杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

夫妻集

2024年04月12日 | 
小野寺 史宜 (著) 

娘が婚約者を連れてきた。他人の分の寿司も遠慮なく口にする、だらしのない男。娘が選んだ人ならば。自分は、心が広く先進的な父親。そう思っていたはずなのに。神保町にある出版社、景談社で働く佐原滝郎は、娘の結婚に心が揺らぐ。「娘が結婚すべきではない」と感じた婚約者は、意外にも滝郎の妻には好印象。妻もあの婚約者のことは気に入らないと思っていたのに、一体なぜ?
積み重ねてきた夫婦生活の中で初めて見えた、自分と妻の間にあるひずみ。もしかして、妻と自分はーー。
社内の三組の夫婦の姿を見ていくうちに、滝郎はある決意を固める。(アマゾン内容紹介より)


4組の夫婦が登場します。

佐原夫妻
娘の彼氏と対面した時の佐原氏の反応は父親としてはごく普通だと思います。
彼が会社で人事部長をしていることを抜きにしても、遅刻して悪びれることもなく、芸人と役者両方の道を目指しているユーチューバーとあっては経済的な不安も感じさせられます。自分が彼の立場だったらやはり受け入れ難く思うだろうな。😔 
でも妻の和香は彼が気に入った様子。どうして??滝郎は混乱し妻との間に初めて溝を感じます。

足立夫妻。
結婚2週間で妻の結麻が転勤となり、東京と名古屋の別居生活になります。思わず結麻に退職を提案した道哉には、無意識にではありますが自分の方が稼ぎも会社の知名度も上という気持ちがありました。それを察した妻との間に微妙な空気が流れます。彼の勤め先の景談社(講談社だよな~😁 )は確かに大手出版社だもんな。互いに熟考し、こどもを作るかどうかも含めての将来に対する明確なビジョンを持つことで二人はこの別居生活を受け入れるんですね。前向きな若夫婦という印象です。

船戸夫妻
編集部で働く美奈は、8歳年下の幹人と再婚します。バツイチ・年上を気にすることなく連れ子の太志を本当の自分の子のように可愛がってくれる姿に惹かれたのですが、結婚してみると気になることも出てきます。
偶然会った元カノに誘われもんじゃ焼きを食べに行ったことを屈託なく話したり、体調の悪い太志をひとり残してバンドの練習に出かけてしまったり・・美奈の気持ちや息子の体調急変の可能性を考えない浅はかさ・・・根は優しくていい人だけど、まだ大人になりきれていない夫。それでも二人でならカバーしながらやっていけると思う美奈でした。8歳の年の差は大きいな~😓 

江沢夫妻
夫の厚久から植木職人になるため会社を辞めて沖縄で造園業を営む学生時代の先輩の下へ行く。だから離婚したいと突然言われた梓乃。驚き非難し翻意を促しますが、彼の決意は変わりません。そもそもどうして離婚?と思ったら、修業中は無給で夫としての責任を果たすことができないかららしい。😩 
梓乃は仕事(出版社勤務)にやりがいを感じていて、収入も安定しているので一緒に沖縄に行くという考えはありません。東京で生まれ育った自分が沖縄で暮らすという選択肢もありません。話し合いの末離婚が決まりますが、子供たち(中3の亮吾と小6の理子)に話すと二人とも(3年間だけ)沖縄に行くと言い出します。両親の離婚を冷静に受け止め、新しい環境を自ら選択する子供たちに寂しさと誇らしさを感じる梓乃・・・って、住む家は先輩の持つ空家をタダで借りられるとしても生活費その他もろもろ大丈夫なのか?
ぽっかり空いた自分時間を前向きにとらえた梓乃は、幹人のバンドで高校時代にやっていたベースを始めるのです。

美奈が担当する作家の小倉琴恵 が各章に登場し、出版社で働く男女との関わりが次第にわかってきます。

滝郎は、同じ部で働いたことのある美奈や梓乃、彼が面接をした道哉との会話や、昔彼が面接で落とした小倉琴恵と彼女の作品の参考のための面談を通して、自分たち夫婦の関係や娘の婚約者に対する見方を考え直します。3組それぞれの夫婦の前向きな考え方に感化されてもいるのかな。

断章では、『夫妻集』を執筆する小倉琴恵自身のことが書かれます。
かつて不倫相手の妻とサシで飲んで意気投合したことのある彼女は再び連絡してきた男をきっぱり退けます。五音でという表現がなんかイイ!✌
彼女の視点を通して出版社の内部事情が示され、人事部長である佐原の就活生への評価の基準など、なかなか興味深い話を知ることができました。物語はフィクションだけど、ほぼリアルなんじゃなかろうか😁 



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