「『まる・さんかく・しかく』は禅の真髄か? (前編)」のつづきは、東京国立博物館(トーハク)で開催中の「臨済禅師1150年・白隠禅師250年遠諱記念 特別展『禅―心をかたちに―』」(タイトルが長い… つきましては、以降、「禅展」と略します)を観た後の、トーハクの総合文化展の見聞録です。
トーハクは、開催中の特別展に関連した所蔵作品を総合文化展に展示することがありまして、例えば、大盛況だった特別展「鳥獣戯画─京都 高山寺の至宝─」では、所蔵する模本が展示されて、行列嫌いの私は模本で我慢したこともありました(記事はこちら)。
今回も総合文化展には、「禅展」の開催に併せて、か、意識したと思われる展示がありましたので、それを書いておこうというのが、きょうの記事の意図です。
山水画のモチーフとして「瀟湘八景(しょうしょうはっけい)」というのがあります。
これは、中国・湖南省の洞庭湖の南にある瀟水と湘水付近の8か所の風景を描いたもので、トーハクには清の乾隆帝の愛蔵品だった国宝「瀟湘臥遊図鑑」(見聞録はこちら)は、その代表作です。
「近江八景」や「金沢八景」も「瀟湘八景」に倣ったもので、日本への影響の大きさも相当なものです。
で、「禅展」では、その「瀟湘八景」関連の作品が、雪村の「瀟湘八景図帖」と相阿弥の「大仙院方丈障壁画のうち瀟湘八景図」の2点が展示されていました。
そして、総合文化展も負けじ とばかりに、長谷川等伯の「瀟湘八景図屏風」と、
さすがですなぁ~、トーハク
雪村&相阿弥に、等伯&大観で対抗するんですから…。
それでいて、「青磁輪花茶碗 銘『鎹』」に、
「青磁茶碗 銘馬蝗絆」で応じないところが、非常によろしいと思います。
「青磁輪花茶碗 銘『鎹』」に「青磁茶碗 銘馬蝗絆」を併せるのは、無粋ですから…
その替わり、というのか、茶道具コーナーに展示されていたのは、
これまたステキな「青磁腕」。
実は、ここで登場した3つの青磁茶碗は、いずれも中国・南宋(13世紀)の龍泉窯の製品なのですよ
これら青磁(「瀟湘臥遊図鑑」も)に限らず、中国の美術史では宋代がピークだったように感じるのは私だけでしょうか…
横山大観の「瀟湘八景」が展示されているトーハク本館1階の18室「近代の美術」に(展示ケースのガラスの反射がキツくてイマイチ…)に、「禅展」を観たあとだからこそ私の目を惹いた作品がありました。
高村真夫の「黄檗僧」です。
私の目がロックオンしたのは、お坊さんの持ち物
ワラビが幅広になったようなものを持っていらっしゃいますよね。
「禅展」で、これと同じかたちのものが展示されていました
中国・明時代(17世紀)製の「銀如意」です。
銀製で、黄檗宗の開祖・隠元隆琦禅師の所用の「如意」だそうですから、高村真夫の「黄檗僧」に描かれているのは、まさしくこの「如意」ってヤツなのでしょう。
ちなみに「如意」(孫悟空の武器、如意棒を連想します)は、平安貴族とかお内裏様が手に持っている木のへら=「笏」と同様、ただ威厳を見せつけるためだけの「お飾り」らしい。
「手ぶら」(手ブラではない)はカッコ悪いってことなんでしょうねぇ。
う~む、、勉強になるなぁ~
トーハクの総合文化展は、「禅展」を離れても見どころたっぷりでしたので、そのお話は「秋の上野は芸術の秋(その5)」のつづきとの合併号して書くことにします。
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