青騎士は、馬首を巡らせとって返すと、二撃、三撃と攻撃の手を休めず、サトルに襲いかかりました。サトルは、死に物狂いで逃げ回り、なんとか命だけは取り留めていました。
「うわっ!」
と、サトルは言いざま、すり鉢状になった穴の中へ滑り落ちました。
砂漠に大きな口を開けた穴は、サトルを追ってきた青騎士も同様に、馬もろとも飲みこんでしまいました。
サトルは、穴に落ちてもなお、しつこくヤリで襲ってくる青騎士に、とうとう左の腕を突き刺されてしまいました。サトルの腕からは血が流れ出し、歯を食いしばっている顔からは、滝のような汗が噴き出していました。サトルは、なんとか逃げ延びようと、左腕の痛みをこらえながら、砂の斜面を登っていきました。しかし砂は、サトルがもがけばもがくほど、下に向かって流れ落ち、足を止めても、ズルズルとさらに深いところへ滑り落ちていきました。
穴の下から、サトルはドバッと砂が吹き上がるのに気がつきました。ちらっと後ろを見ると、穴の一番深い中心から、何本もの腕を持った黒い虫が現れ、獲物にありつこうと、あごをガチガチ言わせているのが目に入りました。
砂の斜面を登るのをあきらめかけたサトルでしたが、よく見ると、あとから落ちてきた青騎士が、サトルの身代わりになっているのが見えました。
黒い虫に襲われている青騎士を尻目に、サトルはやっとの事で穴から這い出しました。
息を切らせながら穴の底を覗きこむと、アリジゴクのような黒い虫と青騎士が、砂まみれになりながら、激しくもみ合っていました。
青騎士の乗った馬は、自分だけでもサトルを追いかけようと、砂の斜面を激しく掻いて外に出ようとしていましたが、足で掻くほど砂が崩れだし、逆に落ちていくばかりでした。
ほんのわずかな時間かもしれませんが、逃げるチャンスを得たサトルは、とにかく行けるところまで行こう、と後ろを振り返らずに走って行きました。
どのくらい走ったでしょう。お日様こそ真上から少しも移動していませんでしたが、サトルは赤い水が流れる川のところまでやって来ました。
途中、何度も振り返りましたが、青騎士が追ってくる気配はありませんでした。
サトルは、水が近くにあることでひと安心し、しばらくのあいだ休んでいくことに決めました。
川の縁まで歩いて来たサトルは、怪我をした左腕を気にしながら、両手で赤い色の水をすくうと、恐る恐る口をつけました。
「――ウッ、ペッ……」
サトルは顔を上げると、渋い顔で口を拭いました。
「なんだこれ――。まるで鉄を飲んでるみたいだ……」サトルは言うと、吐き気を覚えて、オエッ――と、声を漏らしました。
「これ。この水は飲み物ではないぞ」
「うわっ!」
と、サトルは言いざま、すり鉢状になった穴の中へ滑り落ちました。
砂漠に大きな口を開けた穴は、サトルを追ってきた青騎士も同様に、馬もろとも飲みこんでしまいました。
サトルは、穴に落ちてもなお、しつこくヤリで襲ってくる青騎士に、とうとう左の腕を突き刺されてしまいました。サトルの腕からは血が流れ出し、歯を食いしばっている顔からは、滝のような汗が噴き出していました。サトルは、なんとか逃げ延びようと、左腕の痛みをこらえながら、砂の斜面を登っていきました。しかし砂は、サトルがもがけばもがくほど、下に向かって流れ落ち、足を止めても、ズルズルとさらに深いところへ滑り落ちていきました。
穴の下から、サトルはドバッと砂が吹き上がるのに気がつきました。ちらっと後ろを見ると、穴の一番深い中心から、何本もの腕を持った黒い虫が現れ、獲物にありつこうと、あごをガチガチ言わせているのが目に入りました。
砂の斜面を登るのをあきらめかけたサトルでしたが、よく見ると、あとから落ちてきた青騎士が、サトルの身代わりになっているのが見えました。
黒い虫に襲われている青騎士を尻目に、サトルはやっとの事で穴から這い出しました。
息を切らせながら穴の底を覗きこむと、アリジゴクのような黒い虫と青騎士が、砂まみれになりながら、激しくもみ合っていました。
青騎士の乗った馬は、自分だけでもサトルを追いかけようと、砂の斜面を激しく掻いて外に出ようとしていましたが、足で掻くほど砂が崩れだし、逆に落ちていくばかりでした。
ほんのわずかな時間かもしれませんが、逃げるチャンスを得たサトルは、とにかく行けるところまで行こう、と後ろを振り返らずに走って行きました。
どのくらい走ったでしょう。お日様こそ真上から少しも移動していませんでしたが、サトルは赤い水が流れる川のところまでやって来ました。
途中、何度も振り返りましたが、青騎士が追ってくる気配はありませんでした。
サトルは、水が近くにあることでひと安心し、しばらくのあいだ休んでいくことに決めました。
川の縁まで歩いて来たサトルは、怪我をした左腕を気にしながら、両手で赤い色の水をすくうと、恐る恐る口をつけました。
「――ウッ、ペッ……」
サトルは顔を上げると、渋い顔で口を拭いました。
「なんだこれ――。まるで鉄を飲んでるみたいだ……」サトルは言うと、吐き気を覚えて、オエッ――と、声を漏らしました。
「これ。この水は飲み物ではないぞ」