くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

肉片(ミンチ)な彼女(80)

2016-12-11 19:03:41 | 「肉片(ミンチ)な彼...
 叶方は、なにを話しているのかわからず、じっと顔をしかめていた。
「なにか覚えてない」と、京卦が叶方に聞いた。「カリンカが、時矢君のコピーを作ったりしていなかった」
「……」と、叶方は考えるように首を振った。「そんなはずはないと思うけど、こっそりコピーされていても、きっと気がつかなかったと思うよ」
「――可能性は大ありね」
 京卦が言うと、又三郎が窓の外をうかがいながら言った。
「この部屋から外に出ないでください。向こうの狙いがなんなのか、見極めるまで離れるのは危険です」
「けど、青騎士が相手なら、私の結界なんて簡単に破られてしまうわ」と、京卦が困ったように言った。
「かもしれませんね」と、又三郎が部屋の中に戻りながら言った。「私が撃退した青騎士ではなく、新たに出現した青騎士ならば、それほど強くはないはずです。向かってきても撃破せず、足止めすることさえできれば、自らの過ちに気がついて消滅するかもしれません」
「ミーナさん、私に魔力を使わせてくれない」と、京卦が宙に浮かぶミーナに言った。
 水槽の中のミーナが、もごもごとなにかを言いながら、金魚鉢を揺らした。
「――協力する、と言っています」と、又三郎が言った。
「ありがとう」と、京卦が言った。「私のそばから、離れないでいて」
 フワフワと宙に浮かぶミーナが、京卦の真上で、うなずくように前後に揺れた。

 ――シャリン、シャリリン……。

 と、鈴のような金属の音が、部屋の中にいる誰もがわかるほど、大きく聞こえてきた。
「どこから来るか、わかる?」京卦が聞くと、又三郎は耳を澄ませたまま、首を振った。
 音が近づいてくるに従い、グラグラとした揺れも次第に大きさを増していった。
「地震、じゃないよな――」
 窓の外をうかがっていた叶方がつぶやくと、怒ったような顔をした京卦が、振り返った叶方を注意するように見た。
「――どう、見える」
 叶方が首を振ると、又三郎も別の窓に移りながら言った。
「わずかな星明かりが見えるだけですね。青騎士らしい影はどこにもありません」
 事務所の揺れが、次第に大きくなっていった。立っていた叶方はたまらず、床に手をついた。大波に揺られる船の上にいるようだった。
「どうやら、私達を外に出そうとしているようですね」
「わからないわ」と、京卦が壁に手をつきながら言った。「事務所の中に罠が仕掛けているとでも思っているのかしら」
「――なにかあるのですか」
 又三郎が言うと、京卦は首を振った。
「リーダーのことだから、私の知らない罠が仕掛けてあったかもしれないけれど、そんなこと、カリンカが知っているはずがないわ」と、京卦があきらめたように言った。
「もうそろそろ限界ね。私達はいいけれど、このままじゃ、時矢君ごと建物がつぶされるかもしれない」

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