過去の破片(かけら)から
人は戦う為に生きている そんな時代があった
既に何故戦うのか その理由すら忘れられている
それほどに闘いの為に戦うー奇妙な時代が続いていた
そして若者は家族を守る為に入隊する
後に将軍となり提督にもなるSは選ばれて研究を続けていた
研究室にこもることが多いSだったが 大切に思う人間もいた
Tと呼ぼうか
Sはガキ大将だったTからケンカのやり方や身の守り方を教えられたのだ
Tのケンカは「勝つまであきらめない」「いつかは相手を倒す」
互いに進む方向が違い 長いこと二人は会うこともなかった
再会した時 Tは若いながら副艦長になっていた
「大将になってやろうと思ってさ」とTは明るく笑っていた
そんなTの乗る艦(ふね)が生還不可能な作戦に駆り出される
「そんな命令に従うな 行くなー」と無理を知りつつ引き留めに行ったSに Tは楽しそうに笑う
「無茶を言う 理性の塊がお前の役どころだろ」
そして言ったのだ
「10歳上の兄貴がさ 胸をやられて血を吐いて入隊不可 おふくろはさ 肩身の狭い思いをしてたのよ
だから俺は入隊できる年になるのを待って志願して 無茶苦茶ガラにもなく勉強して
海で戦う男になった
末っ子の俺が軍人になるのを御袋はとめたが
軍人を出したことで 近所の連中のお袋への扱いは変わった
お袋が変わったわけでもないのに
人ってのは面白いもんだ
俺が戦うのは お袋やみんながいつか安心して暮らせる世界を作りたいからだ
世界中の何処とでも安心して行き来できる
そのためなら惜しい命じゃあない
平和の為の礎になるさ
Sよ頼む いつか軍人なぞ必要ない平和な世界をつくってくれ」
Tはまた明日も会うかのように「じゃあ またな」
いつものように明るく笑って軽く手をあげて去って行った
それが最後
Tの乗る艦は帰ってこなかった
SはTとの平和への約束の為に二人の子供すら利用した
長い長い時間をかけて世界を変えていった
その孤独な戦いの胸に秘めた動機の一つはTの死だった
ーもしも世界が平和であればー
「行かないで 行かないで 行かないで!」叫び続けてTが思いとどまる男であれば
喉が潰れるまで叫んでいただろう
なのにTは言ったのだ
「俺は君の為にこそ この戦いに行く」
バカ 馬鹿 ばか それでも生きていてほしかったのにー
気が弱るとSはTの笑顔を思い出した
そして踏ん張り続けた 長い長い孤独な時間を
世界中の人々が生き残った地区はそれぞれアルフアベットをつけて区分けされ管理されるようになる
Sは生きた人間の手に世界を取り戻す為に生きた
情け知らずの将軍 存在すら疑問視される幻の提督と呼ばれつつー
人は戦う為に生きている そんな時代があった
既に何故戦うのか その理由すら忘れられている
それほどに闘いの為に戦うー奇妙な時代が続いていた
そして若者は家族を守る為に入隊する
後に将軍となり提督にもなるSは選ばれて研究を続けていた
研究室にこもることが多いSだったが 大切に思う人間もいた
Tと呼ぼうか
Sはガキ大将だったTからケンカのやり方や身の守り方を教えられたのだ
Tのケンカは「勝つまであきらめない」「いつかは相手を倒す」
互いに進む方向が違い 長いこと二人は会うこともなかった
再会した時 Tは若いながら副艦長になっていた
「大将になってやろうと思ってさ」とTは明るく笑っていた
そんなTの乗る艦(ふね)が生還不可能な作戦に駆り出される
「そんな命令に従うな 行くなー」と無理を知りつつ引き留めに行ったSに Tは楽しそうに笑う
「無茶を言う 理性の塊がお前の役どころだろ」
そして言ったのだ
「10歳上の兄貴がさ 胸をやられて血を吐いて入隊不可 おふくろはさ 肩身の狭い思いをしてたのよ
だから俺は入隊できる年になるのを待って志願して 無茶苦茶ガラにもなく勉強して
海で戦う男になった
末っ子の俺が軍人になるのを御袋はとめたが
軍人を出したことで 近所の連中のお袋への扱いは変わった
お袋が変わったわけでもないのに
人ってのは面白いもんだ
俺が戦うのは お袋やみんながいつか安心して暮らせる世界を作りたいからだ
世界中の何処とでも安心して行き来できる
そのためなら惜しい命じゃあない
平和の為の礎になるさ
Sよ頼む いつか軍人なぞ必要ない平和な世界をつくってくれ」
Tはまた明日も会うかのように「じゃあ またな」
いつものように明るく笑って軽く手をあげて去って行った
それが最後
Tの乗る艦は帰ってこなかった
SはTとの平和への約束の為に二人の子供すら利用した
長い長い時間をかけて世界を変えていった
その孤独な戦いの胸に秘めた動機の一つはTの死だった
ーもしも世界が平和であればー
「行かないで 行かないで 行かないで!」叫び続けてTが思いとどまる男であれば
喉が潰れるまで叫んでいただろう
なのにTは言ったのだ
「俺は君の為にこそ この戦いに行く」
バカ 馬鹿 ばか それでも生きていてほしかったのにー
気が弱るとSはTの笑顔を思い出した
そして踏ん張り続けた 長い長い孤独な時間を
世界中の人々が生き残った地区はそれぞれアルフアベットをつけて区分けされ管理されるようになる
Sは生きた人間の手に世界を取り戻す為に生きた
情け知らずの将軍 存在すら疑問視される幻の提督と呼ばれつつー