カメさん日記

趣味のカメさん日記です。レア種で情報が少ない種を中心に書いていきます。

chelodina coliei飼育考 2

2019-06-29 11:00:00 | オブさん日記

おはようございます。

今回もコウホソナガクビガメの飼育方法について書いていきます。

いわゆる飼育難種を飼育する上で欠かせないプロセスは事前の推論を重ねて論理を完成させておくことです。

論理=仮説がないと飼育が場当たり的になり、結局は何が良くて、何が悪かったのか?が分からないままに個体が死んでしまうというまさにカメにとっての無駄死にに至ってしまいます。

さて、その推論、2つのアプローチがあります。

帰納法と演繹法です。

私はオブロンガの飼育にあたっては帰納法から始めましたのでここから書きましょう。

数少ないオブロンガの飼育事例ですが、このカメの死について書かれたブログを3つ、それこそ丸暗記するほど何度も読み返しました。

事例1. 夏の盛りにバスキングして、あっけなく死亡。

事例2. 夏から喰いが落ち晩秋にシェルロッドで死亡。

事例3. 事例2と同じ。

まず貴重な飼育記録をブログにて公開して下ったブログ主様に厚く御礼申し上げます。

この3事例から導き出せる推論は、オブロンガは夏の暑さに弱いのではないか?という仮説です。

従って帰納法による推論は、「3個体とも夏の暑さが原因で死んだ。つまりオブロンガは夏の水温管理が死なせないキモ」となります。

一方で演繹法による推論では最近見つけたこちらのケアシートが役立ちます。

意訳しますと、

水質は厳密に維持されなくてはならない。

PH値は7.4から8.0、従って緩衝剤が必要となる。

週1回、1/4の水換えをすること。

※以下の文章は個人的には齟齬があると思いますが筆者の意のまま訳します。

水が硬かったり(軟らかいの誤りでは?)、酸性のときは、換水の都度10ℓあたり小匙1杯の塩を入れるとよい。

水温は18度から21度を維持しなければならない。

演繹法による推論は「ケアシートによるとオブロンガの飼育水温は21度以下だから、夏の水温対策をしないと長期飼育は出来ない」となります。

推論の方法はさておき、私自身がオブロンガを飼育してみて感じているのは、このカメは温度に極めてセンシティブなカメだということ、そして塩分濃度への要求が高いカメだなぁということです。

そしてこれこそが私が毎日全換水方式の飼育ではなく、濾過により極力換水頻度を下げる飼育を選択した理由なのです。

私はオブロンガ飼育にあたり、1.水温、2.飼育水の硬度、3.塩分濃度をいかに維持するか?がこのカメを上手に飼うポイントだと推論してきました。

この推論の根拠はオーストラリア大陸の成り立ち、パースの地質・気候の特殊性に基づきます。

パース近海の水温15度の海水から吹き付ける海風はこのカメの棲む内水面から熱を奪い水温を下げる一方で海水成分のミネラル、塩分をその内水面に与えるはずです。

同時に降水量の少ないパースでは内水面の水底から石灰質と塩分が溶出し、特殊な水質になっています。

上記の仮説からパースの水質を再現することは手間がかかるので作った飼育水を極力長く使用するために濾過による飼育水の使い回しが必要だったからです。

オブロンガの調子をみながら水温・水質の微調整をしていき、最も調子の良い設定は水温18ー22度、PH7.8ー8.5、塩分濃度0.3ppmでした。

これを後に知ったケアシートに照らし合わせると各項目がかなりの近似値となり、私の推論も間違ってはいなかったと思います。(ケアシートが正しいという前提ならば)

水温は9月までは現状の常時22度を維持するつもりです。

PHはとにかく7.8を切らないように管理してきましたが、これからは緩衝剤の添加をやめて少しずつPH値を下げるつもりです。

因みに私はこれを添加しています。 

http://aquainterior.marfied.co.jp/products/water/ro-right.html

塩分濃度はおそらくケアシートでは0.2ppm以下だと思いますので様子をみて下げたいのですが、現在の0.3ppmはカメの調子をみながら落ちついた数値なのでしばらくは0.3ppmを継続するつもりです。

現地でも夏は乾季、塩分濃度は高い季節ですからね。

因みに当初は計測器を持たずに目分量とカメのエサ喰いの状態をみて塩分を投入してました…

人工海水はテトラマリンソルト、拘ればオーストラリアの海域を再現した高品質な人工海水もありますがカメですし、消耗品なのでコスト優先です。

http://spectrumbrands.jp/aqua/products/goods/goods04/

ただし計測器は好評のデジタル機器を購入しました。

昔は比重計を使用しましたが以前から欲しかったマーフィード製のデジタル機器です。

http://aquainterior.marfied.co.jp/products/quality/mst.html

最後に水温ですが、私はこれがオブロンガ飼育のキモだと考えています。

おそらく水温22度以上がストレス要因ではないか?と。

はっきり言って、22度以下なら極めて丈夫で大胆なカメです。

過日、クーラーのセンサー異常で水温が16.5度まで下がりましたがいつもと変わらない朝のエサ喰いの良さに水温低下に気がつきませんでした。

その位、低温には強いカメです。その日に初めてバスキングを目撃しましたがおそらく上陸して体温を上げていたと思います。

室温は27度ほどありました。

この水温を再現するためにはエアコンでは限界があると私は思います。

なのでゼンスイクーラーを使用しています。

https://tropica.jp/2018/04/06/post-13959/

始めからクーラー使用が前提でしたから全換水方式を諦めたのです。

クーラーを付ければモーターが必要です。

特に私の使用しているZC200〆は外部フィルターとの相性も良いので必然的に濾過方式を選択したのです。

オブロンガは水温22度以下では極めて丈夫で大胆なカメです。

低温であれば水の汚れにも強く、特に硝酸塩は寧ろ数値が高い方が調子は上がります。

アンモニアは論外ですが、僅かな亜硝酸でも喰いが落ちるので私は夜間はタイマーをセットしてエアレーションしています。

こうすると濾過が効いて亜硝酸はほぼゼロになります。

硝酸塩は寧ろ好きな位ですから我が家のオブロンガケージはこんなに茶ゴケが付着しています。

今回は水温を中心にオブロンガの飼育考察をしましたが次回はエサに切り込んでいきます。


chelodina coliei飼育考

2019-06-23 08:00:00 | オブさん日記

今日は。

なんとか月に1回は更新していきたいと思います。

全く人気のなくなったナガクビ・ヘビクビガメですが今から35年程前はこの手のカメの人気は異常でした。

色々な意味でchelodina oblongaことジーベンロックナガクビガメが曲頸界に与えた影響は大きいと思います。

初登場で時価200万円、5年後には3,000円にまで激変したジーベンはナガクビマニアの価値観を変えたと思います。

そしてこのカメの普及に伴って「取り敢えず温める」ナガクビ飼育がデファクトスタンダードになっていきました。

オーストラリア産のジーベンは熱帯域に生息しており、日本に大量に入荷したジーベンもインドネシア産でいわゆる赤道付近に分布するカメです。

従ってジーベンは水温28度以上を保ってやれば元気なはずです。

一方でオージーロングネックの両雄 expansaことコウヒロとcollieiことコウホソは温帯域に分布し、基底温度は日本よりも暖かいながらも両種ともに冬があります。

緑色がジーベン、赤色がコウヒロ、青色がコウホソです。

因みに赤色部分に日本列島がすっぽりと入る規模感をお忘れなく。

日本列島ですら北海道と九州ほどの気候差があるのですよ。

それからロンギコリスはこの赤色をもっと拡大した温帯域に広く分布しています。

熱帯域の水温は30度前後、しかも年間を通じて温度差は少ないです。

赤色の温帯では内水面温度は18〜23度です。

シドニーの内水面温度です。

 勿論これは平均値の話ですが、それでもコウヒロであれば飼育下水温は18〜25度が無難な選択だと思います。

コウヒロと同じくマーレー川に棲むマーレーコッドという魚を飼育する際に、この魚が高水温に弱いと言われていることは上記の内水面温度の証左でもあるでしょう。

青色のパースは温帯域ですが寧ろ冷涼温帯気候とも呼ぶべきでその内水面温度は最高22度と低く年間では19〜22度です。

ここは少し特殊だと思います。

日本列島ならば仙台のような気候だと思います。

仙台は「やませ」という冷たい海風の影響で夏でも西日本のような蒸し暑さはありません。

私も住んでいましたが関東でいうと河口湖や山中湖あたりの夏に似ています。

パースも海水温度は15度で、この海風の影響で内水面温度が低いのだと思います。

 我々はジーベンの呪縛から「取り敢えず25度以上」を盲目的に実践してきました。

我が家のコウホソもショップでは27度でキープしていました。

コウホソのハッチは真冬の8月、現地の水温は19度です。

なので私は昼間27度、夜間24度で飼育開始しましたがエサ喰いが落ちなかったので1ヶ月かけて昼間24度、夜間22度に変更しました。

環境に慣れたこともあり今では昼夜問わず22度にしましたが確実に成長し、エサ喰いは更に上がってきました。

かつては一切の爬虫類飼育が許されない西オーストラリア州でしたが現在は免許制ながら自州産の爬虫類は飼育できるようになりました。(彼等は自国産ながらジーベンもコウヒロも飼育はできません。余談ながらコウホソとマルナガは飼育可能です。)

パースを拠点に西オーストラリア州内にチェーン展開している「ペットシティー」というペットショップでは詳細なコウホソ飼育書をHPで公開しています。

https://www.petcitywa.com.au/

飼育書を意訳します。

 

免許があればペットとして飼育できる西オーストラリア州の素晴らしいカメが2種類います。 

コウホソナガクビガメとマルナガクビガメです。

有鱗目、変温動物、水中で多くを過ごし手足には水掻きがあり雑食性のカメです。

優れた視力と鋭い嗅覚を持ち、一家で、あるいは熱心な愛好家の間で人気のあるカメです。

2億年以上昔からこのカメ達が地球上にいたことを知っていましたか?

 

幼体や若個体なら屋内飼育が良いでしょう。

水槽幅は約1m。片側にバスキングスポットが出来るように傾斜を付けて砂利を敷きます。

大きくて平たい石が役立ちます。上がりたい時に上陸できるようにする事が大事です。

そして水の深さはカメの甲幅より深くします。水底につく事なく完全にひっくり返れる水深にしなければなりません。

大きくなった成体はその体長と水中生活を鑑みれば屋外飼育が相応しい。

カメの健康には水と陸地を行き来出来ること、日向と日陰の両方が必要不可欠です。

夏場は池に日除けを立て掛けて囲んでしまうのもいい考えです。

 

長くなるので今回はここまでとしますが、ケージの項目内容です。

驚くべきはベビーですら1mの水槽を要求している点です。

勿論アメリカ同様に広大な土地に大きな平屋を建てるオーストラリアの住宅スタイルは日本とは比較になりません。

しかし始めから1mの水槽を要求してくるのがペットショップだという事実はこの国の爬虫類飼育の環境エンリッチメント意識の高さを表しています。

成体は池飼いを推奨しています。

これは後ほどの水質面に関わりますが、やはりコウホソを飼育するには大量の水量が必要なのです。

私はこのコウホソ飼育書を最近知りましたが、私の飼育方法が当たらずも遠からじだった点には安心しました。

次回に続きますが、最後に動画を。

近年、久しぶりにマニングリバーカブトガメが入荷しました。

このカメも現地では個体数が減り保護活動が行われています。

動画に出てくる野生の生息環境、彼等の遊泳力と運動量は飼育の参考になります。

マニングリバーカブトガメは20㎝に満たない小型種ですが、このカメですらこれだけの運動量があるのです。

我々飼育者としては自身の飼育環境はさておき、知っておくべき事実ではないか?と私は考えます。

https://m.youtube.com/watch?v=ZX_fYmJrJ44&time_continue=130