環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

2010年10月のブログ掲載記事

2010-10-31 23:51:52 | 月別記事一覧
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1.2010年10月掲載のブログ記事(2010-10-31)

2.21世紀のモデル探し-スウェーデンは21世紀のモデルたり得るだろうか-(2010-10-31)

3.期待はずれの3冊:『日本経済の真実』、『絶対にこうなる! 日本経済』、『日本の恐ろしい真実』(2010-10-25)

4.日本の「強固な思い込み」が覆される、日本より「大きな政府」スウェーデン、「人」重視で成長(2010-10-19)

5.日経の「社長100人&500社アンケート」に示された日本企業のトップの環境認識(2010-10-17)

6.4ヶ月足らずで、趣を大きく変えた10月1日の菅首相の「所信表明演説」(2010-10-03)



21世紀のモデル探し-スウェーデンは21世紀のモデルたり得るだろうか-

2010-10-31 22:34:37 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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10月25日のブログでは、 「2010年の日本の混乱」を検証するために今年4月以降に出版された著名人による一般向けの本3冊を取り上げてみました。辛坊治郎さん兄弟による『日本経済の真実』(幻冬舎)、田原総一朗責任編集による『絶対こうなる! 日本経済』(アスコム)、そして、辛坊治郎さんの『日本の恐ろしい真実』(角川SSコミュニケーションズ)です。

大変困ったことに、上記の3冊の本が明らかにしたことは現在の日本が「持続可能な社会」を構成する3つの側面のうち①経済的側面(辛坊さんの「日本経済の真実」および田原さんの「絶対こうなる日本の経済」)でも、②社会的側面(辛坊さんの「日本の恐ろしい真実」)でもひどい状況にあるということです。さらに加えて、私がこれまでにこのブログや本で言い続けてきた①や②よりもっと重要な③環境的側面でも極めて不十分なこと、つまり、日本は先進工業国の中で21世紀にめざすべき「持続可能な社会」へ転換することが極めて困難な国であることが証明されたことです。

そして、この3冊の本に共通の致命的な欠陥は、他の多くの21世紀論と同様に、「資源・エネルギー・環境問題」がほとんど(まったくと言ってよいほど)考慮されていない上に、従来型の(20世紀型の)経済成長が前提になっていることです。21世紀の市場経済を揺るがす最大の問題である「資源・エネルギー・環境問題」を考慮しない経済論などは絵に描いた餅です。

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CO2の中期削減目標:小宮山宏vs武田邦彦  日本経済の近未来:野口悠紀雄vs辛坊次郎+辛坊正記(2010-05-30)

「経済学者」と「工学者」の見解の相違(2007-12-30)

「持続可能な社会」をめざす国際社会と独自の「循環型社会」をめざす日本(2007-09-30)

21世紀の低炭素社会をめざして 原発依存を強化する日本 vs 原発依存を抑制するスウェーデン(2009-07-22)
 
低炭素社会と原発の役割 再び、原発依存を強化する日本 vs 原発依存を抑制するスウェーデン(2009-10-08)


国際社会の動きにたえず振り回されている感がある日本の「21世紀前半のビジョンづくり」のために、モデルが必要でしょうか。日本は20世紀には欧米をモデルにしてきたわけですが、21世紀は果たしてモデルなしでいけるかどうか、おそらく、上記の結果に加えて、今までの経緯から考えますと、日本にはモデルが必要だと思います。

そうであれば、どこがモデルたり得るでしょうか.今までの私の経験からすると、おそらくスウェーデンが21世紀のモデルになるだろうという感じがします。

ちょうど10年前の2000年3月10日に、(財)スウェーデン交流センターが主催した私の講演会1999年9月18日 北海道石狩郡当別町のスウェーデン交流センターで開催) を収録したブックレットが発行されました。



この66ページのブックレットから、当時の私が将来をどう考えていたかということと、講演の結論を抜き出しておきます。10年後の今、読んでみてもまったく違和感はありません。


 

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希望の船出から11年-経済も、福祉も、環境も、  バックキャストが有効だ!(2008-03-30)

希望の船出から11年-経済も、福祉も、環境も・・・・・(PDF)


 

期待はずれの3冊: 「日本経済の真実」、「絶対こうなる !  日本経済」、「日本の恐ろしい真実」

2010-10-25 06:31:06 | 経済
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今年4月1日、私は2000年に策定した「このまま行けば、2010年は混乱、2050年は大混乱!?」と題する図を「このまま行けば、2010年混乱、2030年大混乱!?」と改めました。つまり、予想される「大混乱」を20年早めたのです。

そこで、今日は「2010年の日本の混乱」を検証するために今年4月以降に出版された著名人による一般向けの本3冊を取り上げてみました。出版社は異なりますが、いずれも表紙も内容も週刊誌的というか、民放テレビの報道番組的なイメージで、読みやすいことはたしかです。著者はテレビや、雑誌、新聞などマスメデイアでお馴染みの方々です。

先ずは、今年4月に出版された辛坊次郎さんと辛坊さんのお兄さんの共著『日本経済の真実』です。表紙に「ある日、この国は破産します」と自信たっぷりに断定しています。表紙の帯には、たちまち18.5万部とあります。

「はじめに」の小見出しを見みますと、辛坊さんの人柄とこの本の内容についてある程度の想像がつくでしょう。

 私は警告する
 メディアには、アホがいっぱい
 これはもう犯罪だ
 救う道はあるのか

次は、今年6月に出版された田原総一朗さんの責任編集による、田原さん、竹中平蔵さんと榊原英資さんの鼎談『絶対こうなる! 日本経済』です。表紙には「この国は破産なんかしない!?」と、辛坊兄弟のメッセージとは正反対のメッセージを掲げ、「小泉改革の最高責任者と民主党の最大ブレーンが本音で激突! 経済の行方が誰でもわかる!!(田原総一朗)」と、こちらも自信たっぷりです。

 榊原英資氏と竹中平蔵氏は、私が最も信頼するエコノミストの二大巨頭だ。榊原氏は竹中氏のことを「無免許でスポーツカーを疾走させている」と批判したことがある。竹中氏は榊原氏のことを「官僚上がりの学者に何がわかるか」とこき下ろしたことがある。そんな大対立をする2人が、大激論の末に初めてまとめたのが本書なのだ。 そして、2人の激しい論争で日本経済の多くの問題がクリアになり、結果として極めてわかりやすい日本経済の入門書になっている。多くの方々に、ぜひとも読んでいただきたい一冊になったと自負している。(田原総一朗)

そして、最後は、今年9月に出版された辛坊次郎さんの『日本の恐ろしい真実』です。

 この本は日本を蔑む本ではない。かつてのように元気で活力に満ち、若者が未来を夢見ることのできる国にもう一度なるために必要なことを示した本だ。(中略)この本を読み進むのは、多くの日本人にとって自らの弱点、欠陥を指摘されるようでつらいことかもしれない。しかし、読んでゆくと必ずその先に希望が見えるはずだ。正しい判断には正しい知識が必要だ。この本が、あなたの知らない本当の日本の姿を見つめ、明日をつかみ取るための力になれば、筆者望外の喜びである。「はじめに」より


試みに、それぞれの本の最終章の「著者による要約」あるいは「見出し」を抜き書きしておきます。それぞれの著者の「日本の経済や社会の大問題」に対する解決策とおぼしき、考えが示されているからです。

辛坊治郎+辛坊正記 著  『日本経済の真実』 

日本を滅ぼす5つの「悪の呪文」(p191~210) 

 ここまで読み進んでこられた皆さんは、日本の長期にわたる停滞の元凶が一体何で、そこから抜け出す為に何が必要かおぼろげに見えてきたと思います。
 日本がこんなになってしまったのには、メディアの責任もあります。ぬくぬくと既得権益のぬるま湯につかりながら、お題目のようにきれいごとを並べる政治家、ニュースキャスター、評論家が日本を破滅に導くのです。
 そんな連中が口癖のように語る言葉がいかに間違っているか、ここで総まとめしておきます。これら、「悪の呪文」から解き離れることこそが、日本再生の原点です。

悪の呪文1 「経済の豊かさより心の豊かさが大切」
悪の呪文2 「大企業優遇はやめろ!」
悪の呪文3 「金持ち優遇は不公平だ!」
悪の呪文4 「外資に日本が乗っ取られる」
悪の呪文5 「金をばらまけば、景気が良くなる」


田原総一朗責任編集 『絶対こうなる日本経済』 田原総一朗 竹中平蔵+榊原英資

第7章 絶対こうなる! 10年後の日本――日本を明るくするために

いまや「アメリカ」を乗り越えるとき?
競争を促進し、ヤル気を出せば報われる社会
極端な議論で現実から目を逸らせるな!
日本を明るくする処方箋はこれだ!
チャレンジ精神をもつ若者が日本を明るくする!
グローバルな人間が育てば10年後の日本は変わる! 


辛坊治郎 著 『日本の恐ろしい真実』

最終章 破綻を免れるヒント(p175~192)
 
豊葦原の瑞穂の国
3年の歳月
悪の王国スウェーデン
あなたは得か損か
議論の封印を解け

しかし、田原さんも、辛坊さんも「スウェーデン」という国が気になるようです。
田原総一朗  ●スウェーデンか、アメリカか     辛坊治郎  ●悪の王国スウェーデン

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「エコノミストはもともと将来を予測できない」、とエコノミストが言う(2009-03-23)

94年の朝まで生テレビ:評論家 田原総一朗の「環境認識」(2007-01-28)

ついに、あの中谷さんも、竹中さんも「北欧の成長戦略に学べ」 と ???(2010-01-05)


これらの本をどう評価するかは、このブログの読者の皆さんがご自身で読んで、決めることです。けれども、私が感じたことをメモしておきましょう。今日取り上げた3冊の一般向けの本は「日本の経済、社会の現状」がいかに大変なものかをそれぞれの著者や編集者の立場で面白おかしく記述していますので、読みやすいことは間違いありません。

上記の3冊は、いずれも「日本の経済・社会の現状分析」に多くの誌面を割いている割には、「これからどうすればよいのかという提案」がほとんどないのが特徴です。議論の基盤は常に“フローな情報”に基づいているようですし、“ストックな情報”への配慮が十分でないことは明らかです。

また、それぞれの本の最後の章が、その前の章までに分析した「日本のとんでもない状況」に対する著者の解決策としての提案らしきものなのですが、著者の知名度と経歴を考慮するとあまりにお粗末としか言いようがありません。

この3冊の本に共通の致命的な欠陥は、他の多くの21世紀論と同様に、 「資源・エネルギー・環境問題」がほとんど(まったくと言ってよいほど)考慮されていない上に、従来型の経済成長が前提になっていることです。21世紀の市場経済を揺るがす最大の問題である「資源・エネルギー・環境問題」を考慮しない経済論などは絵に描いた餅です。田原総一朗責任編集「絶対にこうなる! 日本経済」という本のタイトルは、誰がつけたネーミングかわかりませんが、想像するに“まったく経済の本質がわからない人”がつけたのでしょう。

1987年4月に公表された国連の「環境と開発に関する委員会」(WECD)の報告「われら共有の未来」(通称ブルントラント報告)とそれを受けて
1992年の地球サミット(国連環境開発会議、UNCED)で合意された「持続可能な開発」(Sustainable Development)の概念に基づく「持続可能な社会」Sustainable Society)には3つの側面があります。

①経済的側面  ②社会的側面   ③環境的側面

大変困ったことに、上記の3冊の本が明らかにしたことは、現在の日本が①経済的側面(辛坊さんの「日本経済の真実」および田原さんの「絶対こうなる日本の経済」)でも、②社会的側面(辛坊さんの「日本の恐ろしい真実」)でもひどすぎるということです。さらに加えて、私がこれまでにこのブログや本で言い続けてきた①や②よりもっと重要な③環境的側面でも極めて不十分なこと、つまり、日本は「持続可能な社会」へ転換することが極めて困難な国であることが証明されたことです。

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緑の福祉国家2 なぜスウェーデンに注目するのか:国家の持続可能性ランキング1位はスウェーデン(2007-01-12)

緑の福祉国家3 スウェーデンが考える「持続可能な社会」(2007-01-13)


それでは、日本はまったく絶望的なのでしょうか? 未来が明るいものになるか、絶望となるかはいかに早く方向が転換できるかにかかっています。転換の時期が遅れれば遅れるほど、転換のコストは高くなり、効果は逆に少なくなります。

「生活者」の立場に立って経済政策を立案する際に、政策担当者や経済学者、エコノミストはシュミレーション用のコンピュータに「資源・エネルギー・環境問題」という項目をしっかり入力することが必要です。この操作により、コンピュータ画面はこの項目の入力前に比べて激変するはずです。現実の経済を実際に動かす原動力は、昔も、今も、そして将来も「資源(原材料、エネルギー、水、土地)の供給源であり、同時に廃棄物および廃熱の吸収源であり、人間を含めた生物の生存基盤でもある自然/環境の持続性」だからです。これらの項目は経済学者やエコノミストが信奉する「市場原理」や「生産あるいは経済成長の3要素」(土地、労働、資本あるいは技術)などより優先するからです。

自然/環境の劣化が21世紀の経済成長上の制約条件であり、特に今後20~30年間にはその制約条件が大きくなるという科学的な判断があるにもかかわらずこれまで、日本の経済政策担当者や経済学の専門家、エコノミストの多くが、「経済」と「環境」は別物と認識し(思い込み)、この項目を入力してこなかったのです。 ここに、現実に起きている事象と政策の間にギャップの生ずる理由があります。

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『成長の限界』の著者、メドウズ名誉教授に09年の日本国際賞を授与(2009-01-16)



日本の「強固な思い込み」が覆される、日本より「大きな政府」スウェーデン、「人」重視で成長

2010-10-19 22:33:23 | 政治/行政/地方分権
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6月11日に菅直人・新首相の「所信表明演説」が国会で行われました。私は6月12日のブログ「待望の菅首相の『所信表明演説』、首相が追求する『第3の道』はスウェーデン型?」で、次のように書きました。

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首相の所信表明演説には、「スウェーデン」という言葉は一言も出てきませんが、これらの資料から判断しますと、菅首相は日本の望ましい将来像として、「スウェーデン社会」を念頭においているように思います。そうだとすれば、最近では、あの中谷巌さん や あの竹中平蔵さんさえも雑誌のインタビュー記事やご自身の最新の著書で「スウェーデンに学べ」と書いておられますので、37年間日本とスウェーデンの「社会と環境分野」を同時進行でフォローしてきた私にとって、「時代の大きな変化」を強く感じます。
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9月14日の民主党臨時党大会で菅首相が、小沢一郎さんを大差で破り、代表に再選され、10月1日に招集された臨時国会に望んでいます。その臨時国会も今日でおよそ3週間経ちましたが、テレビ中継された予算委員会を見る限りでは相も変わらずの与野党の足の引っ張り合いが続いています。


「菅首相が日本の将来像としてスウェーデンを念頭に置いている」と仮定した場合、私には次の朝日新聞の記事が大変興味深く見えます。およそ4年前の記事ですが、今読んでも私には何の違和感もなく読めますので、紹介しておきましょう。


日本の「強固な思い込み」、あるいは、大好きな議論に“大きな政府、小さな政府”というのがあります。スウェーデンの政治・社会に詳しい竹崎 孜さん(元ストックホルム大学客員教授、在スウェーデン日本大使館専門調査員)は著書『スウェーデンはなぜ貧困をなくせたのか 貧困にあえぐ国ニッポン、貧困をなくした国スウェーデン』(あけび書房 2008年11月1日発行)の中で、“大きな政府、小さな政府”について次のように書いておられます。

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Ⅰ章 「小さな政府」のもとで貧困にあえぐ日本 
   1 「小さい政府」の成功例はあるのか

 ・・・・・政府は大きいよりも、小さいほうが良いとの主張は、元来はアメリカやイギリスにおける話であった。だが、そのような主張は両国以外には世界のどこにも前例が見当たらず、政府の大小についての発想はまさに米英の模倣でしかない。
 両国に共通したのは、深刻な公共財政上の赤字対策として、予算縮小や国としての役割を削減すれば、国家はその分だけ身軽となり、目的を達成できると信じたためにほかならない。・・・・・(p12 以下省略)


Ⅲ章 貧困と格差をなくした「大きな政府」 
    1 大きな政府に動じない国民

 ・・・・・・ところで国民から与えられた政策や財政にかかわる大きな権限はただちに税金と関連するが、重荷と思われる税制負担に国民は平然としている。
 大きい政府を実際に、しかも長年にわたって背負ってきた国民だけに、小さい政府をめぐる議論が割り込んでくる余地はどこにもなくて2006年に政権を復活させた保守連合政府でさえ、政府を小さくする、あるいは財政を縮小するとの公約を掲げていない。 したがって、国民は大きい政府を容認し、信頼してきたが、財政面から調べても、いかにそれが大型であるかを明確に読み取れる。何よりも税金の国民負担率がそれをはっきりと裏付けている。・・・・・(p56 以下省略)
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このブログ内の関連記事
朝日新聞の社説:スウェーデン 立ちすくまないヒントに、を読んで(2010-08-01)



なぜ、このような好ましい結果が導かれたのかを知るためには、現象面の分析だけでなく、その背景にある「スウェーデンの行動原理」を理解する必要があるでしょう。私は次の図のように考えています。20年前に考えついたことですが、20年経った今でもこの考えを変える必要はないと思っています。


そして、次に示したような国際社会が評価する好ましい成果が得られていることはすでに、このブログで折に触れ、お知らせしてきたとおりです。経済成長も、社会も、そして、環境もです。主な成果を再掲しておきます。

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世界経済フォーラムの「国際競争力報告 2010-2011」 スウェーデン2位、日本6位(2010-09-10)

「21世紀型経済の持続性」が現時点で最も高いと示唆されるスウェーデン(2010-08-08)

予防志向の国・治療志向の国 16年前に「CO2税」導入(2007-06-07)

法人税の減税については
緑の福祉国家21 税制の改革 ② バッズ課税・グッズ減税の原則(2007-04-21)
およそ10年前の1999年には、先進工業国で法人税が最も低かったのはスウェーデンで30%を切っていたし、最も高かったのは日本で45%を超えていた。

混迷する日本⑬ ダボス会議から 国別環境対策ランキング スウェーデン2位、日本21位(2008-01-27)

温暖化対策実行ランキング:スウェーデン 1位、日本 42位(2007-12-09)

EIUの民主主義指標 成熟度が高い民主主義国の1位はスウェーデン(2007-08-18)
 

日経の「社長100人&500社アンケート」に示された日本企業のトップの環境認識

2010-10-17 21:44:02 | 経済



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「私の環境論」の最も基本的な考えは次の通りです。

つまり、経済活動は「経済成長」という目的と共に、必ず「目的外の結果」を伴うということです。皆さんは私のこの考えを共有できますか。もし共有できるなら・・・・・


10月3日のブログで、菅首相の所信表明演説を取り上げました。首相は、解決すべき重要政策課題は「経済成長」、「財政健全化」、「社会保障改革」の一体的実現、その前提としての「地域主権の推進」、そして、国民全体で取り組む「主体的な外交の展開」の5つだと明快に述べています。

これらの「5つの解決すべき政策課題」というのは、いずれも、自民党の長期政権下で20世紀から引きずってきた問題であり、この演説によって日本が21世紀の新たな問題にほとんど対応出来ない状況にあることがはっきりしました。菅首相の所信表明演説に対するマスメディアや識者の評価は必ずしも好意的ではありませんが、私は日本がまさに「混迷状態にあること」を直視した画期的な「所信表明演説」だったと評価しています。

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混迷する日本⑨ 「持続可能な社会」の構築への法体系が未整備な日本、環境分野も(2008-01-23)


ところで、10月3日の日本経済新聞が「社長100人&地域500社アンケート」の結果というのを報告しています。このアンケートは国内主要企業の社長(会長、頭取などを含む)を対象に、四半期ごとに実施しており、今回は1日までに調査、143社の回答を得たそうです。地域経済500調査は各地の有力企業、事業所、団体のトップを対象に、半年ごとに実施しており、今回は414人が回答したそうです。

このアンケート調査の結果の中に、「私の環境論」から見ると非常に興味深い企業からの回答が含まれています。先進国、新興国を問わず、経済活動の主役を担っているのは、先ずはグローバルな市場経済を支えている企業であり、続いて消費者だからです。

1つは「円高に対処するための方策」です。


国内でのコスト削減を第1に、第2に中国など新興国での現地生産の拡大が挙げられていることです。また、欧米での現地生産の拡大という回答もあります。これらの生産拠点の移転は、私の環境論では、日本企業が他国の資源やエネルギーを使い、他国に環境負荷をかけることを意味します。

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もう一つは、「菅政権で重視する経済政策」という問いに対する社長100人の回答です。


最も多かったのは法人税減税など企業の競争力向上策で、著しく低いのが環境・温暖化対策で、いかにも日本企業の回答らしいと思います。このことは日本企業の経営トップの「環境問題に対する基本認識」が21世紀に入った今なお、「公害」の域から抜けきれてないことを意味しているのだと思います。それ故、私の環境論が指摘している経済活動の結果である「経済成長」と経済活動の目的外の結果である「環境問題」の因果関係が理解できていないと言えるのではないでしょうか。

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●大和総研 経営戦略研究レポート CSR(企業の社会的責任)とSRI(社会的責任投資)  日本は環境先進国なのか? 2008年3月10日
要約 世界銀行が2007年10月に公表した温暖化対策を評価した報告書において、日本は70カ国中62位、先進国では最下位という衝撃的な結果が示された。洞爺湖サミットで環境立国日本を標榜し、世界のリーダーシップをとるのであれば、日本は環境先進国、という思い込みを捨てて積極的かつ大胆な温暖化対策を早急に進める必要がある。

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判断基準を変えれば、別のシーンが見える、改めて 日本は世界に冠たる「省エネ国家か」?(2009-10-11)

緑の福祉国家37 廃棄物に対する「製造者責任制度」の導入①  今日の製品は、明日の廃棄物(2007-05-07)

企業の目的は「利潤追求」、ほんとうだろうか?(2007-02-19)


日本とスウェーデンの企業トップの「環境問題に対する基本認識」には大きな落差があります。そして、このような調査を行い、その結果を報道する日本のマスメデイアも「経済成長」と「環境問題」の真の関係を十分理解しているとは思えません。 


今日のブログの最初の図のメッセージを私と共有していただけた方は、次の図のメッセージも私と共有していただけるでしょうか。


この図で言う「技術の変革」とは、具体的には「産業構造の変革」を意味します。20世紀のエネルギー体系をほとんど変えることなくさらなる経済成長を求めれば、CO2の排出量のみならず、その他の環境負荷も高まることは自明の理です。企業にとっては先行投資の対象を誤れば、致命的であることは言うまでもありません。企業のトップは「21世紀の経済成長」には「20世紀の経済成長」のような自由度はほとんど無いことを理解しなければならないと思います。
   

4ヶ月足らずで、趣を大きく変えた10月1日の菅首相の「所信表明演説」

2010-10-03 22:04:49 | 政治/行政/地方分権
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昨日の朝日新聞の一面トップは「前特捜部長ら逮捕 FD改ざん 隠蔽容疑 組織ぐるみ不正浮上」という見出しを掲げた信じられない内容の記事でした。「最強の捜査機関」とも呼ばれてきた特捜検察が、トップ以下の組織ぐるみで不正を隠蔽しようとした疑いが浮上、しかも、特捜部長が在任中に手がけた事件に関連して逮捕されるという前代未聞の不祥事に、検事総長の辞任や特捜部の解体も含めて議論になるのは必至だ、と報じています。

そのあおりで、一昨日(10月1日)に開会された第176回国会(臨時国会)関連の記事が1面ではなく、4面から始まっています。今日のブログはこの臨時国会の冒頭に行われた菅首相の「所信表明演説」にかかわるものです。

菅改造内閣は10月1日に開会された会期64日(10月1日から12月3日まで)の臨時国会(衆議院HP)に臨みました。初日に行われた菅首相の所信表明演説は、去る6月12日に行った菅首相の所信表明演説とかなり、趣(トーン)を異にしています。わずか4ヶ月足らずの間になぜ、このような変化がおきたのでしょうか。7月11日に投開票された第22回参院選で民主党が大敗し、与党過半数割れをおこしたことにより野党が参院で多数を占める「ねじれ国会」が再現したこと、国民の政権与党に対する期待が大きかったので、失望も大きかったこと、任期満了に伴う民主党の代表選挙が行われた9月14日の民主党臨時党大会で菅首相が小沢一郎さんを大差で破り、代表に再選されたことなどが反映していると考えられます。

まず、今回の菅首相の所信表明演説をご覧ください。続いて、6月12日の所信表明演説をご覧ください。

●2010年10月2日の朝日新聞
 菅首相の所信表明演説(全文)

●2010年6月12日の朝日新聞
 菅首相の所信表明演説(全文)


菅首相の2つの所信表明演説の相違について朝日新聞に解説記事が載っています。


詳細はこちら



詳細はこちら


論説委員による解説記事
菅首相の出直し所信表明に思う
消えた看板「最小不幸社会」 「遠望するまなざし いまこそ」


朝日新聞社説 首相の所信 「菅外交」の姿が見えない



6月12日のブログで、私は待望の菅首相の「所信表明演説」、首相が追求する「第3の道」はスウェーデン型?と書き、菅首相に大いに期待しました。

このブログ内の関連記事
朝日新聞の社説:スウェーデン 立ちすくまないヒントに、を読んで(2010-08-01)



今回の所信表明演説の「1.はじめに」で、菅首相は次のように述べています。


このように見てくると、菅首相が掲げた「5つの解決すべき重要な政策課題」というのはいずれも自民党の長期政権下で20世紀から引きずってきた問題であり日本が21世紀の新たな問題にほとんど対応出来ない状況にあることがはっきりしてきます。内容的には、まさに日本が、混迷状態にあることを直視した画期的な所信表明であったと思います。

一方、スウェーデンはこれらの問題をすでに解決しており、21世紀の新たな問題への包括的な解決に向けて努力していることがわかります。その具体例が20世紀の「福祉国家」から21世紀の「緑の福祉国家」(エコロジカルに持続可能な社会)への転換政策です。日本の自民党を上回る社民党の44年にわたる長期単独政権の成果の上に現在の連立4党による中道右派政権があります。

今日のブログの冒頭に、3つの図があります。これら3つの図の中央にある図が、そのことを表しています。その具体的な成果を、私のこれまでのブログから拾ってみます。  

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