの音楽故か、若い演奏家達のアンサンブルが新鮮なイメージを創り出していく。やはり内向的な音楽よりは、外に向かう音楽の方が、若い人たちの演奏には合っている。無理に難しく考えずに、素直に演奏する方が良い場合もあるようである。この楽章は複雑な構造で長い。スケルツォの主部と中間部がそれぞれ独立したソナタ形式で書かれている。主題が多く提示、再現と繰り返されるため、いささか冗長に感じる。
 第4楽章は明るく弾む舞曲風のフィナーレ。楽曲としては華やか、壮大にフィナーレを構築していくが、演奏している方はかなり疲れてくるところだろう。全体に音量が小さめになりメリハリも少なくなってきたように感じたが、疲れていたのは私の方で、気のせいだったのかもしれない。何しろ50分に及ぶ大曲なのに、交響曲などの管弦楽曲と違って、ピアノ四重奏では休む間もなく演奏し続けなければならない・・・・。それはともかくとして、アンサンブルの集中は最後まで高く保ったまま、とても良い演奏だったと思う。会場からも盛大なBravo!!が飛んでいた。

 結局、シューマンとブラームスの2曲はかなりハードなプログラムであったといえよう。両曲を演奏したビアノのチェンさんはともかくとして、ヴァイオリンのビーヴァーさんとヴィオラの田原さんにはかなりの重量級であったに違いない。最後までしっかりと演奏してくれて、「お疲れ様!!」と声をかけたくなってしまったくらいである。実際に疲れていたのは聴いていた私の方だったのだけれど。ここはやはり、皆さんの素晴らしい演奏にBravo!!を贈ろう。

 終演後は、それぞれの出演者を囲んでの歓談の時。ホールのあちこちに人の輪ができていた。私は親しいのは田原さんだけだったので、またいろいろとお話しする時間が比較的ゆっくりと取れた。何よりも嬉しいのは、彼女の演奏を聴く機会に恵まれたことで、CHANELの室内楽とリサイタルはかなり充実した内容だからである。こんな演奏会を無料で聴かせていただけるのは本当に幸せなことだと思う。心より御礼申し上げます。


 田原さんはこの後もCHANELの室内楽シリーズがあと2日ある。大学も4年生になれば相当忙しくなると思う。この後も桐6月17日に朋学園大学「第38回作曲作品展」での演奏があるので、昨年に続いて聴きに行く予定だし、7月9日にはリサイタルもある。他にも本番がいろいろとあるようで、ハード・スケジュールが続くようだ。留学も決まったということなので、今年は大きな飛躍の年になりそうである。可能な限りは聴きに行くことで応援したいと思う。

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6/7(火)庄司紗矢香/初の無伴奏リサイタル/皇后陛下をお迎えして豊穣でスケール感のある演奏

2016年06月07日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
庄司紗矢香 無伴奏ヴァイオリン・リサイタル

2016年6月7日(火)19:00~ 紀尾井ホール S席 1階 1列 12番 11,000円(会員割引)
ヴァイオリン:庄司紗矢香
【曲目】
J.S.バッハ:幻想曲とフーガ ト短調 BWV542 (ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ編)
バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ Sz.117
細川俊夫:新作(2016)《委嘱作品・世界初演》
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番 ニ短調 BWV1004

 庄司紗矢香さんの無伴奏ヴァイオリン・リサイタルを聴く。庄司さんがパガニーニ国際ヴァイオリン・コンクールで優勝したのが1999年のことで、2000年くらいから本格的な演奏活動を続けているので、キャリアからいえば既に若手ではなく中堅といったところだろう。ソリストとして、世界各地でのリサイタルやオーケストラとの共演だけでなく、室内楽や音楽祭への参加、CDの録音など、とにかく世界の超一流のヴァイオリニストとして認められている。そんな庄司さんだが、無伴奏リサイタルは初めてなのだそうだ。今回の日本ツアーでは、上記のプログラムを引っさげて、北海道、埼玉、神奈川、愛知、広島、島根、東京などで合わせて8公演が企画され、本日がその最終日、東京・紀尾井ホールでのリサイタルである。

 庄司さんは、実はもう33歳になるのだが、見た目の印象派未だに少女のように初々しい。今日のリサイタルでも、前半、ステージに登場した時は何故か不機嫌な表情で、プリプリしている。笑顔もまったくない。友人のYさんに言わせれば、そこが可愛らしいのだとか。

 演奏が始まっても表情は硬いままだったが、音楽はぜんぜん違う表情を持っていて、実に豊穣で雄弁なのであった。庄司さんのヴァイオリンといえば、キーンと張り詰めたような緊張感が漂い、息苦しささえ感じられるほどの集中した演奏、というイメージであった。リサイタルの時でもオーケストラとの協奏曲の時でもその印象は変わらない。ところが、初めての無伴奏曲だけのリサイタルで聴かせてくれた演奏は、深く奥行きがあって非常に豊かな響きを持った、ふくよかでスケール感のあるものに変貌していたのである。

 コンサートの後半には皇后陛下美智子さまがご来臨となり、聴衆から万雷の拍手で迎えられた。
 細川俊夫さんに委嘱した新作「ヴァイオリン独奏のための『エクスタシス』」の日本初演や、有名な「シャコンヌ」を含むバッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番の演奏には、とくにチカラが入り(固くなっていたという意味ではない)高度な集中に加えて、濃厚で豊穣な演奏で会場を魅了した。素晴らしい演奏だった。演奏が終わるとホッとしたような、やっといつものような笑顔が見られた。緊張していたのだろうか・・・。

■この続きは、後日時間ができたときに書き加える予定です。
(忙しくて詳細なレビューを書く時間がありません・・・・コンサートが多すぎて忙しいのですが)

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6/4(土)女神との出逢い/中村恵理ソプラノ/ヨーロッパの数多の歌劇場で活躍する実力を見事に発揮

2016年06月04日 23時30分00秒 | クラシックコンサート
土曜ソワレシリーズ/女神たちとの出逢い
中村恵理 ソプラノ・リサイタル


2016年4月23日(土)19:00~ フィリアホール S席 1階 1列 10番 3,500円(シリーズセット券)
ソプラノ:中村恵理
ピアノ:木下志寿子
【曲目】
シューベルト:「ガニュメート」D544
       「ます」D550
       「糸を紡ぐグレートヒェン」D118
C.シューマン:「私はあなたの眼の中に」作品13-5
       「彼は雨と嵐の中をやってきた」作品12-1
       「美しさゆえに愛するのなら」作品12-2
R.シューマン:『子どもの情景」作品15より「トロイメライ」(ピアノ・ソロ)
R.シュトラウス:「献呈」作品10-1
        「薔薇のリボン」作品36-1
        「ツェツィーリエ」作品27-2
小山作之助:「夏は来ぬ」
中田喜直:「すずしきうなじ」
     「霧とはなした」
プッチーニ:歌劇『ジャンニ・スキッキ』より「私の大好きなお父さん」
マスネ:歌劇『マノン』より「さようなら、私たちの小さなテーブルよ」
    歌劇『エロディアード』より「彼は優しい人」
ヴェルディ:歌劇『椿姫』より「ああ、そはかの人か~花から花へ」
《アンコール》
 プッチーニ:歌劇『つばめ』より「ドレッタの美しい夢」
 岡野貞一:「朧月夜」

 横浜市青葉区の「青葉区民文化センター フィリアホール」が主催する「土曜ソワレシリーズ/女神たちとの出逢い」の2016/2017シーズン上半期の第2回は、ソプラノの中村恵理さんのリサイタル。新国立劇場オペラ研修所第5期生修了後、オランダに留学。その後英国のロイヤルオペラはウスに在籍していた時に、アンナ・ネトレプコさんの代役で「カプレーティ家とモンテッキ家」のジュリエッタを歌い、成功を収めたことで話題になった。その後、ヨーロッパ各地の歌劇場でキャリアを順調に重ね、2010年からはバイエルン国立歌劇場の専属ソリストとして契約。現在もヨーロッパを中心にオペラやコンサートに出演、活躍の場を広げている。逆に日本国内ではあまり演奏機会がないのが非常に残念である。

 私はもう10年前になる2006年に、新国立劇場の『フィデオ』でマルツェリーネ役で歌ったのを聴いたことがあり、印象に残っていた。その後は海外からのニュースばかりで実際に次に聴くことができたのは、2011年10月、バイエルン国立歌劇場の来日公演で『ナクソス島のアリアドネ』で水の精役で出演した時である。こちらは端役なのでとくに印象には残らなかった。そして2012年の紀尾井ホールでのリサイタル・デビューは当然聴きに行ったが、その時は強烈なインパクトを感じたものである。また、2014年1月3日の「NHKニューイヤーオペラコンサート」ではグノーの「私は夢に生きたい」を鮮烈に歌ったのは記憶に新しい。昨年も帰国してリサイタルを行ったがそちらは諸々の事情で行けなかった。だから彼女の歌唱をまとめて聴くのは、4年ぶりということになる。今回の帰国では、八ヶ岳、所沢、札幌、横浜(本日)でリサイタルが予定されている。

 登場した恵理さんは、4年前の記憶からすると一回り大きく(?)なっているようだった。その分だけ(?)声の質もかなり変わってきているようで、かつての透明感のある美しい声で突き抜けるようなパワーがあったのに対して、声が柔らかくふくよかになっている。声量がたっぷりあるのは変わっていない。紀尾井ホールに比べれば小さなフィリアホールでは、それほど大きな声を出す必要はないだろうが、それでも十分過ぎる声量でホール内を圧倒した。
 プログラムの前半には、ドイツ歌曲を集めた。まずシューベルトを3曲。「ガニュメート」透明感のある声質はそのままに柔らかな歌声は、しっとりとした訴えかけるような情感がある。「ます」では、声が明るく変わり、弾むような華やかさがあった。歌曲での感情表現は、自然体で好ましい。「糸を紡ぐグレートヒェン」では屈折した情感が込められ声質もやや暗く沈む。歌曲では控え目にしているがクライマックスの声量は、やはりオペラを彷彿とさせる力感が漲る。
 続いて、クララ・シューマンを3曲。「私はあなたの眼の中に」は、しっとりした佇まいで、切々と愛を歌う。抒情的で切なげな感情表現がとても素敵だ。「彼は雨と嵐の中をやってきた」は、嵐のような激しい感情をぶつけるように、立ち上がりの鋭い歌唱が聴く者の心に突き刺さるようだ。「美しさゆえに愛するのなら」は、あまり抑揚のない旋律の曲で、語りかけるような切々とした歌唱に、鬱に秘めた情感が込められる。声も美しく、素敵な歌唱である。
 続いてはちょっと休憩で、ピアノのソロを1曲。ロベルト・シューマン『子どもの情景」かにお馴染みの「トロイメライ」。ピアノの木下志寿子さんは、新国立劇場や二期会オペラ研修所のピアニストを務めていて、コレペティトゥールや声楽の伴奏が専門の人。
 前半の最後はリヒャルト・シュトラウスを3曲。「献呈」は、シュトラウスにしてはややまったりとしたイタリアの節回しっぽく感じたが、後半の情感を込めたクライマックスは押し出しも強く素晴らしい。「薔薇のリボン」は多分初めて聴く曲。とても美しい旋律を透明感のある美しい声をうまく使っての表現だ。「ツェツィーリエ」はシュトラウスの歌曲の中でも代表的な傑作のひとつであるが、この名作を、豊かな情感とそれを表現する歌唱のテクニックも素晴らしく、声量もたっぷりあって、聴いている私たちの心に迫ってくるよう。ここでBrava!!の声が飛んだ。

 後半はまず日本の歌曲を3曲。小山作之助の「夏は来ぬ」中村さんの日本の歌曲は、前回の時も感じたのだが、ほとんどインテンポで淡々と歌う傾向がある。中田喜直の「すずしきうなじ」とゆったりとしたテンポの曲だが、やはり感情の起伏は少ない。「霧とはなした」は哀しげな曲ではあるが、やはり控え目な表現で、その中に微妙なニュアンスを盛り込んでいる。一見すると単調に歌っている感じがするが、これが彼女の日本の歌曲に対する表現解釈なのだろう。中村さんの場合、ドイツの歌曲と日本の歌曲とでは雰囲気がガラリと変わる。そしてこの後、オペラのアリアになると、またまったく違う歌唱に変わるのである。
 オペラからは、まずプッチーニの「私の大好きなお父さん」。この曲を知らない人もいないだろうし、ソプラノさんのリサイタルで聴かないこともないほどだが、それだけに真価が問われることにもなる。中村さんのクセのない声質は清純な役柄にぴったりで、歌曲割りは一段と情感の起伏が大きい表現で、とても華やかに変わる。役柄への感情移入が強く感じられ、彼女がやはりオペラ歌手なのだと実感できるところだ。
 続いて、マスネの『マノン』より「さようなら、私たちの小さなテーブルよ」。フランス語歌唱だ。この曲では、始まる前から役柄に入っていき、表情が一変。辺りの空気がガラリと変わり、切々と、時にドラマティックに感情を爆発させるように歌う。急に彼女が一回り大きくなったように、存在感が光り輝く感じだ。
 次は同じマスネでオペラ『エロディアード』より「彼は優しい人」。これはかなり珍しい曲の方に入るだろう。このオペラは何とサロメの物語なのだが、描かれ方はオスカー・ワイルドとはまったく違い、ここではサロメは清純な乙女なのだ。だからこのアリアはジャン(ヨカナーン)への愛を素直に、そして熱烈に歌うのである。中村さんがこの曲を選んだのがよく分かる。彼女の歌唱にピッタリなのだ。よく通る透明な声質。しかし軽くはなく芯に力強さがある。そして役柄に没頭して感情を押さえきれずに爆発させてしまうように歌う。これはお見事。Brava!!
 最後はヴェルディの『椿姫』より「ああ、そはかの人か~花から花へ」。またまた違ったキャラクタの役柄にすーっと入っていく。愛に飢え、迷い、とまどう死病に取り憑かれた高級娼婦・・・。圧倒的な存在感の豊かな声量と歌唱のテクニックも素晴らしいが、何よりも彼女の良さは、役柄への没頭による感情表現の多彩さであろう。そのドラマティックな歌唱に会場からはBrava!が飛び交った。やはり彼女が主楽を歌うオペラを観てみたいと思ったのは私だけではないだろう。

 アンコールは2曲。まずプッチーニの『つばめ』より「ドレッタの美しい夢」。朗々とドラマティックに歌うプッチーニ節も彼女は上手い。短い曲でも聴衆の心を鷲掴みにできるチカラを持っている。
 最後は岡野貞一の「朧月夜」。淡々とした、日本の歌曲の歌い方に戻る。・・・・同じ人とは思えないくらいの変わりようである。

 4年前とは見た目の印象派少し変わったし、声もふくよかで柔らかくなっている。それでも中村さんの歌唱には、人を惹き付ける強いチカラがあることに変わりはない。そういった何かを持っているからこそ、ヨーロッパでの評価が高いのであろう。実際にナマで聴いてみないと、なかなか伝わらないものである。やはりオペラの人という印象が強く、『エロディアード』と『椿姫』は圧巻であった。

 終演後には恒例のサイン会があった。彼女が出演したオペラのDVDやCDも発売されている。今回はサインかはパスさせていただいたが、サイン会の様子などをカシャリ。またピアニストの木下さんには記念写真を撮らせていただいた。



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6/4(土)ヒラリー・ハーン/フィリアホールでVnリサイタル/大らかで豊潤な演奏へと変化を遂げる

2016年06月04日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
JUST ONE WORLDシリーズ 第16回
ヒラリー・ハーン ヴァイオリン


2016年6月4日(土)14:00~ 青葉区民文化センター フィリアホール S席 1階 1列 15番 9,500円
ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン
ピアノ:コリー・スマイス
【曲目】
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第35番 ト長調 K.379
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ハ長調 BWV1005
A.G.アブリル:「無伴奏ヴァイオリンのための6つのパルティータ」より 第2曲「無限の広がり」、第3曲「愛」
コープランド:ヴァイオリン・ソナタ
T.デヴィッドソン:地上の青い曲線(27のアンコールピースより)
《アンコール》
 マーク・アントニー・ターネジ:ヒラリーのホーダウン
 佐藤聡明:微風
 マックス・リヒター:慰撫(以上、27のアンコールピースより)

 お馴染みヒラリー・ハーンさんの来日ツアー公演を聴く。今回のツアーは、本日6/4のフィリアホール(横浜市青葉区)を先頭に、6/5ザ・ハーモニーホール(松本市音楽文化ホール)、6/7東京文化会館(都民劇場)、6/8東京オペラシティコンサートホール、6/10愛知県芸術劇場コンサートホール、6/11兵庫県立芸術文化センター、6/12横浜みなとみらいホール、と7公演が予定されている。いずれもピアノのコリー・スマイスさんを伴って、同プログラムのリサイタルが行われるようである。
 ヒラリーさんは毎年のように来日していて、聴く機会の多いアーティストだ。昨年3月にはフィルハーモニア管弦楽団の来日公演ツアーに同行していてブラームスのヴァイオリン協奏曲を演奏した。私は東京芸術劇場コンサートホール横浜みなとみらいホールで聴いている。

 1曲目はモーツァルトの数ある中でも有名な「ヴァイオリン・ソナタ 第35番」。第1楽章はAdagioの前半部分からスマイスさんがロマン性をたっぷり盛り込んでだ煌びやかな演奏にヒラリーさんが非常に艶やかな重音を聴かせる。後半のソナタ形式は短調に転じ、憂いを秘めた音楽に変わるが、二人の演奏は実に濃厚にして豊潤。モーツァルトがロマン派の時代に生まれていたらこんな演奏をしたのではないか、と思えるような序序的な演奏だ。コーダなどは推進力があり、躍動的でダイナミックレンジも広く、後期ロマン派のような絢爛豪華な演奏だ。第2楽章は変奏曲。アンダンティーノ・カンタービレの美しい主題が様々に変奏していく。ふたりの演奏は、ピリオド奏法などとは対極に位置する、感情表現を思うままに繰り出し、自由度の高い演奏に終始。

 2曲目はヒラリーさんのソロで、J.S.バッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番」。この曲も、もはやバロックの様式とは思えないほどの濃厚でロマン性を前面に押し出した演奏だ。音量もたっぷり、重音を豊かに響かせて、音色は潤いがあり艶やかである。
 何か、ヒラリーさんの演奏の雰囲気が変わったような気がした。一皮むけたというか、ワンランク大らかになり、楽器を豊かに鳴らせるがエッジは鋭くはなく、丸みを帯びてマイルドに音色である。対位法的な構成力や2つの声部のバランス感覚が素晴らしく、たった1本のヴァイオリンから出てくる音とは思えない程の多彩さを使い分ける。その結果、ヴァイオリンとヴィオラの二重奏を聴いているように感じられるほどの豊かさであった。

 後半はガラリと趣を変えて、現代曲が並ぶ。
 まずは、アントン・ガルシア・アブリルの「無伴奏ヴァイオリンのための6つのパルティータ」より第2曲「無限の広がり」。その名の通り細かく刻まれた音が縦横無尽に走り回る。無窮動的な雰囲気もある。第3曲「愛」は、前の曲がテンポが遅くなりいくぶん艶めかしい旋律に変わる。ヒラリーさんの演奏は、全体的には押し出しが強く、メリハリもハッキリしているが、ひとつひとつの音自体は角がなくマイルドなのにキレ味が鋭く感じられるのは、抜群のリズム感と音楽の流れを的確に創り上げているからであろう。

 続いてはコープランドの「ヴァイオリン・ソナタ」。コープランドは20世紀アメリカの作曲家で、こういった作品をメインに採用するあたりはヒラリーさんらしい。本作は1943年の作品で、古典的な3楽章形式を踏襲している。新古典主義的な作風で、現代曲とはいえないが、新しい試みも盛り込まれている。ヴァイオリンは基本的に重音までしか出せないので和声の組み立てには限界があるが、伴奏のピアノは自由な和声を組み立てられるので、曲の奥行きが深くなる。第1楽章はピアノが創り出す和声にヴァイオリンが絡みつく。第2家具賞はLentoの緩徐楽章。変奏曲になっているのだろうか。ビアノとヴァイオリンが異なる声部を対位法的に組み立てるところから始まり、徐々に展開していく。第3楽章はちょっと現代的になり、ピアノとヴァイオリンが時には絡み合い、時には呼応し合う。循環主題となる第1楽章冒頭の主題が回帰して曲が終わる。全曲を通して、ヒラリーさんのヴァイオリンは高い質感を保ち、技巧的な部分は鮮やかに、旋律を歌わせる部分は多彩な音色を繰り出す。全体の表現が小さくまとまっていなくて、どこか大らかな感じがする。ピーンと張り詰めたような緊張感がなく、全体を大きく包み込むような、柔らかさと温かさが感じられる演奏だ。スマイスさんのピアノはノリが良く、インパクトのある輝かせ方をする。ヒラリーさんとの対比が、とくにこの曲では鮮やかに表れていたようだ。

 最後はティナ・デヴィッドソンの「地上の青い曲線」。この曲とアンコールの3曲は、ヒラリーさんが2013年にリリースしたCDアルバム『27の小品』に収録されている曲。アンコールに演奏される小品に現代曲が少ないことから、ヒラリーさんが当代の作曲家達に委嘱してヴァイオリンの現代曲の小品集を作ろうと企画した。
 地上の青い曲線」は指板を叩く音から始まり、ピツィカートなどが複雑に構成されていく。そこにピアノも絡んできて、やがて抒情的に展開していく。絵画的な美しさを持った曲である。
 アンコールでは、まずマーク・アントニー・ターネジの「ヒラリーのホーダウン」。こちらは、ジャズ・ブルースっぽい音楽を現代曲風にアレンジしたような(?)。ノリが良く、強く叩かれるピアノのインパクトが強い。
 佐藤聡明の「微風」は、不協和音を含むピアノの分散和音に日本風ともとれるゆったりとした旋律が乗る。ただよう微風には人の悲しみが乗せられているようだ。
 最後はマックス・リヒターの「慰撫」。こちらも極めて抒情的な曲。ピアノが刻む和音に乗せて、息の長い、もの悲しく儚げな旋律が静かに歌っていく。
 演奏は、どの曲もヒラリーさんのヴァイオリンが究極的な美しい音色で、しっとりと情感を込めていて、とても素敵だった。

 ヒラリーさんの演奏は、以前よりも大らかになり、豊かさと優しさが感じられるようになった。一皮むけたというか・・・大人の演奏になったというか。それが明らかに以前よりも良くなっている、成長していると感じさせるところが大したものである。やはり子供の時から世界のトップ・アーティストであり続けただけのことはある。

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【お勧めCDのご紹介】
 本文でも紹介した、ヒラリーさんとスマイスさんによる『27の小品』です。現代の作曲家達に委嘱された27曲のヴァイオリン用アンコール・ピース。すべての曲が作風が違うので、どこから聴いても新鮮に感じます。
27の小品
ハーン(ヒラリー),スマイス(コリー)
ユニバーサル ミュージック



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6/3(金)フィラデルフィア管/五嶋龍の「ノスタルジア」とネゼ=セガンのブルックナー「ロマンティック」

2016年06月03日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
フィラデルフィア管弦楽団 日本公演 2016
The Philadelphia Orchestra Japan Tour 2016


2016年6月3日(金)19:00~ サントリーホール・大ホール S席 1階 3列 23番 30,000円
指揮:ヤニック・ネゼ=セガン
ヴァイオリン:五嶋龍
管弦楽:フィラデルフィア管弦楽団
【曲目】
シベリウス:交響詩「フィンランディア」作品26
武満徹:ノスタルジア ~アンドレイ・タルコフスキーの追憶に~
ブルックナー:交響曲 第4番 変ホ長調「ロマンティック」

 フィラデルフィア管弦楽団の日本公演を聴く。ヤニック・ネゼ=セガンさんとの来日ツアーは一昨年2014年に続いて2度目となる。その時も今日と同じ席で、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲と交響曲「悲愴」を聴いた。今回の来日ツアーは東京で3回、大阪、川凬各1回の合わせて5公演が組まれている。サントリーホールでの公演は今日と明後日の2回。良い席を確保するために、KAJIMOTOのワールド・オーケストラ・シリーズのセットで購入したため、自動的に本日の公演となった。プログラム的には、川凬での公演が一番すきだったのではあるが。

 1曲目の「フィンランディア」。ブラス・セクションを豪快に鳴らし、エネルギーと推進力に満ちた演奏だった。全体的にやや速めのテンポでグイグイと押し出して来る。表現はダイナミックで劇的だが、フィンランドの苦悩を描いた曲の割には妙に明るくストレートだ。アメリカン・ビッグ・サウンドがビリビリと神童を伴って轟いた。

 2曲目の「ノスタルジア」は8-6-6-4-2の弦楽アンサンブルと独奏ヴァイオリンのための曲。ソリストの五嶋龍さんは演奏家としての活躍に加えて、テレビのCMや、「題名のない音楽会」の司会など、活動の場を広げている。そのせいもあってか、今日のプログラムからは考えられないほど、女性客が多く、とくに若い女性の比率もかなり高かった。ブルックナーの日なのに、男性トイレに長い行列ができなかった・・・・。
 ソロ・ヴァイオリンは、低音から高音のフラジオレットまでを上下する技巧的な要素が多い曲でもあるが、静かでテンポも遅いために、それほど技巧的には感じられない。潤いと深みのある音色で、さすがに質感の高い演奏であったが、五嶋さんの魅力を十分に発揮させるタイプの曲ではなかったようだ。武満の曲としては、分かりやすくて美しい曲だとは思う。

 後半はブルックナーの交響曲「ロマンティック」。70分に及ぼうかという大曲には違いないが、あくまで個人的な言い分だが、曲がこれほど長い必要があるのか、常に疑問に思う。もっともブルックナーが崇拝していたというワーグナーの楽劇に比べれば何と言うこともないか。同じような動機やフレーズが執拗に繰り返され、波が寄せては引き、引いては寄せるように延々と長く続く。好きな筆にとっては堪らない魅力なのだろうが、私はやはり苦手だ。
 ネゼ=セガンさんの演奏は、そんなブルックナーを冗長に感じさせることなく、全体的なやや早めのテンポを採り、リズム感良く、推進力をもって曲を進めていく。かといって1本調子にならないところが彼の才能の素晴らしいところで、グイグイと進めていくテンポ感の中に微妙なタメを入れて、音楽をしなやかに歌わせる。リズムは決して前のめりではなく、フィラデルフィア・サウンドを意識してか、オーケストラが十分に鳴るようにしているようだ。すべてが明瞭で、輪郭がクッキリしているのに固さがない。老練なブルックナーの音楽に若々しい生命力を吹き込んだような、活き活きとした演奏であった。
 フィラデルフィア管弦楽団自体は、20世紀後半の「華麗なるフィラデルフィア・サウンド」のイメージを一部に残しつつ、より現代的なアメリカン・サウンドになっているといえそうだ。機能性は高く、豪快に金管群、大らかに鳴る木管群、厚く力強い弦楽のアンサンブルといった感じ。打楽器群を含めて、極めて音量のバランスが良いところはいかにもアメリカっぽい。第1ヴァイオリンの対向にチェロが来る配置のため、低弦が強く押し出されてきて、重厚なサウンドを生み出していたのも、ブルックナー特有の分厚いアンサンブル時に素晴らしい効果を発揮していた。アメリカのオーケストラの音楽は、分かりやすくて良い。

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5/30(月)サンクトペテルブルグ・フィル/テミルカーノフ+諏訪内晶子/渾身のチャイコフスキーVn協奏曲

2016年05月30日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団 2016年 日本公演

2016年5月30日(月)19:00~ サントリーホール・大ホール S席 1階 2列 19番 19,400円(会員割引)
指揮:ユーリ・テミルカーノフ
ヴァイオリン:諏訪内晶子
管弦楽:サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団
【曲目】
チャイコフスキー;ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35*
ショスタコーヴィチ:交響曲 第5番 ニ短調 作品47
《アンコール》
 創作主題による変奏曲『エニグマ(謎)』から「ニムロッド」

■詳細なレビューは時間があれば後日、このページに加筆して掲載する予定です。

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5/28(土)品川区民春のコンサート/伊藤亜美がハチャトゥリアンのVn協奏曲でホットな演奏を披露

2016年05月28日 23時30分00秒 | クラシックコンサート
2016品川区民 春のコンサート
第54回 品川区民管弦楽団定期演奏会


2016年5月28日(土)18:30~ きゅりあん8階・大ホール 自由席 SA列 22番 500円(前売り)
指揮:新田ユリ
ヴァイオリン:伊藤亜美*
管弦楽:品川区民管弦楽団
【曲目】
シベリウス:交響詩「フィンランディア」
ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調*
《アンコール》
 スペイン・カタルーニャ民謡「鳥の歌」*
シベリウス:交響曲 第1番 ホ短調 作品39
《アンコール》
 シベリウス:劇音楽『クリスチャン二世』作品27より「ミュゼット」

■詳細なレビューは時間があれば後日、このページに加筆して掲載する予定です。

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