yuuの夢物語

夢の数々をここに語り綴りたい

小説 冬の路・・・3

2008-04-05 16:32:18 | 創作の小部屋

この作品は省三33歳からの軌道です・・・。ご興味が御座いましたら華シリーズもお読み頂けましたらうれしゅう御座います・・・お幸せに・・・。

冬の路 (省三の青春譚)
白い路が続く、そこへ思いの雫が・・・。
 


 克ちゃんと一緒に大学病院の心療内科の診察を受けることになった。
 診察室の前の待合は煙草の煙でもうもうとしていた。みんな天井を見ながら煙草を吸い続けていた。
 一人が診察室へ入ると一時間はかかった。
「交通事故が病気の引き金になっているかも知れませんが・・・。この病気は、几帳面で思い込みが激しく完璧主義者で人の噂を気にする人がかかるようですな・・・」と医者は言った。当たっているのかないのか省三には分らなかった。自分を分析したことがなかったからだった。
「それで、病名は」
 省三は恐る恐る聞いた。
「心身症ですな・・・まあ、あなたは軽いほうですから、仮面鬱病というところでしょう・・・この段階で来られてよかった」
 内科診療からカウンセリングが続くのだ。薬を貰って帰る頃は夕方になっていた。
 薬を飲むと頭が晴れていくのが分った。が、それでも不安発作は取れなかった。夜中に不安発作が起き慌てて薬を飲むという生活だった。毎週克ちゃんと通院して薬を貰って帰る日が続いた。
 最初は男が診察室へ入っていたが一ヶ月ほどして夫婦で診察室へ入ると言う仲の良い夫婦もいた。夫婦は目が虚ろで体に生気がなかった。同じように生活をしていたら病気がうつるのかと心配した。
「恵ちゃんは僕らのマドンナなのです」 
 克ちゃんがそう言う時は心身症の患者には見えなくて溌剌としていた。何かに夢中になるそのことがいかに病気治療に役立つかを知る思いだった。
 省三は今まで生きてきて何ににも一生懸命に取り組んだことが、この病気の原因になっているのではないかと思った。ふと、無駄を生きることが必要ではないか、無駄を生きていることが無駄ではないのだと言う考えが浮かんだ。今までは無駄を生きたことを悔やんだが、その無駄が何かを生み出しているように思えた。それは心の余裕なのか、ゆとりのある生き方なのかと思うのだった。
「記事の終わりに野辺に咲く一輪の花を添える・・・」
 支局長の阿東の言葉が思い返された。
 それが記者の冷静な眼なのだと言う事が分った。自分に不足していたのはそのことだったのかと省三は思った。真正面から対峙することだけが生きる総てではなかったのだった。ストリップ劇場の灯かりさんが言った、横の明かりでその人の過去が見えるといった言葉を思い出し、正面だけの見方では駄目だと思った。それを生き方の中に生かさないと仮面うつ病から脱することが出来ないことに気がついた。無意味なことに意義あることもある、それを否定していては何も生まれないのだ。



(この小説は「十七歳の海の華」の続編である。彷徨する省三の青春譚である。
ここに草稿として書き上げます。書き直し推敲は脱稿の後しばらく置いて行いますことをここに書き記します)
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皆様御元気で・・・ご自愛を・・・ありがとうございました・・・。

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作者のブログです・・・出版したあとも精力的に書き進めています・・・一度覗いてみてはと・・・。
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