Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

紅殻駱駝の秘密

2018-10-05 09:03:29 | 読書
日本ミステリー史に輝く怪作「黒死館殺人事件」の,小栗虫太郎の処女長編.戦後も何度も出版されているが,初めて読んだ.完成度は低いが怪作度は「黒死館...」に劣らない.

「国使館...」の文章は晦渋だが,こちらの文章は下世話な感じ.
「シドッチの石」なるものの探索戦・争奪戦だが,時下70万というこの「石」の価値がピンとこない.でもラストは秀逸.
世代にわたる登場人物の係累が入り乱れていて,おまけに記述はゆきとどかない.登場人物リストや,密室の舞台となる「赤錨閣」の見取り図くらい,文庫化に際してサービスしてもいいんじゃないの?

入らなくてもいい横道に入りがち.でも,シャーロック・ホウムズと耶蘇が登場する作中劇など,ゲテモノ好きとしては大歓迎.最初に殺されるのはホームズを演じた役者.

こうして中盤以後,たて続けに8件の殺人が起こる.探偵役の弁護士が怪人・紅駱駝を向こうに回すミステリ風味の活劇.屋敷には地下坑道.トリックは荒唐無稽.だが殺人ベッド以下,この著者なら許せる.
プルキンエ現象とかウィッドマン・ステッチン・パターンとかで読者を煙にまくところは,東野圭吾の探偵ガリレオを先取りしているかも.

好事家向き.☆☆☆
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