「――さぁてと。んじゃ行くかな」
と、ガッチはやにわに立ち上がると、すたすたと歩き始めました。
「ガッチ、どうしたの?」と、サトルが聞きました。「ぼく、気をつけた方がいいと思うんだけど……。この城、なんかおかしいよ。人っ子一人いないもの。だいたい誰が跳ね橋を上げたのさ……。ぼく達が城に入ってきた時は、もう誰もいなかったのに――」
ガッチは、サトルが言うのも構わず、お城の中を、さくさくと歩いて行きました。
「おれはもう嫌だ。さっさとケリをつけてやる。あの野郎、人にさんざん迷惑かけやがって……」と、ガッチはぷりぷりと怒って、はじめて来たはずのお城にもかかわらず、まるでねむり王のお城を熟知しているかのように、迷うことなく、どこかに向かって進んで行きました。
サトルは、思いもよらないガッチの行動に、どこか噛み切れない、むずかゆい感じがありましたが、ガッチの歩いて行く後ろを、遅れないようについていきました。
何度も高い階段を上ったり、長い廊下を渡ったりするうちに、ガッチはひとつの大きなドアの前で立ち止まりました。まだ、ガッチと同じくらい体の小さいサトルが、後ろに反り返って見上げなければならないほど、背の高いドアでした。
ドン!ドン! と、ガッチが大きなドアを叩きました。けれどしばらく待っても、中からはなんの反応もありませんでした。
「あれ?」ガッチは困ったように言うと、取っ手に飛び上がって回してみました。しかし、中から鍵がかかっているらしく、ドアはびくともしませんでした。
「くそっ! どうなってんだ、この城は」と、ガッチは飛び降りざま、ドアをゴンッ、と足蹴にしました。
「しーっ! 静かに」と、サトルは口の前に、人差し指を立てて言いました。「ガッチ、なにか呻き声のような音がしないかい?」
サトルに言われて、ガッチはしーんと静まり返っているお城に、耳をすませました。
「おーい……。助けてくれー……」
かすかですが、確かに助けを求める声がしていました。サトルとガッチは、顔を見合わせると、声のした方に向かって、駆け出しました。
「よし、サトルはあっち、おれはこっちだ」と、ガッチは分かれ道に来るとそう言って、自分が行くといった方へ、一人で走って行きました。
「あっ、ガッチ……」と、サトルはガッチに、どうしてお城の中にくわしいのか聞こうとしましたが、大急ぎで走って行ったガッチは、すぐに見えなくなってしまいました。
サトルは、しょうがないな……と思いながら、助けを求めている人を探し始めました。
(やっぱり……。ここはぼくが落とされた建物だ。ちょっと小さくなったようだけど……確かにぼくが迷いこんで、落とされた建物だ……)
と、サトルは広い城の中を探し回りながら、ねむり王を追って迷いこんだ時のことを思い出しました。あの時は、限りが無いほど広い部屋だったようでしたが、しかしこのお城の中には、ちゃんと階段があって、サトルが迷いこんだ建物とは多少違いましたが、お城の中の青一色の彩色や、ドアの形など、サトルが迷いこんだ建物に、間違いないはずでした。