OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

浜辺の美波里とシャープ・ファイヴ

2010-07-07 16:39:23 | 歌謡曲

ふたりの浜辺 / 前田美波里 with シャープ・ファイヴ (日本コムロビア)

全く鬱陶しい今日この頃、なんとか少しでも早くスッキリ晴れてくれるようにと、ここ数日は夏向きのレコードをご紹介している次第ですが、本日はお待ちかねの前田美波里です。

まあ、お待ちかね、なぁ~んて思っているのはサイケおやじの世代でも限られた極一部かもしれませんが、掲載したジャケ写から一目瞭然という抜群のスタイルに凛とした彼女の面立ちは、当時をご存じない皆様にも強いインパクトを与えるであろうと思い込んでいます。

それはまず昭和41(1966)年、某化粧品メーカーのキャンペーンガールとして鮮烈に登場した時から一躍スタアの仲間入りだったんですが、なんといっても日米ハーフ特有の佇まいが日本男児を圧倒してくれたのです。

しかも芸名が「びばり / BIBARI」ですからねぇ~~♪

そして当然ながらミニスカや水着姿を惜しげも無く披露し、男性週刊誌のグラビアでは当時の常識を超えた驚異の開脚ポーズとか、まあ、このあたりは今となっては大したことには見えないかもしれませんが、しかしリアルタイムでは目眩がするほどアブナイものでした。

ただし前田美波里の本質は、そういう見た目のエロスではなく、歌も踊りも演技も実力派といって過言ではないレベルにあったことでしょう。

例えば映画では東宝と契約していたようですが、ゴジラ映画の隠れた傑作「ゴジラの息子(昭和42年12月・福田純監督)」では無人島で暮らしている謎の美女をキワドイ衣装も鮮やか演じ、子供達を性の目覚めに導きました。ちなみにこの「ゴジラの息子」は如何様にも深読み出来る名作として、私は大好き♪♪~♪

で、歌手としての活動では、なんといっても昭和42(1967)年末に発売した本日の1枚が素晴らし過ぎます。おぉ、前述の「ゴジラの息子」封切と同時期!

ご存じのように、当時の我国はエレキ~GSブームの真っ只中でしたから、歌謡曲も所謂ロック化が著しく、それまでのオーケストラをバックに歌うというところから、バンドサウンドを強調したスタイルが強く求められていました。

そこでこの「ふたりの浜辺」は、エレキインストのバンドでは寺内タケシのバニーズと双璧の実力と人気があったシャープ・ファイヴがバックを担当するというよりも、ほとんど競演♪♪~♪

イントロから澄み切ったギターを聞かせるてくれるのは、既に述べたとおり、寺内タケシと並び称される天才として世界的にも評価されている三根信宏! 昭和歌謡曲保守本流の曲メロを敢然と彩るロック的なセンスは絶品ですよ♪♪~♪

ちなみにシャープ・ファイヴは昭和40(1965)年のエレキブームを煽ったテレビ番組「勝ち抜きエレキ合戦」で模範演奏を披露していた特別に上手いバンドで、少年時代のサイケおやじは三根信宏のミステリアスで魔法のような音色のギターに恐れさえ感じていました。それは豪胆で繊細な寺内タケシとは対極にあるというか、特有の浮遊感が滲むフレーズの妙とでも申しましょうか、当時は知る由もなかったフリートウッド・マックのピーター・グリーンにも通じる不可知な美意識に貫かれているのです。もちろん根底にはシャドウズのハンク・マーヴィンの影響が強いわけですが、しかし三根信宏のギターは唯一無二の世界を描き出していると思います。

そのあたりが「ふたりの浜辺」では、既に述べたような絶妙のイントロから間奏でのスペイシーなアドリブで全開! もちろんバンドアンサンブルも鉄壁のロックビートを大切にしたものですから、もう、たまりませんよ♪♪~♪

そこで気になるシャープ・ファイヴなんですが、実は当時のGSブームから凄腕揃いのメンバーが独立や引き抜きによって流動的……。ちょうどこのシングル盤が出る前後には、それが激しかったそうですから、録音セッションに参加したグループ構成には諸説があるようです。しかしレコードを聴く限りの推察では三根信宏(g) はもちろんのこと、リーダーの井上宗孝(ds) と古屋紀(org) の参加は確実でしょうし、他には前田旭(g)、伊藤昌明(b) という布陣じゃないでしょうか?

参考までに記しておくと、遠里真耶の作詞作曲に素晴らしいアレンジを施したのは、古屋紀とクレジットされています。

とにかくシャープ・ファイヴは日本のロック史では決して忘れてはならないバンドで、井上宗孝のドラミングは強靭なビートを打ち出しながらも柔軟! また、古屋紀のオルガンには粘っこいフィーリングがあって、そのあたりが三根信宏の異次元へと飛翔していくギターを見事に現世に繋ぎとめるところに、シャープ・ファイヴ独得のサウンドが形成されているように思います。

さて、肝心の前田美波里のボーカルは、そうした個性的なバンドサウンドに埋もれることが決して無い、実に素直でありながら、正逆の芯の強さが魅力的♪♪~♪ 男性ボーカルコーラスとの協調関係も、なかなか上手く仕上がっています。

ただし、このシングル曲は、やっぱりシャープ・ファイヴを中心に聴いてしまうというミソが強く、それゆえに魅惑のジャケット写真を眺めていると、如何にも野暮ったい男どもを従えた前田美波里が、強い存在感を誇示していますねぇ~♪

書き遅れていましたが、彼女は当時としては 170㎝ という高身長! 当然ながら日本人ばなれした腰の位置の高さと美脚も大きなウリになっていました。

ということで、夏が来れば思い出す1曲です。

ただしチャート的には、それほどヒットしたという記憶があまりなく、また彼女とシャープ・ファイヴの競演ライヴにも接したことがありません。それでも「ふたりの浜辺」は、一度聴いたら忘れられない名曲としてサイケおやじの胸に焼き付きながら、こずかいの乏しさゆえに買うことが出来ず、1970年代になってようやく中古でゲットしたという次第です。

実はリアルタイムでの前田美波里は、この曲を出していた頃、フォーク歌手のマイク真木と電撃結婚で、世間を唖然とさせていますから、そのあたりも大ヒットに結びつかなかった要因なのでしょうか……。

しかし今となっては、ジャケットの魅力と共に、如何にも昭和元禄な歌と演奏が愛おしい♪♪~♪ シャープ・ファイヴは、その実力から多くの歌手のバックを務め、またレコーディングも多数残していますが、中でも「ふたりの浜辺」は出色です。

エレキ歌謡というか、歌謡ロックに近いテイストもありますから、機会があれば、ぜひともお楽しみ下さいませ。

コメント (2)
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