魅惑の日本映画

日本がこれまでに生み出した数々の名作、傑作、(珍作?)の映画を紹介していきます。

億万長者★★★★

2008年09月09日 | Weblog

☆あらすじ☆
館香六(木村)は税務署徴税係に勤める無口な小心者。周囲の人間たちは、汚職をしている署長や18人の子持ちの未亡人をはじめ、脱税をもくろむ人々、果ては肉体労働をしながら原爆製造に夢中の者―――ひと癖も二癖もある人物たちを相手の税金徴収に館は悪戦苦闘する。ある日、館は署長の娘と連れだって税金徴収に出かけるが…。


★感想★

登場人物たちが主人公も含め、へんな奴ばかり。
無口な徴税係を主人公(しかも同年に七人の侍に出ている木村功)にしていることらして常軌を逸してますが、

やたら早口でべらべら喋る(言ってる事は筋が通ってる)13人(!)の子持ちの芸者に山田五十鈴

その芸者ともう一度よりを戻したい汚職政治家に伊藤雄之助

ニューフェイスで収入のない貧乏多家族の長男に岡田英次

借金してまで海外で宣伝しようと企み、飛行機事故で死んでしまうスプーンの会社の社長に多々良純、その妻に北林谷栄
この二人を見ると大映の映画と一瞬錯覚を起こします。新東宝じゃなくて、俳優は東宝と大映ですね完全に。


そしてなんと言っても強烈なのは
原爆製作に夢中で寄付金を募る原爆女・久我美子(!)
育ちのいいお嬢さんなのに相当の汚れ役でした。

日本で原爆を作る映画と聞いて思い浮かべるのは勿論ジュリー主演の「太陽を盗んだ男」ですが、それを戦後9年に、しかも久我美子にやらせるとは、
本当に市川監督の考えることは凄い…

でもだたぶっとんでるだけじゃなくて、原爆女の両親が広島で被爆して死んだと言う過去を持ち、そのために平和を手に入れるために原爆を作ろうと躍起になってるってとこが、市川崑の映画らしい、明確なメッセージが込められている気がします。

貧困に絶えられなくなり、一家心中をしようとする前に、カメラの代わりの空箱で一家そろって記念撮影をする贋家族のシーンは切な過ぎる

でもその後直ぐに父と息子岡田英次のすっとんきょな会話が用意され、
ほんとにブラックユーモアだな~と

原子マグロを食べて結局岡田英次以外の家族は死んでしまいますし

あ、そうだ。
山田五十鈴にそそのかされ、汚職の詳細をつづったいわゆる館メモを作成した館香六ですが、そのメモが政界を巻き込んだ大騒動になるのも面白い。

結局奇人扱いされてしまった館が落胆しながらマグロを食べて死んだ贋一家の家に行くと、二階に下宿している原爆女がとうとう原爆を完成!実験すると言い出します。

館(木村功)は下着とパンツ一丁の岡田英次と一緒に逃げ出す…

物凄い終わり方…

この三年後に市川監督は社会風刺映画「満員電車」を発表しますが、「億万長者」の黒さは、時代背景を考慮しなくても凄まじい…

市川崑が鬼才だと再確認した一篇。
汚職と脱税と貧困が蔓延する現代社会を風刺的に描いた傑作。
異色作家、安部公房や細君、和田夏十らが脚本に参加しているためか、シュールで小気味よい会話が楽しめます。(山田五十鈴と加藤嘉のやりとりは最高)

とにかく見たほうがいいです。
面白いです。


監督、脚本…市川崑   
脚本協力……安部公房、和田夏十、横山泰三、長谷部慶治  
音楽…………団伊玖磨 
   
館香六  木村功 
鏡すて  久我美子 
花熊   山田五十鈴 
団海老蔵 伊藤雄之助 
贋十二  信欣三 
贋はん  高橋豊子 
贋門太  岡田英次 
伝三平太 加藤嘉 
伝麻子  左幸子 
車太賀吉 多々良純 
妻・山子 北林谷栄 

1954年度新東宝作品(モノクロ・スタンダード)

履歴↓↓

憲兵と幽霊
怪猫亡霊屋敷

激動の昭和史 軍閥

相棒(劇場版)
おとうと
衝動殺人 息子よ
満員電車
八甲田山

黒い十人の女
穴(大映)
血と砂
ハウス(HOUSE)
相棒(最終回SP『黙示禄』…番外編)

悪い奴ほどよく眠る
無法松の一生
蜘蛛巣城
江分利満氏の優雅な生活
大江山酒天童子
日本沈没

妖星ゴラス
斬る
待ち伏せ
殺人狂時代
太平洋奇跡の作戦キスカ
赤毛

戦国野郎

ブルークリスマス
大盗賊(東宝)
座頭市と用心棒
ガス人間第一号

電送人間
美女と液体人間
赤ひげ
世界大戦争
椿三十郎

用心棒
モスラ(1961年度版)
新幹線大爆破
隠し砦の三悪人
日本のいちばん長い日

☆はじめに☆


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