正直、私は感動しました。
今学期、私が「日本語古典文法」の科目を担当せざるを得なくなったとき、
(現代語の文法でさえ四苦八苦している中国の学生が、
どうして日本古典文法まで理解できるだろうか、否、できっこない)と、
暗い気持ちでスタートしたのです。
自分が高校で日本古典文法・文学に遭遇した時は
外国語かとんでもない方言のごとくに感じました。
小学校から少しずつ和歌などを刷り込まれていたはずの
自分ですらそうなのですから、
最初の頃、学生達が途方にくれた悲しそうな顔をしたのも
無理からぬことです。
学生達の暗い表情を見るにつけ、
(あなた方のせいではありません。
この大学のカリキュラムに無理があるのです)と心で呟いたものです。
しかし、何でもポジティブに説明するのが教師の仕事(笑)、
「―昔、竹取の翁といふ者ありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、
よろづのことにつかひけり。
名をば讃岐造麻呂となむいひける。―
この『竹取物語』冒頭部分の「けり」って何でしょう?
現代の日本語では聞いたことありませんね。
さらに、どうして「なむいひける」と変化するのでしょう?
はい、はい、古典文法を学べばそれがぜ~んぶ分かるんですよ~。」
とか言って巧みに誘導し(笑)、
後は地獄の
動詞・形容詞・助動詞の活用形丸暗記、助動詞の接続別グループ丸暗記、意味も丸暗記と、
練習問題と丸暗記ばかりの4ヶ月でした。
学生達のこわばった顔が僅かに和んだのは、
「夏は来ぬ」、「ゴンドラの歌」、「椰子の実」など、
文語詞の歌の動画を何度か見せた時ぐらいです。
特に「夏は来ぬ」は楽しそうに一緒に歌っていました。
今日、その試験がありました。
昨年この科目を担当された中国人の先生によると、
6人も7人も落第点だったそうです。
私はそれだけは避けたいと、
大学受験のような「傾向と対策問題」をガンガンメールで送り、
ゆめゆめ油断するでないぞと忠告しておきました。
この科目の試験は大学の試験官が試験会場も設定して、
超厳格に行われます。
返ってきた学生の答案にうわごとのように書かれた活用形の文字を見て、
ぐっとくるものがありましたよ。
結果、99%が合格圏内で半数以上の学生は80%以上、
さらに数名は90%以上の正解率で、
トップは97点をマークしました。
この大学の学生達は暗記が苦手な子が多いと感じることが何度もありましたが、
このクラスに関しては、そのレッテルは剥がさなければならないでしょう。
「危機感は、ときにその人が最大限の力を発揮するみなもとになる」
ちゃん、ちゃん。
朝7時、散歩の犬が何分も座ったきり動かないのを待つ男性。
窓から見えたのでカメラを取りに行って戻ると、ずっと同じ状態でした。