杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ある天文学者の恋文

2017年10月15日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2016年9月22日公開 イタリア 122分

著名な天文学者エド(ジェレミー・アイアンズ)と彼の教え子エイミー(オルガ・キュリレンコ)は、皆には秘密の恋を謳歌していた。しかし、そんなエイミーの元に突然届いたエドの訃報。現実を受け入れられないエイミーだが、彼女の元にはその後もエドからの優しさとユーモアにあふれた手紙やメールや贈り物が届き続ける。エドの遺した謎を解き明かそうと、エイミーは彼が暮らしていたエディンバラや、かつて二人で時間を過ごしたイタリア湖水地方のサン・ジュリオ島などを辿りはじめ、そこで彼女が誰にも言えずに封印していた過去を、エドが密かに調べていたことを知るが―。(公式HPより)


「ニュー・シネマ・パラダイス」「鑑定士と顔のない依頼人」のジュゼッペ・トルナトーレ監督作品。

う~~ん・・これも個人的には好きじゃない。エドの友人でもあった主治医の「私は彼のやり方に賛成できなかった。彼は家族もエイミーも不幸にしている」という趣旨の発言が一番自分の気持ちに近かったです。

娘のヴィクトリア(ショーナ・マクドナルド)と同い年のエイミーと恋愛関係になっている時点で、どんなに彼が真剣な気持ちであっても理解できないし、深く愛している分、家族を苦しめている気がします。真実を隠し、自分の死後もエミリーの気持ちを繋ぎとめて置きたいというエゴが勝ってのある意味狂気に囚われた行動に感じられたのです。現代では、前もって日時を指定すれば手紙もメールも贈り物も当人が死んでいようとちゃんと届く。これって当たり前のようで当たり前じゃない。一昔前ならまさに魔法です。混乱するエイミーの姿はちょっと可哀想ですが、彼女の幸せを想い、エドなりに考えた結果でもあるのだということが徐々に明らかになります。

エドのやり方には賛成できませんが、エミリーが過去のトラウマ(少女の頃に自らの未熟な運転で事故り、同乗していた父親を死なせた事)を克服し、疎遠になっていた母親(イリーナ・カラ)と和解できたことはエドの彼女に対する最大の贈り物だということは認めます。(エミリーが危険なスタントの仕事をしていたのも自分の過失を許せなかったことからきていたのですね。)

たまに間違えて送られるメール(18歳になった息子へのメッセージとか、日にちの順番が前後したものとか)が全てが理想通りに進まない現実をちょっと皮肉っているかのよう。でもエドは自分の死後も続くエミリーの人生のこともちゃんと考えてはいたようで、彼の手紙の中にある未来への予想もあながち間違ってはいなかったと受け取れるラストでした。

こういう話は、当事者の主観で語られますから全体的に甘いトーンに包まれています。

エディンバラやサン・ジュリオ島の美しいロケーションや、島の別荘を預かるアンジェラ(アンナ・サヴァ)や舟乗りのオッタヴィオ(パオロ・カラブレージ)の優しい眼差し、ヴィクトリアがエイミーを受け入れる展開・・主治医以外は皆二人の関係を受け入れているんですね。

二人が天文学を学ぶ教授と教え子である点が異色ではあります。エドは自分の頭の中の腫瘍と同じ形のかに星雲を研究していて、エミリーは超新星をテーマにした卒論で博士号を取ります。既に消滅した光を追うという彼らの学問自体に人生が重なって見える・・かも。


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