遊爺雑記帳

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ロシア人は、席を憤然と蹴って交渉会場を後にする毅然とした相手との間に初めて真剣な話し合いを行う

2019-02-19 01:17:23 | ロシア全般
 2月7日は「北方領土の日」で、今年も安倍首相が出席し、全国大会が開かれました。
 しかし、今年は、重大な変化が起きたと指摘されるのは、新潟県立大学の袴田教授と並び、ロシア問題に詳しい北海道大学の木村汎名誉教授。
 大会アピールから、なんと「北方四島が不法に占拠されている」という事実を述べた文章が削除されたうえに、同大会で最重要の安倍首相のスピーチにも「日本固有の領土」という言葉がなかったと。
 進行中の日露平和条約交渉に対する影響を考慮しての決断と推測されるが、もしそうだとしたら、とんでもない思い違いである。逆効果だろうと。
 ロシア側に向かって誤解を招く誤ったメッセージを送るばかりか、日本側にとっても致命的な外交行為にさえなりかねないとも。
 
【iRONNA発】北方領土 「日本固有」となぜ言えないのか 木村汎氏 - 産経ニュース 2019.2.18

 北方四島はわが国固有の領土である。にもかかわらず、最近の安倍晋三首相は「不法占拠」された事実を意図的に封印し、ロシア側に一方的に配慮する。交渉事とはいえ、ロシアの言い分を丸のみして大丈夫なのか
            ◇

 
毎年2月7日には、北方領土の返還を求める全国大会が催される。今年は、重大な変化が起きた。同大会を主催する官民団体が採択する大会アピールから、なんと「北方四島が不法に占拠されている」という事実を述べた文章が削除されたのである。同大会で最重要の安倍首相のスピーチにも「日本固有の領土」という言葉がなかった

 これは現在進行中の
日露平和条約交渉に対する影響を考慮しての決断と推測される。もしそうだとしたら、とんでもない思い違いである。逆効果だろう。それは、ロシア側に向かって誤解を招く誤ったメッセージを送るばかりか、日本側にとっても致命的な外交行為にさえなりかねない。

■「戦争結果不動論」
 
現プーチン政権は、国境線の決定問題に関して「戦争結果不動論」の立場を取っている。すなわち、国家間の国境線は国際法でなく、武力闘争の結果として決まる。現日露間の国境も先の大戦でソ連が北方四島の軍事占拠に成功したことによって決定した。プーチン大統領の忠実な部下、ラブロフ外相は昨年、両国間で平和条約交渉が本格化して以来、口を開くと必ず「もし交渉を進めたいのであれば、日本側は第二次大戦の結果を認めることが何よりの先決事項」と説く

 戦争が国境線を決める。これは、野蛮、危険かつ間違った考えである。
国境線を決めるのは、戦闘行為でなく、あくまで国際法であるべきだ。さもないと、際限なく戦争が起こるのを防止し得なくなる。

 そのような戦争の「負の連鎖」に終止符を打とうとして、連合国は大戦終結前後に領土不拡大の原則に同意した。「大西洋憲章」「カイロ宣言」「ポツダム宣言」「国連憲章」の条文がそうである。もとより、スターリン下のソ連も、これら全ての条約、協定、申し合わせに同意し、署名した。米国はこの原則を守り、軍事占領した沖縄を日本へ戻した。

 にもかかわらず、
スターリン下のソ連は、国際法、その他あらゆる諸条約に違反して、北方領土を軍事占領した。他国領土の軍事的占領は、その領域に対する主権の取得を意味しない。米国、日本、全ての諸国は、このことを承知している。だが、ロシアだけが北方領土の軍事占領=同地域の主権の入手とみなす。これが法律上通用しないことは、占有権と所有権が異なる2つの概念であることからも自明の理であろう。

■一方的譲歩は逆効果
 
ロシアは、戦後70年以上にもわたって日本の「固有の領土」である「北方四島」を「不法占拠中」である。現ロシア指導部がいささかでも、法律が何たるかを理解しているならば、日本に対してその不法行為をわび、七十余年間分の賃貸料もつけて直ちに返還すべき筋合いのはずである。ところが、プーチン大統領も、ラブロフ外相も、同領土が「大戦の結果、ロシアの主権下に移った」と強弁する。

 
もし彼らの主張を、たとえ一部でも間接的にでも認めるならば、どうであろう。日本政府は、ロシア主権下の領土を、ロシア政府の特別の好意によって日本へ引き渡してもらうことになる

 
北方領土の主権は依然、ロシアに残り、日本側に引き渡すのは施政権だけである。また、そのような引き渡しすら即時ではない。周辺の排他的経済水域(EEZ)すら、日本へ引き渡すとは限らない。ましてや、同地域に米軍基地を設置するなど問題外。ロシア側はこのように主張するかもしれない。

 
ロシア人は、席を憤然と蹴って交渉会場を後にする毅然(きぜん)とした相手との間に初めて真剣な話し合いを行う。ところが、安倍首相は「己とプーチン氏の間で必ずや平和条約を結ぶ」と交渉のデッドライン(期限)を設け、実際次から次へと一方的な譲歩を行う。そのような人物とは決して真剣に交渉しようとは思わないのがロシア外交の本質である。

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【プロフィル】木村汎 きむら・ひろし
 北海道大名誉教授。1936年、京城(現ソウル)生まれ。京都大法学部卒。米コロンビア大Ph.D。北大、国際日本文化センター教授を経て、現職。著書に『プーチンとロシア人』(産経新聞出版)、『プーチン-外交的考察』(藤原書店)など多数
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 2001年3月、森総理とプーチン大統領により署名された「イルクーツク声明」では、日ソ共同宣言が交渉プロセスの出発点を設定した基本的な法的文書であることを確認した。その上で、東京宣言に基づいて四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべきことを再確認。

 2003年1月、小泉総理とプーチン大統領により採択された「日露行動計画」では、日ソ共同宣言、東京宣言、イルクーツク声明及びその他の諸合意が、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結し、両国関係を完全に正常化することを目的とした交渉における基礎と認識し、交渉を加速することを確認。

 と、四島の帰属を交渉対象としていたプーチン氏。
 しかし、2016年12月の来日時には、平和条約締結後にソ連が歯舞群島と色丹島を引き渡すという「日ソ共同宣言」の 2島返還に対象を縮小。「特別な制度」の下での共同経済活動実現へ協議と、経済支援に重点をシフト。

 そして、2018年9月、ウラジオストクでの東方経済フォーラムで、習近平とも並んだ檀上で、プーチン大統領が突如平和条約交渉先行を呼びかけ。
 2018年11月のシンガポールでの首脳会談では、日ソ共同宣言を基礎に、平和条約交渉を加速を合意。「二島+α」論が取りざたされるようになりました。
 
 更に、2019年2月のドイツ・ミュンヘンでの日露外相会談では、ラブロフ外相は、第二次世界大戦の正当な結果として北方領土がロシア領になったと認めるよう改めて強調。「日本が、四島を含む全てのクリル諸島(千島列島)の主権をロシアが有することなど、第二次世界大戦の結果を認めることが不可欠だ」と述べ、遂に返還ゼロ島にまでゴールポストを動かしていました。

 そして、2月7日の「北方領土の日」の全国大会で、「北方四島が不法に占拠されている」という事実を述べた文章が削除されたうえに、同大会で最重要の安倍首相のスピーチにも「日本固有の領土」という言葉が消えた。

 2016年12月のプーチン氏来日以来、プーチン氏ペースで、ゴールポストが動かされ、「二島+α」論どころか、「ゼロ島」論になってしまっている北方四島の領土交渉。
 交渉を重ねる都度、急速に変化し、「ゼロ島」になってきています。つまり、安倍政権の期限切れの足元を見透かされて、完全に主導権を奪われているのです。

 そして、プーチン政権が前面に押し出しているのが、「戦争結果不動論」の立場だと木村名誉教授。
 それに対し、一方的に押され続けている日本はどう対処すれば良いのか。
 木村名誉教授が指摘されるのは、国際法の主張。

 国家間の国境線は国際法でなく、武力闘争の結果として決まるという「戦争結果不動論」。
 しかし、戦争が国境線を決めるのでは、野蛮、危険かつ間違った考えである。国境線を決めるのは、戦闘行為でなく、あくまで国際法であるべきだと木村名誉教授。
 戦争の「負の連鎖」に終止符を打とうとして、連合国は大戦終結前後に領土不拡大の原則に同意し、「大西洋憲章」「カイロ宣言」「ポツダム宣言」「国連憲章」の条文が産まれ、スターリン下のソ連も一旦は同意、米国はこの原則を守り、軍事占領した沖縄を日本へ戻した。

 しかし、北方領土については、スターリン下のソ連は、国際法、その他あらゆる諸条約に違反して軍事占拠した。
 ロシアだけが北方領土の軍事占領=同地域の主権の入手とみなしている。
 プーチン大統領も、ラブロフ外相も、同領土が「大戦の結果、ロシアの主権下に移った」と強弁。
 もし彼らの主張を、たとえ一部でも間接的にでも認めたら、日本政府は、ロシア主権下の領土を、ロシア政府の特別の好意によって日本へ引き渡してもらうことになる。
 その「特別の好意」などありえませんが、もしあったとしても、北方領土の主権は依然、ロシアに残り、日本側に引き渡すのは施政権だけ。周辺の排他的経済水域(EEZ)も引き渡されるかは望み薄。
 こんな現状での、平和条約の早期先行締結。締結するメリットはありません。欧米諸国が一致団結して対露経済制裁をしている現状に逆行して締結することは、むしろデメリットです。
 日米が主導する、北朝鮮への国連の経済制裁には協力を要請しながら、対露経済制裁では抜け穴を掘る。その姿勢は、国際情勢を俯瞰すれば、矛盾は明らか。

 木村名誉教授の以下の締めを、安倍首相や河野外相には、是非聞き入れていただきたい。
 ロシア人は、席を憤然と蹴って交渉会場を後にする毅然とした相手との間に初めて真剣な話し合いを行う。ところが、安倍首相は「己とプーチン氏の間で必ずや平和条約を結ぶ」と交渉のデッドライン(期限)を設け、実際次から次へと一方的な譲歩を行う。そのような人物とは決して真剣に交渉しようとは思わないのがロシア外交の本質である。

 いつも唱えているのですが、台所が火の車で、苦しいのはロシアなのです。在位期限が迫り結果を急ぐ安倍首相と、国内経済の低迷等で支持率低下の打開策が求められているプーチン氏との我慢比べのチキンレースに突入しています。
 木村教授が指摘される、席を憤然と蹴って交渉会場を後にする毅然とした態度を示す役。河野外相には適役だと考えますがいかがでしょう。



 # 冒頭の画像は、河野外相とラブロフ外相
  ラブロフ氏「交渉期限設けず」 日露外相会談、溝浮き彫りに - 産経ニュース
 
 


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杉原由美子氏による絵本「メチのいた島」読み聞かせ - YouTube


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竹島は日韓どちらのものか
日本は国境を守れるか (プレイブックス・インテリジェンス)


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