今日は。2019年2月9日にお迎えしたchelodina coliei、ことオブさんですがお陰様で無事に 1年が経ちました。
2019年2月9日
2020年2月8日
昔から我々曲頸マニア間でも飼育の難しい種といわれ、ある意味曲頸マニアの到達点ともいわれてきた「chelodina oblonga」です。
今回はこの通称「オブロンガ」を 1年間飼育してきた率直な感想を述べたいと思います。
※私の飼育下での観察なので遍くこの種に共通するものではないことをご承知おきください。
https://m.youtube.com/watch?v=TBmTuZmTH_M
この動画はアッテンボロー氏の観察動画ですが、私の観察した飼育下のオブさんと特徴が一致しているので紹介しました。
我が家のオブさんも基本は夜行性です。
昼は殆どシェルターに隠れています。
バスキングは秋には何度か観察されたのでメタハラをつけましたが11月から現在までバスキングは 1度も観察できません。
冬場の水温は日中20度、夜間17度です。
それから上記の動画でよくみて欲しいのですが、このオブロンガは水底を歩いているのではなく泳いでいます。
実は我が家のオブさんも動画のようによく泳いでいます。
おそらく毎日2〜3時間程度はケージの端から端までスイスイと巧みに泳ぐのです。
こちらの動画は飼育下のオブロンガですが我が家のオブさんも本当にこの動画のように上手に泳いでいます。
https://m.youtube.com/watch?v=G2j057yhk1I
これらの動画や私自身の観察からやはりオブロンガには広いケージで運動量を確保する必要があると考えています。
オブさんを最大甲長まで仕上げるには180×90×60の大型水槽が必要だと思っています。
次に昔からいわれてきた水質ですがアンモニアと亜硝酸塩が検出されなければかなりの広範囲に対応すると思います。
アンモニアと亜硝酸塩には極めて弱く、これらが水槽内に発生するとバスキングをし、エサを食べなくなりますので理想的には水質検査キットで亜硝酸塩が検出されないうちに換水し、亜硝酸塩を発生させない水質を維持するとエサ喰いもよく状態よく飼えると思います。
私はこの種を状態よく飼育するには塩分がポイントだと考えているので濾過を効かせて出来るだけ換水頻度を下げていますが、多くの飼育者が毎日の全換水で飼育しているのはこのアンモニアと亜硝酸塩への対策からのはずです。
飼育水のPHは7.0以上であれば相当に頑丈です。
我が家のオブさんはPH値が9程度のいわゆるアルカリ水になっても普通にエサを食べています。
が、地元のケアシートではPH値は7.2〜7.8とかなりシビアな水質を要求しているのでこの辺が水質の目安ではないかと思います。
日本の水道水は全国的にPH7.0〜7.2、硬度60ppm程度に整えられているので毎日全換水方式は無難な飼育方法だといえます。
ただこの飼育方法ではカルシウムとマグネシウムが不足すると思います。
オブロンガの棲むスワン川の水質データから類推すると現地のカルシウムとマグネシウムによる硬度はおそらくは500〜1,000ppm程度はあると思います。
不足するカルシウムはエサで補うことが大切だと思います。
私自身はこの硬度とカルシウム摂取量に留意した飼育に取り組んできました。
具体的には、PHモニターを使用し、PH7.0以上を維持すること、サプリメントを多用し、カルシウム摂取量を増やすことの2つに注力しました。
今朝の水質データです。
後述しますがダスティングしたサプリメントが飼育水に溶け込みPH値を上げています。
さて、次にエサです。
オブさんは甲長4.5㎝でお迎えしました。
ナガクビガメはベビーの時が一番難しいです。
体力がないうえに偏食です。
私は初期飼料をキョーリン「クリーン赤虫」から始め、環境になれてからはカットした冷凍キビナゴ、同冷凍シバエビにし、喰いがしっかりしてからはこれらにリクガメ界で人気の「スペシャルフード」をダスティングして与えました。
更に状態が上がってからは月夜野ファームの冷凍イエコオロギ、最終的には自作のタートルプリンまで持っていきました。
かなりの量のダスティングとプリン方式で食べさせることにより、この種の求めるカルシウム量を担保しているつもりです。
スペシャルフードの主原料は牡蠣殻ですからダスティングした分は飼育水に溶け、結果アルカリ度が上がっていると思います。
これは寧ろ野生下の再現性を高め、オブさんは硬度の高い飼育水を飲むことでもカルシウム摂取が促進されていると思います。
まぁ、主観的ですが我が家のカメ達は全て大量のカルシウムを摂取させて育成しているので骨密度は高いはずです。
なので実際に持ち上げれば大きさの割に重いことに驚くと思います。
おそらくこの骨密度は運動量と正比例の関係にあると思います。
話を戻しますが、このようにダスティングしたエサからもカルシウムが溶け込むので定期的に部分換水してPH値を下げるようにしています。
今日は前回の換水から2週間経ちますから亜硝酸塩と硝酸塩量を測定します。
もともと青水なので判別しにくいのですが…
ごく僅かに亜硝酸塩が検出されています。
横からです。
私は定期的に検査しているのでごく僅かながら亜硝酸塩が検出されているのが分かります。
0.05ppm以下だと思いますが間違いなく亜硝酸塩が発生しています。
なにより今朝のオブさんがエサを食べたいのに食べられないサインを出していました。
寧ろ亜硝酸塩の発生を確認するために検査したのが本音です。
この状態でもエサを喰わせることは出来ますが確実に状態を崩すはずです。
余談ですがカメを長生きさせるコツはこうしたサインを素早く察知して的確なアクションをすぐにとることです。
こうすることで状態を崩さない、否、調子を上げ続けることが大切です。
念のため硝酸塩も測定します。
案の定、硝酸塩量はMAXですね。
亜硝酸塩まで検出されるので濾過能力を超えて水が汚れています。
今はろ材をスカスカにしてフィルターも 1日12時間の稼働でしたから今回の換水からろ材を増量します。
まもなく濾過能力を超えてくると思い安定のシポラックスを買い置きしていました。
最近では品質にブレのないシポラックスが一番安心して使用できるろ材です。
前回のブログで死んでいったカメ達への贖罪で、便利さを追求しないと書きました。
多くの方がなんと面倒臭い奴、と思うことでしょう。
しかしこうした面倒臭いことから目を逸らさない飼育が状態よくカメを長生きさせるコツだと私は信じています。
雑誌・飼育書・SNSではこんな手間のかかる飼育方法は紹介しないでしょう。
カメが元気に長生きすることは極論すれば爬虫類マーケットや動物医療業界は拡大しません。
カメが死ぬこと、病気になること、飼育器具が次々と新陳代謝して新製品が売れることをマーケット拡大の原動力としてきた業界で最小限の器具、手作りのエサ、死なないカメ、病気にならないカメ、こんな飼育者が金になるわけはありません。
従って私の飼育方法は日の目を見ることなどないでしょう。
試しにお手元の飼育書をご覧になって下さい。
大雑把なザックリしたことしか書いてないと思います。
雑誌は尚更です。
スポンサーあってのことですからね。
イベントなどでカメをみている方々を見かけると私は陰鬱な気分になります。
カメ達の生殺与奪を握るのは他ならぬカメの購入者です。
カメの飼育環境、どれだけ生きられるのか、ひいてはどれだけ飼われながらも幸せを感じて暮らせるのか?
既に一定の規模に達し、爬虫類業界で食べている方々も多い時代になりました。
あれだけ毎年のように大量のCB個体が売られている一方でカメが溢れている話は聞きません。
おそらく需給がバランスする分だけ死んでいくカメがいるはずです。
命あるものは必ず死にます。
その真理を覆すつもりはありませんが命と向き合っているという緊張感だけは我々飼育者は忘れてはならない、と私は思います。
簡単・便利にカメが飼えているのは言い換えれば死なない日を 1日単位で引き伸ばしているだけなのかもしれません。
オブさんお迎え 1年、この記念日に改めてこちらのブログを胸に刻み込む日にしたいと思います。