ZZR1400GTR's Tagebuch(日記)

主に独逸・墺太利・瑞西・南チロルの欧州事情を発信。

GTL vs GTR

2011-05-01 14:17:45 | ZZR1400

数年前にS1000RRの開発計画の全容がドイツで発表された時、 「BMWがSBだって?」 が普通のドイツ人たちの感想でした。その当時のBMW社の2輪部門は、空冷エンジンの限界、ボクサーエンジンファンの高齢化 (50歳以上で) の進行、若年層のBMWバイク無視、というトリプルな問題を抱えていました。 「高いのにノロイ」 が次世代のライダーたちの印象で、安くて速くてカッコ良い日本車が輝いて見えていたのです。海の向こうからコンテナに積んでやってくるホンダとどっこいなシェアがドイツ本国での実態だったのですから、株主たちにとっても2輪部門の明るい未来が見えなかったのでしょう。また、追い討ちをかけるように長年独占状態だった警察関係車両でも、EU指令で 「入札の透明化」 が要求され、欧州中でBMW以外のバイクも白バイ化されていきました。

S1000RRは、日本人が今までしてきた他所のお手本を更に良くするの典型で、最初に見たドイツ人の大抵が 「これがBMWのバイクだって? スズキかヤマハのバイクの新型じゃないの?ドイツ人は決してコピー商品などは造らない ... 」 っていう 「込み上げるもの」 があったと言われています。私も同じような事をその発表の場のその瞬間に思っていました。そう、S1000RRには 「お手本」 がありました、それは約90年のバイク生産の歴史の中での転換点でした。それだけBMW社は 「追い詰められていた」 とも言えます。でも、バイクの歴史とBMWの歴史はほぼ重なるのですから、腐っても鯛、 「良いものは認める」 ができたのは 「さすが」 でしょう。 「BMW社の本気」 を感じました。そして今やS1000RRは発売と同時に世界市場の同クラスで、ゼロ発進からなのに確固したシェアを握りました。

さて本題ですが、この写真の上と下はK1600GTL (発売開始2011年) と1400GTR (発売開始2007年) です。同じ場所 (自分の家) からスタートして南チロルの馴染みの造り酒屋までの往復千キロ弱を走ってみた時の記念に撮りました。何か似ていますよね、上と下のバイクって。

私的には、1400GTRはK1600GTLの 「お手本の一つ」 だと信じます。真近で見ても、乗ってみても、両者に 「質感」 の差はありません。動力性能的には、4発と6発と排気量の差はありますが、ほぼ互角です。BMWはトルクがより強いですが回し切ると 「後がない」 感じです。逆にカワサキはZZR1400で証明済みの時速三百キロ超のエンジンを 「敢えて抑えたエンジン」 で「深み」を感じます。装備類は、実売で100万円近い差があるので、BMWに軍配が上がります。さすがにツアラーを造らせたら世界一がBMW社でしょう。

BMWのバイクには、真似るにしても、全く同じではないものにする 「孤高」 さがあって、この両者を比べるとツアラーとしてはK1600GTLの完勝、しかしメガツアラー (超高速域をカバーするかどうか) としては、時速200キロ以上を250キロ超までよく調教している1400GTRの完勝ですし、そのようなバイクにK1600GTLのような完全装備は不要だと考えます。

いずれにしても、BMWのバイクも、日本のバイクも、お互いを尊敬して手本とするような 「成熟した関係」 に至れたのは、日本人としては 「日本のメーカー、頑張ったんだな」 と感慨深いですし、後発のメーカーの良さを認めて自分自身を一念発起させたBMW社と言う会社の懐の深さも感じます。新旧の勢力が互いに刺激しあって高みに向かう姿は素敵です。