きのう、上野の東京藝術大学大学美術館に出かけて東京藝術大学大学創立130周年記念特別展「藝『大』コレクション」を観てきました。
東京藝術大学は今年、創立130周年を迎えます。これを記念し、大規模なコレクション展を開催します。
東京美術学校開設以来、積み重ねられてきた本学のコレクションは、国宝・重要文化財を含む日本美術の名品ばかりではなく、美術教育のための参考品として集められた、現在では希少性の高い品々や、歴代の教員および学生たちが遺した美術学校ならではの作品が多くあることが特徴となっています。
本展では、多様なテーマを設けて、すでに知られた名品だけでなく、これまで日の目を見ることの少なかった卒業制作などの作品、模写、石膏像や写真・資料類にもスポットをあてることによって、藝大コレクションの豊富さ、多様さ、奥深さをご紹介します。(以下略)
というもので、まさしく、「藝大コレクションの豊富さ、多様さ、奥深さ」が観る人を圧倒する展覧会でした。
展覧会は7月11日~8月6日の第1期と8月11日~9月10日の第2期の会期に分かれていますが、両期を通じて、フロアプランは、
1) 名品展
2) 平櫛田中コレクション
3) 卒業制作-作家の原点
4) 現代作家の若き日の自画像
5) 石膏原型一挙開陳
6) 真似から学ぶ、比べて学ぶ
7) 藝大コレクションの修復
8) 藤田嗣治資料
9) 記録と制作
という順路になっていまして、まず、恐らくほとんどの人が、「教科書で見た」と思うだろう「名品展」からのけぞりました
高橋由一の「鮭」、小倉遊亀の「径」(かわいい そしてお母さんの持っている買い物カゴがカッコイイ)、狩野芳崖の「悲母観音」、下村観山の「天心岡倉先生(草稿)」とか、ひやぁ~ の連続だったのですが(すべて「再会」でしたけど…)、とりわけ、原田直次郎「靴屋の親爺」(こちらの記事をご参照方)、黒田清輝「婦人像(厨房)」、浅井忠「収穫」、高橋由一「花魁」が並ぶ一角は、肯定的な意味でレッドカード■ものです
さらに、久しぶりに柴田是真「千種之間天井綴織下図」を拝見して、またもやほれぼれぇ~
やはり(こちらの記事をご参照方)、いかにも気難しそうな肖像写真(右に載せました)と、たおやかな「千種之間天井綴織下図」とがつながらない…
また、古美術品の中では、五体不満足の月光菩薩坐像が素晴らしかった…
両腕と胸から腰までと右足首から下が失われているこの像、
もと高山寺薬師如来坐像の脇侍。本学開校時に日光菩薩像とともに収蔵されたが、保存状態の良好な日光像は東京国立博物館に移管された。
だそうな…
また、つい先日訪問してきた浄瑠璃寺の秘仏「吉祥天像」の厨子絵が展示されていたのには驚きました。
浄瑠璃寺では、吉祥天像が収められているという厨子が扉をピッタリと閉めて、九体の阿弥陀様と並んでいたのですが、どうしてその厨子絵が東京藝大にある?
そのうちに調べておきましょう
平櫛田中コレクションで目を惹いたのは、気迫あふれる木彫「活人箭」の後ろ側の台座に書かれていた文でした。
それは、平櫛田中(ひらぐし でんちゅう)本人の筆によるもので、
明治四十一年秋日本彫刻会に出品 岡倉先生に初めて認められたもの 先生ビールをめしあがっていい気持ちになられ 批評して下さったが辛辣極る 死んだ豚も射れないといわれた ことし先生生誕百年を記念し 大破してゐる石膏像に依りざっと再現した 昭和三十七年十二月廿六日 平櫛倬太郎 謹誌 藝大で欲しいといふからあげる
ですって
「藝大で欲しいといふ(言う)からあげる」っつうのがイイなぁ
東京藝大の懐の深さを感じたのは、「現代作家の若き日の自画像」のコーナーでした。
本学美術学部およびその前身である東京美術学校の一部の科では、卒業年度の学生に自画像の提出を課している。集められた自画像は大学のコレクションとなり、当館に収蔵されている。
その数は現在6,000点余りにのぼるが、この中で、当館あるいは他館の展覧会に出品されたことのある作品はほんの一握りである。それらは、青木繁、藤田嗣治、萬鉄五郎など日本の近代美術を代表する画家たちのものに集中している。他方で、現代美術の作家たちの自画像はほとんどが日の目を見ないまま収蔵庫で眠っている。その中には、村上隆、山口晃、松井冬子といった国内外で高い評価を得ている作家も少なくない。
だそうで、これが面白かった
衣冠束帯姿(「伝源頼朝像」の本歌取りでしょ)の山口晃の自画像なんてまだ「普通の自画像」の次元で(村上隆、松井冬子両氏の作品はもっと普通の自画像)、83個ものガラケーの展示用モックアップを集めた渡辺篤のインスタレーション(それでもそれぞれのガラケーの画面には本人の顔写真が貼られているから「自画像」と言えなくもない)ならまだしも、市販の文庫本4冊をパネルに貼りつけただけの会田誠の作品とか、黒いゴムシートが巻かれているだけの川俣正の作品に至っては、藝大はよくぞ「自画像」として受けつけたものだと感心してしまいます。
ちなみに千住博の自画像は、まともすぎてつまらなかった…
「藝『大』コレクション」の観覧料は、一般 800円ですが、「2回チケット」も販売されていまして、お値段はお得に「一般 1,300円」
私が予定しているように、第1期と第2期それぞれ1回ずつ観ることができるのはもちろん、
第1期と第2期のいずれかを2回ご覧いただくこともできます。*本券1枚で、2名様が同時に入場することはできません。
だとか。数量限定だそうで、「これ買おう 」とお思いでしたらお早めにどうぞ
まだ書き足りないところもあるのですが、それは第2期を観に行った後に書くことにします。
つづきのようなもの:2017/09/10 「藝祭」をチラ見
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