「じゃ、ぼくはもう一生この死の砂漠から出られないんですか?」と、サトルは涙で顔をぐじゃぐじゃにしながら聞きました。
「だから言ったであろう。悲観するなと……。それ以上夢をゆがめてしまうと、また違う世界へ飛ばされてしまうかもしれないぞ……さぁ、涙を拭え」
サトルは道士の言うとおり、汚れた服の袖で涙を拭いました。
「君がまた信念を取り戻して、また夢を元に戻すことができたなら、落ちてきたところの世界へ必ず帰れるはずだ……。それには君が、君自身の手で、自分の心を開かなければならない。それができれば、意図した現実が目の前にすぐに姿を見せるはずだ。
私にはなにも、手を貸すことはできない――」道士は言うと、サトルの肩をポンと叩きました。
道士は、そっと背中を向けると、なにやら呪文のようなものを唱えながら、川の流れていく方へ、ゆっくりと歩き去って行きました。
「夢……取り戻す……」
サトルは、道士が歩み去って行く後ろ姿を見ながら、何度も繰り返して考えました。ガッチ達がいた世界に戻るには、夢を取り戻さなければならない。これこそが本当なんだと言える、強い信念がなければならない……。でも、一体どうやって取り戻せばいいのでしょう。目の前に広がっているのは、焼けた砂が見渡す限り続いた死の砂漠。手に触れるものは、なにもない――。
(……それができれば、現実が目の前にすぐに姿を見せるはずだ。……)と、サトルの心の中で、落ち着いた道士の声が聞こえてきました。サトルはなに気なく聞き流しましたが、すぐにはっと声に出して言ってみました。
「それができれば、イトした現実が目の前にすぐに姿を現すはずだ」
サトルは、なにか目の覚めるような思いがして、自動販売機が目の前に現れた時を思い出し、なんとか死の砂漠から脱出しようと、目をつぶって必死に自動販売機を思い浮かべました。自動販売機よ出ろ、出ろ……と、何度も心の中で叫びました。
「いらっしゃいませ――。いらっしゃいませ――」
と、聞き覚えのある自動販売機の声が聞こえました。サトルはやった、とうれしさに飛び上がって、目を開きました。しかし、うれしさは一瞬で終わってしまいました。自動販売機が出た、と思って目を開けたとたん、そこにはゆらゆらと立ちのぼる、自動販売機を写した蜃気楼があるばかりでした。
サトルは、がっくりと肩を落としました。深いため息をつくと、蜃気楼の自動販売機は、見えない空気の中に溶けこんで、すっと消えてしまいました。
「だから言ったであろう。悲観するなと……。それ以上夢をゆがめてしまうと、また違う世界へ飛ばされてしまうかもしれないぞ……さぁ、涙を拭え」
サトルは道士の言うとおり、汚れた服の袖で涙を拭いました。
「君がまた信念を取り戻して、また夢を元に戻すことができたなら、落ちてきたところの世界へ必ず帰れるはずだ……。それには君が、君自身の手で、自分の心を開かなければならない。それができれば、意図した現実が目の前にすぐに姿を見せるはずだ。
私にはなにも、手を貸すことはできない――」道士は言うと、サトルの肩をポンと叩きました。
道士は、そっと背中を向けると、なにやら呪文のようなものを唱えながら、川の流れていく方へ、ゆっくりと歩き去って行きました。
「夢……取り戻す……」
サトルは、道士が歩み去って行く後ろ姿を見ながら、何度も繰り返して考えました。ガッチ達がいた世界に戻るには、夢を取り戻さなければならない。これこそが本当なんだと言える、強い信念がなければならない……。でも、一体どうやって取り戻せばいいのでしょう。目の前に広がっているのは、焼けた砂が見渡す限り続いた死の砂漠。手に触れるものは、なにもない――。
(……それができれば、現実が目の前にすぐに姿を見せるはずだ。……)と、サトルの心の中で、落ち着いた道士の声が聞こえてきました。サトルはなに気なく聞き流しましたが、すぐにはっと声に出して言ってみました。
「それができれば、イトした現実が目の前にすぐに姿を現すはずだ」
サトルは、なにか目の覚めるような思いがして、自動販売機が目の前に現れた時を思い出し、なんとか死の砂漠から脱出しようと、目をつぶって必死に自動販売機を思い浮かべました。自動販売機よ出ろ、出ろ……と、何度も心の中で叫びました。
「いらっしゃいませ――。いらっしゃいませ――」
と、聞き覚えのある自動販売機の声が聞こえました。サトルはやった、とうれしさに飛び上がって、目を開きました。しかし、うれしさは一瞬で終わってしまいました。自動販売機が出た、と思って目を開けたとたん、そこにはゆらゆらと立ちのぼる、自動販売機を写した蜃気楼があるばかりでした。
サトルは、がっくりと肩を落としました。深いため息をつくと、蜃気楼の自動販売機は、見えない空気の中に溶けこんで、すっと消えてしまいました。