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夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

中山七里著「スタート!」(光文社文庫)

2015-04-22 09:17:59 | 本と雑誌
スタート! (光文社文庫)
中山 七里
光文社




やりたくもない仕事に甘んじている宮藤映一  曲りなりにも助監督と呼ばれるようになってから もう5年は過ぎている34才 
好きな映画に関わってはいるものの 何かを見失い 燻っている
昼間から酒を飲んでは酔いどれてー

そこへベテランキャメラマンの小森千寿から連絡が入る
「オヤジの企画が通った 3年ぶりに撮れるぞ」


オヤジー大森宗俊監督 -大森組の再結集
世界に認められた寡作の巨匠

病気持つ監督はこれが遺作 最後の映画の覚悟でいる

しかし資金面から横槍が入り 意図していた主演女優が使えなくなった
資金を主に出す幹事会社の帝都テレビの曽根は 枕営業していたとの醜聞ある女優の山下マキを使えと強要する
そして押し付けられたスタッフのチーフ監督の吉崎 この為に大森組のチーフ監督の平岡は撮影から離れる

使えない吉崎にはメイキングビデオ撮影の仕事へと追いやり

勘違いのアイドルあがりバカ俳優の竹脇裕也と山下マキには演技指導

どうにか撮影が進み始めた頃 曽根が怪我をする
宮藤の弟で刑事の賢次によれば事故ではなく 誰かが作為的に狙ってやったー
さらに撮影中のフイルムが動画にアップされる

映画の登場人物に車椅子の人間が出てくることから その是非を問い騒ぐ迷惑弁護士

スキャンダルを追う厚かましい記者

殺された吉崎


病気が悪化し倒れる大森監督

付き合ってきた恋人より映画をとった宮藤


大森監督は残りを宮藤に撮れと言った
「アレのエンドマークを見なきゃ死にきれん あと九シーンだったな」

「お前がやれ」


「死にぞこないの頼み断ったら・・・・・七代祟るぞ・・・・・」

監督手描きの絵コンテとこれまで撮影したフイルムを頼りに まだまだ起こるアレコレを解決しつつ 宮藤は映画を完成せた

そこで!吉崎を殺した犯人が映画の出演者だとわかる
万事休すか上映できないのか

そこで宮藤がある人物に目を止め 撮り直しで 上映できる作品に完成させる

宮藤はまた曽根を怪我させた人物にも気づく

そもそもこういうゴタゴタが起きるだろうーそれでもーそう考えた人物の存在にもー

大森を見舞う宮藤を大森は励ます
宮藤が見出した女優を念頭に脚本は書き始められており 大森は次回作の構想を宮藤に語るのだ

舞台挨拶を前に客の入りを心配する宮藤

脚本家の六車から怒ったような声の電話


ー映画館のある商業ビルの外の二列の行列は百メートル以上も続いていた

雨なのにー傘をさした人々の数は見る間にもどんどん増えていく

「口コミだよ 先週の試写会に来た観客が大傑作だってツイッターで呟きまくったらしい その結果がこれだ」


「何してるんだ 早く来いったら!」

六車は電話の向こうで怒鳴り始めた

「みんながあんたを待っている」



映一は携帯を閉じた 
もう迷う必要はない
みんなが待っていてくれる
理由はそれで充分だ
深呼吸を一つ
映一は全速力で駈け出したー

(作中より一部抜粋)





六車は最近めきめきと頭角をあらわしてきた脚本家
この映画では曽根の横槍などから 戦うように脚本の変更に対処していく
大森に心酔しているが 宮藤のことも認めている

映画に使われる作品は「災厄の季節」
そう「連続殺人鬼カエル男」として発行された中山七里氏の小説の原題だ

小説を読みながら二重の楽しみがある
読まなくても面白いけれど できれば先に「連続殺人鬼カエル男」を読んでおいてほしい
それから「スタート!」を読んだほうが絶対に面白いから

解説はミステリ評論家の三橋暁氏

「スタート!」
目次
一 キャステイング
二 クランク・イン
三 アクシデント
四 クランク・アップ
五 公開


という構成です



宮藤が完成させた映画を観たくなる小説です