杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

バッド・ティーチャー

2012年05月23日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2012年5月19日公開 アメリカ

お金も夢もない中学教師のエリザベス(キャメロン・ディアス)は、仕事ではなく、ただ玉の輿こそ女の幸せとばかりにお金持ちの結婚相手を探すことにのみ熱意を傾ける日々を送っている。ある日、彼女の勤める中学に代理教師のスコット(ジャスティン・ティンバーレイク)が赴任してくる。スコットがお金持ちだと知ったエリザベスは、スコットを振り向かせるために豊胸手術を画策。ありとあらゆる手段を使い、手術費用を荒稼ぎする。スコットを振り向かせるために時には突拍子もないアプローチをして猪突猛進に突っ走るエリザベスだが……。(goo映画より)


まずはオープニングで配給「日活」となっているのに気付き妙に納得してしまった 予告CMお馴染の洗車シーンはキュートなお色気たっぷり

玉の輿の婚約者をGETして教師生活にサヨナラの予定が、その真意を見抜かれて破談となり、再び学校へ戻ってきたエリザベス。もちろん教育への熱意なんてあるはずもなく、生徒への暴言は当たり前、授業はビデオで映画を見せるだけ、こっそり教壇の引き出しに隠した酒は飲むわ、校内でマリファナは吸うわとやりたい放題の“バッド・ティーチャー”です。

ところが代理教師でやってきたスコットが、イケメンで有名ブランド時計の創業者一族とわかった途端、第二の玉の輿目指して猛烈にアタックを開始します。彼好みの巨乳になろうと豊胸手術を決意するけれど、それには莫大な費用がかかるので、あの手この手で費用捻出を編み出すのですが、それも当然普通のやり方じゃないの。
教師の立場を利用して生徒の親へ個人授業料を請求したり、洗車デーの収益を着服したり・・犯罪行為でしょ、それ

ところがスコットは同僚のエイミー(ルーシー・パンチ)に惹かれていきます。
このエイミーのキャラもかなりエキセントリック。教育熱心だけど、空回り気味で生徒の受けはイマイチ、バッド・ティーチャーのエリザベスを敵対視して、彼女の素行を校長に告げ口したり何かと彼女の邪魔をするの。

エイミーに彼を取られると焦ったエリザベスは、共通テストで一位のクラス担任へ賞金が出る事を知り、俄然やる気を出します。無気力先生が一転スパルタ教師に早変わり。でも今までサボってたんだもの、生徒が急に成績上がるわきゃない。そこで彼女が立てた作戦はテストを盗み出すこと。おいおい!完全に犯罪じゃん

努力の甲斐あり、彼女のクラスは一位を獲得。賞金も手に入れて手術の予約もOK。ついでにエイミーへの仕返し(ちょっとHなシーンですが、元恋人同士でこういう撮影もなんか複雑じゃないのかなぁとは余計なお節介ですね)もしちゃうんですが、これがエイミーの復讐心に火を点ける結果に。

教師生命どころか犯罪者として刑務所行きの絶体絶命のピンチですが、エリザベスは慌てません。ちゃんと「保険」はかけてるんですね〜〜さすが!!
人を呪わば穴二つってわけで、バカを見るのはエイミーでした。(度々校長がエイミーに「2008年の二の舞をしたいのか」というのだけど、この意味が最後までわからなかったのが残念)

さて、ライバルを蹴落とし手術代も手に入れたのにエリザベスの心は晴れません。いつのまにか彼女の心は外見だけのスコットより、常に自分を見守ってくれていた体育教師(=貧乏)のラッセル(ジェースン・シーゲル)に惹かれていたんですね

そしてまた新学期。エリザベスのお仕事は・・・生活指導〜〜これって笑える

ラブコメの女王キャメロン健在の作品でした。胸元の大きく開いたトップスにミニスカート、ハイヒール姿で、なりふり構わず欲望に向かって突っ走るエリザベスは教育者としては失格の烙印を押されて当然ですが、女性としてはあっぱれ!!です。
ま、自分の子供の担任だったらこっちがキレるけどね
トラックバック (0) | 

ブルー 初めての空へ

2012年05月21日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年製作 アメリカ 劇場未公開 96分

ブラジル・リオで密猟者に捕まり、アメリカ・ミネソタに連れてこられたコンゴウインコの雛が、トラックから振り落とされたところをリンダという女の子に助けられ“ブルー”と名付けられ育てられた。時は過ぎ、成鳥となったブルー(声:ジェシー・アイゼンバーグ)は、飛べないけれど、リンダ(レスリー・マン)と一緒に小さな田舎町の本屋で仲良く暮らしていた。ある日、鳥類学者チュリオ(ロドリゴ・サントロ)が二人のもとを訪れ、ブルーが絶滅種のインコであり、種の保存のために雌とつがわせたいと申し出る。リンダは悩んだ結果、ブルーを連れてリオへ行くことを決意する。リオの環境保全センターでブルーは同じ種のジュエル(アン・ハサウェイ)に出会い、一瞬で恋に落ちるが、ジュエルは気の強い野性の鳥で何とか逃げ出そうとしていた。その夜、ブルーとジュエルは何者かに捕まり鎖で繋がれてしまう。彼らの逃げるための冒険が始まった・・・。


3Dアニメですが、レンタルDVDなので普通に2D再生で鑑賞しました。
原題の『RIO』は、リオ・デ・ジャネイロのことで、南国ブラジルの美しい自然やカラフルな鳥たち、沸き立つサンバのリズム、カーニバルの熱気も忠実に華やかに描かれていて見ているだけでも楽しくなってきます。
『アイス・エイジ』シリーズのスタッフ製作ということで、レンタルDVDには「アイス・エイジ」のマスコットキャラ・スクラットの短編も収められていました。

巣から落ちて密猟者に捕まったブルーはその記憶がトラウマとなったのか飛べない鳥になっていました。でも優しい飼い主のリンダと幸せに暮らしていたのです。そんな彼が突然連れてこられたのは故郷リオ。でも人間との暮らしの長い彼には広い空よりカゴの中の方が快適なの。そんなブルーにジュエルは落胆を隠せません。再び密猟者の一味に捕まった二羽ですが、ブルーはリンダの元に戻りたい一心で、そしてジュエルは自由を得るために逃げ出します。

その逃走の冒険の中で、徐々に互いを意識し、大事な相手になっていくのです。何度も飛ぼうとしては、失敗してしまうブルーが、ジュエルを助けたい一心で遂に飛べるようになるというストーリーはありふれてはいるけれどやはり感動シーンではあります。

彼らを助ける仲間たちも個性的です。子沢山で気のいいラファエル(ジョージ・ロペス)、陽気なニコ(ジェイミー・フォックス)とペドロ(ウィル・アイ・アム)、鎖を切る手伝いをしてくれたブルドッグのルイズ(トレーシー・モーガン)たちが賑やかに物語を膨らませてくれます。

孤児のフェルナンドは、お金のために二羽を攫う手伝いをしますが、後悔してリンダたちに手を貸します。貧しいリオの現状にも目を向けながら、ちゃんと救われる結末は、安心して子供と鑑賞できるでしょう。

悪役は密猟者のマルセルと手下の二人と、キバタンのナイジェル(ジェマイン・クレメント)。ナイジェルは、スター街道からの転落人生らしい。元々性格悪そうに見えたけどね〜〜。手下の二人がお間抜けなのに比べ、執拗に二羽を追い詰めていくナイジェルの悪さが際立つけれど、お子様向けということで、最後は笑えるオチが待っていました。ナイジェルが手先に使ったサル(マーモセット?)たちも面白かったな
トラックバック (0) | 

THE BAD

2012年05月20日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2008年製作 アメリカ 劇場未公開 90分

美術館の警備員として人生を捧げて来たロジャー(クリストファー・ウォーケン)とチャーリー(モーガン・フリーマン)。ところが新任の館長によって館内の展示物が一新されることになり、2人の愛する絵画がデンマークへ送られる事を知り愕然とする。ロジャーはデンマークへ引っ越す事を考えるが、もちろん妻に一笑に付される。しかし、同じ悩みを抱えるチャーリーが自分たちの絵画を守るため盗み出そうと言い出した。初めはそんな大胆な行動は無理だと本気で取り合わなかったロジャーだが、同じように彫刻像に思い入れのある夜警担当ジョージ(ウィリアム・H・メイシー)の存在を知り計画に誘ったことで、現実味を帯びてくる。3人は、美術館のセキュリティーを破るための作戦会議を開き、予行練習を行い、それぞれの贋作を作り、搬出作業当日の勤務に志願する。そして搬出作業の当日、計画は実行され、本物と贋作のすり替えの手筈は整ったのだが・・・。

大物俳優3人がこんなコメディに出てるとは知りませんでした。
彼らが真面目に演じるほどに口元に浮かぶ笑いを抑えられないよ〜〜。

愛する者(作品)を守るため、必死な彼らですが、何といっても彫刻な自称帰還兵のジョージの行動が可笑し過ぎです。一体感を持ちたいためか全裸で彫刻と同じポーズをするという趣味を持つ彼は、「そんなことしてる場合」じゃない時にもしっかり全裸でポーズ!!
案の定ピンチを招くのよね〜〜。おまけにロジャーが箱を間違えて彼を助け損なった時の情けない表情ったら・・・

そんなに安易に盗み出せるわけがないのは承知の上で楽しまなければなりません。
そして贋作が見破られずにハッピーエンドってのもフィクションだからこそ。
でもこのご老人たちが実に幸せそうなんだな〜〜。
一途に愛されて芸術作品たちも、美術館でお飾りになってるよりよほど幸せかもと思わせられちゃったわ。
トラックバック (0) | 

幸せの教室

2012年05月16日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2012年5月11日公開 アメリカ 99分

学歴を理由に、長年勤めていたスーパーをリストラされたラリー・クラウン(トム・ハンクス)は、再就職のためのスキルを身につけようと、短期大学に入学する。スピーチの授業を担当する教師メルセデス・テイノー(ジュリア・ロバーツ)は、いつも仏頂面で不機嫌だった。彼女は結婚生活の破綻からアルコールに走り、教師としての情熱を失っていたのだ。初めてのキャンパスで年齢も境遇も違う様々な人々と出会い、充実した日々を送り始めるラリーと、彼との交流を通して再び自分と向き合い始めるメルセデス。果たして2人はこの教室で、幸せな未来を見つけることが出来るのか……?

トム・ハンクスとジュリア・ロバーツ。大物共演で安定感のある物語ですが、若者受けする作品とは言い難いかも(^^; 中年世代向けのヒューマンラブコメです。

ラリーが店主から首を言い渡される場面にいた、かつての同僚が嫌な奴。おそらく仕事ではラリーの方が実力者だけど、大学出という免罪符を振り回してラリーの不幸を嘲笑うの。でもちゃんと後半でどんでん返しが用意されてます。「明日は我が身」という言葉をこんなに爽快感を持って楽しめるなんてな演出。

バツイチで妻の分の家のローンも残っているラリーは職探しに躍起になるけれど、不況の折、学歴のない彼をどこも雇ってくれません。そこで隣人のラマー(セドリック・ジ・エンターテーナー)に学歴を身につけるようアドバイスされ、短大に入学したラリー(数講座だけの日本ならさしずめ「市民講座」のようなニュアンスなのかしら?)は、学生部長から「スピーチ」と「経済学」を薦められます。

「スピーチ」の女教師はやる気のなさ気な態度ですが、向学心に燃えるラリーはお構いなしに学生ライフを満喫していきます。同じ講座の学生たちも彼がおじさんだからと揶揄したり無視することなく自然に接しています。(日本の夜学みたいな感じかしら?)ガソリン代節約のために車をスクーターに換えて通学するラリーは、「経済学」の授業で一緒になったタリア(ググ・バサ=ロー)に誘われ、彼女の恋人デルの率いるスクーター仲間に入ります。一人だけ世代の違うラリーが溶け込めるのか?と思うのは要らぬお節介で、ヘアスタイルやファッション、インテリアまでセンス良く改造されて、イケてるオヤジに大変身!ラリーの方も彼らをラマーのガレッジセールや海軍時代の仲間フランクのレストランに連れて行って互いに刺激を受け合っている様子が楽しく描かれていきます。また、それが縁でフランクの店で働くことも決まり、どんどん運気向上していくの

一方メルセデスの方は、売れない作家の夫ディーンが、隠れてアダルトサイトばかり見ているのが不満。結婚生活もうまくいってなくてストレスを酒で紛らわせていましたが、ある晩遂に夫の本音(巨乳好きという理由が笑えるが)を聞いてしまい遂にプッツン!!車を降りてバス停に佇む彼女を見かけたタニアがラリーに家まで送るようアドバイスしたことから、互いに気になる存在になっていくという、お決まりのコース。
(確かにディーンは良い夫とは言えないですが、メルセデスにも欠点が多々あるように見受けられて、一方的に追い出されてしまうのは何だかな〜ほんの少しだけ同情しちゃったよ)
そしてまたまた定番の誤解と嫉妬。でも結局は・・・という展開です。

恋愛以外に面白かったのは経済学のマツタニ教授とのエピソード。講義は自分の著書が教材で、授業中の携帯は取り上げ、寒いジョークで学生を引かせるなど、いかにも日本人という設定キャラが笑えます。(もちろん英語で講義してますが)しかし、真面目に講義を受けたラリーは、家のローンから解放され新しい一歩を踏み出す知恵を学びました。

そして「スピーチ」のクラスの最終試験でのラリーのスピーチは他の学生のテーマもさりげなく入れながらの堂々たる内容でしかもけっこう感動的なの。

タニアとメルセデス、二人の女性によって変わっていくラリーの姿は、ある意味「中年の星」です 前向きさと向学心って大事よね」
登場人物が基本的に「良い人」ばかりなのも安心して楽しめました。

トラックバック (0) | 

緑の毒

2012年05月14日 | 
桐野 夏生 (著)  角川書店(発行)

開業医の川辺康之は妻の浮気の腹いせに、寝ている女性の部屋に忍び込み、スタンガンと薬で昏睡させ、レイプをし快楽を味わうという所業を繰り返していた。川辺にレイプされた被害者の一人が犯罪被害者のネット掲示板に書き込みをしたのをきっかけに、被害女性たちが次々と名乗り出始め、自分たちの記憶を頼りに犯人探しを始める。彼女たちは、警察に被害届を出すより、自分たちで復讐したいと考えるようになり結束していく。(Wikipediaより)

粘着質で自分のことしか考えない男が起こす事件と、その被害者たちが団結して男に復讐をする話です。
ちなみに題名はシェイクスピアの『オセロ』に出てくる
「嫉妬はこわいものでありますな、閣下。そいつは緑色の目をした怪物で、人の心を餌食にして、苦しめるやつです。」(本文序章より)からきているようです。

川辺康之の年齢は39歳。不惑の40歳を前にして、大いに不満たらたらのガキな性格破綻者。これが開業医だというのだから呆れます。洋服マニアで趣味はヴィンテージスニーカーの収集。事件を起こす時も黒ずくめだけどブランドもので身を固め、ビンテージスニーカーを履いて行くというおバカさが哂えます。

妻のカオルは病院勤務医。自由が好きだから夫の医院なんぞに縛られたくないし、医者の世界では開業医は最下位ランクで勤務医の方が上位なんだってさ。で、自分の方が偉いと思ったのか、元々我儘気ままな性格なのか、夫が惚れた弱みで甘やかしたせいなのか、助長しまくりで救命救急の玉木医師と不倫中。しかも玉木にも妻子があるときてはもう何やってんだか・・。
玉木についても救命救急の敏腕主任医師という立場に陶酔する人物として描かれていて、ちょっと他の作家の他の作品に登場する医師へのあてこすりのようにも思えたのは気のせい?よね

妻の浮気に気付いた時から、川辺の嫉妬心はとんでもない行動に彼を導きました。スタンガンと鎮静剤のアンプルを用意して、独り暮らしの若い女性の部屋へ忍び込むレイプ犯となったのです。彼の犯行は妻が浮気相手と逢っている水曜の夜というのがまたおぞましい。

被害者は黙して語らずとタカをくくっている川辺でしたが、レイプに遭った被害女性の一人が、ネットの犯罪被害サイトに書きこんだことがきっかけとなって、被害者たちが連絡を取り合い、犯人に対して復讐の刃を向けるのです。その方法も川辺をネットに晒すというのだからまさに現代的なやり方ですね。

彼女たちは妻のカオルに対しても憤怒をぶつけますが、カオルにとっては夫と別れる良い口実になっただけに見えて何だか徒労を感じてしまいました。夫へ向けるひとかけらの憐憫の情すら彼女の傲慢さのような気がしてくるんだもの。

「邪心小説」の謳い文句通り、人間の醜く邪悪な感情に踏み込んで書かれた小説です。
川辺が持つコンプレックスが彼を嫉妬に駆りたて、プライドが破滅へ追い込んだわけですが、その幼稚な思考回路こそが恐ろしいと感じました。

そもそも、この小説、なんで読もうと思ったんだっけ?
トラックバック (0) | 

太陽の王と月の妖獣 上・下

2012年05月13日 | 
ヴォンダ・N. マッキンタイア (著) 幹 遙子 (翻訳)  ハヤカワ文庫

1693年、栄耀栄華をきわめる太陽王ルイ14世の住むヴェルサイユ宮殿に、伝説の怪物である海の妖獣が運びこまれた。捕まえたのは、イエズス会士で自然哲学者のイヴ・ドラクロワ。国王の命をうけ、遠洋へ探検の旅に出て、雌の海の妖獣を生け捕りにしてきたのだ。妖獣は宮殿の庭にあるアポロンの泉水の檻に入れられ、その世話を宮殿で侍女をつとめるイヴの妹、マリー=ジョゼフがすることになったのだが…(上巻)

警戒心が強かった海の妖獣は、気だてのいいマリー=ジョゼフにようやく心をひらくようになった。やがてマリー=ジョゼフは、海の妖獣が高度の知性をもっていることに気づく。だが、不死の霊薬になるといわれる妖獣は、まもなく開かれるルイ14世の即位50周年記念の祝宴の料理に供されることになっていた!マリー=ジョゼフは、妖獣が殺されるのを命がけで阻止しようとするが…波爛万丈の歴史改変SF。(下巻)

中世フランスの宮廷を舞台に、太陽王と謳われるルイ14世の命を受けた修道士イヴが捕まえた妖獣を巡る物語です。いわば、SF歴史ファンタジーといったところでしょうか。登場する妖獣は人魚のような存在ですが、ジュゴンとは明らかに違う「海の人」です。普通人魚は観目麗しい上半身として描かれるものですが、ここではかなり醜い容貌とされていました。

当時の宮廷女性はただ華やかに優雅に振舞うことだけを要求され、知性の追求は、宗教的に異端でした。そんな時代にあってイヴの妹であるマリーはかなり現代的な探究心と向学心を持つ女性として登場します。逆に男女のことについてはかなり疎くてそのバランスが面白いかも。

王の本当の目的は妖獣を食べることで永遠の命を得ることのようです。マリーも最初は単なる「獣」として接するのですが、やがて妖獣が人間と同じように思考を持つ生き物であることに気付きます。彼女たちの会話は、妖獣の方がマリーに対して音→映像として思念を送り込むことで成立していますが、他の者には理解できず、マリーの口を通して語られる出来事は単にマリーの作り話と捉えられてしまいます。ただ当事者だった兄のイヴと、無神論者のリュシアン(クレティアン伯爵:クレティアンとはキリスト教という意味があるそうで、そのシニカルさも楽しい)だけはマリーの言葉を信じるようになるのですが・・。

マリーの必死の命乞いで、王は妖獣が差しだす海に眠る難破船の宝と引き換えに助命を聞き入れますが、結局宝が見つかっても彼女を自由の身にはしません。そりゃ、永遠の命が目的なんだから当然だよな〜〜。逃がそうとした三人も捕まって罰を受けることになります。
しかし、二度目の「宝探し」の時に妖獣は海に逃れることができ、お宝いっぱい手に入れた王の与えた罰は、身分や財産は剥奪されたものの、当人たちにはとても幸せな結果となるのでした。

一介の修道僧とその妹がどうして華やかな宮廷人に立ち混じることが出来たのかは、イヴが王の隠し子の一人だったことや、兄妹の母への愛からというのは、いかにもかの王ならと思わせてしまいます。更にリュシアン自身も亡き王妃の隠し子という立場に至っては、宮廷人の貞操感はどこに置き忘れたのやらと嘆かわしいけれど・・。

物語は恋愛にうぶだったマリーが女性として成長する様も描いています。
打算と冷酷な本性を隠している王弟の愛人ロレーヌの騎士への当初の憧れは、マリーへ行われた瀉血という当時の無茶な治療に彼が加担したことで化けの皮が剥がれ、王弟の息子であるシャルトル公の好色さにも気付いていきます。

逆に外見は侏儒(体の小さい人)ですが、リュシアン伯爵はそれ以外では完璧な宮廷人であり、王の忠実な臣下であり、科学に対しても相応の知識を有している人物だということが分かってきて、マリーは彼に恋するんですねカトリック信者のマリーにとっては無神論者であるリュシアンを受け入れることも大きな試練と言えそうですが、愛の力って凄いのねうんうん、人間外見じゃないよ!と言いたいところですが、伯爵の外見はなかなかのハンサムだったりします
「氷と炎の歌」シリーズに登場するティリオンも小人でその外見から嫌われ蔑まれますが、心はとても優しい好人物。この物語のリュシアンと通じるものがあるなぁ。

王が平和のために手を結ぶローマ法王及びカトリックの修道院の尼僧たちはまさに前近代的な人物として描かれ、印象はかなり悪いのに比べ、若い頃放蕩三昧だった王は逆に好意的な人物像に刷りかえられているのが若干気になるけれど、結末はいかにもファンタジックでハッピーエンドなので・・ま、いっか〜
リュシアンが城の屋根の上でマリーに身の上を打ち明ける場面が好きです。また、彼が貸したアラブ種の馬のザキとマリーとの信頼と愛情のつながりも好感があります。

宮廷人たちのファッションや生活についての細々とした描写もその豪華さを想像して楽しかったです。
トラックバック (0) | 

アーサーとふたつの世界の決戦

2012年05月13日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2010年製作 フランス 102分 日本未公開

魔王マルタザール(ルー・リード)はアーサー(フレディ・ハイモア)をミニモイの国に閉じ込め、人間界を乗っ取ろうとやってきた。 整形手術で人間の顔に変身したマルタザールは、アーサーの祖父母を騙して家に潜り込み、アーサーが正常の大きさに戻るためのクスリを奪おうと探す。ミニチュアサイズのアーサー、セレニア(セレーナ・ゴメス)とベタメッシュ(ダグ・ランド)が何とか家にたどり着いた時、マルタザールは薬ビンを手に入れ湖へ向かっていた・・。アーサーたちはもう一つの方法を得るために蜂の巣へ向かう。巨大蚊で襲ってくるマルタザールに、女王蜂から魔法の蜜を分けてもらい、正常の大きさに戻ったアーサーが挑み最終決戦が始まった。

シリーズ最終作なのに日本では未公開。もちろん前2作を観ておくとキャラの相関図が頭にすんなり入ってきます。今回はマルタザールの息子のダルコスがアーサーたちと和解し味方に加わるところが面白いです。ダルコスとは、初めはアーサーの部屋のミニカーや電車といった玩具たちを駆使して戦うのですが、ダルコスが本で潰されるというピンチを三人が救ったことで、友情が芽生えるの。


人間界にやってきたマルタザールがマントや仮面を被ると・・ありゃりゃ・・ベイダー卿の出来上がりぃという遊び心も入っていて楽しいよ。アーサーの祖母であるデイジーの作るチョコパイをマルタザールが食べたがっているというのも意外性がありましたが、アーサーと父親の関係が修復される結末に対し、マルタザールを説得しようとしたダルコスが父親に裏切られてしまうというのは何だか悲しいなぁ。

ベタメッシュのドジ加減もセレニアとの恋模様も微笑ましく、まさにファミリー向け作品なのでした
トラックバック (0) | 

光のほうへ

2012年05月12日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2010年6月4日公開 デンマーク 114分

アルコール依存症の母親に代わり、赤ん坊の弟の面倒を見る兄弟。二人は、店から盗んだミルクを与え、タバコをふかしながら赤ん坊をあやし、電話帳からとった名前を赤ん坊につけて洗礼の真似をする。しかしある日、赤ん坊は突然死んでしまう。
大人になった兄ニック(ヤコブ・セーダーグレン)は恋人のアナと別れ、自暴自棄になって人を殴り、最近まで刑務所に入っていた。臨時宿泊施設で暮らしながら、酒と肉体を鍛えることで時間を埋めていたニックは、アナの兄イヴァン(モーテン・ローセ)と街で偶然再会する。イヴァンはニックを、今は結婚して子供もいるアナのところへ案内する。アナと目が合うと、ニックは逃げるように立ち去る。その夜、ニックはイヴァンに、アナが自分たちの子供を妊娠したが中絶し、そのままいなくなったことを打ち明ける。一方、弟(ペーター・プラウボー)は妻を交通事故で亡くし、幼い息子マーティンをひとりで育てていた。生活保護を受けようとするが、ソーシャルワーカーにこのままでは子供と引き放さなければならないと言われ、断ってしまう。しかし彼はクスリを止められずにいた。息子をリビングに残し、バスルームで慣れた手つきでクスリを打つ弟。母親の死をきっかけに教会で再会した兄は、弟を心配し、母親の遺産を全て譲ろうとするが・・・。

子供時代の兄弟が、育児放棄した母親の代わりに幼い赤ん坊を必死で彼らなりに世話をしている姿が胸に痛いです。特に名前も付けられていない弟に洗礼名を与えようと電話帳で名前を探すシーンや洗礼の真似ごとのシーンが印象深いの。
たまたま母親の酒を二人で飲んで騒いで寝てしまった翌日、赤ん坊はもう息をしていませんでした。これは絶対トラウマになるね〜〜と思ってたら場面が代わり大人になった兄弟の生活の描写となります。

兄は酒と暴力、弟はヤク中。過去から逃れようと苦しみ、別々に生きていながらも互いを思いやるところは子供時代と変わっていないけれど、やっぱり底辺から這いあがれない彼らの人生が切ないです。
弟は妻に先立たれて息子と二人で暮らしているけれど、クスリの売人となって警察に捕まってしまいます。同じ頃、イヴァンを庇い誤認逮捕された兄と収監先で偶然短い会話を交わすのですが、そのあとで弟は自殺してしまうのです。
父親として息子を守りたいと思いながらもクスリと手を切ることができない弟の姿が哀れでした。息子を想う気持ちの強さが逆に彼を破滅に追い込んでいくようで・・・。映画の中でははっきり語られていませんが、おそらく亡くなった彼らの弟に電話帳からとってつけた名前がマーティンだったのだと思います。

遺されたマーティンは、ニックと暮らすことになるのかしら?どうぞ今度は失敗しないで、光のほうへ歩いて行ってと祈る気持ちになるラストでした。
トラックバック (0) | 

アーティスト

2012年05月09日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2012年4月7日公開 フランス 101分

1927年のハリウッドで、サイレント映画のスターとして君臨していたジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)は、新作のオーデションで新人女優ペピー(ベレニス・ベジョ)と出会う。ジョージの「女優には目立つ特徴が必要」というアドバイスをきっかけにヒロインを務めるほどになったペピーは、トーキー映画のスターへと駆け上がる。一方ジョージは、かたくなにサイレントにこだわっていたが、自主製作の作品がこけて、元々うまくいってなかった妻とは離婚、忠実な運転手(ジェームズ・クロムウェル)の給料も払えなくなる。酒に溺れ、絶望のあまりフィルムに火を放って火事になり病院に運ばれたジョージを自分の屋敷に連れてきて介抱するペピー。彼女の献身的な介護で元気を取り戻していくジョージだったが、ある時、競売にかけられた自分の私物がペピーの屋敷にあるのを知り・・・。


耳の不調で音の大きな活劇は負担なので、映画館から遠ざかっていたけれど、これは絶対スクリーンで観たかった
無声映画で、今年のアカデミー賞を5部門でさらったことでも話題ですが、登場人物たちの思いが仕草や表情で自然に伝わってくる上質な作品です。
私はサイレント作品はDVDでも殆ど観たことがないですが、そのシンプルさが郷愁を誘いスクリーンに惹きつけられました。

芸術家(アーティスト)の誇りゆえに時代から取り残され凋落していくスター俳優ジョージと彼のファンだったペピーの物語です。トーキーという新時代の波に乗ってどんどんスター街道を進む彼女ですが、心の中にはいつも自分を引き上げてくれた恩人のジョージがいました。

逆に、火事で運ばれたジョージが大事に胸に抱えて離さなかったフィルムはあのオーディションの時のものという事実の中に彼のペピーへの想いがこめられています。

落ちぶれ、世間に忘れられていくジョージを気にかけ、裏で色々援助の手を差し伸べていたペピーですが、それを彼に知られてしまいます。(競売された家具をペピーが手を回して買っていたことに気付いてしまうの)ジョージの誇りは傷ついて同情より死を願いますが、その場にペピーが駆けつけて彼への想いを語るシーンは・・わかっているけど、単純だけど・・泣かされるのよねそこへアギーの演技で一瞬の後に笑顔になれるのもでした。さすが「金の首輪賞」に見合う演技力〜

主演のデュジャルダンが、まさに往年のスターオーラを出し輝いています。
彼とペピーが出会ったオーディションのダンスも楽しいけれど、何よりラストで踊るタップダンスが最高のショーでした。また、ペピーがジョージのタキシードに袖を通してのパントマイムのシーンも切ない想いを代弁していて良かったです。

映画で使われる音楽も当時の雰囲気にあっていて物語を邪魔することなく盛り上げています。

トラックバック (0) | 

ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路

2012年05月06日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年4月9日公開 フランス 120分

18世紀半ば、ヨーロッパ中を演奏旅行で回るモーツァルト一家。11歳のヴォルフガング(ダヴィッド・モロー)は神童と称され、父レオポルド(マルク・バルヘ)に溺愛されていた。4歳年上の姉ナンネル(マリー・フェレ)も音楽の才能に恵まれていたが、バイオリンの演奏も作曲も女には無理だと決めつける父に禁じられ、弟の伴奏者に徹していた。それでも、仏国王の娘ルイーズ(リザ・フェレ)や、ヴェルサイユ宮殿での王太子(クロヴィス・フアン)との出会いが、ナンネルの作曲家への夢と情熱に火をつけるのだった。

女がプロとしての道を歩むことなど認められない封建社会に生まれ、天賦の音楽の才に恵まれた弟を持ったこと。この二つの要素がナンネルの持つ才能を歴史の裏に埋もれさせてしまったのでしょうか?この映画を観るまで彼女の存在すら知らなかった私です。

しかし、邦題にある「哀しみの旅路」は内容に少々相応しくないように思えます。何故なら、ナンネルの少女時代は決して哀しみだけではなかったと思うからです。物語は少女から大人の女性になっていくナンネルの一瞬の輝きを鮮やかに切り取って見せてくれます。

弟を音楽家として売り込むため、一家は各国の宮廷を巡り演奏旅行を続けます。何日も馬車に揺られる放浪の生活は体の負担も大きく辛い旅でもありました。
そのさなか、馬車の車軸の損傷で身を寄せた修道院で、枢機卿の策略によって幽閉されていたフランス王の娘たちと知り合います。中でも、一番末のルイーズとナンネルは特に親しくなり、身分を超えた友情を感じるのです。

ルイーズの頼みで、宮廷にいる彼女の想い人への手紙を託されたナンネルは、手引きしてくれたイザベル(サロメ・ステヴナン)の手配で男装して手紙を届け、その際、王太子と出会います。バイオリンの腕や歌を気に入られた彼女は、作曲の才能も王太子に見出され、自分が女性であると告白した後は更に気持ちを通わせていくのですが、放蕩の父王のようにはなるまいと決意していた王太子は、ナンネルと友情以上の感情を持つことを抑えてしまいます。

一方ナンネルの方は娘らしい思慕の情を王太子に持ち、彼のいるパリを去りがたく、家族と離れてまでパリに戻り、音楽教師をしながら王太子の依頼で再び作曲をします。自分の曲が宮廷楽団によって演奏されるシーンは、ナンネルにとって人生で一番幸せな時だったでしょう。

しかしやはり女性が音楽家として成功するのは難しく、また王太子が彼女を遠ざけたため、失意のままナンネルは家族の元に帰り、二度と作曲はせずその生涯を弟と家族に捧げたと綴られ物語は終わります。

まさに放蕩の限りを尽くした父王とは逆に、王太子もルイーズもかなり敬虔な信仰を持っていたようで、いや、あのような父だからこそ神に救いを求める他なかったというべきか・・。
でもナンネルに対するあの扱いは酷いなぁと
傷ついた彼女をいつも温かく迎え、優しく諭す母アンナ・マリア(デルフィーヌ・シュイヨー)の存在は地味ながらとても大きかったと思います。

監督はルネ・フェレ。実の娘マリーとリザがそれぞれナンネルとルイーズを演じています。
二人とも設定年齢に似合わぬ聡明で大人な印象を与えます。一方神童であるヴォルフガングはこの作品では単なる脇役に過ぎず、やんちゃな弟の域を出ません。もちろん彼については他に沢山の本や映画が描かれているし、今回は姉の物語だもんね

特にルイーズは、想い人が異母兄だったという事実も(表面上は)淡々と受け入れ、自身の品格を損なうことなく、ひたすら神を信じ修道女としての生き方を選ぶという善なる女性として描かれているのです。しかし、「もし私たちが男に生まれていたら、私は政治の世界で、あなた(ナンネル)は音楽の世界で名を成したでしょう」というルイーズの言葉にこそ、彼女の生来の強さと願いが垣間見えて、このシーンが実は一番心に残りました。

もちろん、重厚なヴェルサイユ宮殿を舞台に優雅なバロック音楽を楽しむという点でも美しい作品といえるでしょう。
トラックバック (0) | 

赤の銃士 狙われた王位とルイ14世の陰謀

2012年05月06日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年製作 スペイン 119分 日本未公開

スペインの人気TVシリーズの映画化。
17世紀を舞台に、スペイン王位の転覆を狙った陰謀を阻止するため、剣術に長けた覆面のヒーロー“赤の銃士”が立ち上がり、最強の暗殺者と戦いを繰り広げるアドベンチャーものです。

実は・・フランスの三銃士関係と間違えて借りちゃったんだよな〜〜。
冒頭、悪漢に囲まれ窮地に陥った金髪美女を助けるヒーローのいでたちが、黒ずくめの服装に顔を隠し、赤い房飾りのついた長剣を持ってるのを見て「忍者か?」と思ってしまったぞ。

主人公のゴンザロは教師だけれど、“赤の銃士”と呼ばれる白馬に乗った正義の騎士。正体を知っているのは彼の親族であり従者のような役割をしているサトゥールだけです。若く見えて美男だけど、どう見ても10代の息子・アロンソがいたり、歌の上手い美女マルゲリータ(どうやら妹らしい)が出てきたり、元のドラマを知らない身には話がよく見えないところもありました。ゴンザロの格好が忍者風なのは、彼が東洋で修業をしたという設定があるらしいのは後で検索して知りました。

スペインで行われることになった国際平和会議に乗じて、国王フェリペ4世を亡き者にしようという陰謀が企てられます。フランス、イングランドの国王にポルトガルの代表、ローマ法王まで加わる国際会議を好機と捉えたフランス国王ルイ14世とスペインの枢機卿の策略で、ルイの銃士隊長によって息子を誘拐されたルクレシア公爵夫人を利用して国王を暗殺しようとするのです。侯爵夫人はヘルナン警備隊長に助けを求め、二人は誘拐した国王と息子を交換するのでした。(侯爵夫人と国王とヘルナンの男女関係についてもイマイチわらかんなぁ

その謀略に巻き込まれ暗殺者に命を狙われたゴンザロを救ったのは何も知らないアロンソでしたが、火薬により失明してしまい、激しく後悔したゴンザロは「赤の銃士」を捨てることを決意し、愛刀を湖に沈めてしまいます。

その頃、誘拐された国王が連れて行かれた要塞には謎の金髪美女の父も囚われていました。彼は王の重臣であり、この陰謀を聞き知ったために捕えられていたのでした。
国の危機を説かれ、その気になったゴンザロは美女と共に要塞に向かい、彼女の父と王を救出します。

一方、町に残った男たち(兵士は騙されておびき出され皆殺しになっていました)はマルゲリータの恋人ホアンの指揮の下、力を合わせ敵兵士から町を守ろうと戦います。
もちろん素人が戦いのプロである各国の兵士に勝てるわけはなく、殺されたり捕まったりしてしまうのですが、そこに救出された王により知らせがもたらされ、失明した筈のアロンソの目も見えるようになり・・というハッピーエンドを迎えます。

本筋の他に、修道僧に間違われて振り回される道化役の存在があったり、美女の沐浴シーンや奴隷の装束、会話に下ネタがしばしば出てきたりと、くだけてコメディタッチなところもあり、正義一辺倒でないのも楽しめます。 また悪役俳優もけっこう美男が揃っているのも嬉しいな
トラックバック (0) | 

吾郎とゴロー

2012年05月05日 | 
川渕圭一(著) 幻冬舎文庫

一流医大を出て、エリートコースを順調に歩んできた吾郎。だが、研修先は医療設備が不十分で、窓際ドクターばかりが働くボロボロの分院だった。深夜の中庭でひとり愚痴をこぼしていた吾郎は、ゴローという口の悪い患者と出会う。彼は吾郎の診療にも文句ばかりつけるが。訳あり患者からエリート研修医への、ちょっぴり切ないひと夏限りの課外授業。(「BOOK」データベースより)

主人公である吾朗はエリート大の医学部でも優秀な成績を修めた将来有望な研修医(と自分で思い込んでいます)。それなのに配属されたのは本院ではなくおんぼろの三年後には閉鎖が決まっている分院で、おまけに他の研修医は気が弱く技術の低い哲也や要領の悪い皆川、お喋りなのり子という自分より遥かに劣った者ばかり。(この物語でも脱サラして医者になった37歳の研修医が出てきますが名前は皆川になっています。患者との会話を重視するキャラは同じです。)憤懣やるかたない吾朗が真夜中の病院の中庭で愚痴をこぼしていると、突然現れたのは、6年前にこの病院で死亡した患者、すなわち幽霊でした。

科学で説明できないものは信じない現実主義者の吾朗ですが、自分の目で見て聞いたことは信じないわけにはいきません。確かに残されていたカルテには入院してわずか13日で急性骨髄性白血病で亡くなったことが記されていました。

この幽霊、ゴローは、毎夜1〜3時に吾朗お気に入りの中庭のフェニックスの木の前に現れて彼と会話をします。今までの努力の見返りに医師としての名声を求めようとする吾朗に「実体のない名声より患者との交流の方がよほど人生の財産になる」とか、研修医仲間が患者の死に激しく動揺する様を冷ややかに見る吾朗に「医者一年目で既に(死に対して)不感症になっちゃったんだな」とか、死後の解剖は医学の進歩のためと強要する態度の吾朗に「患者本人や遺族の気持ちを考えたことがあるのか」とか・・・。話をするうちに感情的になる吾朗とは異なり、ゴローはあくまで穏やかに話します。実際は21歳で亡くなったゴローは現実に24歳の吾朗よりよほど大人なイメージです。それは生きていたら27歳というのもあるのでしょうけれど、やはり年の割に成熟した人物に見えます。

そんなゴローが見えるのは吾朗だけ。そしてその理由は彼の遺した現世への想いにありました。短い夏休みに姉と姪たちとの旅をしたことがきっかけで、吾朗はそのことに気付きます。そしてゴローの願いを叶えるために奔走する姿はもう以前の自分勝手で傲慢な吾朗ではありません。

ゴローの願いが叶うシーンや、エンディングでのエピソードはじんわり心に沁みます。

人間的にも医師としても成長した吾朗がちょっぴり眩しく感じられる、ファンタジックな物語でした。
トラックバック (0) | 

とび出せ!ドクター  研修医純情物語 ・旅立ち篇

2012年05月04日 | 
川渕圭一(著)、主婦の友社(刊)

大学病院にはびこる旧態依然の“諸悪”に立ち向かう二人の中年医師、佑太と瀬戸。不安と挫折の日々に、恋と友情が絡み、やがて新しい出発へ―明るく、楽しく、爽やかに、そしてどこか懐かしい気持にさせてくれる「新・青春小説」の誕生。(「BOOK」データベースより)

今春のTVドラマ「37歳で医者になった僕 〜研修医純情物語〜」が面白いので、ベースになる本を探して何冊か予約したら、初めに借りられたのがコレ。
ドラマの原作自体は『研修医純情物語〜先生と呼ばないで〜』『ふり返るなドクター〜研修医純情物語〜』なのだけどね(^^;

この本は“その後の研修医純情物語”のようです。
基本的にドラマとは設定が異なり、主人公の佑太の性格も勤めている病院も恋人も違っているので、初めは面食らいましたが、物語としては、すんなり入っていけて一気に読めました。

研修医として過ごした最初の病院から次の病院を紹介された佑太は、数か月の周期で内科混合病棟→循環器病棟→消化器病棟→麻酔科を回り、今度は医員として再び内科混合病棟に戻ってきます。

佑太をこの病院に引き受けてくれた佐伯教授は一見人当たりの良さそうな人物ですが、本当は権威の亡者で目の前の患者を見ずに自分の地位の栄達のみを追及する人でした。教授が受け持っていた患者が彼の専門外の病で死亡しますが、これは教授がきちんと患者に向き合っていたら防ぎ得た出来事であったのです。更に患者の死後も遺族への説明を怠り、訴訟を起こされるのですが、事実上の敗訴になったにも関わらず、驚いたことに逆に出世してしまうという展開は、佑太ならずとも唖然とします。

一方、先輩医師との友情も描かれます。年齢的に近く、初めは気が合わなそうだと敬遠していた消化器科の瀬戸医師とはひょんなことから屋上仲間となり、やがて教授や病院への不満や愚痴をこぼしたり合コンをするような友人関係になっていきます。

エリート大学教授を父に持った佑太と何の権威も持たない小役人を父に持った瀬戸。大学病院での出世を望まない佑太と、病院での出世を望んでいた瀬戸、相反する二人ですが、共に父親への反発(ファザコン)という共通点が、二人を引き付けていったのでしょう。

佑太は早々に佐伯教授や大学病院に対して見切りをつけ、退職するのですが、教授を信頼していた瀬戸の方は、科をたらい回しにされ疎んじられ始めた現状を、ある時思い知らされ、自分の生き方の方向転換を図ります。病理医の資格を取り、転職先を探し、自分と同じ理念を持つ病院長と知り合い、新病院の立ち上げに協力し、ある日すっぱりと退職するのです。

瀬戸の退職と前後して、佐伯教授が、脳溢血で倒れた自分が医師やナースに冷遇される夢を見るという場面が出てきます。これがもう痛快愉快 でもねぇ・・普通の神経の持ち主なら今までの自分の行いを顧みて態度や考えを改めるものですが、この人は変わりませんね。

さて、病院を辞して派遣で健康診断医として気楽に働いていた佑太の方は、突然、病院をテーマに研修医が置かれている現状や、病院にまかり通る理不尽な現実を小説に書こうと思い立ちますが、原稿を出版社に持ち込んでは断られ続けていました。その小説にはインパクトが足りないと指摘されながらも、佐伯教授の医療ミス事件を取り上げることを頑なに拒んでいたからです。しかし、裁判に事実上敗訴しながら病院長に出世した現実と、瀬戸とその恋人のアドバイスで、医師の友情物語としてこの事件を絡めながら改めて書き直し、出版が決まるのです。

新病院に赴く瀬戸に連れられその現場を見た佑太が、再び病院の医師として働く気になるということで、シリーズはまだ続く・・・のかな?

作者自身が、佑太同様、会社勤務を経て30歳で医師を志し、37歳で医者になったという経歴の持ち主で、この話にも研修医としての勤務経験が多分に盛り込まれているのでしょう。

文中の瀬戸のセリフの中に「いままでの自分は単なるローカリストだった」というのがあります。専門とする臓器しか見ずに全体を見ることのできない人間だったという意味です。全体を見渡すことが出来て初めて専門技術が生きてくるわけで、そういう医師をスペシャリストと呼ぶなら、確かに数少ないのが現状なのでしょうと思いました。

(追記)2012.5.20
『ふり返るなドクター―研修医純情物語』幻冬舎文庫


やっちまいました
これって2005年発行の本作品を改題して幻冬舎から出版されてるんだね。
紛らわしいことすんなよ〜〜題名同じでいいじゃんか
まぁ、図書館でそれらしいタイトルを適当にリストアップした私が悪いんだけどね
トラックバック (0) | 

ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち

2012年05月03日 | 
三上 延(著) メディアワークス文庫

鎌倉の片隅でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」。そこの店主は古本屋のイメージに合わない若くきれいな女性だ。残念なのは、初対面の人間とは口もきけない人見知り。接客業を営む者として心配になる女性だった。だが、古書の知識は並大低ではない。人に対してと真逆に、本には人一倍の情熱を燃やす彼女のもとには、いわくつきの古書が持ち込まれることも、彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。これは“古書と秘密”の物語。

順番が逆になってしまったけれど、ようやく最初の物語を読むことができました。
近日中(6月)には第三巻も発売予定とのことです

第一話:夏目漱石『漱石全集・新書版』(岩波書店)

俺(五浦大輔)が本を読めない体質になった幼児期の祖母にまつわる体験と祖母の秘密に関する物語で、古書店主の栞との出会いのきっかけになっています。
病室のベッドで、本と僅かな情報だけで真実を推察するという驚異的な彼女の才能が明かされて、これからに期待を持たせる話になってました。

第二話:小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)

第二巻でも登場する「せどり屋」の志田と女子高生の小菅奈緒の出会いにまつわる事件。
最初、本の内容は無関係に見えますが、事件解決の後、二人が交流を深める大事な要素になっているのが心憎いね。本の「スピン」が理由だなんて、まさに本好きにしか解けない謎という気がします。

第三話: ヴィノグラードフ・クジミン『論理学入門』(青木文庫)

ある秘密を抱えた夫が、それゆえに手放そうとした本をめぐるお話ですが、この夫婦の愛情の深さにちょっと感動。本に貼られていたラベル「私本閲読許可証」から見事にその秘密を解き明かし、さらに病室に押し掛けてまで夫の本を取り戻そうとした妻の言動や大輔が見た夫の印象からもう一つの秘密もわかってしまう栞にも脱帽です。

第四話: 太宰治『晩年』(砂子屋書房)

三話の最後に大輔に打ち明けた栞の入院のきっかけになった事故の真相とその犯人探しがテーマです。ここまでの話で大輔を信用出来る人物と踏んだからこそ助けを求めたのだと読み進めていくと、意外にも本の虫である栞の深い策略に気付かされることになります。

また、第二話に登場した小菅奈緒に関する余話も登場し、栞を襲った犯人かと疑わせるような捻りも加えられていました。

犯人は捕まり、事件は解決をみますが、結果として栞のとった行動は大輔を傷つけることになります。しかし結局二人は仲直りするので、やはり本質では似たもの同士ということになるのかも

それにしてもマニアの執念って恐い。それまでの好青年的イメージ(おまけに美青年なんだもんなぁ)が崩れ去るからこそなおさらかも
トラックバック (0) | 

テルマエ・ロマエ

2012年05月02日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2012年4月28日公開 

古代ローマの浴場設計技師ルシウス(阿部寛)は、生真面目すぎる性格から時代の変化についていけず、職を失ってしまう。落ち込んだ彼は、友人マルクス(勝矢)に誘われて公衆浴場を訪れるが、そこで突然、現代日本の銭湯にタイムスリップしてしまう。そこで出会ったのは、漫画家志望の真実(上戸彩)たち“平たい顔族”日本人だった。日本の風呂文化に衝撃を受けたルシウスは古代ローマに戻ると、そのアイデアを利用して大きな話題を呼ぶ。タイムスリップを繰り返すルシウスは、ローマで浴場技師として評判となり、それを聞きつけた時の皇帝ハドリアヌス(市村正親)にも気に入られ、個人浴場も任されることになる。しかしこの成功は自分の才能というより模倣しただけと悩むルシウスは妻リウィアにも愛想をつかされ出ていかれてしまう。さらに、皇帝から自分の後継者にと考えているケイオニウス(北村一輝)のために大浴場を作るよう命じられ・・・。

生真面目な技師が現代にタイムスリップし、平たい顔族(日本人)の高い技術に驚愕し興味津津な様子が何ともコミカルに描かれていきます。
公式HPで原作漫画の一巻目を読むことが出来るのですが、まさに原作通りの作りで、ファンにも納得な作品に仕上がっているのではないかしら?
前宣伝もかなり派手にしてますから、観客の入りも上々で、上映中、常にクスクス笑いの漏れる楽しい娯楽作になっています。体の不調で一カ月近くも劇場鑑賞出来なかったけれど、久々の映画が満足の作品で嬉しいな

真面目故に、日本で経験したあれこれを応用して評判を取ることで、逆に自分を追い詰めて行ってしまう様子も、勤勉な日本人に似た姿だなぁと変な親近感が湧いてきます。

そんなルシウスと不思議な縁で繋がる真実という漫画家志望の女の子は原作とは違う設定のようです。漫画は巧いがストーリーに行き詰まり、ルシウスが原因で派遣の仕事も失い、実家の温泉宿に帰るものの、そこも経営難という八方塞がりの状態の中で、ルシウスが古代ローマの人間であると確信し、猛烈に歴史や言葉を勉強して習得して彼と会話が出来るようになります。

古代ローマにタイムスリップした真美が、女好きのケイロニウスに連れ去られるのを、皇帝の側近アントニヌス(宍戸開)が助けたことから歴史が変わりそうになるのですが、ルシウスを勇気づけ、共に歴史を正すため戦場で傷ついた兵士のためのオンドル小屋を作ろうとします。そこに現れた真美の父親(笹野高史)や宿の常連客たち(竹内力 他)の働きもあり、無事問題解決のハッピーエンドも楽しく終われてでした。そして何より大きなお風呂にのんびりつかりたくなるんだな〜〜

ロケ地は那須温泉郷の秘湯・北温泉(真美の実家の宿)、河津温泉郷・大滝温泉、伊香保温泉、熱川バナナワニ園、それにイタリアのチネチッタ撮影所の巨大オープンセットが使われています。
富士山の壁画の日本の古い銭湯からローマの巨大なテルマエまで、様々な温泉が登場するのも魅力です。

阿部寛さんの筋骨隆々の肉体美を堪能するのも目の保養さすがに市村さんは上半身だけでしたが、北村さんは脱がなかったな〜〜なんか残念その代わり女好きキャラは全開でしたが
トラックバック (0) |