環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

総選挙の結果: 民主党大勝、自民惨敗

2009-08-31 20:35:28 | 政治/行政/地方分権
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「学習会」 と 「シンポジウム」 のご案内:下の図をクリック
    
*持続可能な国づくりの会からのお知らせ
9月13日の大井玄氏の学習会は延期となりました。代わりに、岡野守也氏(上図の左)をお招きしお話を伺います。
詳しくは、
href="http://blog.goo.ne.jp/greenwelfarestate/e/bd30a3f76917c6ca6b43f641358c0e43">当会のブログ(ここをクリック)
をご覧ください。



昨日お伝えしたように、総選挙の当日、民主党、自民党、そして幸福実現党の3党が全国紙に全面広告と打ちました。民主党は「本日政権交代」自民党は「日本を壊すな」 、そして幸福実現党は「新しい選択」でした。結果は民主党308議席、自民党119議席、幸福実現党は議席なしでした。

選挙結果を報じる今日の全国紙はさながらスポーツ紙のように、大きな活字とさまざまなデータを駆使した派手な記事を競い合っています。


毎日新聞朝刊:
1面  民主300超 政権奪取

衆院選 鳩山首相誕生へ 初の本格的政権交代

24面  自民政治に終止符 麻生総裁が辞任表明 現・元閣僚 相次ぎ敗北


朝日新聞朝刊: 
1面  民主308 政権交代

「鳩山首相」誕生へ 自民119 歴史的惨敗 海部元首相・太田代表ら落選 麻生首相、総裁辞任へ 公明は小選挙区全敗       

20面  中川昭・笹川・久間氏 落選



多くの分析データの中から、将来の議論の基礎資料として使えそうなデータを記録しておきましょう。







●衆院投票率(県別)

●民主党当選 半分が半数が新人

●衆参両院の議席の割合






大変わかりやすい「自民党」、「民主党」、そして「幸福実現党」の総選挙当日の全面広告

2009-08-30 09:37:22 | 政治/行政/地方分権
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私の環境論が他の多くの日本の専門家の議論と異なるのは、「環境問題」と「経済(活動)」を最初から関連づけて考えていること、そして、環境問題の解決のためには「民主主義の考え方」と「その実践」が必須なこと、具体的には環境問題の解決は、従来の公害とは違って技術的な対応だけでは不十分で、経済社会の制度の変革をともなうこと、21世紀に主な環境問題を解決した「エコロジカルに持続可能な社会」の創造のためには、さまざまな「政策」とそれらの政策を実現するための「予算措置」が必要なこと、つまり、環境問題の解決に当たって、「技術の変革」と「政治と行政のかかわり」を強く意識していることです。

このような私の環境論からみれば、今日行われる「総選挙」の結果は日本の将来にとって大変重要なことです。今朝の朝刊を見ますと、「自民党」「民主党」「幸福実現党」の3党が全面広告を掲げています。主張や広告のレイアウトは3者3様で大変わかりやすいものです。大変面白く、また、将来の政権政党の行動をチェックする意味で、総選挙当日の記録としてこのブログで保存しておこうと考えました。

●日本を壊すな。 自由民主党
  www.jimin.jp

●本日政権交代。 民主党
  www.dpj.or.jp

●新しい選択。   幸福実現党
  http://www.hr-party.jp



そして、どの政党が政権につくにしても、決して忘れてはいけないことは、この国の財政赤字です。先進工業の中で最悪という事実も。




関連記事
 「日本の借金 1日1260億円増」、これは一体どんな意味を持つのだろう(2009-07-06) 



このような政党の動きと共に、おもしろいのは、新政権を予想してすでに官僚が動き始めたという次の記事です。  
 









21日の衆院解散で通常国会は閉幕、その成果は?  成立した法律は、廃案となった法案は?

2009-07-22 22:37:12 | 政治/行政/地方分権
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昨日の衆院解散によって通常国会は閉幕となり、成立した法律と廃案となった法案が明らかとなりました。私は2000年以降、次のような仮説を立てて「成立した法律」や「廃案となった法案」を見ておりますが、今回もこれまでと同じような傾向が認められます。



次の図は,今国会で成立した法律です。圧倒的に「改正○○法」と名付けられた法律が多いことがおわかりいただけるでしょう。

●麻生政権で成立した法律(日本経済新聞 2009-07-21)



次の2つの図は廃案となった法案に関する記事です。 「○○法改正法案」と名付けられた法案が多いことにもお気づきになるでしょう。






関連記事
混迷する日本② 臨時国会閉幕 21世紀の新しい社会をつくる法律ができない(2008-01-16)

21世紀前半にめざすべき「持続可能な社会」の構築への法体系が未整備な日本(2007-12-29)



いよいよ、衆院解散 総選挙

2009-07-21 21:34:42 | 政治/行政/地方分権
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6月27日のブログで書きました日本の「衆院解散 総選挙」のスケジュールが決まりました。8月18日公示、30日投開票だそうです。

●衆院解散、総選挙へ 政権選択が焦点(朝日新聞 2009年7月21日 夕刊)


解説記事によりますと、8月18日公示、30日投開票となる今回の総選挙は、戦後24回目、現憲法下で22回目。7月解散は史上初めて。暑さが過酷なため、避ける傾向の8月投開票は、これまで、帝国会議時代の1898年と1902年の2回会ったが,戦後は初めて。なんと107年ぶりの真夏の選挙になるそうです。

8月30日は衆院議員の任期満了(9月10日)のわずか11日前で、76年12月の任期満了選挙を除くと前回選挙との間隔が最も長い。選挙戦は事実上、21日から幕を開けるが、解散から投開票まで40日間ある。これは、憲法の規定による限度いっぱいで過去最長となるとのことです。

異例ずくめの今回の解散総選挙は政権選択が焦点ですから、日本にも異例の大変化が起こるかもしれません。「衆院解散、総選挙へ」という一面トップ記事のすぐそばにレイアウトされた「素粒子」というコラムが気のせいか輝いて見えます。






投票日は来年9月19日 スウェーデンの場合、では、日本は???

2009-06-27 10:46:06 | 政治/行政/地方分権
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下の図をクリックしてください。
 
 


今朝の朝日新聞の一面トップの記事は、今最もホットな政治の話題、衆議院の解散がいつになるのかの記事です。

昨日の新聞では、今後の政治日程まで添えての解説記事が掲載されていました。

麻生首相はいつ衆議院を解散し、総選挙はいつになるのか。このような報道がマスメディアに登場して、すでに半年が経とうとしています。今のところ「衆院解散はそう遠くない日だ」そうです。

この国の議院内閣制の政治は国内外の山積された課題に対応できるのでしょうか。日本の政治家や経済人、評論家など有識者と称されている人たちがことあるごとに「人口や経済規模が小さすぎて、参考にならない」とほとんど無関心を装ってきた、北欧の国スウェーデンではこの種の時間とお金を浪費する政治の駆け引きは起こらないのです。

その理由は、いたって簡単。スウェーデンの総選挙は現在のルールでは4年ごとに行われ、投票日は9月の第3日曜日と決められているからです。したがって、次の総選挙は2010年9月19日(日)に行われます。

 『貧困にあえぐ国ニッポンと貧困をなくした国スウェーデン』(あけび書房 2008年11月)の著者の竹崎 孜さんは、この本の64ページで次のように書いておられます。

この短い記述だけでも、スウェーデンの政治の風景は日本の政治の風景と大きく異なることがおわかりいただけるでしょう。このような大きな相違を前にしても、日本の識者と称される方々は、今なお、両国の政治分野の大きな相違も「人口と経済規模の相違だ」とおっしゃるのでしょうか。


関連記事

スウェーデンの国会議員の投票率の推移(2007-01-09)

EIUの民主主義指標 成熟度の高い民主主義の1位はスウェーデン(2007ー08-18)
       
「困った状況」が目立つようになってきた日本(2007-11-03)


これまでの日本は、目先のコストは大変気にするが、社会全体のコストにはあまり関心がなかったようです。90年代後半になって次々に既存の社会制度から発生する膨大な社会コストの「治療」に、日本はいま、追い立てられているといっても過言ではないでしょう。


「安心社会実現会議」の発足と初会合、私の期待に応えてくれるだろうか?

2009-04-15 08:40:34 | 政治/行政/地方分権
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このブログを見てくださっている方々はご存じでしょうか。このブログのタイトル(画面の上部をご覧ください)が

「経済」「福祉(社会」「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ 

であるということを。

ひょっとすると、私のブログのテーマに対する「この国の答え」が出てくるかもしれないという淡い期待を抱かせるような会議「安心社会実現会議」(いつになく目的を明確にしたストレートなネーミングの会議ですが)が内閣官房に設置され、その初会合が4月13日に開かれたそうです。

「治療志向の国」日本の政府が唐突に設置を決めたわけですから、事態が大変に深刻なのでしょうけれども、会議のメンバーを見るとその多くが  「これまでの成長路線を支えてきたような方々」とお見受けするのですが、ここは、とにかく、大いに期待し、「6月のまとめ」を待ちましょう。

今回の会議の委員の方々の中で、注目されるのは宮本太郎さんかもしれません。宮本さんは、今やスウェーデンの福祉制度を語る第一人者で、私のこのブログでも宮本さんの研究の一端を紹介したことがあります。

関連記事
スウェーデンの「グリーン・ニューディール」は1996年に始まっていた!-その1(2009-01-08)

スウェーデンの「グリーン・ニューディール」は1996年に始まっていた!-その2(2009-01-09)

スウェーデンの「グリーン・ニューディール」は1996年に始まっていた!-その3(2009-01-10)

「自由民主党の党綱領」と「スウェーデン社民党の党綱領」の大きな落差(2009-01-05)

自由民主党の「旧綱領」には、「公共の福祉を規範とし、福祉国家の完成を期する」と書いてあった(2009-01-06) 


そして、4月13日にこの会議の初会合が開かれました。

●安心社会実現会議の初会合



ここでもう一度この会議の議題を確認しておきましょう。

上の記事によれば議題には、
①日本が目指す安心社会の全体の姿、見取り図を示す
②雇用、医療、年金、介護、子育て支援のあり方や政策の優先順位を提示する―
を挙げたと、妙に具体的です。

6月のまとめでは、この会議の委員の方々の「これらの議題に関する基本認識」が明らかになるでしょうし、麻生首相、与謝野財務・金融・経済財政担当相、河村官房長官など「政府のリーダーの基本認識」も知ることができるでしょう。麻生首相の持論とも思える「中福祉・中負担」という概念がどのような(どの程度の)ものかも明らかになるかもしれません。



以下は余談です。

戦後60年余の歴史の中で、ドイツ共に、日本とスウェーデンは経済的に大成功をおさめた代表的な国だったと思います。経済的な成功の原動力はそれぞれの国の歴史や文化、社会に対する考え方などの相違により、一様ではありません。

ここで、両国が経済的に成功した原動力を考えてみましょう。いろいろな理由が考えられますが、私は両国の発展の原動力は同じではなく、むしろ正反対だったと思っています。キーワードは「不安」です。スウェーデンは公的な力によって、つまり社会システムによって、国民を不安から解放するために安心・安全・安定などを求めて経済的発展を進め、「生活大国」をつくり上げたのに対し、日本は不安をてこに効率化・利便さをもとめて「世界第2位の経済大国」と呼ばれるまでに経済的発展をとげたと私は考えています。

●長期単独政権の成果:社民党44年、自民党38年

 ヨーロッパで最貧国であったスウェーデンは社民党が1932年に政権についてから福祉国家の建設をめざし、1976年の連立政権誕生までの44年間、社民党の長期単独政権を維持してきました。ですから、現在の福祉国家は社民党政権の下で築かれたものです

この福祉国家ははやりの言葉で言えば、「生活大国」と呼んでもよいと思います。スウェーデンは、1813年のナポレオン戦争以来、200年近くまったく戦争に参加してきませんでした。この事実は今日の先進工業国の歴史を返りみる時、おどろくべきことと言わざるをえません。

一方、日本は「富国強兵」「殖産興業」を旗印に、アジアの一農業国から欧米に追いつくことを目標に努力を重ね、“アジアの大国”になりました。そして、1945年に太平洋戦争(第二次世界大戦)に突入しました。戦後は官民挙げての努力の結果、世界が賞賛する現在のような経済大国となったのです。戦後の日本の経済発展は自民党の38年間にわたる長期単独政権の下でなされたものでした。要約すれば、社民党の44年にわたる長期単独政権が「福祉国家スウェーデン」をつくり、自民党の38年にわたる長期単独政権が「経済大国」日本をつくったのです。

スウェーデの社民党政権が党の綱領に掲げた「福祉国家の建設」を見事な形で実現したのに対し、日本の自民党は「福祉国家の完成」を党の旧綱領」(1955年に制定され、2005年の小泉政権で新綱領に改訂されるまで50年間)で掲げておきながらなんと 「非福祉国家」を完成させたのです。そして、今、再び「中福祉・中負担の社会」を築こうとしているかのようです。  
 
●これからの20~50年

 今後50年を展望すると、この2つの国の将来は大きく異なるでしょう。日本はスウェーデンと技術面では大差がありませんが、 「将来の社会に対する考え方」では、両国の間に大きな落差があるからです。私たちの行く手には、「大量生産・大量消費・大量廃棄に象徴される20世紀型産業経済システム」の根幹を揺るがす“資源・エネルギー問題”や“環境問題”という世界共通の巨大な壁が立ちはだかっています。この壁を乗り越えるには、技術的な対応に加えて、社会システム、慣習、価値観の変更などの社会科学的な変革が必要となります。

技術一辺倒できた日本にとって、社会科学的な変革は最も苦手とするところです。
その前提となる「社会的な合意形成」は制度的にも、意識的にも不得意な部分です。逆に、日本の不得意なところはスウェーデンが得意とするところでもあります。
  

あれから40年、2010年は混乱か?―その3

2009-04-11 13:53:30 | 政治/行政/地方分権
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次の図は「私の環境論」の基本となっている考え方の主なものをまとめたものです。



今日は上の7つのキーワードの「⑦獲得した経験則」から「今日の決断と将来の問題」をとりあげ、4月2日に採択された「G20の首脳会議のグローバルな政治的決定」の報道を考える際の手がかりにしたいと思います。

今、私たちが本気で「環境保護のための行動」と「持続可能な社会の実現をめざした行動」を起こさないと、私たちの子供や孫が生きる世界が大変なことになりますし、対応を先に延ばせば延ばすほど、社会的なコストが増大することになります。

私たちが、今、直面している環境問題は「今に原因があるというよりも、私たちが数十年前に決断したことに原因がある」ということです。私たちが「経済成長」を求めて投資した生産設備やそこから生産された生産物、インフラ・ストラクチャーとしての巨大ビルや高速道路などの構造物から生ずる「環境の人為負荷の蓄積」が今起こっている環境問題の主な原因なのです。

このことがはっきり理解できれば、「今日の決断が数十年先の環境問題を原則的に決めてしまう」という経験則が理解されるはずです。この経験則は人口の大小や生産規模の大小にかかわりなく、すべての国に共通する普遍の原理・原則です。この原理・原則は環境問題だけでなく、社会システム、インフラ・ストラクチャー、経営などほとんどすべての社会事象に適用可能だと思います。

さて、次の報道記事は、4月2日から3日にかけて報じられた金融危機サミットに関する記事から抜粋したものですが、いずれも「経済と環境問題のかかわり」を意識した記事はまったくありません。経済と環境問題はコインの裏表のような関係にあるわけですから、G20に参加した世界のリーダーが意識しようとしまいと、国際社会で協力してGDPを2%増やそうとすれば、環境負荷も増えることを理解しなければなりません。

その意味でここに掲げた以下の記事は、「世界の首脳が4月2日に決めた決断」 (今日の決断)が、2010年末にどのような結果(将来の問題)を生んだかを検証するさいに重要な資料となるでしょう。

●経済回復「来年末までに」 金融サミット 目標明記へ調整 (朝日新聞 2009年4月2日 夕刊)

●1900万人雇用創出 G20合意 成長2%超目標(朝日新聞 2009年4月3日 朝刊)

●時時刻々 G20正念場 財政出動、各国の重荷(朝日新聞 2009年4月3日 朝刊)

●クローズアップ G20 財政出動と金融規制 「自国優先」応酬 (毎日新聞 2009年4月3日 朝刊 )

●保護主義阻止で一致 G20声明 実効性確保が課題(毎日新聞 2009年4月3日 朝刊)

●経済悪化止まらず 問われる存在意義(毎日新聞 2009年4月3日 朝刊)

●G20首脳宣言 財政出動500兆円 成長4%押し上げ(朝日新聞 2009年4月3日 夕刊)



さて、こちらはG20の緊急金融サミットと同じ時期にドイツで開催されていた国連の温室効果ガスの目標値を決める作業部会の活動を報じたものです。こちらの記事にも「経済とのかかわり」がまったく書かれていません。

●温室ガス 途上国に削減計画促す 日本の分類案には否定的(朝日新聞 2009年3月19日)

●温暖化交渉 米巻き返し 長期目標に力点移す(朝日新聞 2009年4月9日 朝刊)

●国連の作業部会閉幕 温暖化対策原案 6月までに提示(朝日新聞 2009年04月9日 夕刊)

これらの報道記事からおわかりのように、「経済活動と環境問題は深くかかわり合っている」、さらに言えば、経済活動の拡大が環境への負荷を高めている事実にもかかわらず、マスメディアでは、あたかも別物を扱っているかのようです。
もっとも、マスメディアの基本的な使命が、時々刻々と変化している世界の事象をタイミングよく社会に伝えることであるとすれば、マスメディアが報ずる情報がフローで断片化するのもやむを得ないことかもしれませんが、報道記事のほかに、解説記事もあるわけですから、解説記事で「経済と環境問題のかかわり」がわかるように書いてほしいと思います。そうなると、「記者の基本認識の問題」ということになってきますね。


米国発の金融危機に端を発したグローバル経済の危機に対してエコノミストや評論家が好んで用いる「ピンチはチャンス」という発想に立てば100年に一度と言われる「世界同時経済不況」という大ピンチへの対応は4月8日のブログで書きましたように不況以前の経済状況に戻すことではなく、人類史上初めて経験する「経済規模の拡大から適正化へ世界経済が大転換する千載一遇のチャンス到来」と据えるべきだと思います。 




あれから40年、2010年は混乱か?―その2

2009-04-10 20:13:16 | 政治/行政/地方分権
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このブログの読者の皆さんにはもうお馴染みだと思いますが、再び次の図を掲げます。


(注)この図は「平成13年版環境白書」の11ページに掲載されていたもので、 図の原題は「問題群としての地球環境問題」となっています。

この図は私の環境問題に対する基本認識を十分裏付けてくれるものです。

★この図で、経済成長(GDPの成長)を支える「経済活動の拡大」とは「企業活動」+「消費活動」です。ですから、マスメディアが伝える「エコ」がきわめて矮小化された活動であることがわかります。
★この図から私たちが直面している環境問題は多岐にわたって同時進行おり、決して「地球温暖化」だけではないことがわかります。ですから、「持続可能な社会」という国際的な概念に取って代わったように、2006年頃から日本で多用されるようになった「低炭素社会」という概念のもとでの日本の環境対策はあたかも「いびつな環境認識」のあらわれだと思います。 
★この図でいう「経済活動の拡大」とは、具体的には「資源とエネルギーの利用の拡大」を意味します。
★注意しなければならないのは、上のような明確な図を環境白書に掲載しておきながら、実際の国や地方の行政の行動はこの図に示された理解とは別の方向を向いていることです。


関連記事
私の環境論3 矮小化された日本の環境問題(2007-01-13)

私の環境論14 環境問題は経済の「目的外の結果の蓄積」(2007-01-24) 

改めて、環境問題とは(2007-07-23)

環境問題のまとめ ①環境問題とは(2007-12-21)

私の環境論 「経済危機と環境問題」のとりあえずのまとめ(2008-11-29)


★人類史上初めて直面する二つの大問題

2050年までに、私たちは否応なしに人類史上初めて直面する二つの大問題を経験することになるでしょう。どちらも、私たちの社会をこれからも持続させることができるかどうか、次の世代に引き渡すことができるかどうかに、深くかかわっています。

その一つは、日本でも関心の高い「少子・高齢化問題」です。少子化も高齢化も、人類にとって初めての経験ではありません。しかし、少子化と高齢化が手を携えてやってきたことは、これまでにはありませんでした。これは「人間社会の安心」を保障する年金、医療保険、介護保険、雇用保険などで構成される「社会保障制度の持続性」にかかわる問題です。つまり、人間社会の安心と安全が保障されるかどうか、という意味において「社会の持続性」にかかわる大問題なのです。
 
もう一つはいうまでもなく、「環境問題」です。冒頭の図が示すように、これは「人類を含めた生態系全体の安全」を保障する「環境の持続性」にかかわる大問題です。しかも、環境問題の根本には人間の経済活動が原因として横たわっているわけですから、この問題を解決するための具体的な行動は、経済的に見れば「経済規模の拡大から適正化」への大転換であり、社会的に見れば20世紀の「持続不可能な社会(大量生産・大量消費・大量廃棄の社会)」から21世紀の「持続可能な社会(資源・エネルギーの量をできるだけ抑えた社会)」への大転換を意味します。

このような問題意識にもとづいて、最近の国際社会の動きを注意深く検証してみましょう。


★G8は依然、成長志向のまま

21世紀前半の社会は、歴史的には過去および現在の延長線上にありますが、現在をそのまま延長・拡大下方向にはあり得ないことを資源・エネルギー・環境問題が示唆しています。

先進工業国がさらなる経済規模の拡大を追求し、途上国がそれに追従するという20世紀型の経済活動の延長では経済規模は全体としてさらに拡大し 、地球規模で環境が悪化するにとどまらず、これからの50年間に人類の生存基盤さえ危うくすることになるでしょう。この二つの大問題は、私たちがいままさに、「人類史上初めての大転換期」に立たされていることを示しています。

●経済活動と環境問題

1997年6月に米国のデンバーで開催された第23回主要国首脳会議(サミット)の焦点は、世界のGDPの約65%を占めるサミット参加8カ国(G8)が、どれだけ地球全体を考えたシナリオを示すことができるかにありました。ところがサミットは依然として成長志向のまま、21世紀像をはっきり示すことができずに終わってしまいました。この状況は、その後のサミット(バーミンガム、ケルン、九州・沖縄、ジェノバ、カナナスキス、エビアン、シーアイランド、グレンイーグルズ、サンクトペテルブルグ、ハイリゲンダム、そして昨年の北海道洞爺湖後もほとんど変わっていません。
 
●過去26回のサミットの歩み

●1997年の第23回サミットデンバーサミット 依然、成長志向のまま

国連をはじめとするさまざまな国際機関も20世紀の価値観で維持されているものが多く、21世紀の社会を展望し始めたばかりです。このことは、20世紀の政治・経済をリードしてきたG8の国々がいまだ20世紀の発想から抜けきれないでいるのですから、むしろ当然のことです。


★それでは、G20は・・・・・

こうした中で、昨年秋の金融危機に端を発した世界同時経済不況に対応するためにG20の第2回緊急首脳会議(金融サミット)が去る4月1日、ロンドンで開催されました。この会議で採択された首脳宣言では、2010年末までに5兆ドル(約500兆円)の財政出動で、世界経済の成長率を4%分拡大する意思を表明しました。

冒頭の図は、これまでの経済成長が今私たちの直面している環境問題の主因であることを示唆しています。ですから、私の環境論からも4月2日に採択された「G20の首脳会議のグローバルな政治的決定」が2010年にどのように経済的な、そして、環境的な影響をもたらすのか懸念のあるところです。 

関連記事
環境問題を忘れた「早急な金融危機の解決策」は、更なる大危機を招く?(2008-12-13)



あれから40年、2010年は混乱か?―その1

2009-04-09 17:22:48 | 政治/行政/地方分権
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このブログの読者の皆さんには、もうお馴染みだと思いますが、再び次の図を掲げます。



関連記事
明日の方向を決めるのは私たちだけだ(2007-01-04)


この図は、環境問題とその対応のために私たちがどうしなければいけないかを考える際の基礎資料の一つとして、私が2000年に作成したものです。この図の中で、2010年は「混乱」と書きました。私の環境論に基づいて、当時の状況から判断すると必然的にそのような状況になると考えたのです。

その2010年まで、あと1年を切るまでになりました。昨年秋以来の国際社会の動きや日本の慌ただしい動きをみておりますと、ますますその感を強くします。今日のタイトルに掲げた「あれから40年」というのは、大阪万博が開催された1970年から40年という意味です。1972年は『成長の限界』が公表された年です。奇しくも、今年1月15日に、この本の著者デニス・メドウズさんが「09年の日本国際賞」を受賞しました。

関連記事 
『成長の限界』の著者、メドウズ名誉教授に09年の日本国際賞授与(2009-01-16)


そして、同年(1972年)6月にスウェーデンの首都ストックホルムで、 「第1回国連人間環境会議」が開催されました。今日は、1970年から40年間、今日に至るまでの国際社会の環境問題を巡る動きを、大雑把に振り返ります。


(1)1970年の大阪万博

3月15日(日)から9月13日(日)までの183日間開催。テーマは人類の進歩と調和

●北欧5カ国が協力して建てたスカンジナビア館

関連記事
1970年の大阪万博のスカンジナビア館(2007-03-18)



(2)1972年、ローマクラブが『成長の限界』を公表

●成長の限界 三部作

●成長の限界がやってくる

関連記事
『成長の限界』の著者、メドウズ名誉教授に09年の日本国際賞授与(2009-01-16)



(3)1972年6月の第1回国連人間環境会議」(ストックホルム会議)

1968年12月の国連総会で会議の開催が決定。会期は1972年6月5日から2週間。

●ワルトハイム国連事務総長:経済発展の転換点

●パルメ・スウェーデン首相:資源の消費押さえて 経済力を世界的に再調整 

●大石・環境庁長官:“GNP至上”反省、悲惨な経験説明

●ベトナム戦争めぐり論戦 環境問題か否か 米とスウェーデン対立

●第2回の誘致撤回 日本は“恥さらし”恐れる

●科学者と政治家の役割

関連記事
第1回国連人間環境会議(2007-03-28)



(4)1992年6月の「環境と開発に関する国連会議」(地球サミット)

会期は6月3日から2週間。

●「地球サミット」本委員会議長 トミー・コー 日本の役割 国際交渉の触媒・指導者に

●1992年の地球サミット 宮沢首相欠席

●日本は赤ん坊の国 ゴールデン・ベビー賞を受賞

関連記事
「環境問題をリードしてきた国」と「そうでなかった国」(2007-12-04)

今なお低い日本の政治家の「環境問題に対する意識」(2007-09-28) 


(5)2002年6月の「持続可能な開発に関する世界サミット」(ヨハネスブルグ会議)

会期は2002年8月26日から9月4日まで。

●ヨハネスブルグサミットと原発



関連記事
35年間のむなしさ:1972年の「GNP至上反省」と「2007年の偽」、でも、まだ希望はある!(2008-12-31)

2008年のODA実績 総額:スウェーデンは日本のおよそ半分、GNI比:1位、日本は21(最下位)

2009-04-02 14:28:46 | 政治/行政/地方分権
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OECD/DAC(OECD開発援助委員会)は2009年3月30日、 「Development Aid at its highest level ever in 2008」と題した調査結果を公表しました。委員会加盟の22カ国のODA実績です。
――――――――――
2008年、OECDの開発援助委員会の加盟各国からの総ネットODAは10.2%増加し、1、198億米ドルに達した。これは過去最高の援助額である。全加盟国の国民総所得(GNI)比の平均は0.3%であった・・・・・
―――――――――

これを受けて、スウェーデン外務省は2009年3月31日、「Swedish development assistance highest in the world」と題したプレスリリース(報道機関向け資料)を出しました。その要旨は次のようです。
――――――――――
OECD開発援助委員会(OECD/DAC)は加盟の全メンバー国からの開発援助統計(暫定値)を公表した。国民総所得(GNI)比でみた2008年のスウェーデンの援助額は0.98%で、世界最高であった。
――――――――――

また、日本外務省も2009年3月30日、 「DACによる2008年(暦年)の各国ODA実績(暫定値)の公表」と題するプレスリリースを出しました。

OECD/DACが公表した資料、スウェーデン外務省および日本外務省が出したプレスリリースはそれぞれの立場と考えを反映していて興味深いものですが、ややわかりにくいところがあるのはやむをえません。このようなときはOECD/DACの資料に添付されている次の2つの図を見れば、一目瞭然でしょう。

なお、ODAの議論をするとき注意することは、OECD/DACが公表する「ODA実績」は支出純額(Net)ベースだということです。純額(Net)というのは、援助国から途上国に流れたお金から、途上国から援助国に戻ってきたお金を引いた額という意味です。これに対して、単純に援助国から途上国に流れたお金だけを集計したものをグロス(Gross)といいます。

 

上の図からすぐわかることは、日本は93億6000万ドルで5位、スウェーデンは47億3000万ドルで8位、人口比では両国はおよそ12倍ですが、ODA純額の比ではわずか2倍にすぎません。さらに、下の図から国民総所得(GNI)比という判断基準では、当然なことながら、両国は両極端に位置しています。

日本とスウェーデンを比較するときに必ずと言ってもよい「日本は1億2000万人だが、スウェーデンは900万人の小国なので・・・・・(比較にもならない?)」という識者はこの現状をどう説明するのでしょう。

たとえば直近の話では、『週刊ダイヤモンド』(特大号 2009年4月4日)の「Part3 激論 これからどうなる? 日本はスウェーデンになれる?」(p145~145)で、神野直彦さん(東京大学教授)と八代尚宏さん(国際基督教大学教授)討論しています。「スウェーデンと日本の違いはどこにありますか」という問いにお二人が答えた後、「ほかに違いがありますか」という編集者(?)のさらなる問いに、八代さんは「・・・・・そして、やはり人口の違いです。スウェーデンの人口は900万人前後で共同体的なまとまりを成立させています。だから、人口規模の大きな日本がスウェーデンモデルを導入するには地方分権が不可欠です。」と答えておられます。

仮に、司会者がこの2つの図を前に同じような質問をしたら、八代さんはどう答えるのでしょう。八代さんはやはり、この歴然たる相違を人口の大小で説明できるでしょうか。別の理由を探すか、沈黙してしまうかのどちらかでしょう。私は人口の大小が問題になるのは、「解決すべき問題」に対して解決のための考え方や手法が同じ場合だと思います。考え方と手法が同じであれば、一般論としては人口が少ない方が有利だといえると思います。しかし、この例で言えば、日本とスウェーデンのODAに対する考え方や国の目標に大きな相違があるのです。


関連記事
2010年のODA試算 日本最下位、ODAの対GNI比:スウェーデン1位、日本最下位(2008-12-25)

06年のODA実績 GNI比 スウェーデン1位、日本18位(2007-04-04)


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「混迷する日本」を「明るい日本」にするために

2009-01-13 21:12:10 | 政治/行政/地方分権
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今日の朝日新聞の3面で、「成長の質」高める道を、と題した朝日新聞主幹の船橋洋一さんのお考えを拝見しました。偶然にも、昨日のブログで「低炭素社会」という言葉は十分な議論がないまま、日本の政治、行政、企業の間に、そして、学者・研究者、評論家、市民にも定着してしまった概念の不十分な用語で、「低炭素社会」の普及・定着にマスメディアが果たした役割は大変大きいと思う、と書きました。そこで、次の記事の「低炭素国」めざせと、いう文字がいつもよりも目についたのです。


記事を読んでみました。この記事は最後の段で、「将来の欧州と米国の方向性を語り、日本の進むべき道」を模索しています。私はここで2か所コメントをしておきます。日本の多くの方が共有しているけれども、私は納得がいかず、懸念している部分だからです。

(1)太陽光発電と電気自動車と太陽電池の使用を政府、企業に義務づけ、低炭素経済への転換を加速させる。
 
それは、船橋さんが日本のエネルギー体系を本気で転換すると考えておられるのかどうかです。それはひとえに、日本の国全体のエネルギー消費を削減(総エネルギー消費の削減していく。エネルギー効率化の向上とか、原単位の向上のような相対的ではない)という大前提の下で 、化石燃料を自然エネルギーで代替(単なる自然エネルギーの普及促進ではない)し、現在のエネルギー体系でおよそ30%を占めている原子力を現状維持とするのか、なくす方向に行くのか、あるいは更なる原子力への傾斜ということなのかどうかです。原子力への対応を議論しない、自然エネルギーの議論 はまさに絵に描いた餅だからです

関連事項
自然エネルギーにCO2削減効果はあるだろうか?(2008-01-14)

日本がなぜ、「今日の化石賞」を受けるのか? 経済成長、エネルギー消費、CO2の整合性なき政策(2008-12-07) 
 

(2)日本には、それを実現するのに必要な技術も能力もある。日本に欠けているのは、政治的な意思と実行力である。 

日本は世界に冠たる省「エネ技術」や「環境技術」がある などと、いわゆる識者や政策担当者が言いますが、本当だろうかということです。日本に欠けているのは、政治的な意思と実行力であるというご指摘は、その通りだと思います。問題は「技術」です。
    
日本の技術が世界的に優れているのは「要素技術」あるいは「単体の技術」で、逆に欠けているのは技術的思想です。せっかくの優れた要素技術を生かすシステム的な考え方やアプローチががほとんどないのです。具体的には太陽光などの自然エネルギーを組み込んだ新しいエネルギーシステムを構築したり、優れた自動車などを用いた総合的な交通システムを構築して社会全体のエネルギー消費や環境負荷を低減するようなシステムの提示が日本からなされないからです。

関連記事
●大和総研 経営戦略研究レポート CSR(企業の社会的責任)とSRI(社会的責任投資)  日本は環境先進国なのか? 2008年3月10日
世界銀行が2007年10月に公表した温暖化対策を評価した報告書において、日本は70カ国中62位、先進国では最下位という衝撃的な結果が示された。洞爺湖サミットで環境立国日本を標榜し、世界のリーダーシップをとるのであれば、日本は環境先進国、という思い込みを捨てて積極的かつ大胆な温暖化対策を早急に進める必要がある。


そのような認識に立てば、この日の夕刊に掲載された次の記事はどのように解釈したらよいのでしょうか。技術があり、能力があるとされる日本の振る舞い についてです。


オバマ次期米大統領が地球温暖化対策を重視しているため、方針を転換。正式加盟も視野に検討する。

私はここに「日本政府の温暖化問題に対する基本認識」の不十分さと、「日本の技術(この場合は自然エネルギー利用技術→太陽電池などの単体ではなく、それらを用いた自然エネルギー中心のシステム技術)に対する自信」の無さを感じるのです。このことは、記事の最後の「前向きな姿勢に転じた」という文章にはっきりと表れています。オバマさんがニューディールを政策を提唱しなければ、日本政府の後ろ向きな(今日の化石賞受賞するような)姿勢は変わらなかったと考えられるからです。

舟橋さんが「日本に欠けているもの」として掲げた政治的な意思と実行力を、私なりに表現すれば次のようになります。


     

「大不況」、ドラッカーなら、ケインズなら、ではなくて、現在のスウェーデンに学んでみたら

2009-01-11 18:02:58 | 政治/行政/地方分権
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今朝の朝日新聞が「資本主義はどこへ」という次のようなインタビュー記事を掲載しました。「資本主義に基づく経済や社会はどう変化するのか。シリーズで考える」とのことです。期待しましょう。第1回の今日は「ドラッカーなら、ケインズなら」です。



京都大学名誉教授の伊東光晴さんは50年以上、ケインズを研究してきた方だそうですし、ドラッカー学会代表で立命館大学客員教授の上田惇生さんはドラッカーと約30年の親交があるそうですから、お二人はケインズ、ドラッカーを語るには最もふさわしいかたがたなのでしょう。

関連記事

企業の目的は「利潤追求」、ほんとうだろうか?(2007-02-19)



私はこの分野はまったくの門外漢ですので、伊東さんも、上田さんも、ドラッカーも、ケインズもお名前だけは存じておりますが、知らないに等しいのですが、「私の環境論」の立場から上の記事に少々コメントしておこうと思います。


伊東さんの発言に、「30年代の大恐慌の際、スウェーデンは・・・・・」とスウェーデンが登場します。また、「もう一つのモデルは、付加価値税で福祉社会を支えている北欧です。・・・・・・日本が向かうべき道はこれです。」という発言もあります。1929年の大恐慌の時の対応の成功例としてスウェーデンをとりあげる経済学者やエコノミストがかなりおります。たとえば、次の小林慶一郎さんもそのお一人のようです。



ドラッカーの著書は2002年に「ネクスト・ソサエティ」(ダイヤモンド社 2002年)を読みました。今のところこの本が最初で最後です。本のタイトルと「本書は、まさに日本のために書かれたというほど説得力がある」というソニーCEOの出井伸之さんのコメントに関心をそそられ、その道の大家が21世紀前半社会をどう見ているかに関心があったのですが、今日改めて、読後のメモをみると、「2002年8月8日読了、環境問題に対する認識はほとんどないに等しい」とありました。20年以上前から、環境問題は資本主義社会(市場経済社会)を揺るがす最大の問題だという認識で、環境問題を論じてきた私には、ドラッカーのこの本の内容には大変失望した記憶があります。次の図をご覧ください。


著書「ネクスト・ソサエティ」に示されたドラッカーの「環境認識」には失望しましたが、朝日の記事の「実行すべきはマーケッティング(顧客の創造)、イノベーション(技術革新)、生産性の向上です。生産性を上げれば、市場が縮んでいるから、午後3時に仕事が終わるかもしれない。」という箇所には同感です。1月7日のブログの「積水化学工業株式会社 環境レポート2002 第三者審査報告委員」という図を参照してください。


そして、彼の著書「ネクスト・ソサエティ」に戻れば、下の図に示したように、「大事なのは経済よりも社会だ」という認識です。この考えには私も同感です。

1987年に、国連の「環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント委員会)」が提唱し、1992年のリオサミットで合意された「Sustainable   Development(持続可能な開発)」という概念は、日本では「経済の」持続可能な開発、発展あるいは成長と理解されていますが、スウェーデンでは「社会の」持続可能な開発、発展と理解されているからです。 

一昨日紹介した 「スウェーデン社会民主党行動綱領」 の90ページの「6-3 使い尽くすことなく利用する」という項には、次のように書かれています。


資源を、いかに使い尽すことなく利用するかを学ばなければならない。エコロジカルな調整は、私たちの時代における最大の社会改革である。国も、自治体も、企業も、市民も誰もがこの挑戦に加わらなければならない。社会のすべての主体が、社会のすべての領域で、あらゆる水準で参加しなければならない。国際的な協力も強めなければならない。


このようにみてくると、これから深刻化すると思われる「21世紀前半の大不況」は、73年前の「20世紀の大不況」(とは言っても経済規模が現在とまったく違いますし、環境問題を考える必要がなかった)と違って、環境問題を十分考慮しなければならないのですから、「今亡き20世紀の巨人なら21世紀前半の社会や経済をどう考えるか」という「後ろ向きの発想」ではなく、伊東光晴さんが「もう一つのモデルは、付加価値税で福祉社会を支えている北欧です。・・・・・日本が向かうべき道はこれです」とおっしゃる北欧、その中でも12年前に「グリーン・ニューディール的対応」を開始し、すでに一定の成果を上げている北欧最大の工業国であり、経済、福祉、環境のバランスで世界の最先端を行く「福祉国家」スウェーデンの行動計画を日本の総力をあげて本気で検証するのが適切なのではないでしょうか。

関連記事

進化してきた福祉国家11 スウェーデンについて、私たちが最近知ったこと(2007-09-06) 

「希望の船出から11年」-経済も、福祉も、環境も・・・・・(2008-04-25)


●追加記事 朝日新聞2009年5月11日
 
ケベック大学教授 ジル・ドスタレールさん 「政治が制御」へ改革を 
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スウェーデンの「グリーン・ニューディール」は1996年に始まっていた!-その3

2009-01-10 23:25:54 | 政治/行政/地方分権
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一昨日の「スウェーデン社会民主党党綱領」(2001年11月採択)に引き続いて、昨日は「スウェーデン社会民主党行動綱領」(2001年11月採択)の紹介をしました。これら2つの資料の中で注目していただきたいのは党綱領に登場する「グリーンなスウェーデン福祉国家」と行動綱領に登場する「環境融和的(グリーン)な国民の家」(det gröna folkshemmet)です。これらは同一のもので、2006年6月22日に閲覧したスウェーデン政府の「持続可能な開発省」(Ministry of Sustainable Development)の英語版HPでは「Green Wealfare State」(緑の福祉国家)と表現されていたものです。





スウェーデン政府は「緑の福祉国家」を実現するという大きなビジョンを持っています。このビジョンの実現を加速する目的で2005年1月1日に誕生した、持続可能な開発省のHPのトップページを飾る「緑の福祉国家」の要旨を記します。


このビジョンの実現のために新しい技術を駆使し、新しい建築・建設を行ない、新しい社会にふさわしい社会・経済的な計画を立て、そして積極的なエネルギー・環境政策を追求しています。このビジョンの最終目標は現行社会の資源利用をいっそう高めて、技術革新や経済を促進させ、福祉を前進させてスウェーデンを近代化することです。

緑の福祉国家の実現によって、スウェーデンは「社会正義をともなった良好な経済発展」と「環境保護」を調和させることができるでしょう。現在を生きる人々と将来世代のために。
 
国際社会を見渡したとき、スウェーデンは発展の最先端に位置しているので、現在強い経済成長を経験している国々に、「生態学的に持続可能な社会の開発」の考えを伝える立場にいます。
 
現行社会の近代化は、地球の資源がすべての人々にとって十分であることを保障する近代化でなければなりません。
 

なお、「持続可能な開発省」は、2006年10月発足のラインフェルト新政権のもとで、再び「環境省」と名称変更されました。 

関連記事

Oppotunity Sweden スウェーデン12年ぶりの政権交代(2006-09-26) 

 

それでは、私が勝手に名づけた「スウェーデンのグリーン・ニューディール」(緑の福祉国家の実現)を、「私の環境論」に従って、次のようにまとめてみました。

まずは、私が理解した「緑の福祉国家」(エコロジカルに持続可能な社会)の概念です。

関連記事

緑の福祉国家3 スウェーデンが考える持続可能な社会(2007-01-13)

 

次に、この概念を実現するための具体的な行動計画の枠組みを示します。


①21世紀前半のビジョン:「緑の福祉国家」の実現
緑の福祉国家5 21世紀へ移る準備をした「90年代」②(2007-01-15)

②「環境の質に関する16の政策目標」の制定
緑の福祉国家6 21世紀へ移る準備をした「90年代」③(2007-01-16) 

③「環境法典」の制定
緑の福祉国家7 21世紀へ移る準備をした「90年代」④(2007-01-17) 

④「緑の福祉国家」への転換政策
緑の福祉国家11 「緑の福祉国家」を実現するための主な転換政策(2007-01-21)

緑の福祉国家15 「気候変動への対応」④(2007-01-26)

緑の福祉国家18 オゾン層保護への対応①(2007-02-05)

緑の福祉国家21 課税対象の転換② バッズ課税・グッヅ現在の原則(2004-04-21)

緑の福祉国家22 エネルギー体系の転換① 原発を新設しない・脱石油(2008-04-22) 

緑の福祉国家34 新しい化学物質政策の策定③ 化学物質政策ガイドライン(2007-05-04)

緑の福祉国家44 廃棄物に対する「製造者責任制度」の導入、まずは包装、古紙、タイヤから(2007-05-14)

緑の福祉国家47 廃棄物に対する「製造者責任制度」の導入⑪ 自動車に対する製造者責任制度(2007-05-17)

緑の福祉国家49 廃棄物に対する「製造者責任制度」の導入⑬ 電気・電子機器に対する製造者責任制度②

緑の福祉国家52 持続可能な農業・林業② 抗生物質の使用禁止、家畜の飼養管理(2007-05-22)

⑤持続可能な開発省の新設・環境省の廃止
緑の福祉国家8 「持続可能な開発省」の誕生、「環境省」の廃止(2007-01-18) 

⑥国内の協力
緑の福祉国家10 「新しいビジョン」を実現する行動計画(2007-01-20) 



さらに、スウェーデンの「緑の福祉国家」についてご関心のある方のために。

スウェーデンに学ぶ「持続可能な社会 安心と安全な国づくりとは何か」(朝日新聞社 「朝日選書」792 2006年2月発行)

そして、これまでに得られた成果については

進化してきた福祉国家⑪ スウェーデンについて、私たちが、最近知ったこと(2007-09-06) 

「希望の船出」から11年-経済も、福祉も、環境も・・・・・(PDF)(2008-04-25)

スウェーデンの「グリーン・ニューディール」は1996年に始まっていた!-その2

2009-01-09 17:31:45 | 政治/行政/地方分権
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昨日の「スウェーデン社会民主党党綱領」に引き続いて、「スウェーデン社会民主党行動綱領」の紹介をします。この行動綱領は、訳者の宮本太郎さんの解説によりますと、2001年11月5日から11日にかけて開催された第34回大会で採択された行動綱領の全文だそうです。




       



スウェーデンの「グリーン・ニューディール」は1996年に始まっていた!-その1

2009-01-08 13:13:28 | 政治/行政/地方分権
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昨年11月6日のブログ「変革 米国に到来 Change has come to America」 で、米国大統領選で勝利したオバマ氏の「勝利演説」マケイン氏の「敗北宣言」に感動した、と書きました。

その後11月末に、ふとしたきっかけで初めて目にした「スウェーデン社会民主党党綱領」を読んで、さらに大きな感動を覚えました。格調高い内容に加えて、私自身が35年にわたって政策面からフォローし、理解した「福祉国家」スウェーデンと、2007年1月1日から書き続けてきた「緑の福祉国家」(今はやりの言葉でいえば「グリーン化」や「グリーン・ディール」)の行動計画と現在までの成果が確実に進展していることをこの党綱領で確認できたからです。

ここからは、
「党の綱領」 ⇒「政権与党」⇒「国会への政策案提出」⇒「政策決定・予算配分」⇒ 「実社会での党の理念の実現」という、現代民主主義の手続きを経た、見事なまでの党運営の構図
が見えてきます。

関連記事

EIUの民主主義指標 成熟度が高い民主主義国の1位はスウェーデン(2007-08-18) 

スウェーデンの国会議員の投票率の推移(2007-01-05) 

なぜ、先駆的な試みを実践し、世界に発信できるのだろう① 国民の意識と民主主義の成熟度(2007-08-18) 

なぜ、先駆的な試みを実践し、世界に発信できるのだろう⑧ 国の方向を決めた政治的選択、政治のリーダーシップ(2007-08-25)

なぜ、先駆的な試みを実践し、世界に発信できるのだろう⑨ 省益に左右されない意思決定システム(2007-08-26)  

なぜ、先駆的な試みを実践し、世界に発信できるのだろう⑪ 「情報公開制度」と「オンブズマン制度」(2007-09-02) 


上記のことからわかることは、先進工業国としてスウェーデンと日本はグローバルな市場経済社会の中で、正反対と言ってもよいほど「国民の意識」と「社会の制度」に相違があることがわかります。このことが理解できれば、日本が得意とする(?)そして、こだわりが強い「技術論」では社会の変化に迅速に対応できないこと がおわかりいただけるでしょう。



北海道大学大学院法学研究科教授・宮本太郎さんによる和訳は、全文40ページで格調高く、スウェーデンが世界の最先端を歩んでいることがよくわかります。そこからは現在の日本がめざすべき方向性がはっきりと読みとることができると思います。私が参照した「スウェーデン社会民主党党綱領」は社団法人 生活経済政策研究所発行の『生活研ブックス16』に収録されており、入手可能です。

ぜひ、皆さんにも読んでいただきたいし、日本の政治家、官僚、企業人、社会科学者やエコノミストや経済学者、評論家など、90年代に始まった日本の閉塞感を打開し、21世紀前半の日本社会を模索し始めた人々、特に「緑の日本」、(日本版 グリーン・ニューディール)というタイトルを掲げる社説記事を書いておられるマスメディアの論説委員、編集委員、雑誌の編集者などには是非読んでいただき、日本発の「エコロジカルに持続可能な社会」を構築する議論にぜひ参加していただきたいと思います。

この資料は、 「21世紀前半のスウェーデン社会」を理解する上でおそらく最も重要な資料の一つであろうと思われますので、「スウェーデン社会民主党党綱領の目次」、「訳者の解説」、「民主的社会主義」と題した冒頭部分、および私が35年にわたってフォローしてきたスウェーデンの「環境意識」と「グリーンなスウェーデン福祉国家」の部分を抜粋し、事あるごとに参照できるようにしておきたいと思います。









上の図の「グリーンなスウェーデン福祉国家」こそ、私はスウェーデンのグリーン・ニューディールだと思います。1996年からスウェーデン政府の政策を通して、私は「グリーンスなウェーデン福祉国家」の実現をめざす政策をフォローしてきました。私のブログでは、「緑の福祉国家1 ガイダンス」(2007-01-11)から「緑の福祉国家63 改めて、緑の福祉国家の概念を」(2007-06-02)までにまとめてあります。

市民連続講座 緑の福祉国家1 ガイダンス(2007-01-11) 

市民連続講座 緑の福祉国家63 改めて、緑の福祉国家の概念を(2007-06-02) 


スウェーデン社会民主党党綱領の改定歴

1944年綱領
1960年
1975年
1990年
2001年  

このブログで紹介した「スウェーデン社会民主党党綱領」は2001年11月に開かれたスウェーデン社会民主党大会で採択されたもので、宮本太郎さん訳出はその全訳だそうです。

それにしても、4年後の2005年11月22日の立党50年大会で、当時の小泉純一郎総裁の下で改定された 「自由民主党」の新綱領との落差には表現する言葉さえ失うほどです。


明日は、もう一つの「スウェーデン社会民主党行動綱領」を紹介します。