「彼女を助けてあげて」と、地面に膝をついたサユラが、ミーナを抱き起こしながら言った。「カリンカが、ミーナの体の半分を持って行ったの」
「どうして、彼女一人を……」と、又三郎が言った。
「ミーナは変身の魔法が得意だったんだ」と、リーダーのポロスが言った。「さっきまで姿を現していた青騎士も、ミーナの魔法だったんだよ。カリンカは、半分になったミーナの体を使って、モリルを狙うはずだ」
又三郎は最後まで聞くことなく、歯ぎしりしながら、叶方達の後を追いかけていった。
――――……
又三郎の姿が、闇の奥深くに消え去った。
「あいつ、なんかおかしかった」と、京卦と背中合わせになった叶方が言った。「人間みたいな猫なんて、最初っからあやしいと思ってたんだ」
「バカなこと言わないで」と、京卦は周囲に目を向けながら言った。「あれは猫さんじゃなかった。きっと、カリンカ――」
「そんな――」と言いかけて、叶方は口をつぐんだ。
深夜になった町は、閑散としていた。カリンカの魔法のせいかもしれなかったが、夏休みも終わりに近づいていたとはいえ、走り去る車も途切れ途切れで、人の姿もほとんど無かった。
「どうする気だろう」と、叶方が言った。
「このままじっとしていても、だめだって事は間違いなさそうね」
京卦が早足に歩き出すと、叶方も後ろを気にしつつ、急ぎ足でついていった。
「どこに行く気」
叶方が言うと、京卦が言った。
「人がいなくて、思い切り戦えるところ」
叶方には、学校しか思いつかなかった。
「――ここは」と、破れたフェンスをくぐりながら、京卦が言った。
「オレが卒業した中学さ」
「私達の学校より、広いかもね」京卦は、薄暗いグランドに目をやりながら言った。
「ここならきっと、巨人が出てきたって戦えそうだろ」叶方が言うと、京卦はうなずいた。「転校してきた頃、野生の動物が逃げこんできて、大騒ぎになったんだ」
京卦はちらりと叶方を見ると、ため息混じりに言った。
「なにをしてくるかわからないから、気をつけて――」
二人は、グランドの中央に向かって、走り出した。
「……」と、最初に気がついたのは叶方だった。
「やっぱりな。あの時と同じだ――」
京卦が見ると、校舎とグランドをつないでいる狭い通りから、のしのしとやってくる獣らしい影が見えた。
「――本物なの」と、京卦が杖を手に叶方の前に出た。
「ちょっと待って」
「どうして、彼女一人を……」と、又三郎が言った。
「ミーナは変身の魔法が得意だったんだ」と、リーダーのポロスが言った。「さっきまで姿を現していた青騎士も、ミーナの魔法だったんだよ。カリンカは、半分になったミーナの体を使って、モリルを狙うはずだ」
又三郎は最後まで聞くことなく、歯ぎしりしながら、叶方達の後を追いかけていった。
――――……
又三郎の姿が、闇の奥深くに消え去った。
「あいつ、なんかおかしかった」と、京卦と背中合わせになった叶方が言った。「人間みたいな猫なんて、最初っからあやしいと思ってたんだ」
「バカなこと言わないで」と、京卦は周囲に目を向けながら言った。「あれは猫さんじゃなかった。きっと、カリンカ――」
「そんな――」と言いかけて、叶方は口をつぐんだ。
深夜になった町は、閑散としていた。カリンカの魔法のせいかもしれなかったが、夏休みも終わりに近づいていたとはいえ、走り去る車も途切れ途切れで、人の姿もほとんど無かった。
「どうする気だろう」と、叶方が言った。
「このままじっとしていても、だめだって事は間違いなさそうね」
京卦が早足に歩き出すと、叶方も後ろを気にしつつ、急ぎ足でついていった。
「どこに行く気」
叶方が言うと、京卦が言った。
「人がいなくて、思い切り戦えるところ」
叶方には、学校しか思いつかなかった。
「――ここは」と、破れたフェンスをくぐりながら、京卦が言った。
「オレが卒業した中学さ」
「私達の学校より、広いかもね」京卦は、薄暗いグランドに目をやりながら言った。
「ここならきっと、巨人が出てきたって戦えそうだろ」叶方が言うと、京卦はうなずいた。「転校してきた頃、野生の動物が逃げこんできて、大騒ぎになったんだ」
京卦はちらりと叶方を見ると、ため息混じりに言った。
「なにをしてくるかわからないから、気をつけて――」
二人は、グランドの中央に向かって、走り出した。
「……」と、最初に気がついたのは叶方だった。
「やっぱりな。あの時と同じだ――」
京卦が見ると、校舎とグランドをつないでいる狭い通りから、のしのしとやってくる獣らしい影が見えた。
「――本物なの」と、京卦が杖を手に叶方の前に出た。
「ちょっと待って」