魅惑の日本映画

日本がこれまでに生み出した数々の名作、傑作、(珍作?)の映画を紹介していきます。

黒い十人の女★★★★

2008年04月02日 | Weblog


誰にでも優しいってことは、誰にも優しくないってことよ


【概要】 
TVプロデューサーの風松吉は、9人もの愛人を持っていた。やがて彼は女たちに殺されると思い込んで、妻に相談する。そこで妻が立てた計画とは……。
(抜粋先不明)

【感想】
大女優夢の共演(競演)といった感じでしょうか。兎に角皆さん演技が上手い。全然知りませんが、まるで本物のテレビ局の世界のような雰囲気です。どの役者も台詞をスラスラッと流れるように発して、違和感が全く無いのに驚きました。
幽霊を登場させたり、ラスト岸恵子が運転する場面で、交通事故の車を一瞬だけ映したり、実験的な要素の見られる作品でした。
出演者が名前と共に映る冒頭のシーンは今見ても洗練されていてかっこいいです。
モノクロだからこそ味わえる陰影も素晴らしい。
物凄くどろどろとした話なのに、見ていてそんな感じがせず、どこかでクスッと笑ってしまう市川監督のセンスの良さが光ります。
主要人物についてそれぞれ感想を、

船越英二…盲獣などで変態役もやってこなす人ですが、今回は山本富士子という日本一の美女を妻にして、そのほか9人の女性と関係を持つどうしようもない軟弱な役を演じています。この、軟弱なという設定がいい。決して暴力的な、冷たい男でなくて、誰にでも優しく接する性格だからこそ、10人の女性から恨まれると言うのが面白いです。声を張らないひょうひょうとした演技が見事でした。

山本富士子…和服姿が本当に似合う、現代の女優には絶対いないふくよかな体系の方ですね。いや、決して彼女の悪口ではなく、それが彼女の魅力です。今の人は痩せすぎているんだと思います。そんなことはどうでもいいですが、裏と表を持つ妻役が凄くよく似合う。彼女も流麗に台詞を言うので、思わず聞き惚れてしまいます。「~ざんしょ。」という語尾が好きです。

岸恵子…山本富士子が日本古来(?)の美しさを持つのに対して、彼女は現代的な美とでもいうんでしょうか。後年「レモンのような女」というドラマで現代人の象徴とでもいうべき役をやっていましたね。きりっとした目が女性の怖さを表しているようです。船越英二を部屋に閉じ込めて二人で語り合うシーンでは思わず寒気がしました。

岸田今日子…この頃からなんだか異様な雰囲気を出していたんですね。特別重要な役ではないんですが、存在感が上記二人と同じくらいにありました。さすが岸田家。

宮城まり子…幽霊という特異な役。彼女は東映動画の「白蛇伝」で森繁久彌と声の共演をしたこと以外知らないのですが、今回は幽霊で、しかもコミカルでしたね。

中村玉緒…ああ、こういう役もやるのね。という感じです。数々の女優が黒い役をこなしているのがこの映画の魅力。

これから大映作品をどんどん見ていこうと思います。市川崑の作品は脚本が良く出来ていると思います。

監督 市川崑
脚本 和田夏十
音楽 芥川也寸志
特技撮影 築地米三郎 (どこで?)    

風松吉 船越英二
石ノ下市子 岸恵子
風双葉 山本富士子
三輪子 宮城まり子
四村塩 中村玉緒
後藤五夜子 岸田今日子
虫子 宇野良子
七重 村井千恵子
八代 有明マスミ
櫛子 紺野ユカ
十糸子 倉田マユミ
警官役 浜村純
特別出演 ハナ肇とクレージー・キャッツ

1961年度大映作品(モノクロ・シネスコ)




履歴です↓

穴(大映)
血と砂
ハウス(HOUSE)
相棒(最終回SP『黙示禄』…番外編)

悪い奴ほどよく眠る
無法松の一生
蜘蛛巣城
江分利満氏の優雅な生活
大江山酒天童子
日本沈没

妖星ゴラス
斬る
待ち伏せ
殺人狂時代
太平洋奇跡の作戦キスカ
赤毛

戦国野郎

ブルークリスマス
大盗賊(東宝)
座頭市と用心棒
ガス人間第一号

電送人間
美女と液体人間
赤ひげ
世界大戦争
椿三十郎

用心棒
モスラ(1961年度版)
新幹線大爆破
隠し砦の三悪人
日本のいちばん長い日

☆はじめに☆

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