「半年前の信州旅行記(その36)茅野編 6」のつづきです。
神長官守矢史料館は、
守矢家は、古くから諏訪大社上社の神長官を勤めてきた一族でした。そのため、数多くの古文書を現代に伝えています。(中略)当館は、守矢文書を保存・公開するために、平成3年2月に開館しました。
というわけで、展示品の多くは古文書です。古文書好きにはたまらない(武田信玄、北条氏直、真田昌幸といった蒼々たる武将らの筆になる文書が保存されています)でしょうが、私にとっては、建物自体やロビーの御頭祭の復原展示のインパクトに比べると、相当地味…
神長官守矢史料館の建物正面、入口の庇を4本の柱が貫いています。小鳥を模した金属板がチャーミングなんですが、この柱は容易に想像できるとおり、御柱をモチーフにしたものだそうです。
御柱は諏訪大社4社だけのものではなく、諏訪地方では神社に「つきもの」のようで、中小の神社だけでなく、祠(ほこら)でさえも、その四隅に御柱が立てられていました。
この御柱も、どこからか引きずってくるのだろうか? 斜面を滑り落としたり、川を渡ったりして…
きっと諏訪地方の子どもたちは、代々「御柱ごっこ」に興じているんだろな
なんたって楽しそうだもの
今年は6年に一度の御柱祭の年。再来週の土曜日、4月2日に、上社の御柱8本の曳行(「山出し」というらしい)が始まります。諏訪地方の人たちは、御柱祭のことでもう気もそぞろって感じなんでしょうねぇ
さて、神長官守矢史料館から南へズンズン進んで行きますと、見えてきました
藤森照信さんの設計による茶室「空飛ぶ泥舟」です。そして、その左手には、これまた藤森さんの作品茶室「高過庵(たかすぎあん)」
なんだかソワソワしてきて、思わず速歩になってしまうのですが、まずは「空飛ぶ泥舟」を至近から見上げました。
ホントに「空飛ぶ泥舟」そのものです
4本の支柱から伸びたワイヤーで宙づりになっています。
この「建物」は、2010年に茅野市美術館で開催された「藤森照信展 諏訪の記憶とフジモリ建築」の際に、「ワークショップの一般参加者と地元の職人が地域の素材を用いて制作した」ものだそうです。
普通の建物は、移設するのは大変なことなんですが、この「空飛ぶ泥舟」の場合、4本の支柱を立てられる場所ならば、簡単に移設できてしまいます。実際、最初の茅野市美術館から、この場所に移設されただけでは飽き足らず、名古屋に出張までしているんですから
「空飛ぶ泥舟」への出入りにはハシゴを使うのですが、こちらが専用のハシゴか?
二つの丸い窓が目みたいでcute
実際に「空飛ぶ泥舟」に乗船っつうか、入室した人の見聞録によれば、結構揺れるんだとか。「空飛ぶ泥舟」は茶室だけど、中で宴会をやったら、少ない酒量で酔えるかもしれませんな。
揺れるといえば、茶室「高過庵」も、風が強いと揺れるらしい。
そりゃそうだよねぇ、こんな構造で、「アメリカのTime誌に『世界でもっとも危険な建物トップ10』に選ばれています(1位はあのピサの斜塔です)。」(こちらから引用)というくらいなんですから。
左の写真だと、1本の木の上にあるように見えますが、実は撮った角度のせいでして(煙突から白い煙が上っているように見えるのも偶然です)、実際には、
2本の木を土台にしています。って、2本の木が土台かい
確かに「危険な建物」です
真下から見上げますと、
これじゃ、逆光で何も判りません ので、もう1枚。
こちらも、踊り場まではハシゴを掛けて登る必要があります。その専用ハシゴはこれかな?
茶室「空飛ぶ泥舟」にしても、茶室「高過庵」にしても、説明板はありません。何も知らずに、この二つの茶室を見た人はさぞかし目を剝くことでしょうな。あまりにも現実離れした光景で、夢を見ていると思うかも…
それにしても、木の上の家って、秘密の隠れ家(「高過庵」は目立ちまくりですが)みたいで、ワクワクしますなぁ。
「高過庵」の傍らにあった萱葺ならぬ萱造りの祠。
こちらも高床式で、「高過庵」の附属施設風ですな。ちゃんと御柱も立っていて、名づけるなら、「祠の萱造り 高過庵風 御柱添え」ってところでしょうか? おなかが空いてるせいか、料理のような命名です
至極満足のうちに、もう一度「神長官守矢史料館」の建物を鑑賞して、
次なる目的地・諏訪大社上社前宮へと向かいました。
ところで、茶室「空飛ぶ泥舟」とか茶室「高過庵」の「敷地面積」はどう測るのだろうか?
地面を占有しているのは、支柱や木の断面積だけなんだけど…
【追記】この記事を書き上げたあと、遅い昼食を摂り、埼玉県立近代美術館に出かけて二度目の「原田直次郎展-西洋画は益々奨励すべし」を観てきました(一度目の見聞録はこちら)。森鴎外が所蔵していたという「蓮池」(後期:3/8~3/27のみ展示)を観たくて…。で、原田直次郎展を観終わった後、ミュージアムショップでブラブラして、美術書の背中を眺めていると、こんな本が並んでいました
藤森 照信 | |
六耀社 |
磯崎 新,藤森 照信 | |
六耀社 |
藤森照信さんの「茶室本」です。
茶室「空飛ぶ泥舟」と茶室「高過庵」のことを書いた当日に巡り会うなんて、運命的なものを感じて、買おうか買うまいか、しばし迷ったのですが、とりあえず今日は買うのを見送り。
でも、そのうち買ってしまいそうです。(2016/03/20 18:42)
つづき:2016/03/22 半年前の信州旅行記(その38)茅野編 8
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