くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

肉片(ミンチ)な彼女(83)

2016-12-11 19:06:51 | 「肉片(ミンチ)な彼...
「マントを――」又三郎が言うと、すぐに反応した叶方が、又三郎の上から覆い被さるようにして、銀色のマントをひるがえした。
 ぐにゅり、としたかすかな圧力を感じたかどうか、手応えのまるでないまま、立ち上がった叶方が見ると、青騎士の巨体が、ゆっくりと後ろに倒れていくところだった。
「すげぇよ、これ」と、感激した叶方が、マントを手に思わず声を上げていた。

「――やっぱり、変だわ」と、京卦が困ったように言った。

 叶方が顔を上げて青騎士を見ると、倒れたはずの青騎士の体が、絵に描いたように、音もなく倒れ伏していた。
「えっ、どういうこと」叶方が京卦を見ると、目があった京卦も、わからないと首を振るばかりだった。
「あれだけ大きな体が倒れたのに、地響きひとつ起きないなんて」と、叶方は又三郎に言った。
「――ええ、注意してください。これも策略のひとつに違いありません」
 又三郎が言い終わるより早く。京卦のそばに浮かんでいたミーナが、不意に飛び上がった。又三郎の言葉に集中していた京卦は、ボゴボゴとおぼれたような悲鳴を聞きつけ、かろうじて異変に気がついた。
「ストリディア!」止まれ、と言う意味の呪文を、京卦が杖を振りながら叫んだ。
 京卦の持った杖が、飛び去ろうとする金魚鉢をとらえると、高く舞い上がった金魚鉢が、ピタリと宙で停止した。
「まったく余計な真似を」と、カリンカの声が暗闇の中から聞こえた。
「姿を現せ、魔法使い」
 又三郎が言うと、倒れたまま身動きしなくなった青騎士の背後から、マスコットのカリンカが宙に躍り上がった。

「その呼び方は好きじゃないね」と、カリンカが言った。「まるで悪者みたいな言い方じゃないか」

 又三郎が地面に手をついて飛び上がると、どこから取りだしたのか、投げ放ったはずの鉄棒が、しっかりと手に握られていた。又三郎は、ミーナの金魚鉢に絡みついていた見えない糸を、一閃した鉄棒でプツリと断ち切った。
「大丈夫ですか――」地面に降りた又三郎が金魚鉢の中を覗くと、ミーナの姿はどこにもなかった。
「どこに隠した」
 又三郎が言うのを聞いた京卦が、カリンカに言った。
「ミーナさんはどこ……許さない」
 京卦が言うと、カリンカはからかうように笑いながら、ふらふらと誘うように宙を飛び回った。

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