カメさん日記

趣味のカメさん日記です。レア種で情報が少ない種を中心に書いていきます。

hydromedusa maximiliani、chelodina oblonga飼育考

2019-03-30 11:28:20 | 飼育論

今日は。

久しぶりにガチな飼育論を綴ります。

hydromedusa maximilianiことブラジルヘビクビガメとchelodina oblongaことコウホソナガクビガメ、思うにこの2種が私のカメライフの終着駅のようです。

今の目標はブラジルヘビクビの繁殖とコウホソの産卵です。

ブラジルヘビクビの飼育を通じてコウホソへのアプローチ方法の仮説を立てていましたので、実際に飼育した検証も記載します。

まずはブラジルヘビクビの生息地写真。

このような渓流の水の澱んだ部分に潜んでいるそうです。

ブラジルヘビクビは文献通り常にシェルターに隠れており、私の観察下では気に入った環境を整えてやれば殆ど動かないカメです。

上記の生息地写真から完全な保護色がお分かりでしょう。

 彼等が好む環境設定が出来ればこのようなメヂカラの強い元気な姿を見せてくれます。

残念ながら国内の書籍ではこのような調子の上がった個体写真がなくこのカメの魅力を伝え切れていないと感じます。

ブラジルヘビクビは水質に絞ると古くて綺麗、かつカルシウム濃度の高い水を好みます。

数値で語るとPH7.0〜8.0、TDS値300ppmだと思います。

特にTDS値は硝酸塩等を除く数値ですからイメージとしてはエビアンウォーターが最も近いと思います。

エビアンウォーターで毎日全換水出来ればブラジルヘビクビには天国でしょう。

彼等は標高400〜800mの山間部の渓流に潜み、その水は湧水です。

エビアンウォーターが標高850mの湧水であることは偶然ではありません。

石灰岩の地層から湧き出る湧水は長い年月を地下水として濾過されてミネラル分を多く含んでおり、降雨水とは全く成分の違う水質なのです。

忍野八海の湧水は富士山の地下水として55年間濾過された水が湧き出たものだとされています。

これが私のいう古くて綺麗な水です。

この大自然の石灰岩の風化によるミネラル補給を機械化したのがカルシウムリアクターです。

私はこの添加剤を使ってミネラル成分を補っています。

http://aquainterior.marfied.co.jp/products/water/cichlid-essential.html

カメですから経皮吸収ではなく飼育水を飲むことによる経口吸収だと思いますがおそらくブラジルヘビクビはカルシウムとマグネシウムを添加すると調子は上がります。

次にコウホソの生息地写真です。

パース郊外の沼地だそうです。

いつもながらオーストラリアの空気が乾燥気味なのは写真を通しても分かりますね。

乾燥と強烈な紫外線、これは西オーストラリアの特徴です。

パースの年間降水量は東京の約半分です。

しかも夏場が乾季なので夏の水質はかなり煮詰まった水質だと思います。

そもそも西オーストラリアは日本と違い河川水を取水して水道水にする方法を取っていません。

パースの上水道は海水淡水化プラントと地下水の汲み上げにより確保されています。

その位、雨が降らないのです。

なのでパースの淡水は元来の地下水が湧き出たものとエキスパンサが棲む東部に降った雨が地下水となり湧き出たものの混合だと考えられています。

従ってコウホソナガクビの棲む水質は極めて異常な数値です。

PH6.5〜9.0、TDS値は40,000ppmにもなります。

TDS値はアクアホビーの測定器では測定不可能なレベルです。

非常に高濃度の地下水のためガチガチの硬水でしょう。

実はオーストラリアの地下水調査書にスワン川の水質データがあります。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jagh/52/2/52_2_211/_pdf

この調査データに最も近い水質はコントレックスだと思います。

 因みに日本の水道水が硬度60mg/lです。

コウホソについては以前から神経質、水質にうるさいカメといわれてきましたが私はそもそもカルシウム不足が原因で飼育下では神経質なのではないか?と仮説を立ててきました。

飼育水の飲水、エサへのカルシウム添加、これによりミネラル補給が出来ればコウホソは神経質ではないのかもしれません。

これまで飼育が難しいといわれてきたこの2種を上手く飼うコツはミネラル成分の補給ではないか?と私は考えています。

特に甲長10㎝を越える頃からよりデリケートになるとされるコウホソに関しては、大型化に伴って増加するカルシウム必要量ではないかと考えています。

リクガメと違い便利な人工飼料に恵まれた環境にあるミズガメですが、この2種についてはやはりサプリメントの添加が有効だと思います。

私はコウホソナガクビには以下の3つのサプリメントを使用しています。

https://www.picuta.com/repashy/

レパシーカルシウムプラスです。

http://www.papie-c.jp/p-1014.html

ネクトンレップです。

http://www.benripack.com/product/18.php

レプラーゼです。

各社の企業姿勢なども理解できます。

サプリメントを添加すれば上手く飼育できる訳ではありませんが、カメを状態良く立ち上げ出来たら、その上を実現する手段としてサプリメントは有効だと思います。

写真や動画では伝えきれませんが飼育個体のメヂカラや肌ツヤはサプリメント添加で明らかな違いがでます。

非常に散逸した文章で自分としても伝えたいことが曖昧ですが飼育方法の確立について私は思うことがあります。

カメを人間の飼育に馴致させるいわば家畜が歩んだ歴史をなぞらえる飼育方法が爬虫類界ではメジャーです。

つまり飼育下という特殊な環境化で繁殖できる個体を選別交配していく方法です。

F3位だとWCとは似て非なるカメとなり本当に驚きます。

まぁ、飼い易くて飼育者数を増やすには良いのでしょうが…

しかし私は馴致とは逆方向の飼育を目指しています。

それは局所分布種ほど高い環境再現度を要求してきます。

飼育下のブラジルヘビクビやコウホソナガクビをどれだけWC個体のフォルム、ひいてはそのメヂカラと生きる力、に近づけるか?

これが私の目指すところなのです。

まだら汁氏が「飼育の目標は飼育」だと仰っていますが私にとっても飼育とは目標であり、終わりのないゴールに思えてなりません。

https://mobile.twitter.com/herping_/status/1063124746059972608

カメもWC個体はめっきり減りCB個体全盛です。

それを否定するつもりは全くありません。

野生個体保護の観点からも大切だと思います。

しかし我々オールドマニアはよく知らない野生環境を想像して死にかけ5分前みたいな個体を必死に立ち上げてきた経験もあります。

飼育器具はもとより現地情報や海外文献に容易にアクセスできる現在だからこそ出来うる限りの環境再現度を目指し、WC個体ばりに我が個体を仕上げてみたいと切に思うのです。

https://peponi.exblog.jp/10107052/ 

本当は水温、空気の流れ、紫外線等様々な組み合わせをピンポイントで見つける事が飼育なのですが紙面が足りないのでいつか別機会に書ければ、と思います。


【オブさん日記】みえてきたこと

2019-03-16 14:00:00 | オブさん日記

今日は。

オブさん、お陰様で毎日元気にしています。

最近ではシェルターに籠ることはなくいつも水中フィルターの下にいます。

ベビーなので給餌は毎朝しています。

理由は分かりませんが左前足と左後ろ足の爪が飛んでしまいました。

後ろ足の爪は既に再生してきましたが前足が心配です。

ただよく見ると前足も付け根に小さな再生爪があるようなのでいずれ後ろ足のように生えてくると期待しています。

このカメを飼育している方は毎日全換水で対応している方が多いと思います。

私の飼育方法は週1回、1/3の定期換水です。

短い期間の飼育ですがオブロンガの私見を述べたいと思います。

まず、古くから言われる通り水質に対してデリケートなカメです。

というか基本的に日本の水道水ではあり得ない水質が好きなカメです。

おそらくですが水質のポイントは硬度です。

私の観察ではおそらく硬度500〜1,000ppmだと思います。

因みに日本の水道水は大体硬度60ppmです。

厳密には正比例ではありませんが経験則としてPHと硬度の相関性は正のことが多く、私の飼育水はPH8.5付近、硬度は推定500ppm付近だと思います。

幼体だからだと思いますが、お迎え以来一度も上陸は観察していません。

エサはクリーン赤虫、冷凍キビナゴ、冷凍シバエビをローテーションして毎日与えています。

シバエビは喰いつきがよくサプリメントを唐揚げ粉のようにガッチリとまぶしても喜んで食べます。

人工飼料には餌付いてませんがサプリメントを添加してから状態は更に上がってきました。

エサについては当初から脱水防止を第一に考えて生エサと決めており、体力のつく甲長10㎝までは無理せずに今のエサでいこうと思います。

タートルプリンを仕込んだ生エサを食べるには現在のオブさんのサイズは小さ過ぎるので焦らずに育成しようと考えています。

水温ですが22度でもエサをバクバク食べるので、多分24度上限が無難かなぁと思いますがベビーなので1日4時間ほどは26度まで上がる設定で飼育しています。

以前、濾過を試みて死にかけたオブさんですがほぼ原因が分かりました。

原因は鉱物系の珪酸カルシウムです。

おそらくオブロンガは海水由来の炭酸カルシウムでないと拒否反応を起こします。

念のためセラミックろ材をやめてガラス系ろ材に変えたところ何の問題もなく飼育できています。

ろ材にアラゴナイトを使えばカルシウム濃度も上がるのでは?と考えましたが私の飼育方法では意味がありません。

既にPHが8.0以上ある飼育水ではアラゴナイトやカキ殻による炭酸カルシウムは水中には溶けません。

一般的に水はPH0〜14まであり、真ん中のPH7.0以上ではカルシウムは自然溶出しません。

オブロンガの棲むパース市スワン川の水質データはPH8〜9、TDS値は38,000ppmという異常な水質ですからこれを飼育下で再現するには以下の2つの方法しかありません。

①カルシウムリアクターによる強制溶出

②添加剤による強制添加

これらの手段を使えばPH8.0以上でも硬度を高く維持することは可能です。

カルシウムリアクターのメリットは天然のアラゴナイトをカルシウムメディアとして使用するのでマイルドな自然水に近い水質を再現できることです。

デメリットはやはり装置が大掛かりなことでしょう。

リアクター本体にボンベから二酸化炭素を送りカルシウムを溶かすのでやはり手軽な装置とは言えません。

http://www.mmcplanning.com/item/hs/calcium-reactor.html

余談ですがH&Sもドイツ、エーハイム、メタハラといいドイツのアクアホビーの懐の深さには恐れ入ります。 

今のサンゴ界では添加剤自体の品質向上もあり、ドーシングポンプによる自動添加システムが世界的なトレンドになりつつあると聞きます。

カルシウムリアクターのナチュラルさは魅力的ですが将来的なアフターメンテナンス等を勘案すると私は自動添加システムの導入が現実的なかぁと考えています。

https://www.shopping-charm.jp/SP/ItemDetail.aspx?itemId=63547

カメはサンゴと違い割と大雑把なので今はPHモニターやエサ喰いをみながら適当にROライトを投入している程度ですがやはり全自動化して安定した環境を用意してあげたいとも思うので難しい選択です。

おそらくカメ目線ならリアクター、人間目線なら添加剤という選択となるでしょう。

引き続きオブさんの観察を通じて検討していきたいと思います。


ブラックウオーターの謎

2019-03-02 09:00:00 | 飼育論

今日は。

私が中学生の頃はPHは色で識別するアナログなものでした。

当時はシュミットフォッケ博士のドイツターコイズやアメリカのジャック・ワットレイ氏のRRBやターコイズディスカス華やかなりし時代でした。

ディスカス以外だとアピストがマニアに人気の時代でした。

そんな時代に流行ったのがこれです。

https://www.shopping-charm.jp/SP/ItemDetail.aspx?itemId=12168

パッケージは昔の方がプロユースぽかったです。

因みに当時の私はポリプテルス・エンドリケリーに憧れる中学生でした。

店内にはエンドリケリー32万円、ラプラディー20万円の価格表示が…

ロンギは甲長4㎝程のベビーが10万円でした。

私は今なお日本のアクア界、あるいはミズガメ界に根強く残るブラックウオーター万能論はこのテトラブラックウオーターによる都市伝説だと考えています。

精緻な水質測定が可能な現在ではきちんとした知識があれば狙った水質を作ることはかなり簡単な時代です。

ではブラックウオーターとは何か?を掘り下げてみましょう。

アクア界では良質な水質はブラックウオーターだとかなり根強く信じられてきました。

それは上級マニア達がディスカスやアピストにブラックウオーターを使用していたからです。

確かに野生下のこれらの魚はPH4〜5、ネグロ川はコーヒーのように茶色い川です。

https://m.youtube.com/watch?v=2Z4qQtYFfO0

 

日本のアクア界はアマゾン地域の熱帯魚に始まるのは論を待ちません。

アマゾン地域の魚を状態良く飼うために原産地の水質を再現するツールとしてブラックウオーターが有効だったのは事実です。

PH4〜5は生物濾過の効いた飼育水なら極当たり前の数値です。

ただしネグロ川のような本当のブラックウオーターはTDS値も相当低いはずです。

おそらく60ppm以下だと思います。

沈水葉は水中の溶解物質を吸収するからです。

因みにレッドアロワナ、これもマジックリーフによるブラックウオーター飼育が良いとされていますが、この魚の故郷インドネシアのセンタルン湖はPH7付近、TDS値は10以下と日本では岩魚が棲む渓流よりも綺麗な湖です。

テトラのブラックウオーターも規定量を使えばかなり水に色が付きますから透過率が落ち、魚の見られてる感が減じられストレス抑制にはなるでしょう。

ただそれ以外のメリットは私には分かりません。

PH4は生物濾過を効かせればすぐに実現するし、TDS値を下げるには水換えをすればいいのです。

ミズガメ界でブラックウオーターを必要とするのはデュメリアーナとマタマタでしょう。

ただこいつらに大事なことは水質より水温です。

赤道付近のカメはとりあえず水温、次に空中温度です。

最低水温28度にしたうえでPH6付近、TDS値60以下を狙うのが正攻法です。

やはりこまめな換水が無難でしょう。

また生物濾過を効かせるなら強力なエアレーションも有効ですがTDS値の上昇も早くなりますから換水量・頻度とも上げなくてはいけないでしょう。

また水中のTDS値が低いということは飲水によるミネラル摂取が期待出来ないのでエサによるミネラル補給が長期飼育ポイントだと思います。

ミネラルとはすなわちカルシウム、マグネシウム、ナトリウムですから爬虫類用サプリメントは必須だと思います。

https://www.shopping-charm.jp/SP/ItemDetail.aspx?itemId=51543

今回はブラックウオーターを切り口にミズガメ飼育を語りましたがカメが世界中に分布している以上、再現すべき飼育水も様々なはずです。

ただ安心して下さい。

日本の水道水は入荷してくるミズガメの98%位は問題なく飼える程の汎用性があります。

デュメリアーナやマタマタのように少し癖のあるカメはもう少し手間をかけるとより健康で長生きできると私は思います。

アクア上級者では当たり前のPHモニターや計測器、TDS計測器。

この数値とカメの調子を重ねて会話できるようになれば種ごとの飼育方法には更に厚みがついてくるものと私は思います。