読売日本交響楽団 第584回サントリーホール名曲シリーズ
2015年7月29日(水)19:00~ サントリーホール S席 1階 3列 20番 4,123円(会員割引)
指 揮: ジェレミー・ローレル
ヴァイオリン: ヴェロニカ・エーベルレ*
管弦楽: 読売日本交響楽団
【曲目】
メンデルスゾーン: 付随音楽「真夏の夜の夢」序曲
メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64*
《アンコール》
J.S.バッハ: 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番から「アダージョ」*
メンデルスゾーン: 交響曲 第4番 イ長調 作品90「イタリア」
読売日本交響楽団の「サントリーホール名曲シリーズ」を聴く。このシリーズ、年間会員になっているにもかかわらず、実に1年ぶりになってしまった。読響は東京と横浜で7つの定期シリーズを行っているため同プログラムのコンサートが各シリーズにまたがって開催される。今期2015/2016シーズンは3つのシリーズで会員になっているので、余程のことがない限り、どこかで1回聴けばよい。そう思っていたら、「サントリー名曲シリーズ」は何と昨年2014年の7月以来になってしまったのである。
今日のコンサートは、フランスの新鋭、ジェレミー・ローレルさんを招いてのオール・メンデルスゾーン・プログラム。ローレルさんは若手ながら古楽に通じた人ということらしく、今回が初来日。当然、読響とも初共演だ。古楽が得意のフランス人が、なぜメンデルスゾーンなのか・・・・。その懸念は、曲が始まったら現実のものになった。
「真夏の夜の夢」序曲から、どこかしっくり来ない。音楽全体が平板で、ロマン派的な感情的な表現ではなく感じられる。オーケストラも小編成で、音量も出ていないし、発揮度のない演奏なのである。ローレルさんは、踊るように身体を動かし、大きくレガートを効かせるような振り方で一所懸命やっているのだが、どうもオーケストラ側の反応が鈍い。お互いの信頼関係がまだ出来上がっていないというか、手探り状態で演奏しているようなイメージである。従って、何を言いたいのかわからない演奏に聞こえた。
ヴァイオリン協奏曲のソリストは、ヴェロニカ・エーベルレさん。こちらはドイツの若手。笑顔が素敵な小顔美人である。演奏の方は、ドイツ系の女性らしい、繊細で優美なもの。伝統的な佇まいで、しっとりとした美しい音色で歌うが、押し出しはあまり強くない。
第1楽章は速めのテンポでスイスイと進んでいく感じで、ローレルさんの指揮する部分が単調で味わいが淡泊な印象になる。そこをエーベルレさんがソロに近いようなところはたっぷりと抒情的に歌わせるのだが、オーケストラとの協奏になるとインテンポでスイスイ行ってしまうので、深い表現をする間合いが持てない、というような印象である。
第2楽章はいくぶんエーベルレさんの方に主導権が移ってきた感じがする。緩徐楽章だから主題をロマンティックに歌わせるエーベルレさんのヴァイオリンがしっとりとした味わいを増している。ローレルさんはエーベルレさんの方を見ながら合わせていくのだが、オーケストラが主旋律を受け持つと単調なインテンポが出てくる。これではソリストの魅力を活かすことができないのではないだろうか・・・・。
第3楽章に入るとまた速いインテンポ設定になり、軽快に・・・・というよりは軽薄な印象。ソロ・ヴァイオリンとオーケストラも微妙に縦のラインが合わずに、ドタバタした演奏が続く。どうも居心地の悪い音楽が続いてそのまま終わってしまった。
さんざん聴き慣れた名曲だけに、あまりにも単調でこれほどつまらない演奏も久しぶりのような気がする。エーベルレさんは、もちろん素晴らしいヴァイオリニストであることは間違いないが、今日のところはその魅力を、おそらく半分も発揮できていなかったのではないだろうか。どうにもこうにもローレルさんの指揮はいただけない。まるでメトロノームのようで、あくまで譜面通りに演奏しました、という感じなのである。古楽に通じた指揮者だというが、この曲は思いっきりロマン派なんだから・・・・。
エーベルレさんのソロ・アンコールは、J.S.バッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番」から「アダージョ」。バロック音楽を逆に思い入れたっぷり、濃厚で自由度の高いロマン派音楽のような豊かな表現であった。こちらの方が彼女の本来の姿だと思う。素晴らしい演奏だ。ところで、このソロ・アンコールの間、2階のR側の方で、ずっと咳をし続けている人がいた。咳が出るのはやむを得ないとしても、あまりにも無遠慮に大きな咳をし続けているのは、不愉快の極みである。
後半は、交響曲第4番「イタリア」。この曲の演奏については、もうあまりコメントしたくない気分だ。第1楽章から早めのテンポで、またまたメトロノームのごとき単調なインテンポ。ローレルさんは身振り手振りも大きく、いかにも一所懸命指揮しているみたいな姿なのだが、聞こえてくる音楽が単調そのものでは如何ともしがたい。テンポが一定だというだけでなく、オーケストラのダイナミックレンジも狭く、音量も小さい。読響がその辺のアマチュア・オーケストラみたいに、ただ演奏しているだけに聞こえる。もちろん演奏技術は高いのでアマチュア・レベルなどといったら失礼に当たるが、あまりノリの良い演奏でなかったことは確かだろう。4日前に横浜みなとみらいホールで聴いたデニス・ラッセル・デイヴィスさんが指揮したホルストの「惑星」の時とはまったく違うオーケストラになってしまっていた。改めて指揮者によってこれほど違うものかと思い知らされた。なんだか、ガッカリの一夜である。
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2015年7月29日(水)19:00~ サントリーホール S席 1階 3列 20番 4,123円(会員割引)
指 揮: ジェレミー・ローレル
ヴァイオリン: ヴェロニカ・エーベルレ*
管弦楽: 読売日本交響楽団
【曲目】
メンデルスゾーン: 付随音楽「真夏の夜の夢」序曲
メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64*
《アンコール》
J.S.バッハ: 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番から「アダージョ」*
メンデルスゾーン: 交響曲 第4番 イ長調 作品90「イタリア」
読売日本交響楽団の「サントリーホール名曲シリーズ」を聴く。このシリーズ、年間会員になっているにもかかわらず、実に1年ぶりになってしまった。読響は東京と横浜で7つの定期シリーズを行っているため同プログラムのコンサートが各シリーズにまたがって開催される。今期2015/2016シーズンは3つのシリーズで会員になっているので、余程のことがない限り、どこかで1回聴けばよい。そう思っていたら、「サントリー名曲シリーズ」は何と昨年2014年の7月以来になってしまったのである。
今日のコンサートは、フランスの新鋭、ジェレミー・ローレルさんを招いてのオール・メンデルスゾーン・プログラム。ローレルさんは若手ながら古楽に通じた人ということらしく、今回が初来日。当然、読響とも初共演だ。古楽が得意のフランス人が、なぜメンデルスゾーンなのか・・・・。その懸念は、曲が始まったら現実のものになった。
「真夏の夜の夢」序曲から、どこかしっくり来ない。音楽全体が平板で、ロマン派的な感情的な表現ではなく感じられる。オーケストラも小編成で、音量も出ていないし、発揮度のない演奏なのである。ローレルさんは、踊るように身体を動かし、大きくレガートを効かせるような振り方で一所懸命やっているのだが、どうもオーケストラ側の反応が鈍い。お互いの信頼関係がまだ出来上がっていないというか、手探り状態で演奏しているようなイメージである。従って、何を言いたいのかわからない演奏に聞こえた。
ヴァイオリン協奏曲のソリストは、ヴェロニカ・エーベルレさん。こちらはドイツの若手。笑顔が素敵な小顔美人である。演奏の方は、ドイツ系の女性らしい、繊細で優美なもの。伝統的な佇まいで、しっとりとした美しい音色で歌うが、押し出しはあまり強くない。
第1楽章は速めのテンポでスイスイと進んでいく感じで、ローレルさんの指揮する部分が単調で味わいが淡泊な印象になる。そこをエーベルレさんがソロに近いようなところはたっぷりと抒情的に歌わせるのだが、オーケストラとの協奏になるとインテンポでスイスイ行ってしまうので、深い表現をする間合いが持てない、というような印象である。
第2楽章はいくぶんエーベルレさんの方に主導権が移ってきた感じがする。緩徐楽章だから主題をロマンティックに歌わせるエーベルレさんのヴァイオリンがしっとりとした味わいを増している。ローレルさんはエーベルレさんの方を見ながら合わせていくのだが、オーケストラが主旋律を受け持つと単調なインテンポが出てくる。これではソリストの魅力を活かすことができないのではないだろうか・・・・。
第3楽章に入るとまた速いインテンポ設定になり、軽快に・・・・というよりは軽薄な印象。ソロ・ヴァイオリンとオーケストラも微妙に縦のラインが合わずに、ドタバタした演奏が続く。どうも居心地の悪い音楽が続いてそのまま終わってしまった。
さんざん聴き慣れた名曲だけに、あまりにも単調でこれほどつまらない演奏も久しぶりのような気がする。エーベルレさんは、もちろん素晴らしいヴァイオリニストであることは間違いないが、今日のところはその魅力を、おそらく半分も発揮できていなかったのではないだろうか。どうにもこうにもローレルさんの指揮はいただけない。まるでメトロノームのようで、あくまで譜面通りに演奏しました、という感じなのである。古楽に通じた指揮者だというが、この曲は思いっきりロマン派なんだから・・・・。
エーベルレさんのソロ・アンコールは、J.S.バッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番」から「アダージョ」。バロック音楽を逆に思い入れたっぷり、濃厚で自由度の高いロマン派音楽のような豊かな表現であった。こちらの方が彼女の本来の姿だと思う。素晴らしい演奏だ。ところで、このソロ・アンコールの間、2階のR側の方で、ずっと咳をし続けている人がいた。咳が出るのはやむを得ないとしても、あまりにも無遠慮に大きな咳をし続けているのは、不愉快の極みである。
後半は、交響曲第4番「イタリア」。この曲の演奏については、もうあまりコメントしたくない気分だ。第1楽章から早めのテンポで、またまたメトロノームのごとき単調なインテンポ。ローレルさんは身振り手振りも大きく、いかにも一所懸命指揮しているみたいな姿なのだが、聞こえてくる音楽が単調そのものでは如何ともしがたい。テンポが一定だというだけでなく、オーケストラのダイナミックレンジも狭く、音量も小さい。読響がその辺のアマチュア・オーケストラみたいに、ただ演奏しているだけに聞こえる。もちろん演奏技術は高いのでアマチュア・レベルなどといったら失礼に当たるが、あまりノリの良い演奏でなかったことは確かだろう。4日前に横浜みなとみらいホールで聴いたデニス・ラッセル・デイヴィスさんが指揮したホルストの「惑星」の時とはまったく違うオーケストラになってしまっていた。改めて指揮者によってこれほど違うものかと思い知らされた。なんだか、ガッカリの一夜である。
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