goo blog サービス終了のお知らせ 

夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「F地区の物語」-デイアナー・1

2014-10-05 23:52:25 | 自作の小説
容赦なき爆撃によりβ(ベータ)地区は焦熱地獄と化した
その地獄から逃れ出たのは どれほどの人間だったろうか


どの国がどの国と同盟を結び 裏切ったか味方であるのかもわからないほど混沌として救いようのないー世界中が戦い合った時代を経て 世界の平和は一つのコンピューター(機械)に託された


人間が信用できないのなら機械の判断に任せるしかない 頼るしかない

そんなおかしな結論に達するほど混乱した社会

もう戦争が終わってくれるなら なんだっていいーそれほど人々は疲れ切っていた

それで大きな戦いは終わり 各地区の中でよりよい暮らしを目指す人間同士のささやかなイザコザにおさまってきた

ただその争いも余りひどくなると機械が乗り出す


打ちこまれたデータからその機械が割り出したのはβ地区の殲滅



あの地区は救いようがないーと機会が判断を下した


人間ならばそんなことはしないのに

機械だって狂わないと誰に言いきれるだろう


より簡単安易で効果的な結果だけを求めて


そのβ地区からロボットバイクに乗り抜け出した影

ヘルメットに黒ずくめのライダー

幾日もかけてライダーはF地区の外へと辿り着いた

ヘルメットを脱いでロボットバイクの中へ仕舞うと ロボットバイクを折り畳み埋めて隠す
「レイラ 迎えに来るまで待っていてね」
「了解 デイアナ 気をつけて」
ロボットバイクからデイアナと呼ばれた人物の口許を微笑が過る

上官どのが与えてくれた装備のロボットバイクのレイラは デイアナの一番の相棒だった


地区に潜入したら自分だけが頼り -そう教えられている
地区に溶け込むアプローチは自由

溶け込んだ後は傍観者となり 目立つ動きをとってはならない

もしもトラブルが悪化しそうであれば 密やかに迅速な解決を



上官どのはデイアナを送り出す時に言った

「いいか 無駄死にはするな Sの願いは君達Dガールズが生き続けることだ」

ーそのための全て 生き続けるためのことは教えた
これからは生きて暮らして学んでいけ 自分たちの人生を


祈りのように 上官どのはデイアナ達に言った




最初のβ地区は荒れた世界だったが 人々は必死に生きていたのに
機械が希望を奪い地獄に変えた


人間が機械に使われてはいけない


それぞれの地区は何とか秩序を回復しようとしているが まだまだ無法地帯

よりよい暮らしを求めて 豊かな人間を羨み攻撃し暴動を起こす

どうあるのが 正しい形なのかー




F地区はβ地区とよく似ていた
不完全ながら周囲は高い塀で囲まれている
廃墟からの瓦礫を引っ張ってきていい加減に積み上げ重ねたようなー

組織だったモノがあるのか


ところどころに余り役にも立たなさそうな見張りがいた


夜になるのを待ってデイアナはF地区へ侵入した

女と見て絡んでくる相手は叩き伏せる

繰り返しているとちょっかいかける相手はいなくなった

汚れてはいるが透き通るような白い肌
ブランデー色の瞳
少し薄めの意志が強そうな結ばれた唇
微かなウエーブ持ち波打つ金の髪
しなやかな細見の体


それは 手に入れたくなるのも無理はない


本人が自身の美しさを意識していないのも始末に悪かった

上官どのは士官らしくない喧嘩の裏技も知っていて 汚いやり口とかの防ぎようも教えてくれていた


新しい地区へ入ったら まずすることは 食べていける仕事と寝場所の確保



「それは俺の猫だ 食うな!」
大声が聞こえてそちらへ進めば 目の大きな女の子のような顔立ちの少年がきかんきに 取り囲む男達を睨みつけていた

男達の足元には仔猫たちが入った箱

男達の一人は薄笑いを浮かべながら箱ごと仔猫たちを踏みつぶそうとする

少年は男達につっこんでいった


デイアナは子猫たちの入った箱を確保するとイキのいい少年に持たせる「はい」


それから不意に現れた美形の姿に舌なめずりする男達をぶちのめした


「一人前の男なら 女子供をいじめるんじゃない あほう!」



呆気にとられている少年に声をかける「私はデイアナ あなたは?」


「トマ」と少年は言った


「すげえや あんた そんなにほそっこいのにー
あ お礼させてよ 食べるもんだけでもさ」

「それは最高!」とデイアナは微笑む


「あんた デイアナさん 無茶苦茶きれいだね」


トマはカウンターのある店で暮らして仕事をしている
トマがアニキと慕う人間の手配なのだと言った

その店で用心棒もどきに デイアナは暮らすこととなった

トマの兄貴ぶんの男は言った「役に立つ花は珍しいな」


F地区でのデイアナの暮らしはそんなふうにして始まった






堂場瞬一著「見えざる貌(顔) 刑事の挑戦・一之瀬拓真」 中公文庫

2014-10-05 23:28:10 | 本と雑誌
見えざる貌 - 刑事の挑戦・一之瀬拓真 (中公文庫)
堂場 瞬一
中央公論新社




一之瀬拓真 千代田署刑事課の刑事 身長178センチ 恋人あり

まだ若い刑事である彼が今回遭遇した事件は皇居ランをする女性が襲われるというもの
体力が余りない一之瀬はランナーの振りをしての警戒にいささかげんなりしていたが 同期で半蔵門署の刑事の若杉は元気に軽々と走っていく
対抗意識を燃やしているのか やたらと一之瀬につっかかってくるのだった


一之瀬も同僚も名前をよくしらない女性タレントが走っていて襲われ負傷する
春木杏奈は再度襲撃されるが 被害者である春木の様子が一之瀬にはひっかかる


春木杏奈のフアンの女性が走っていて命を奪われる

通り魔として逮捕された容疑者は春木の襲撃と殺人については否定した

近々事務所を辞める春木のマネージャーから一之瀬は話を聞き出し 昔春木が同棲していた大西について調べる



大西が春木を包丁持ち襲う場に居合わせた一之瀬は逮捕するが



一之瀬には春木のほうが加害者のようにも思えるのだ


芸能界に自分の居場所を作るために事件を利用し 嘘をつくことに罪悪感など覚えない


「怪物」のような心の持ち主の女性
一之瀬の教育係りの先輩刑事の藤島は「いつか何かやらかすような気がするんだよな その時は逃がさない」と言う


一之瀬もまた決意を固める

周囲を不幸にすることに なんら痛痒を感じない自己愛が強すぎる女性・春木杏奈



「ルーキー」に続くシリーズ第二作です