
今日は。
残念ながら、か幸運にも、なのか依然としてナガクビガメは不人気です。
先日お会いしたナガクビガメの巨匠N氏から「パーカーは殖やした方がいいよ。今は殖やしている人がいないから。」とアドバイスされました。
残念ながらナガクビガメはごく限られたアマチュアのブリーダーが趣味で殖やしているCB個体が出回っているに過ぎず、ブリードを止めるとすぐにCB個体は市場から消えてしまう構造です。
冒頭に幸運にも、と書いたのは不人気ゆえになんとか需給がバランスしている現状を揶揄したものです。
さて本題です。
我が家のパーカーペアです。
♂飼育17年目 22㎝オーバー
♀飼育15年目 25㎝オーバーです。
甲長はかなり控えめの数値なので実測値はもっと大きいと思います。
文献では♂22㎝、♀27㎝が最大サイズですから我が家のパーカー達はほぼ最大サイズに近いと思います。
特に亀会ご参加の方々は実物をご覧になっていますから当記事が虚偽でないことをご存知だと思います。
♂は7㎝、♀は5㎝の頃から育てました。
ざっと私の推測ですが日本国内で飼育されているナガクビガメの80%はいわゆるジーベンロックナガクビガメだと思います。
次に10%程度がロンギコリスの類、残りがその他chelodina・macrochelodina属ではないかと思います。
ジーベンロックはナガクビの魅力を詰め込んだ上に価格も安く、この種でナガクビは事足りるほどのナガクビ界の大スターです。
ヘビクビ界の同じキャラクターのギザミネに比べ、圧倒的に多い流通量と飼育難易度の低さですからおそらくジーベンを1匹飼えばナガクビの魅力を生涯にわたって享受出来ます。
N氏のロンギの種親は今年で飼育39年目だそうですから普通の成人が仔ガメを買えばまさに一生涯の付き合いになるはずです。
余談ながらN氏のロンギ、この年齢でも繁殖しているので亀の長寿ぶりはすごいですね。
ジーベンロックは文献によれば♀の最大サイズは35㎝とあります。
にもかかわらずジーベンの30㎝オーバーはSNSでも見ませんし、雑誌などでは30㎝オーバーは記事になるほどのレアケースです。
ジーベンは水槽飼育では大きくならないのか?
あるいは最大サイズになる前に死んでいるのか?
同属のパーカー飼育者としては残念ですが、おそらく上記の2つの理由が相まった現状にあると推察しています。
私のパーカー飼育方法が正解かは分かりませんがより正解に近かったと思いますし、私なりに推論を立てて飼育してきた16年間でしたから思いつく要因を書いてみます。
結論を言うと、
① エサ
② 照明
③ 飼育スペース
の順に重要度が高いと思います。
まずエサ、ここが最大のポイントです。
広い水槽で飼育されている方は分かると思いますが彼等は泳ぎは得意ですが遊泳スピードは決して早くありません。
私はチズガメやセダカガメも飼育しているので気づいたのですがチズガメなんかの遊泳スピードならば魚も追いかけられますがナガクビのスピードでは野生下で健全な魚を捕食することは不可能でしょう。
彼等が野生下で捕食している魚は死んだ魚かせいぜい弱った魚を捕食しているレベルだと思います。
つまり魚肉は彼等の主たるエネルギーではないということです。
彼等の主たるエネルギー源はおそらくザリガニです。
我々日本人はザリガニと聞くとアメリカザリガニを思い浮かべますが彼等の生息地のザリガニは巨大な種ばかりなうえにザリガニの宝庫です。
写真はロンギやエキスパンサと同所的に分布するマーレー川のザリガニです。
このザリガニで最大サイズ30㎝です。
なんとも厳ついザリガニですがエサとしてみるとまさにカルシウムの塊ですね。
余談ですがタスマニアには世界最大のザリガニ、タスマニアオオザリガニが生息しています。
つまりオセアニア大陸界隈では巨大ザリガニがうようよいる、ということです。
オブロンガの生息するスワン川も同様、マロンというこちらもイセエビのようなオオザリガニが生息しています。
文献では仔ガメの最大の捕食者はこのマロンだそうです。
ザリガニであれば彼等の長い首は捕食に有効に作用します。
おそらく彼等は浅瀬を遊泳しながら適正なサイズのザリガニを探しては長い首を使って捕食しているのでしょう。
ではオセアニア界隈のザリガニは何故こんなに大きくなれるのでしょうか?
またザリガニのエサとしての有効成分はなんでしょう?
実はこれがナガクビを上手に飼うポイントです。
実はアロワナライブでは東京海洋大学の成分データが詳細に掲載されていますがイメージはこれで掴めると思います。
ザリガニはアメリカでは養殖が盛んでアメリカ合衆国は食用ザリガニの成分表を公開しています。
ザリガニの主成分はタンパク質とミネラルです。
特にカルシウム含有量は魚の比ではありません。
これはミネラル部分のデータです。
上記の東京海洋大学のデータでは野外個体と養殖個体の比較データもありますが水分含有量にやや差はありますが成分はほぼ同じです。
実はこの成分表、オーストラリアの水質の特徴と同じです。
オーストラリアの水質はミネラル分が高い硬水です。
特にカルシウムとマグネシウムの含有量が高いアルカリ水です。
いってみれば塩分のない海水と同じ成分です。
私はオセアニアのザリガニはカルシウム含有量はもっと高いと考えています。
寧ろオセアニアのザリガニが巨大な事実は彼等に必須なカルシウムとマグネシウム含有量が高い水質に起因していると考えています。
こちらは海産のシバエビのデータです。
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=10_10328_7
カルシウムはザリガニの倍以上あります。
ナガクビを大きくするコツ、それはこのミネラル分を如何に取り込ませるかにあるのです。
残念ながら国内でマロンやヤビーを常食とするのは不可能です。
しかしながら国産の川エビやザリガニではミネラル分が足りません。
如何に必要なミネラル分とりわけカルシウムを大量に摂取させるか?
これが私がタートルプリンを自作するそもそもの理由でした。
長くなるので次回に続きます。