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「いないようだな」と、ジローはボスとの合流場所に来て、小さな声で言った。
「なにかあったようね」と、沙織はきょろきょろせず、まっすぐ前を見ながら言った。
「スカイ・ガールの仕業か」と、ジローは沙織と並んで歩きながら言った。
夜もすっかり更け、町を歩く人はめっきり少なく、仕事帰りの車なのか、ヘッドライトを眩しく点した車が、足早に通り過ぎていった。
「キングも見当たらないみたいだ」と、ジローは立ち止まると、合流場所を振り返りながら言った。
「――そんなことはない、はずだけれど」と、立ち止まった沙織は、ため息をつくように言った。
ザッププン――……
と、二人の足下から、潜水艦の艦橋が伸び上がってきた。
沙織を抱きかかえて、素早く後ろに飛び下がったジローは、地面から伸びてきた潜水艦の艦橋に手を掛けると、ハッチを開けて沙織の手を引き、潜水艦の中に入っていった。
「どこに行っていたんだ」
と、ジローはブリッジに降りてくると、操縦席に座っている亜珠理を見て、驚いたように言った。「――ボス達はどうしたんだ」
操縦桿を握っていた亜珠理は、必死で潜水艦を操縦しながら言った。
「ボス達なら、警察に捕まりました」
「やられたわね」と、マスクをつけたまま、沙織がくやしそうに言った。
「スカイ・ガール達か、タイムパトロールの連中か、いずれにしろ、ここから難しくなるな」と、ジローは言った。「潜水艦の操縦はどこで覚えたんだ」と、ジローは操縦桿を握っている亜珠理に言った。
「偶然かもしれないけれど、ボス達が潜水艦を予定よりも離れたところに停泊させていたから、誰かに持って行かれる前に見つけて、私が動かしたんです」と、亜珠理は潜水艦の操縦で手一杯なのか、心持ち早口で言った。「なんとか動かさなきゃと思って、どうにか操縦してるんですけど、よかったら、替わってもらえませんか」
ふふふ――と、おかしそうに笑う沙織を横目に、ジローは亜珠理に替わって席に座ると、操縦桿を握った。
「ボス達は残念だが、計画どおりにアジトに向かおう」と、ジローは言った。
「あなた、家に連絡しなくて大丈夫?」と、沙織は亜珠理に言った。
「潜水艦を見つけてすぐ、母親に連絡を入れたんで、大丈夫です」と、亜珠理は携帯電話を取り出すと、沙織に見せてからポケットにしまった。
「アジトの場所はわかるの?」と、沙織は潜望鏡を引きおろすと、外の様子を見ながら言った。
「ああ。大体の位置は教えてもらった」と、ジローは自信ありげに言った。「少し揺れるかもしれないぞ」