ミーナが不安げに金魚鉢の中に収まると、又三郎が叶方に言った。
「これはみかわしのマントです。あなたに預けますから、危ないことがあれば京卦殿を守ってください。大抵の攻撃なら、このマントがかわしてくれるはずです」と、又三郎は透きとおるほど薄い銀色のマントを差し出した。
「こんなの、もらえないよ」と、叶方が手渡されたマントを返そうとした。「これをもらったら、そっちの武器がなにも無くなるじゃないか」
「私なら心配いりません」と、又三郎が自分の胸を叩きながら言った。「いつも見えないところに武器を隠していますから、安心して受け取ってください」
叶方は、しぶしぶマントを受け取った。
「相手は魔法使いよ。青騎士に変身できないあなたじゃ、まるで歯が立たないわ」と、京卦が短い杖を手にしながら言った。「危なくなったら、そのマントを身につけて隠れていてね」
「そんなわけにいかないよ。オレだって戦えるさ」と、叶方がむきになって言った。
「その気持ちを忘れないで」と、京卦が叶方の目を見ながら言った。「私だって、攻撃魔法のクラスじゃ相手に負けたことがないんだから。あなたには秘密にしていたけれど、本当は私、強いのよ」
叶方は、あきらめたようにうなずいた。
「――あれ、なんか揺れてないか」
悔しそうにうつむいていた叶方が、はっと顔を上げて言った。
「……」と、じっとしていた又三郎と京卦が、互いの顔を見合わせた。
「来たみたいね」京卦が言うと、飛び上がった又三郎が、窓の外をうかがった。
「――おかしい」
窓の外を見ていた又三郎が、耳をそばだてながら言った。
「わずかですが、シャリンシャリンと鈴のような音がします」
「でも時矢君は、私達が守っているはずでしょ」と、京卦が叶方の袖を引っ張った。
水槽の中に隠れているミーナが、もごもごと聞き取れない声でなにかを言った。
「いえ、それはないはずです」と、又三郎が首を振った。
「――なんて言ったの」と、叶方が聞いた。
「時矢殿が、もう一人いるんじゃないかと……」と、叶方を見る又三郎の目が、細く射るような形になった。
「それじゃカリンカは、分身させた時矢君を使って、もう一体、別の青騎士を出現させたっていうの」
又三郎と並んで、外の様子をうかがっていた京卦が言った。
ミーナがモゴモゴと、泡を吹き出すような音を立てた。
「不可能ではないけれど――」と、京卦が考えるように言った。
「ええ」と、又三郎が京卦を見て言った。「こんな短時間で、そんな大きな魔法が使えるほど、魔力を回復させられるはずがありません」
「これはみかわしのマントです。あなたに預けますから、危ないことがあれば京卦殿を守ってください。大抵の攻撃なら、このマントがかわしてくれるはずです」と、又三郎は透きとおるほど薄い銀色のマントを差し出した。
「こんなの、もらえないよ」と、叶方が手渡されたマントを返そうとした。「これをもらったら、そっちの武器がなにも無くなるじゃないか」
「私なら心配いりません」と、又三郎が自分の胸を叩きながら言った。「いつも見えないところに武器を隠していますから、安心して受け取ってください」
叶方は、しぶしぶマントを受け取った。
「相手は魔法使いよ。青騎士に変身できないあなたじゃ、まるで歯が立たないわ」と、京卦が短い杖を手にしながら言った。「危なくなったら、そのマントを身につけて隠れていてね」
「そんなわけにいかないよ。オレだって戦えるさ」と、叶方がむきになって言った。
「その気持ちを忘れないで」と、京卦が叶方の目を見ながら言った。「私だって、攻撃魔法のクラスじゃ相手に負けたことがないんだから。あなたには秘密にしていたけれど、本当は私、強いのよ」
叶方は、あきらめたようにうなずいた。
「――あれ、なんか揺れてないか」
悔しそうにうつむいていた叶方が、はっと顔を上げて言った。
「……」と、じっとしていた又三郎と京卦が、互いの顔を見合わせた。
「来たみたいね」京卦が言うと、飛び上がった又三郎が、窓の外をうかがった。
「――おかしい」
窓の外を見ていた又三郎が、耳をそばだてながら言った。
「わずかですが、シャリンシャリンと鈴のような音がします」
「でも時矢君は、私達が守っているはずでしょ」と、京卦が叶方の袖を引っ張った。
水槽の中に隠れているミーナが、もごもごと聞き取れない声でなにかを言った。
「いえ、それはないはずです」と、又三郎が首を振った。
「――なんて言ったの」と、叶方が聞いた。
「時矢殿が、もう一人いるんじゃないかと……」と、叶方を見る又三郎の目が、細く射るような形になった。
「それじゃカリンカは、分身させた時矢君を使って、もう一体、別の青騎士を出現させたっていうの」
又三郎と並んで、外の様子をうかがっていた京卦が言った。
ミーナがモゴモゴと、泡を吹き出すような音を立てた。
「不可能ではないけれど――」と、京卦が考えるように言った。
「ええ」と、又三郎が京卦を見て言った。「こんな短時間で、そんな大きな魔法が使えるほど、魔力を回復させられるはずがありません」